僕は、みんなのドリンクを買ってテーブルに戻った。女性たちはワイン、僕とクレイグはビールである。ベブと僕は、明日の日曜日が、クレイグとテレサの12回目の結婚記念日であることを知った。2人を祝い、末長く幸せな夫婦生活が続くよう祈って乾杯をした。その後、しばらくは仕事や子供たちや、その他、生活一般の話しをしていた。話しをすると、僕たちと彼らには共通点が多いことが分かった。その他の点では、もちろん、異なる。話しを聞いて驚いたが、テレサとクレイグは、このバーにバイクに乗ってやってきたらしい。僕自身はバイクについてはあまり考えたことはなかったが、ベブはバイクについて夢を持っていることは知っていた。ベブはバイク乗りの仲間たちとツーリングに出る夢を持っているのである。彼女はクレイグとテレサのバイク話しに魅せられているようだった。
グラス2杯ほどワインを飲んで、テレサもかなりリラックスしてきたようだった。そこで、彼女をダンスに誘ってみた。彼女は躊躇せず、僕の誘いを受けてくれた。それを見て、クレイグが提案した。
「じゃあ君たちがダンスしている間、僕はベブにバイクに乗せて上げることにするよ。いいかな?」
ベブの顔が、まるでクリスマスツリーのように明るく輝いた。話しは即決だった。テレサと僕はダンスフロアに向かい、一方、クレイグとベブは駐車場へ出ていった。
テレサと2曲ほど踊ると、僕はもうすっかりベブとクレイグのことは忘れていた。僕はすっかりテレサに夢中になって、舞い上がっていたと言ってよい。テレサは素晴らしくダンスが上手で、まさに見ているだけでゾクゾクしてくる。3曲目はバックル・ポリッシャー(
参考)だった。僕は紳士的にテレサを両腕の中に抱きしめ、踊った。だが、あっという間に曲が終わってしまった。短か過ぎる。もう1曲、スローな曲がかかれば良いと期待したが、残念なことに、次の曲は速いテンポの曲だった。僕は、もう1杯、喉を潤すためテーブルに戻ろうと彼女を誘った。
飲み物を注文していると、テレサが言った。
「クレイグとベブはどうしてるかしら?」
「テレサ、正直言うと、僕は君とダンスしてて、あんまり楽し過ぎて、僕たちの配偶者のことをすっかり忘れてしまっていたよ」
テレサは、ちょっと顔を赤らめた。「私も楽しかったわ・・・あなた、ダンス上手ね」
「いや、こんな美しい女性と一緒にダンスできて、霊感が舞い降りたということだと思うよ、僕がうまく踊れたのは。絶対に」
テレサは、僕が真面目に言ってるのか、ただお世辞を言ってるのか、分からず、ただにっこりと微笑んだ。彼女がもっと僕のことを知った後なら、いま言った僕の言葉は、完璧に真剣に言ってると分かったことだろう。彼女は丁寧な口調で返事をした。
「ありがとう」