「ドニー? お互い、手の内をさらけ出そうよ。いま言ったことはディ・ディには話していなかった。というのも、今夜まで、僕は、彼女が今度の金曜日の後も僕に興味があるかどうかすら分からなかったんだから。本当のことを告白して波風を立てることもないだろう? 来週になれば、お互い、『それじゃ、お元気で。頑張って』って言って、さっさと別れていたかもしれないんだ。そういう関係だったら、ディ・ディが知っておく必要のあることは全部話してある。だけど、それ以上は言ってない… 」
「…別に僕には野望はないんだ。ほら… 今なら君も理解したはず。君たちレディ二人は、君たちの業界ではトップクラスにいる。一方、僕は僕の業界でトップクラスに入ることは決してないだろう。でも、そういう状態でも僕は全然気にしないんだ。この仕事をしてるのは、この仕事が面白いから。それにテーブルの上に食い物を出すことができるから。僕にとって、仕事の意味はそれだけなんだ」
「アンドリュー? あなた、私たちのことをレディとは呼ばずに、ガールと呼ぶつもりだったと思うけど?」
「いや、ビジネスのことを話してるときは、君たちは女性、レディと呼ぶ。個人的なことを話してるときは、君たちはガール。これはビジネスの話、個人的感情の話ではない(
参考)」
「まあ! ゴッドファーザー・マニア!」
「ドニー? 僕が言ってることを、君が僕と同じ気持で聞いてるのか分からなくなってるよ。僕は、自分がどういう人間で、もし僕たちが一緒になったら、どんなことが期待できるかを説明しようとしてるんだ」
「私たちは、もうすでに、あなたがどういう人か知ってるわよ。あなたが物欲的な世界で生きるのは好きじゃないと話してくれたとて、それで私たちがショックを受けるなんて思わないで。私たちも、したいことをしてだけ。それで満足してる。ええ、確かに、私たち、年収15万ドルは稼いでるし、加えて経費も落ちるし、本給以外の特典もあるわ。でも、それは、そういう仕事に就いてるからという理由以外、何もないの。そういう仕事に就いたから、それをしている、とそれだけ」
「なんてこった! 君たち二人で30万ドルも稼いでるのに、僕がディナーの支払いをしたのか。なんて、性差別的世の中なんだ」
「その点は、私たちも変えたいと思ってることのひとつ。…ところで、あのね…?」
「何?」
「私には秘密があるの。ディ・ディと私は、まだすべてをあなたに話してないの。ごめんなさい。でも、まだ、あなたはすべてを聞く心づもりができていないと思うから」
「おい、お願いだよ、ドニー。そういうことを僕にしないでくれ。もし、僕に知られたくないなら、どうしてわざわざ僕に秘密が存在することを話すんだい? 君たち娘ども(chicks)は本当に変だよ!」
「まあ、私たち、最初はレディで、次にガールになって、今度はチック? あなたの目には、私たち、どんどん品位を落としているみたいね。でも、ごめんなさい、アンドリュー。私は話さないわ。それを聞き出すためには私に拷問をかけなければいけないかもね」
私は、多分、こう言いながら目ではちょっと笑っていたかもしれない。
でも、その時にアンドリューの瞳に浮かんだ表情は、本当にお金では変えない。あの表情をカメラに収められてたら、『コスモポリタン』の表紙として売ることができただろう。野性的そのもの。純粋な性的欲望。ワイルドな欲求。ほんのちょっと前まで、お金のことを気にかけた若者だったのに、突然、セックスに飢えた、情熱的で、欲望に溢れたオスの動物に変身してしまった。私は、脚の間に愛液が溢れてくるのを感じた。
アンドリューは立ち上がり、私を引き上げて立たせた。二人抱擁しキスをした。情熱と欲望に溢れたキス。そして、突然、私は脚をすくい上げられた。彼は私を抱えて寝室に向かった。