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ネットにおけるセックス小説 (8) 


匿名性とセックス小説

上記のような可能性があるため、セックス小説関係のコミュニティにいる人々は、大半、自分たちの匿名性を守るために非常に努力している。匿名性を守るための2つの主な方法は、ニム(nym)と呼ばれるペンネームを採用することと、匿名のEメールアドレスを利用することである。この2つとも、ネットにおけるセックス小説の隆盛と歩調を合わせて広まってきたものであり、本質的に両者は関連したものである可能性がある。

初期の頃、セックス小説の投稿は、実際、作家の実名と実際のメールアドレスを付加して行われていたものが多かった。次第に人々は正体を隠すためにペンネームを採用するようになっていったが、それでも、投稿に使うメールには、実際のメールアドレスと投稿メッセージが投稿先に来るまでの経路が載ったままになっていた。そのため、ネット・システムに知識がある人なら、投稿メッセージから投稿元を辿ることが可能になっていた。実際、上記のジェイク・ベーカーの身元がばれたのは、その方法を使ったからであった。

そこで、より匿名性を高めるため、1980年代末までに、匿名投稿サービスや匿名リメイラーが提供されるようになった。これは、メールや投稿を受けとり、そのメールから身元を表す情報を削除し、メッセージのテクストのみを意図された受け手に再配信するベンダーのことを言う。

最も有名な匿名リメイラーはanon.penet.fiであった。これは1990年代中盤にフィンランドのヘルシンキ郊外のサーバで運営されていた。リメイラーの運営は容易である。そのことは、このPenetがペンティアム以前のパソコンで運営されていたにもかかわらず、当時、世界で最も大きなリメイラーであったことからも伺える。

リメイラーを使う人の大半が何がしかのインターネットのセックス関係の世界に関わっていたとする主張を何度も見かけてきているが、Penetの消滅自体は、セックスとは何の関係もない。Penetの消滅は、カリフォルニアにあるサイエントロジー教会が1995年に起こした訴訟が原因である。その訴訟は、サイエントロジーの議論系ニューズグループに教会の文書が公開されたことを巡っての訴訟であった。投稿者はPenetのリメイラーを使って自分の身元を隠したのだが、フィンランドの当局がインターポールの召喚状を使って、Penetの管理者であるヨーハン・ヘルシンギアス(Johan Helsingius)氏に投稿者についての情報を提供するように求めたのだった。ヨーハンは、ユーザの匿名性を保障できなくなったとしてサイトを閉鎖したのである。

古くからのネット住民が私に話してくれたことによると、当時、Penetの消滅によりUsenetへのセックス小説の投稿は終わりになってしまうのではないか、あるいはUsenet自体が終わりになってしまうのではないかとの憶測が広まったらしい。だが、そういう事態にならなかったのは明らかだ。実際、過去10年の間に、本名も必要なければ、特定の場所からのアクセスも必要としないウェブを基盤にしたメール・システムが数多く開発されてきている(例えば、Yahoo! やHotmailなど)。今日、投稿者の多数は、このようなシステムを使っている。

セックス小説の作家たち全員が現実世界での身元がばれるのを心配しているわけではないのは事実だが、匿名性がなければ、このような営みは恐らく存在しなかっただろうと思われる。最近、alt.sex.stories.moderatedのチームによって作られた、作家たちへのFAQには、次のような「特別の」注意事項が含まれている。

「alt.sex.stories.moderatedに投稿するときは、是非、あなたの実名が出ていたり、あなたの実名に辿りつけるようなメール・アドレスは使わないようにしてください。最初に小説を投稿してから何年も経った後で、ASSTRの管理者に、小説から名前を削除することや、小説全体の削除を求めるメールをよこしてくる元alt.sex.stories.moderated投稿者が数多くいます。ASSTRが、いつも喜んでそのような要望に応じるつもりでいますが、私たちには、小説やその投稿者の実名をサーチエンジンの検索結果から取り除く能力はありません。この理由から、ASSTRは、投稿者はalt.sex.stories.moderatedに投稿する場合はペンネームやハンドルを使うことを強く推奨しています」


[2009/11/04] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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