サイバースペースにおけるセックス小説の読者の増加
投稿された小説数が急速に増加した事実は、従来、印刷物による表現の機会さえあれば発表されていたはずの性的妄想が多量に存在していることを示している。投稿小説の増加は、どれだけ急速だったのだろうか? 最初期のインターネットにおける小説の数について、信頼できる数値は存在しない。だが、投稿小説は、個人によって、個人的なアーカイブの目的で採取されていた。そして、それによると、驚くべき急成長があったことが分かる。
1993年5月13日にalt.sex.stories.dに投稿された記事によると、その投稿者は個人的なアーカイブとして1600作のセックス小説を持っているとあった(同年、後になって彼はその数を3000に増やしたが)。彼は、コンピュータから削除する前に、すべての作品を再投稿するつもりであると述べていた。この投稿に対して、Nobodyという名の投稿者が返信し、自分は3400作品を持っていると述べた。ちょうどこの時期あたりに、セックス小説を保管する最初のサイトが現れ始めた。やはり、この場合も、そのようなサイトの大半は大学のサイトだった。
グーグル・グループは、何千とあるUsenetグループのすべてに関して、グーグルが保管している月々の投稿の数を出している。前に述べたとおり、初期の時代に関しては、alt階層へ投稿された記事のかなりの数がグーグルでは保管されていない。ではあるが、グーグルが発表する数値は、実際の投稿数についての低い見積り値にあたると考えてよく、それによると、人気があるセックス小説サイトがどのような変化を見せたかが分かる。例えば、alt.sexは、1988年にはたった58個しか投稿がなかったが、1997年には24万に達している。その後、低下を見せ、現在では年間3万から4万のレベルになっている。年が最近になるにつれ、投稿の大半はスパムになっていった。alt.sex.storiesの方は、1992年には84投稿であり、1997年に10万5千となりピークを迎える。現在は、年間、2万5千から3万になっている。これも大半がスパムである。
正直に言って、スパムを含まないかなり正確な投稿数を得るには、alt.sex.stories.dとalt.sex.stories.moderatedを見なければならないだろう。
前に述べたとおり、alt.sex.stories.dは、純粋な議論グループである。であるので、そこの数値は、ニューズグループにおけるセックス小説への全体的な関心度の指標として使えるかもしれない。このニューズグループへの投稿は、1992年という早い時期から見られるが、完全に正確な投稿数を得るのは不可能である。グーグル・グループが提供する数値がグーグルの検索エンジンを使って得られる数値と、若干、異なっていることも、その正確さを疑わせる。
ワールド・ワイド・ウェブの広まりにつれて、スパムは急速に増加した。それを受けて、1997年にalt.sex.stories.dは、議論を行う投稿者に、記事の件名に{ASSD}というタグをつけさせることを開始した。このタグのことをメンバーたちは「カーリー(波括弧)」と呼んでいる。その目的は、商業的な投稿記事と本当の投稿記事を区別するためであった。ともあれ、alt.sex.stories.dは、長い間、年間あたり何万もの合法的な(スパムでない)投稿を受けていた。最大は、年間4万件以上である。もっとも、最近は、投稿数も劇的に減少してきており、2007年には、件名に「カーリー」が付いてる投稿の数は7500ほどしかなくなっている。
alt.sex.stories.moderatedは、調整役がついたサイトであるので、ニューズグループへの小説投稿の数に関して、最も純粋な数値を与えてくれるものである。このグループが活動を開始したのは、実質1997年初頭であったが、その最初の年に、5000以上の小説が投稿された。1998年には10000以上になった。この年がピークである。1999年になると、数は急速に低下する。管理者のEli the Beardedが離れ、彼の代わりに調整役のチームができるまで数ヶ月ブランクがあったことが理由である。その後、再開したときには平均5500強の投稿数だった(個々の小説と小説の章の投稿数を合わせて)。その後、現象を見せ、2007年には1700ほどになっている。