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寝取られの輪 1 (12) 

そのとき、ブルースがシャンパングラスを二つ手に持ちながら近づいてきた。そのグラスを二人に渡す。

「ありがとう、あなた」 リンダは言葉をかけたが、ジェイムズは黙ったまま受け取った。

「ブルースです」 と夫でありウェイターにもなったブルースが自己紹介した。

「君は元の椅子に戻るべきだな」 ジェイムズは実に事務的な声の調子で言った。にもかかわらずブルースは無礼に怒る反応もせず、すごすごと元の椅子に戻っていった。

「冷たいのね」 とリンダ。

「まあ、俺は、誰にも、最初の応対から、正しい位置づけを認識させるのを好む主義だからな。特に旦那たちには、そうしている。それに、あいつは君の旦那だし。純粋に利己的な理由からだが」

「あなた、女を喜ばせるのがうまいのね」 リンダはシャンパンを啜りながら、おだてる言葉を言った。

ジェイムズは右腕をラブシートの背、リンダの後ろに回した。そして、その手を彼女の肩に乗せた。誰が見ても、「この女は俺のものだ」と示す態度だった。

リンダはジェイムズの手が触れたとたん、驚いてちょっと跳ね上がったものの、手をどかさせるようなことは何もしなかった。むしろ、脚を組んで彼の方に少し身体を傾ける姿勢になった。

「どうやら、俺たちは仲良くなれそうだな」 ジェイムズは薄ら笑いを浮かべて言い、リンダの肩を優しく撫でた。リンダは、また一口シャンパンを啜った。

「ブルースは俺たちから眼を離せなくなっているようだ。あいつにちょっとした悩みの種でも与えてやろうか?」

「どういうこと?」

「これさ」

ジェイムズはそう言って、実にゆっくりと顔をリンダの顔に近づけた。リンダは彼が自分にキスをしようとしてると分かった。

彼が唇を触れるまで、永遠とも思えるほど時間があった。その間、様々な思いがリンダの心の中をよぎった。ブルースはどんな反応をするだろう? 私はどう反応すればいいの? あれをすることになるのかしら? 私は、それを本当に求めているの? 最後の疑問に対して、リンダは、イエスの答えを出した。

そして、ジェイムズの唇がリンダの唇と接触した。部屋には人がたくさんいたものの、どういうわけか、リンダはそれが気にならなかった。彼のソフトなキスにより、ますますリンダは決心を固めていった。ジェイムズの舌が唇をなぞり、探るような動きをするのを感じると、リンダはすぐに唇を開き、彼を受け入れた。彼の舌が口の中に入ってくる。私の舌と絡み合っている。

「ううん・・・」

リンダは思わず小さなうめき声をあげ、それから本格的にキスに没頭した。口をさらに近づけ、彼のためにもっと大きく開き、自分の舌で彼の舌を舐め回す。

・・・もう後には引けないわ。

リンダは秘密の場所が湿り気を帯びてくるのを感じていた。私はこの男に身体を捧げることになるのね。

ブルースは、身じろぎもせず二人のキスを見つめていた。あの男は、こんなにあからさまに妻にキスをしている。しかも、みんなが見ている前で。リンダからもキスを返しているのがはっきりと分かる。

そのまま見ているべきなのか、二人のところに行くべきなのか、ブルースには分からなかった。ひとつだけ確かなことがある。それは、ここにいる他の客たちと視線を合わせたくないと思ったことだ。そんなのは、恥ずかしさの極地だ。

それに、もうひとつかなり確信したことがあった。それは、このクラブとでも言うのか、この集まりが自分には向かないということだ。あのジェームズという男が、あのように他人の妻を奪えることを当然とみなしている、その態度が気に食わない。

ブルースは自分自身に対しても腹を立てていた。あの黒人に呼び出されていそいそと二人のところに行こうとしたこと、手で合図を送られてそれに従ったこと、そして、特に、まるで召使のように二人に飲み物を持っていったこと。なぜ自分はそんなことをしたのか、いまだに信じられない。だが、何より信じられないことは、リンダがあの男の態度にあわせ、またそれを喜んでいるように見えることが信じられなかった。

ようやく、二人のキスが終わった。リンダは、体じゅうを駆け巡る熱いもので、ほとんど息が切れそうになっていた。彼がキスばかりでなく他のいろんなことをしたら、私、本当にどうなってしまうか分からないわ。リンダはそう思った。


[2010/01/07] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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