ストッキングとハイヒールだけの姿のまま、バーバラは後ろ向きになり、脚を大きく広げた。そして、腰をひねらせながらリモコンをカメラに向け、横にある小さなテレビに目をやった。リモコンでズームし、画面にお尻のアップが映るようにさせた。床に置いた携帯電話を拾うときだけ、彼女の手がチラリと映った。
それから彼女はゆっくりと前屈みになった。カメラアングルを少し下向きに調節し、さらに前に上半身を倒していく。
「なんて・・・」
スティーブは、言いかけたものの、自分が何を言おうとしていたのかすぐに忘れてしまった。いずれ、意味のない言葉だっただろう。
バーバラはリモコンを置いたのか、別のものを握った手が画面に現れた。肌色をしたディルドだった。それを、濡れているのがありありと分かる女陰に押し付けていく。
バーバラがディルドの頭部を2センチほど外陰唇へぐりぐりと押し付けるのを見て、スティーブは生唾を飲んだ。頭部をラビアの前頂へと滑らせクリトリスを撫でては、また、後ろへと擦りつけながら戻す。彼女はそれを何度か繰り返した。そして、ようやく、優しくディルドを中へ入れ始めた。それはどんどん奥へ入って行き、やがて3分の1ほどが中に隠れるまでになった。
「あなた?・・・あなた?・・・」
携帯はもう一方の手に握っているに違いない。スティーブは、このような姿勢でどうやってバランスを保っているんだろうと思った。
「ああ、ここにいるよ」 声がかすれていた。
「そこの建設現場からここまで来るのに、どのくらいかかる?」 バーバラは、誘惑的な甘い声で聞いた。
「いまに分かるよ」
スティーブはそう言って、立ち上がり、椅子を蹴って元に戻した。上着を握り、耳に携帯電話を押し当てながらドアに向かった。
「・・・ねえ、パソコンを切るのを忘れないでね」
「あっ・・・そうだった」
ドアに向かっていたスティーブだったが、きびすを返しデスクに戻った。ラップトップのふたを閉め、電源コードを抜き、脇に抱えながら小走りでドアに向かった。
スティーブが車を運転する間、バーバラはずっとディルドで何をしているか電話で報告し続けた。
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スティーブは、ぎりぎりの時までブレーキを踏まなかった。左に曲がるとき、とうとうブレーキを踏んだが、急ハンドルを切ったせいもありタイヤが大きな悲鳴を上げた。それでも車の勢いは残っており、ガレージのドアに衝突するのを避けるため、ブレーキを踏みつけなければならなかった。
車から飛び出て、ずんずんと走り、数秒のうちに、鍵のかかっていない玄関から家の中に入った。
バーバラは、玄関のすぐ内側、ロビーの床にマットを敷いて、正座していた。依然として、ストッキングとハイヒールだけの姿だった。顔は赤らめていたが、しっかりと顔を上げて前を見ていた。彼女の両手は、ずいぶん前から身体の一部を隠したいと願っていたようだが、バーバラは頑としてそれを却下し続けていた。夫が喜んでくれるように、完全に露わになっていたいと思っていたからである。
「ああ、バーバラ、すごく綺麗だよ」 スティーブは息を荒げていた。
「セクシー?」
「ああ、本当にセクシーだ・・・僕は一度も・・・君が・・・ああ!」
言葉が詰まって、なかなかうまく口から出てこない。
「こっちに来て・・・」
バーバラは、指を鉤の形にさせて、誘惑的に言った。スティーブは、素早くドアを閉め、彼女の前に突進した。