バーバラは、熱々のカップをスティーブの横、パティオのテーブルへと運び、優雅な物腰で彼の膝に腰を降ろし、両腕をするりと彼の脇の下に差し入れて、抱きついた。スティーブは優しくしっかりとバーバラを抱きしめた。バーバラは彼に身体を寄せキスをした。
バーバラは落ち着いた声で言った。
「ねえ、あなた? キャンプ道具とかを置いている奥の部屋のことだけど・・・」
「うん?」
「あの道具を全部、外に出して、ガレージかどこかに置き換えるべきだと思うの・・・どう思う?」
スティーブは少し考えた。あの道具類を奥の部屋においておかなければならない差し迫った理由はない。ガレージには物を置くスペースが充分あるし、むしろ、キャンプ道具などは外に置いておく方が理屈に合っていさえした・・・例えば、車に載せるときなど、その方が楽だ。
「いいよ。・・・今度の週末にやっておこう」
スティーブはそう言って、ホット・チョコレートの温度を試し、もうちょっと冷めてから飲むことにした。
「・・・あの部屋はどうするつもりだい?」 彼は何気なく訊いた。
まばらな雲が背後から夕日を浴びて、実に美しく輝いていた。スティーブは、カメラを持ってきた方が良いかなと、ぼんやり思った。
「そうね・・・寝室に使ってもいいわね。もともと、そういう用途に使うように意図された部屋だし」
バーバラはスティーブよりは熱いままでチョコレートを飲むのが好きだった。彼女は軽く一口啜った。
「それでいいよ」 スティーブは夕日を見ながら答えた。
「それに、子供部屋のための部屋も必要になるから・・・」 バーバラは注意深く、そう言い、もう一口啜った。
スティーブは、気を払っていなかったため、彼の妻が言ったことを理解するのに少し時間がかかった。
「え、何て・・・?」
「7ヶ月半くらいなの・・・だから、物を片付ける時間はたっぷりあるわ」
「ああ、なんと・・・」 スティーブは囁いた。
「あなた、幸せ?」 問いかける言葉ではあったが、彼女の声には不確かな気持はほんの少ししかなかった。
スティーブは、両腕に力をいれ、強く妻を包んだ。唇で彼女の唇を求めた。それがバーバラの質問への彼の答えだった。二人は、たそがれどきが夜へと変わってしばらく経つまで、陽が沈んでいたことに気づかなかった。
おわり