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デス・バイ・ファッキング 第5章 (7) 

「ひとつだけ。君たちには、今は…… あ、ちょっと待ってね」

僕はポケットからペンを取り出し、いつも持ち歩いている小さなメモ帳に書き始めた。僕には未だにちょっとガリ勉的な性質が残ってる。

「…ということは、君たちには、Eで始まる名前をした女の子が56人出てくることになるよね? そんなはずがないが…」

ドニーはディ・ディを見た。「彼、ディ・ディが思っているほど賢くないわね。私たちは代数的に増えているのであって、幾何級数的ではないの。それに、それを考えなくても、あなたの算数はダメよ。条件がすべて同じとして、私たちは世代ごとに倍になっているのであって、2乗になっているのではないの。今は双子4組、片割れになってしまったのが二人なので、D世代は10人。次のEで始まる名前の女の子は20人になるのよ」

僕は計算をやり直した。「ああ、そうだね。ごめん。何か、世界をジョアン・ウッドワードで充満させるようなマルサス風の人口爆発に直面してると勘違いしていたようだ。まあ、それも必ずしも悪いことではないけど、ポール・ニューマンの居場所がなくなっちゃうのは困るね。それに、僕のお願いだけど、どうか、エディスとエドナという名前だけは使わないでくれよ。いいね? ……でも、ちょっと待って。計算はそんなに単純かなあ? 君たちの家系は一世代あたり一回しか子供を生まないの?」

ドニーが答えた。「ええ。どの世代でも、女一人につき双子一組だけの状態が続いているわ。これまでずっとそうだったし、これからも変わらないと思う」

だんだん僕の理解を超える話しになってきた。僕はただのつまらないコンピュータ・オタクにすぎないのに。

「ということは、君たちも、それぞれ、いつかは双子の女の子を産むことになるということだよね。それで正しい?」

ディ・ディは少し不機嫌そうな顔をした。

「いいえ、アンドリュー。わたしたちの家系の女にも、若くして亡くなったり、いろんな理由で子供を生まない者が出てくるのは避けられないことよ。つい最近まで、私とドニーは、双子一族の中でも家の血統は私たちでおしまいにしようって、ほぼ決心を固めていたところだったの」

僕は、時々、話しをのみこむのが少し遅くなることがある。

「おお… じゃ、君たちは子供を生まないことにしていたというわけだね。ふーん。職業についてる女性には、そういう決心をする人が多いしね。……あ、でも、つい最近まで、って? 待ってくれ。ということは、君たちは最近、決心を変えたわけだ。やっぱり、子供をもうけることを考えていると。どうして、気持が変わったんだい?」

ディ・ディもドニーも、見るからに恥ずかしそうな顔をした。だが、二人は声を合わせて答えた。

「あなたのせいで」

僕は、デザートの「デス・バイ・チョコレート」のかなりの量を膝に落としてしまった。幸いにして、ディ・ディの手がそこにあって、うまく受けてくれた。

「僕のせい! 君たちが言ってると僕が思っていることを、君たちは本気で言ってると、そう考えていいの?」

ディ・ディは勇気をふりしぼったようだ。

「アンドリュー。あなたは私にいくつか言葉を言ったわ。それを聞いて、私は、あなたが私のことを未来を共にする人として見ていると思った。あなたは、同じ言葉を私にも言わせようとしたわ。それを言わせるために、私に拷問までかけた。ひどい人ね。ともかく、私がいま言っているのは、あなたは私だけと未来を共にすることはできないということ。私たちは、私とドニーの二人で一括取引商品になってるの」

僕は、ようやく、話しの全容をのみこみ始めていた。「ということは、君たちは結婚の話をしているということなんだね? すべて。そう?」

ドニーが答えた。

「そこまでは言ってないわ。ただ、そのことを遠い先にありえるかもしれないこととして考えて欲しいと言ってるだけ。ディ・ディは、その話題を持ち出すことすらできなかったの。私もその気になっていると知るまではね。アンドリュー? 私も乗り気になっているわ。あなたは、そういう関係の話しを聞いて嫌気がさしているかもしれない。私は、話を聞いたあなたが、勘定書を私たちに押し付けて、大声を上げながらレストランから駆け出していくのじゃないかと、半分、予想していたくらい。でも、私たちがどういう人間で、どういうことを求めているか、知って欲しかったの。私たちの求めに応じる気があるかどうか、それは、あなたにしか決められないことなのよ。私たちがあなたの要求を満たせるか、も」


[2010/01/15] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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