「いいキスだったぜ」と、ジェームズは腕をリンダの肩に回した。垂らした手の先が彼女の胸の谷間に触れている。
「ふう…… あなたって危険な人ね」
「いや、まだ君は何も見てないだろう」と、ジェームズは笑い出した。指先をさわさわと揺らし彼女の胸の隆起を撫でる。「だが、見たいと思ってるなら、俺も嬉しいけどな」
もちろん見てみたい! とリンダは心の中で叫んだ。そして、部屋の向こうにいるブルースに目をやった。
彼はいかにも不愉快そうな表情を顔に浮かべて、じっとこっちを睨みつけている。わたしったら、他の男といるところを夫に見られても気にしなくなってるわ。それに、ジェームズといちゃいちゃしているのを夫が見ていることに、秘密の喜びまで感じているみたい。今すぐジェームズが欲しい……。ジェームズがそうなるように仕向けてくれたらいいのに……。
リンダは彼の膝に手を乗せた。
「そろそろ、君にこのクラブが何なのかを紹介してあげる頃だな。どうだ?」
「どういうこと?」
「君は旦那の首にあの首輪をつけて、パティオに追い出し、あの輪の中に座らせるべきだってことさ」
「まあ…… どうしよう……」
「多分、俺は君を説得できるはずだぜ」
ジェームズはそう言って、微笑んだ。そしてリンダに顔を近づけた。リンダも彼に顔を向けた。自然に唇が軽く開いた。
ジェームズは唇をリンダの唇に触れるとすぐに、舌を伸ばし、口の奥深くへ挿し込んだ。それを受けてリンダは小さく喜びの喘ぎ声を漏らした。そして、指図されたわけでもないのに彼の首後ろに手をあてがい、自分に引き寄せた。
……もう決まりだわ。私、完全にこの男に身を捧げることにする。
リンダの身体は、欲望で疼き始めていた。誰に見られていようとも気にならなくなっていた。
ブルースは、部屋の反対側で起きているこの誘惑の光景から目を離せずにいた。彼にとって実に侮辱的な行為ではあったが、同時に、彼は自分の分身が反応してるのを感じていた。
二人がキスを解き、リンダが立ち上がるのが見えた。何が起きたんだろうとブルースは戸惑った。リンダがこちらに歩いてくるのを見て、ブルースも立ち上がった。少し勃起してるのが見つからなければ良いんだがと思いながら。
「あなた? 楽しんでる?」
「楽しんでるって?…… お前の方は楽しんでいるようだな」 ブルースは苦々しい気持を声に出して表した。
「そんなふうにならないで。このパーティを試してみるって、二人で同意したことなのよ? それでなんだけど……これ、あなたが気にしなければいいなって思っているの」
そう言ってリンダはポケットから首輪を出し、ブルースの首に近づけた。
「おい、何も、そこまで……」
「しーっ! さあ、後ろを向いて? ちゃんとロックできるように」
ブルースは言われたとおりに後ろを向いた。そして、小さくカチッとロックする音がするのを聞いた。
「きつすぎないといいけど。大丈夫よね? それじゃあ、あなた? これをつけたらどうしなければいけないか、分かっているわよね?」
「テラスに出て、あの輪の中に座るんだろ?」
「その通り! 急いで! それをつけたままでは屋内にいてはいけないのよ」
「でも、お前は……?」
「私はジェームズとおしゃべりでもしてるわ。さあ、行って!」
ブルースはうなだれて、誰とも視線を合わさずにパティオへ向かった。短い距離だったが、彼にとっては人生で最も長い歩みだった。彼は、部屋中の人が自分を見て笑っているだろうと思ったが、彼の思ったとおり、それは事実だった。