外にはすでに男たちが3人いて椅子に座っていた。直径3メートルほどの輪の中、内側を向くように椅子が並んでいる。ブルースはできるだけ他の男たちとの間隔が離れた椅子に腰を降ろした。
「おめでとう!」 と20代に入ってそこそこと思われる若い男が彼に声をかけた。
「ありがとう。めでたいことなのかな、たぶん」 とブルース。
「あなたのメダル、逆向きになってますよ」 と若い男が言った。
「え?」 とブルースは胸元を見下ろした。
「メダルです。文字が見えるように表を向けなきゃいけないんですよ」
「おうっ」ブルースはメダルをひっくり返した。そこにはBCと文字が刻まれていた。
「これはどんな意味なんだろう」
「『寝取られ中』(Being Cuckolded)を表してると考える人もいるけど、本当は、『黒人に寝取られ中』(Black Cuckolded)を表してるんです」
ブルースは言葉が出なかった。
「僕の名前はジミーです」
「私はブルース」
「で、あなたの奥様は誰と一緒なんですか?」
「ジェイムズと言っていた」
「わあお! ラッキーですね」
どうしてジェイムズだとラッキーなんだ? ブルースには皆目見当もつかない。
「どうしてラッキーと?」
「なぜかって言うと、ジェイムズは、このグループでもトップ・スリーに入るんです。妻のジュリアと僕は5回通って、ようやく、妻はジェイムズと一緒になれたんですよ。あなたの場合は、今日が初めてなんでしょう?」
「ああ」
「それじゃあ、絶対またここに参加することになるでしょうね。奥様は、ものすごく満足するはず。大きいのが好きな奥様だといいですね。ジェイムズは信じられないほど大きいから」
とジミーは両手を25センチほど空けて見せた。
「…奥様は、自分が死んでしまい、天国に登ってしまったと思うはず。いや、実際、本当にそうなりますよ。1週間ほど、まともに歩けなくなるかもしれない。でも、絶対に、奥様はあたなを連れて、ここに戻ってきます。それだけは確実」
「失礼だが、お歳を訊いてもよいですか?」
「僕は22歳で、ジュリアは21歳です」
「そんなに若いのに、すでにこの種の世界に入っている、と?」
「まあ、僕たちは運がよかっただけかもしれません。信じてくれるか分かりませんが、妻のおばがメンバーなんです。ともかく、そのおばさんが、どういうわけか僕たちをこのクラブに招待してくれた。僕は、これはスウィング・パーティみたいなものだろうと思っていたんですけどね」
「それで、あなたはこれでOKなのですか?」
「まあ、正直言いますと、最初は違いました。でも、ジュリアがあんまり喜ぶので、これをする価値があると思ったんです。それに、一度、妻が男たちの一人とするところを見る機会があったんですが、その時、ジュリアが喜ぶ理由が分かったんです。あ、そうだ、偶然にも、その時の相手がジェイムズでしたよ。彼を家に連れてきて、僕たちのベッドで妻としてもらったんですが、そのセックスは、それはもう、まったく見たこともないもので… なんと言うか、僕は衝撃を受けました。それにジュリアも狂いまくって。あんな妻の姿も初めてでしたね。それを見て、僕は自分たちが運がよいと思ったんです。妻は、二十代に入ったばかりという若さで、想像できる中で最高のセックスをしてもらっている。たいていの人は、もっと歳をとってから、そう、あなたぐらいの歳になってからでしょう。実際、一度入ったら、もう戻れなくなりますよ」