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誰とやったか知ってるぜ 第5章 (2) 

この前と同じ窓際のテーブルにつき、トリスタが来るのを待った。彼女は担当している各テーブルを巡回している。ようやく、俺の席にやってきた。

「あら、今日も、ようこそ」 と彼女はコーヒーカップを置いた。

この言葉には嬉しかった。トリスタは俺のことを覚えていたんだ。

「やあ、トリスタ」 コーヒーを注いでもらいながら返事した。

「コーヒーの他に何か?」と、俺の目を覗き込みながら言う。

「いや、これで充分」と、俺はコーヒーにクリームを入れた。だがトリスタが他のテーブルに移動していくのを見て、少しがっかりした。

コーヒーを飲みながらトリスタを見続けていた。優雅に店内を歩き回っている。ジーンズと白のTシャツで、その上から緑色のエプロンをつけている。とてもキュートだ。

…彼女、いいなあ… と俺は独り言を言った。

コーヒーを3分の2ほど飲んだ頃、トリスタが注ぎ足しに戻ってきた。テーブルを挟んで俺の向かい側の席にちょっと腰を降ろして、注ぎ足ししてくれた。

「しばらく座っていたらいいよ。そんなに忙しそうでもないし」 と微笑みかけた。

彼女は店内を見回し、コーヒーのポットをテーブルに置いた。

「ありがと」 と耳のところに手を当て、髪の毛をさっと後ろに払った。

「私の名前は知ってるわね。あなたの名前は?」

「ジャスティン」 俺は握手をするため手を差し出した。

トリスタは柔らかな指で俺の手のひらに触れ、それから手をつなぎ、しっかりと握手した。

「よろしく、ジャスティン」

「君はまだ学校に通ってるの?」 コーヒーをひとくち啜り、訊いた。

「いいえ、この春、卒業したわ」 トリスタは、用事を求めている客はいないかと、店内を見回しながら答えた。

「どこの学校?」 彼女が俺が出た高校にはいなかったのは確かだった。

「ヴァレイ・クリスチャン・アカデミーよ」 トリスタは自分の高校を誇りに思っている様子だった。

「あなたはどこ?」

「僕はノーバート高校の卒業」

「君の高校はどんな感じ?」 彼女のきれいな緑の瞳を見つめて、訊いた。

「まあまあね。私のお父さんはそこの牧師なの。だから、ちょっと退屈」

「へえ、お父さんは牧師なのか?」 少しびっくりしたような顔で答えた。

「ええ、ずっと牧師人生」 とトリスタはまた店内を見回した。

俺は、そこで、いきなり切り出した。 「ねえ、夕食、僕と一緒にどこかに食べに行かない?」

トリスタは顔を赤らめて俺を見た。

「そうねえ… 今夜、この店で会って、もうちょっとおしゃべりするのはうのはどう?」 と、彼女は席からすべり出て、立ち上がった。

「是非!」 と言い、俺も立ち上がり、テーブルに5ドル札を置いた。

「7時でオーケー?」 他のテーブルでお呼びがかかったようで、彼女は急いでる感じだった。

「もちろん」 と俺は出口に向かった。

「じゃ、またね、ジャスティン」 可愛い声を聞きながらドアを押した。

出口でちょっと立ち止まり、振り返って、返事した。「じゃ、7時に!」

コーヒーショップを出た。通りの向かいにシーサイド・ダイナーが見える。もう朝食時は過ぎているので、レストランの中は客がほとんどいないようだった。俺は自転車に乗り、家に向かった。

ふと、しまった! と思った。トリスタに電話番号を聞いておくのを忘れていたのだ。

家に戻り、部屋に入った。グラフ先生に贈るつもりの小包を取り出し、中を確かめた。きちんと揃ってる。その大きな黒い箱をクローゼットにしまった。計画は整ってる。あとは実行あるのみだ。

何もすることがなくなったので、ブラッドの家に遊びに行くことにした。また、自転車に乗り、漕ぎ出す。ブラッドの家の前に行くと、ブラッドの母親の車が止まっているのが見え、ちょっとワクワクした。自転車を降り、玄関をノックするとすぐに、ブラッドが出てきた。

「よお、ジャスティン、入れよ」

俺たちはテレビが置いてある部屋に入った。



[2010/01/21] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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