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A smart girl 「賢い娘」 

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A smart girl 「賢い娘」

「こんな感じ?」

「ああ、完璧だよ、アレックス。これ、すごいことになるぜ」

「じゃあ、どこにも投稿なんかはしないんだよね? この髪に、お化粧に、その他いろいろだろ? ボク、これじゃあ……分かるだろ……ちょっと女の子っぽく見えちゃう」

「お前が? 女の子? バカいうなよ」

「うん。そうだよね? でも、こういう格好しなくても、最近、職場で変な目で見られてるんだ。それに、スターバックスでボクにナンパしてきた男のことは話したよね?」

「変なヤツはどこにでもいるさ。そんなのお世辞として受け取っておけばいいんだよ。そうじゃないと、お前、一生、世の中に適合してないと思いながら生きて行かなくちゃいけなくなるぜ?」

「ボクはちゃんと適合してるよ。キミだって分かってるじゃないか。ボクは高校まで学校では一番人気があったんだ。大学でも、男子学生クラブの会長だったんだ」

「でも、あの事件で追い出されるまでだろ?」

「あれはまったくの誤解だったんだ。なのに、誰も信じてくれなかった。みんなが見たのは、ボクがあの宣誓者のちんぽを咥えてるところだけだったからかなあ。ボクはただ彼に試練をあたえてただけなのに……。なのに、みんなボクの言うことを聞こうともしなかった。頭が固い人間っているんだよね」

「別に俺に言って聞かさなくてもいいよ。俺は、あれが男同士の絆を固めてるところだったって知ってるから」

「その通り。そんなわけでボクたち親友なんだよね、ロビー。キミなら分かってくれる。ボクたち一緒にあれこれヤルからって、ボクたちがゲイってことにはならないんだよ。どっちかっと言ったら、ボクたち超がつくストレートだよ。だって、ボクたちのセクシュアリティについて周りが何て言ってるかなんか気にせずに、ボクたち、ちょっとしたお楽しみができるんだから。ボクがいつも言ってるように……」

「お前がそういうふうに興奮してしゃべるところ、俺、好きだぜ。でも、お願いだ、この写真、最後まで撮らせてくれる? 仕上げたいんだよ」

「あっ。そうだね、いいよ。で、それ、何のためって言ったっけ? もう一度、教えてくれる?」

「ただの写真集めだよ。キミは何も心配することないよ」

「ああ。あのビデオと同じく?」

「そうあれと同じ。キミは頭がいいなあ。だから俺はキミが大好きなんだ」

「ボクも大好きだよ。それに……さっきからお楽しみの話をしてきたからかなあ、ちょっとボク、……その気になってきちゃったんだ。ねえ……後でいいからさあ……また別のビデオ……撮れないかなあ? ふたりで……」

「お前のために? いいよ、いいよ! なんでも! 喜んで!」

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[2020/02/20] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

A housewife's job 「主婦の仕事」 

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A housewife's job 「主婦の仕事」

「ああ、すごくキツイな」とロイは言った。「高校時代に、お前がこうだと知っていたら、俺たち、この5年間ずっとこれをやってこれたのにな」

リーナは、ロイにアヌスを突かれながら、小さな喘ぎ声の他は何も言わなかった。ただ、自分がこの状況にいることになってしまったいきさつばかりが何度も頭に浮かんできて、仕方なかった。もちろん、事実は知っている。いろんな出来事の流れは簡単に追える。でも、それ以上の深いことは、ぼんやりとしか思い出せない。かつてはリオという名で、地元の大将格だった自分が、どうして、こんなに容易く女性化に屈してしまったのか? こんなにも自分から進んで? こんなにも完全に?

そもそもの始まりは、卒業してすぐに、学校時代の恋人と結婚した時だった。マンディは完璧な彼女だった。ブロンドの髪、青い瞳、そして、そのためになら死んでもいいと思えるようなプロポーション。しかも頭も良い。リオと違って彼女は大学合格が確実だった。一方、リオは、高校のフットボール部のスター選手であり地元の誇りだった。しかし、どう頑張っても、将来は父親の自動車修理工場でレンチを回すことにしかならないことも知っていた。稼ぎは悪くない。けれど、自分の新妻が大学で学ぶ心理学やら何やら彼の理解を超えたことについて将来の希望を語るのを聞いているうち、リオは少し嫉妬を感じずにはいられなかった。その後、彼女が大学で新しい人々と出会い、特に男子学生の友人ができるようになると、リオの嫉妬心は最高潮に達した。マンディの新しい友人の中に、彼が高校時代に頻繁にイジメていたロイが含まれていると知ったとき、リオの我慢は限界に達した。

もちろんマンディは、ロイとは何でもないと言って彼を安心させようとした。実際、マンディはリオしか愛していなかったのである。だが、リオはそうは思わなかった。そして、ロイがかつての引っ込み思案でガリガリのキモイ男から、堂々とした体格の、ハンサムで、しかも大学生としての知性を持った立派な青年に変身するにつれて、リオの疑念は確信に近づいていく。4年間という短い学生時代であれ、少しばかりの自信を獲得しながら、せっせとジム通いに励むことで、ひとりの男にこれだけの変化をもたらせるとは、驚きだった。そして、リオの方は、自分でも情けないと思いつつも、ロイとは逆方向に変化していたのである。

高校時代のスポーツ活動で育てあげた筋肉は、ビール片手にテレビの前に座る時間が増えるのに合わせて、見事に溶け去っていった。そして筋肉がなくなるのに伴い、彼の自信も消え、さらには性的能力までも衰えていった。もちろん、マンディはそれに気づいていた。どうして気づかないわけがあろうか? 彼女の夫は今や勃起することすらまれになっていたのである。当然、彼の寝室での能力低下はふたりの夫婦関係にも悪影響を及ぼした。

ケンカ。口論。双方とも別れる、別れないと言い出し、離婚の危機が訪れる。しかし、ふたりは別れず、結婚生活にしがみついた。やがてマンディは大学を卒業し、地元の調査会社に就職する。だが、ロイの就職先も同じ会社だった。その事実を知ったとき、リオの男性としてのプライドが粉々に砕け散った。マンディの給与はリオの稼ぎをはるかにしのぎ、彼女の方が世帯の主たる生計主に変わった。マンディとの夫婦関係の維持に貢献する部分が事実上ゼロになったと知ったリオは、この鬱屈した状態から這い上がる機会が消え去ったと悟ったのである。

リオは自分の殻に引き籠った。何にも関心を示さなくなった。ただ、仕事に行き、帰宅し、テレビを見て、眠る。それを来る日も来る日も繰り返す生活。一方のマンディは、ますますロイと親密になっていった。そのうち、マンディにとって夫と過ごす時間より、ロイと一緒に過ごす時間の方がはるかに多くなっていった。一緒にランチを食べ、一緒に仕事をする。仕事帰りに、一緒に飲みに出ることも多かった。さらには、出張の時に一緒になることもかなりの回数に登る。

そんな妻の変化をリオは嫌悪した。だが、それ以上にリオが嫌悪したのは自分自身だった。ロイのような男に嫉妬心を抱くなど、自分にはふさわしくないことだ、と。彼には、高校時代のロイのイメージから抜け出せずにいたのである。しかしながら、マンディが究極の選択を突きつけてきた時、リオもようやく自分よりロイが優れていることを理解した。彼女は、オープンな夫婦関係になるか、さもなければ、家を出て行くと言ったのである。リオは、どちらも拒否したかった。だが、自分は上手に妻を喜ばすことができない。彼はかすれ声でオープンな関係になることに同意したが、心の中、自分なら、いくらでもその気になってる女を見つけられると思っていた。その後、リオとマンディは、それぞれ別々に行動するようになった。

リオにとっては意外だったが、マンディはロイの元に直行することはしなかった。その代わり、彼女は、試験的に女性を相手にし始めたのである。彼女は、女性だと自分の求めることに完璧に答えてくれると何度も話した。そして、そう語るのと同じくらい頻繁に、リオが女性たちから「大事なことをひとつも学ばない」と愚痴を言った。一方のリオは、目論見に反して、セックスパートナーとなる相手を見つける試みにことごとく失敗していた。彼は、かつてのような魅力的な男性ではなくなっていたのである。少し基準を下げれば、運よく相手を見つけられたかもしれないが、リオは一応のプライドを持っていたのだ。彼は相手を見つけようと、しょっちゅう街に出るようになっていた。

だが、突然、その生活が終わる。マンディが、何もかもうんざりしたと言ったのである。それと同時に、彼女は、もしふたりの夫婦生活を持続させるのなら、いくつか変えたいことがあると言った。リオは、その頃までずっと性的なことに飢え続けていたこともあり、マンディが求めることに何でも従うと同意した。

最初は、特に大変なことは何もなかった。熱心な前戯を求められることくらい。もともとリオはセックスが上手くないこともあり、それは予想外ではなかった。それに加えて、外見に多少、注文をつけられるようになった。ダイエットをすることや、エクササイズをすること。極端な要望はなかった。これによって夫婦関係が見違えるように改善したこともあり、リオにとっては妻の要望に沿うことは小さな代償にすぎないと思われた。

時が経ち、それからあまり時間がすぎないうちに、ふたりの間の関係が変わり始めた。いや、むしろ、リオが変わり始めたと言った方が良いかもしれない。最初は、ほとんど気づかなかった。ちょっと肌が柔らかくなったとか、上半身にすこしたるみが出てきたとか、腰やお尻が少し膨らんできたとか、それくらいだった。リオはほとんど気にしなかった。むしろその変化をマンディがとても喜んでいる様子で、なおさら気にしなかった。特に、リオの乳首がどんどん敏感になってきてるのがマンディには嬉しいらしい。リオ自身も、敏感な乳首を喜んでいた。

しかしながら、その後、本格的な変化が始まる。マンディは、リオに修理工場の仕事を辞めるべきだと言ったのである。その仕事には将来性がないと、その仕事を続けるより、もっといいことがあると言う。彼女は、素早く付け加えて、彼の稼ぎはほとんど問題にならないとも指摘した。妻を喜ばせたい一心のリオは、それにも同意した。同意した理由として、マンディが求めることに従う必要があったということもあるが、もっと大きな理由として、彼は元々、少し怠惰なところがあり、家で一日中ごろごろしてるのが魅力的に感じたからでもあった。

しばらくの間、その生活は素晴らしかった。本当に素晴らしかった。リオは、人生でこの時ほどリラックスした時間を過ごしたことはないと思った。だが、その後、事態は変化を迎える。

マンディに完全に依存することは、何らかの期待なしには、提案されないことである。彼女はリオに家の掃除、夕食の準備、そしてリオ自身をこぎれいに保つことを要求した。最初のふたつはそんなに難しいことではない。料理について言えば、楽しいと思うほどだった。だが、最後の要求は、彼に大変な課題を押しつけるべく考えられた要求のように思われた。

マンディは楽しそうに彼に衣類を買ってくるが、そのすべてがリオの持ってる服と比べて、かなり女性的な服ばかりなのである。とは言え、それを着ないと拒絶することはできない。一度、拒絶しようとしたが、マンディは彼を家から追い出すと脅かしたのである。彼は仕方なく、そういう服を着た。そして、いつの間にか、彼は常時、マンディが「中性的」衣服と呼んでいる服を着るようになっていた。彼にとっては女性服にしか見えない服ばかりだった。

リオがマンディの「専業主婦」になって半年が過ぎたころ、マンディは新たな要求を突きつけてきた。整形手術である。もちろん、彼女は「要求を突きつける」という形は取らなかった。家事をしてくれるリオへのクリスマスプレゼントという形を取っての要求であった。リオは断ることはできないのを知っていた。

リオは、手術が終わり、自分の姿を見て、どうして自分はここまで落ちるのを許してしまったのだろうと思わざるを得なかった。自分の乳房……そう、乳房そのものが……マンディのよりも大きい乳房。まさに、「専業主婦」の名前にふさわしい姿になってしまった。顔も女性的にされ、体つきも変えられ、大きな乳房もつけられた。いずれも見事な仕事だった。

しばらくの間、彼は落ち込んだ。裏切られた気分だった。怒り。自己嫌悪。友人でも警察でも、誰でもいい、家を飛び出し、話しを聞いてくれる人に自分の状態を叫びたかった。でも、どこに行けばいいのだろう? すでに友だちは誰もいない。手術についても、自分で同意の署名をした以上、警察が何かしてくれるはずがない。無理。自分は罠に嵌められたのか? ちなみに、マンディは、新しい彼を愛してくれていた。彼というより、彼女と言うべきか。マンディは自分のことをリオの夫と呼んでいるのだから。マンディは彼をリーナという名前で呼んでいる。それもリオは受け入れる他なかった。

それから1年ほど、ふたりの生活は一定のパターンに落ち着いていた。リーナは、深く悩まない限りは、現状にほぼ満足していた。マンディはいっそう明るくなっていて、中流の上クラスの生活を満喫している。良い生活と言えた。少なくともマンディはそう言っている。だが、そんなある日、マンディはふたりの生活にロイも加えるつもりだと言い出した。

リーナは反対した。できる限りの強さで反対した。理解できなかった。自分はマンディとふたりで幸せに暮らしたいと思ってるだけなのに、どうして彼女は? リーナは泣きながら、マンディがいてくれれば、それだけで幸せなのにと訴えた。だが、マンディは同意せず、断固として条件を言い張った。ロイをふたりの生活に加えること。さもなければ離婚すると。それだけのことだと。リーナは選択肢がないことを悟り、同意した。嫌々ながら同意した。

ロイが移り住んできたが、彼が完璧なほど思慮深い人間であるのを知り、リーナは驚いた。彼はマンディとリーナの関係に割り込んでくることはなかった。確かに、彼はマンディと肉体交渉をしてきている。何年も前からそうしてきている。リーナはそれを知っていた。だが、この家に越してきた彼は、一線を越えてリーナの気分を害するような振る舞いをすることは一度もなかった。さらには、マンディと一緒の寝室にリーナを誘うことすらあった。それについては、リーナはいつも断っていたが。

それから8ヶ月が経った。マンディは家から離れてすごす時間が増えていた。彼女はいつも出張だと言っていたけれど、それ以上、詳しいことは何も言わない。その結果、家にはリーナとロイのふたりだけになることが多くなった。リーナもロイも、それぞれ慰安を得る相手がいない状態が続いた。

そんな状態でいたある日、リーナは酔った勢いでまちがいを冒してしまった。酔った勢いで、彼の高校時代のイジメ対象であるロイにフェラチオをしてしまったのである。そう言われたからでもなく、自分から心に決めてしたわけでもなかった。ただ、自然にそうしてしまったのであった。

だがリーナ自身、意外に感じたことだったが、リーナもロイも、それを楽しんだのだった。それから間もなく、その行為はマンディが家を離れている時には普通に行われる行為になった。

そしてある日、マンディがロイとリーナに宣言した。彼女はフランスに引っ越すと、もうロイとリーナとは離れると。リーナはマンディに思いとどまるよう懇願した。ロイも同じことを言ったが、リーナほど心は籠っていなかった。彼はこうなることを知っていたかのようだった。実際、彼は知っていたのだろう。

マンディがフランスに発ってから1週間が過ぎた。リーナはその時になってようやく、ロイとふたりっきりになったことを受け入れた。もはや、行為をフェラチオで終わらせる理由はなくなっていた。

リーナはロイに自分を与えることに決めた。それ以外にすることがあるだろうか? 自分には仕事をするスキルがない。友人もいない。自分に何か期待する家族もいない。自分はロイに依存することしかできないのだ。そして、ご主人様を気持ちよくさせること以外に、専業主婦のすべき大切な仕事はないなのだから。

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[2020/02/19] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

An arrangement 「協定」 

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An arrangement 「協定」

サムは呆然とドア先に突っ立った。口をあんぐりと開けたまま、部屋の中にいる人物を見つめた。永遠と思えるような時間が経った気がしたが、実際は数秒間だったかもしれない。ようやく、彼はその人物から目をそらした。彼は恥ずかしさに頬を赤くしていた。

「ちょっと気まずかったみたいね」と女性の穏やかな声がした。「こんな形であなたにカミングアウトするとは思っていなかったわ」

「す、すまなかった。あなたがここにいるとは知らなかったもので。ケリーの部屋から声が聞こえて、てっきり僕は……」

「あたしをケリーだと思った、と」と彼女は答えた。「ところで、こっちを向いてもいいのよ。あたしは気にしないから」

嫌々ながらサムは前を向いた。いや、嫌々ではなくワクワクしながらだったろうか? 違う、決してそんなことはない。だが、彼が前を向いたことには変わりがない。そして、彼はその人物に目をくぎ付けになった。人物? いや目の前に立っているのは女性だ。長い髪と小ぶりの張りのある乳房をした美しい女性だった。その姿は彼の妹にも、ガールフレンドにも似ていた。

しかし、彼のガールフレンドとは違い、パンティひとつの彼女の股間には隆起があった。それに気づきサムの頭は困惑の泥沼に嵌った。性的な興奮に好奇心が混ざり、その好奇心に拒絶の気持ちが加わってくる。あるいは怒り? 多分、羞恥心かも? 感情を整理することすらできなかった。彼女にじっと見つめられているので、なおさら落ち着けない。いや、見つめているのは自分の方か? サムは何をどうしてよいかも分からなかった。

「ちょ、ちょっと……分からない」とサムは手で髪を掻いた。「本当に……何が何だか……」

ジャッキーは微笑んだ。「何が分からないの?……あたしはトランスジェンダーなの。ずっと前から、そう。ただ、みんなには隠し続けてきただけ」

「どうして?」 とサムは思わず口にした。

「本気で言ってるの? あたしの両親を知ってるわよね? それに完璧主義者のブリタニーが認めてくれるわけない。あなたの彼女にはたくさん良い面があるかもしれないけど、進歩的という点は欠けている。ブリタニーは自分の弟がキモイやつと知って、あたしを憎んでるの。ましてや、自分の弟が変態妹だと知ったら、もっと憎むでしょうね。でも、あなたは……あなたならあたしを受け入れてくれるのは分かっていた。ずっと前から、あなたがあたしのことを見ているのを知っていた。あなたがいつもあたしに優しくしてくれているのに気づいていた。そして、あなたとふたりなら、あたしの秘密を守ってくれると、ふたりで何かできると確信しているの」

「ふたりで何かする? 何を……いったい何の話をしているんだ?」

「しーっ!」とジャッキーは指を1本、唇の前に立てながら近づいた。「あたしなら、ブリタニーが絶対にしないようなことをするわ。で、あなたはそのセクシーな口を閉じて黙っているだけでいいの。そうしてくれる?」 彼女は手を下に伸ばし、ショートパンツの上からサムの股間を撫で始めた。「あっ、黙っててくれそうね。確実に黙っててくれそう」

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Fine print 「契約細目」 

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Fine print 「契約細目」
「ああ、そうだな。楽しかったよ。楽しめるとは思ってなかったんだが、俺が間違ってた。楽しかったかい、ララ?」

「子供みたいにはしゃぐのやめてよ。あたしは、ここに着いたとき、あなたがすごくビクビクしてたのが面白くって笑えたわ」

「まあ、ちょっと、お前にいきなりこの話を出された感じだったからな。ここがどんなタイプのリゾートかを知っていたら、絶対来ようとは思わなかったな。というか、真剣にはね? そもそも、お前がどうしてここを見つけたかも分からないんだが。ここの人たちに説明されたように現実に作用したのを知って、いまだにショックを受けてるもん」

「前にも言ったと思うわよ。職場の女の子たちが話していたって。それはただのラテックスと……」

「ただのラテックスどころじゃないよ。すべてを感じることができるんだから」

「確かに、ただのラテックスと言うのは簡単にしすぎだわね。進化した人工皮膚で神経に接続してて、そのために……」

「俺もオリエンテーションにいたよ。同じことを全部聞いてる。クレージーだなと思ったのは、あんなに急速に俺が女の子の姿でいることに慣れたことだよ。何て言うか、家に戻ったとき、俺、どんな感じになるんだろうな」

「どういうこと?」

「ただ、この格好で1ヶ月暮らしたわけだろ? これを脱いだらちょっと変に感じるんじゃないかなって」

「まだ、何を言ってるか分からないわ」

「本気で言ってる? 処理を受けた後のことだよ。俺がお前の夫に戻ったときのこと。家に戻って、元の生活に戻ったときのこと。みんな、俺たちがここで何をしたか知らないのはありがたいな」

「それは帰れば分かるわ。あなたが四つん這いになってお尻におちんちんを突っ込まれている姿、多分忘れられないと思う。しかも、ただのストラップオンじゃなかったもの。本物の生きたおちんちん。しかも巨大なヤツ。でも、今だに、あなたが何のことを話しているのか、ちょっと分からないんだけど。家に帰っても基本的に何も変わらないわよ?」

「お前、わざと分からないふりを……」

「あ、分かった。あなた、その人口皮膚をはずしてもらえると思ってるのね? ああ、そんなバカな。無理よ、あなた。それは少なくとも1年はそのまま。さっき、オリエンテーションを見ていたって言ったじゃない?」

「い、一年……? いや。そんな……冗談だろ……」

「冗談なんか言ってないわ。神経と皮膚との接続は長時間続くようにできてるの。いま、その接続を切ってしまったら、あなた、残りの人生をズタズタになった神経を抱えてすごすことになるわよ。そうなったら、何であれ感じることができたら、その方が驚きだわ。無理よ、あなた。あなたは、あと1年はあたしの妻として暮らすの。あなたのお友達もみんな新しいあなたを喜んで受け入れてくれるといいわね!」

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Sales pitch 「販促商品」 

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Sales pitch 「販促商品」

「服を脱いだ姿を見たいわねえ。できるかしら?」

「シャーメイン、このお方の言葉、聞いたわね? 服を脱ぎなさい。……そう、それでこそ、いい娘。どうです? 完璧でございません?」

「どうやら、脚の間のあのみっともないモノは残すことにしたようね。どうして?」

「忘れないようにするためです。かつて、シャーメインは……当時はチャールズという名前でしたが……シャーメインはかなりのレディキラーだったんですの。しかも、立派なカラダをしていて。最終的には、それが原因で彼女は私のところに来たわけですが。彼女、相手にしてはいけない男性の娘さんに手を出してしまったのです。で、その男性が気づいて、まあ、ご自分の手で処理することにしたのです。そして、処罰を実行するために私が呼び出されたということで」

「ええ、私も、あなたの趣味についてはとても詳しく聞いてるわ、ジャニス。だからこそ、私はここに来たのよ」

「その件についてですが……この2ヶ月ほど、私のスケジュールはかなり詰まっていまして、そちらさまの計画はちょっとお待ちいただかなくてはいけないかと。対象は確保なされていますか?」

「しっかりと。でも、あなたのサービスを利用するかどうか、まだ決めていないのよ。シャーメインについて、もう少し質問してもいいかしら。彼女、従順なの? 肉体を変えることはできても、心の方が前と同じく言うことを聞かないってよくあるでしょ?」

「彼女は極めて行儀が良いと保証しますわ。もちろん、チャールズはいまだ中にいます。そこが一番面白いところですものね。ですが、彼が知っていた生活は消えている。友だちもいない、家族もいない。成人向けの動画でデビューした後に、友人も家族も彼女を見捨てました。それに加えて、彼女の性的志向にも手を加えたおかげで、今のシャーメインは男性とのセックスが大好きになっています。相手の男性が支配的であればあるほど、彼女にとっては良いみたいで。今はすっかり諦めて、この新しい生活に馴染んでいます」

「実は、私も彼女の出演作を観てきたの。すごく情熱的だわよね。で、これは恒久的なのかしら。だんだん効果が薄れてきたりするのって大嫌いなの、私は」

「そうですよねえ。そうなったら困りますもの。でも、私は、対象への効果は、対象が死ぬまで保証できます。あるいは、そちら様が対象に飽きて手放すまででも」

「それはないでしょうね」

「ということは、お決めになったと?」

「そうすることにするわ。早速、ウチの主人をこちらで引き取って欲しいわ。充分お仕事に満足できるまで、彼を預かってください。必要となるおカネはいくらでも出すので、言ってちょうだい。あのバカにたっぷり思い知らせてやりたいの」

「はい、かしこまりました、ケイン様。しっかりと仕事をさせていただきますわね」

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Weakness 「弱さ」 

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Weakness 「弱さ」

やめたい。やめなければいけない。これからフィアンセと築き上げようとしている人生のためにも、この行いが必ず引き起こす悲しみを防ぐためにも、全部、捨てなくてはいけない。服も、ウイッグも、化粧品も全部。いつの日か、みんなにバレてしまい、私は破滅してしまうだろう。その瞬間、今のこの生活が終わりを告げる。そして、そうなってしまった場合、誰を責められるだろう? 他ならぬ自分だけだ。

それでもやめられない。何回、やめようと頑張ったか数えきれない。毎回、元に戻ってしまう。秘密の生活での可愛い衣服を捨てては、また元に戻してしまうのを何度も繰り返してきた。ベッドに横たわり、もうあれには手を触れないと何度も誓ってきた。そして、それに失敗するたび、涙で枕を濡らしてきた。もう今となっては、お馴染みのサイクルになっている。お馴染みではあるけど、ひどく落ち込むサイクル。

セラピーにも通ってる。セラピストには、トランスジェンダーかもしれないと言われた。それは間違いだ。そんはずがない。私は女性の服を着るのが好きなだけ。10歳の時、姉のパンティが間違って私の衣装入れに入れられているのを見つけた。その時からの嗜好。もし、今あの時に戻れたなら、幼い自分の手からそれをひったくって、貧血で顔が青くなるまで、その子に幼い叫び続けただろう。その道を進むと、悲しみのほか何もないんだよと。幼い私は、私自身には得られなかったメッセージを得るかもしれない。そして、自分の人生を築き、立派な男性になるかもしれない。

でもそれは仮想の話。実際の私はあのパンティを履いてしまった。そして、あの感覚……ハラハラする気持ち、ぴったりと包まれる気持ち、理解できない妙な興奮、それらに全身が洗われてしまった。今でも、ドレスアップするたび同じ感覚を味わっている。今でも、ホテルの鏡の前に立ち、お気に入りのパンティを2本の指で目の前に広げると、同じ感覚がふつふつと湧き上がってくる。体毛を剃り、お化粧をし、眉を揃え、そして完璧になる。私は決して男とバレることがない。そのことが憎らしい。その一方で、私はそんな自分を恥じている。そのことも憎らしい。ふたつの心がいつも戦い、いつも片方が圧倒的な勝利を収めてしまう。とは言え、心の中には、男らしさもまだかろうじてしがみついている。そして、男として生きることこそ、自分がずっと望んでいることだと言い続けている。

皮肉なのは、フィアンセが私のことを理解してくれそうだということ。彼女はそういう人。いつも支援してくれるし、進歩的な考え方をしてるし、私が彼女になって欲しいと求める姿に喜んでなろうとしてくれている。でも、私は嘘をついている……まさにその点で落ち込んでしまう。今日は仕事で出張していることになっているのだ。いつもの、女性に変身しての旅行で別の都市に来ていることにはなっていないのだ。何度もしてきたこの旅行では、いつも最後には誰か知らない男性とベッドを共にしてきた。私のような、大きな余分物を持ってる女性を好む男性を見つけるのは、全然難しいことではない。でも、そういう男性たちはみんな同じ罪悪感を目に浮かべている。私自身と同じ罪悪感を。

今週ずっと、落ち込みと戦ってすごすことになるだろう。ああ、それなのに、私はいまだ身支度を続けている。いまだ遊びに出かけるつもりでいる。私は今夜、お酒を飲み、ドラッグをし、夜が明けるまで、この罪悪感を片隅に隠し続けるだろう。でも、朝になれば、この罪悪感は必ず戻ってくる。そして荷物をまとめ、家に戻ると、決まってもう二度としないと誓うのだ。自分の人生はとても大切すぎて、こんなつまらないフェチのために放り投げることはできないのだと。

でも1日か2日も経たないうちに、次の旅行に出かける計画を始めてしまう。これは、邪悪なサイクルで、どうしてもこのサイクルから逃れることができない。何もかも、心が弱く、何年も前のあの日、あのパンティを履いてしまったせい。心が弱くて、一回だけのこととして、サッパリと縁を切ることができなかったせい。そして、今も心が弱く、やめることができないせい。強い力があればいいのにと、こんなに願っているのに。


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A knight in shining armor 「光り輝く鎧をまとう騎士」 

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Knight in shining armor 「光り輝く鎧をまとう騎士」

もっと賢かったら。もっと分別があったら。そうしたら、脱出できる時に脱出していたのに。何度も悔やんだが、いまだにここから逃れることができない。逃れたいとすら思っていない。彼に命じられたことをするだけ。問い返すことすらしない。そして、最悪な部分は、自分がこうなって当然な人間であること。その通りだと思う。自分からここに来て、自分からここに留まっている。私は他に生きる道がなかった敗北者。本能が逃げろ、遠くに逃げろと言ってるのにも関わらず、私は彼に従って、求められることをしてきた。彼が私をこうしたのもあるけど、それと同じくらい自分から進んでこうなってきた。

振り返ると、これは避けられないことだったと思う。細かい点は違うかもしれないけど、私が彼に隷属することになるという全体的な流れは、ほぼ確実だったのだ。私は背が低く、小柄で、愛らしく、女子と思われることが多かった。子供時代の大半を、この不幸な遺伝的特質の結果を受け入れてすごしてきた。絶え間ないイジメ。男性としての私をバカにする女の子たち。細っていく自尊心。望む男性に育たない私にあからさまに落胆する父親。わずかであれ誇りをもって高校を卒業できただけでも奇跡といえた。でも、私は、大学に進んだら、事態が変わるだろうと自分を納得させていた。誰も私をバカにする人はいなくなるだろうと。女の子たちも私を尊重してくれるだろうと。どうやってかは分からないけど、父も私を誇りに思ってくれるようになるだろうと。

そのような素朴すぎる期待が持続したのは1週間だけだった。ルームメイトに、私と彼のどっちが仕切ってるのかをはっきりと、実にはっきりと教え込まれた時までだった。正直、あの口論が何についてだったのか覚えていない。ベッドの件? スペースの件? 彼が私のパソコンを使った件? 分からない。でも、結局は、彼は私に威張り散らすようになり、私はそのセメスターの最後まで、彼の横暴を耐え続けなければならなかった。

私は落ち込んだ。いつも暗く沈んだ状態になっていた。その苦痛を永遠に終わらせる方法はないかと考えていた。毎夜、ベッドに横たわり、ルームメイトに復讐する方法を夢見ていた。自分が、世の中から最低のヤツをひとりずつ駆逐するダークヒーローになった姿を想像した。だけど、それは妄想にすぎない。妄想とは知りつつ、いつか銃を手に入れ、ルームメイトが眠っているところを撃ち殺すのを夢見ていた。

そんな時、第2セメスターが始まる直前、ある機会が現れた。貸し部屋の話。しかも部屋代が無料という。ひとつだけ条件があって、部屋を借りる者はいくらか家事をしなければならないということ。私は直ちに応募したが、その家が文字通りの大邸宅だと知って驚いた。しかも家主は、30代半ばの、背が高くハンサムな男性だった。さらに驚いたことに、その家主は私と気が合ったらしい。私は1週間もしないうちに引っ越した。

しばらくの間、素晴らしい日々が続いた。家事は、そんなに大変ではなかったし、家は宮殿と言ってもよかった。さらにもっと驚いたのは、家主のデビンが、まさに男性の理想像のような人だったということ。親切で、思慮深く、同時に人懐っこい。まさに大家として望む人物像そのもののような人だった。私は、この邸宅での生活が終わってしまうことを恐れるあまり、家事にかかる時間が徐々に増え始めていたことも、彼が少しずつ私の容姿を管理し、私を変え始めていたことに気づかなかった。

彼はその企みを隠していた。私に優しく接したり、贈り物をしてくれたりして、私が気づかないようにしていた。そして私も何の疑念も抱かず受け入れていた。確かに、彼が買ってくれた服はちょっと女の子っぽかったし、美容院へしょっちゅう優待してくれたのも、何か変だなとは思っていた。特に、美容院のセットの中に全身脱毛とかプロのメーキャップも含まれるようになった時には、確かに変な感じがした。だけど、学生寮に戻って、あんなルームメイトと一緒になるのを思えば、あえて断ろうという気にはならなかったのだった。ついには、彼にフルタイムのメイドになってくれないかと頼まれた時も、私はほとんど考えずに、大学に退学届けを提出したのだった。

その後、事態は少し曖昧模糊になっていった。いつの間にか、あからさまに女性用の服を着始めているのに気づき、変だと思ったのは知っている。ドレス、ランジェリー、ハイヒールが私の衣装入れの大半を占めるようになっていた。それには気づいていたけど、あえて気にしないようにしていた。というか、元の苦痛と屈辱の日々に戻ることを避けていただけと言ってもいい。デビンは優しくしてくれているよね? 私は彼を救い主と思い始めていた。そして彼も私のことを自分のプリンセスと見るようになっていた。プリンセスたるもの、助けてくれた光り輝く鎧をまとう騎士に対して、どんなことをすべきなのか? そう、彼が望むことをどんなことでも。

そして私はその通りにした。ホルモン摂取と整形手術により、男性だった頃の生活の記憶は心の奥底へと隠れていった。私の男性性は、心の中から完全に消えたわけではないけど、ほとんど顔を出さなくなったし、私に逃げろと叫んでも、ほとんどその声は私に届かなくなっていた。特に、私が雇われたメイドから彼のガールフレンドへと立場が変わるのにつれて、そんな心の奥の存在は、簡単に無視できるように変わっていった。彼は私を素敵なドレスやジュエリーで飾り、私はそのお返しに彼に身も心も捧げたのだった。

でも、真実は知っている。私は女ではない。ゲイでもない。こんなプリンセスの生活をするように生まれてきたわけでもない。でも、それは知ってても、自分は男性でいたらこの生活はできなかったのは確かというのは揺るがない。こうなるしかなかった。そして、私はデビンが与えてくれる生活を続けるために必要なことを何でもするつもりでいる。

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Rescue 「救出」 

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Rescue 「救出」

「バカなことを言うな、ミグエル」とアダムは怒鳴った。両腕を組み、武器商人を睨み付ける。「俺がここに来た理由ははっきり分かってるだろう。俺の兄がどこにいるか言うんだ。そうすれば、お前がやってることには口を出さない。銃なんか、俺はどうでもいい。密輸も興味がない。俺が求めてるのは兄だけだ。この野郎、今すぐ、兄を連れてこい」

ミグエルはにんまりとした。これほど自信に溢れた表情はないと言える表情だった。だが、アダムには何の意味もない。ベテランの麻薬捜査官である彼は、ミグエル・エストラーダのような犯罪者にどう対処してよいか熟知している。犯罪カルテルとも対決して、生き延びてきたアダムだ。ちんけな銃密輸ギャングなどに怖気づくことはない。これほど危険な状況であっても、兄のジェシーが2年前から行方不明になっており、追跡した結果、この武器商人につながった以上、ここで怖気づくわけにはいかない。

「何か飲み物はどうだね?」とミグエルは尋ねた。オールバックの髪で、コミックの悪者みたいな顎ヒゲを生やしたヒスパニック系の男。彼はパチンと手を鳴らし、母語で何か言葉を発した。アダムは顔をけわしくしたが、何も言わなかった。ミグエルが何を言ったのか分かるまでは、何も言わない。

何秒か後、裸の女が腰を振りながら部屋に入ってきた。……いや、違う。女ではない。いかに弱小とは言え、脚の間にぶら下がるモノが示している。極度に縮小した男性器を別にすれば、彼女はゴージャスと言える女だった。ブロンド髪、はち切れんばかりの大きな乳房、成人雑誌の中開きのために取っておかれるタイプの曲線美。間違いなく、彼女はたいていの男たちが夢見るタイプの女だ。だがアダムは彼女を無視した。この女はショーウインドウの飾り物だ。権力の印。それ以上の意味はない。重要なのはミグエルだ。

「バニー? 手間をかけてすまないが、私のお客に何か飲み物を出してくれるかな? バーボン、だったかな? コビングトン捜査官」

「バカ野郎、お前の酒など飲まねえ。俺が欲しいのは……」

「お兄さん、だよね」とミグエルは遮るように言い、ブロンド女へ手を向けた。「そう言っていたはず。まあ……私は、当局に協力しないと言った覚えはないのだがねえ……」

「何をお前は……」

「君のお兄さんだよ」とミグエルはいっそう嬉しそうな笑顔になった。「ちょっと形を変えてしまったのは認めよう。だが、一番いい形に変わったと思わないかね? 君も同意すると思うんだが。あんなガリガリの男が、実に美しい姿で開花した。本当に愛らしいと私は思う。実に愛らしい」

アダムは横の女性に目を向けた。じっと見つめる。そしてようやく、ミグエルが仄めかしたことが腑に落ちる。「う、嘘だ……」と彼はつぶやいた。

ミグエルはアハハと笑いながら立ち上がった。「1ヶ月後か2ヶ月後あたりに、本当にウソだったらよかったのにと思うでしょうな。その後は、君も態度が変わり始める。このバニーのように。白状してしまいますとね、私は美しいモノについてペアを所有するのが大好きなんですよ。特に、そのペアが、私に歯向かおうとする愚か者への警告としても使えるとなると、いっそう目がなくなる」

アダムは、この危険な状況について熟考する前に、行動に移し、脚を広げ、政府支給のピストルに手を掛けた。だが、銃をホルスターから出す前に、大きな手が伸びてきて銃を奪われ、床に押し倒されるのを感じたのだった。ミグエルのボディガードから逃れようと、唸り、もがくものの、その男はNFLのラインマンのような体格であった。いくらもがいても無意味な抵抗であり、何秒もしないうちに、アダムは動かなくなった。

ミグエルは、床に押さえつけられたアダムの横に立ち、見下ろした。「おやおや、お前を屈服させるのはなかなかの楽しみになりそうだ。実に楽しみだよ」


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A changing marriage 「変わる夫婦関係」 

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A changing marriage 「変わる夫婦関係」

「準備オーケーだよ。この新しいリングを買ったんだ。これがあれば、充分長く勃起してられると思うよ」

「あたし、その気分になってないの」

「ええ? 何言ってるの? ボクの問題を解決できると思ってこれを特別に買ったのに、今になって、したくないって……」

「あたしは、その気分じゃないって言ったの。その件に触れないでおいてくれる? 口論したくないのよ」

「また、ボクが太ったことについてだよね? 病院に行ったら、お医者さんにホルモンバランスの問題にすぎないって言われたって話したよね? そのための薬も飲んでるから、2週間くらいで直るはずだって」

「太った?……ええ、まあ……あたしたち、そういうふうに言ってたけど」

「他に何て言うの? それに、ボクは、キミがちょっと体重が増えても、バカにしたりしたことないよね? 太ってもいつも通りにボクはキミを愛してる。なのに、立場が変わったら、キミはまるで、世界が……それにボクたちの夫婦関係が……終わりに差し掛かってるように振る舞ってる。それってまるで……」

「太ったとかじゃないわよ、トミー! もっと言えば、あなた、この半年で体重を減らしてるわ。そのかわりに胸が大きくなっているじゃないの! 今はあたしの胸より大きくなっている。あたしよりずっと大きく! 何が起きてるか、喜んで話したい人間がどうしてあたしだけなのか分からないけど、でも……でも、あたし、気が狂ったような気分だわ。あなたは、もう、そんな体になってしまったし、それに……あなたのアレが、もう、ほとんど役立たずになってしまったばかりか、あなたは髪を伸ばして、お化粧までし始めている! あたしたちが公けの場所に出ると、会う人みんな、あたしたちのことをレズビアンのカップルと思ってるわよ!」

「また、その話? もう、キミってすごく支配的だよね。どんなに頑張っても、ボクはキミにとって満足のいく夫になれっこないんじゃない? 最初は、体重のこと。次は髪の毛のこと。古臭い男女イメージだよね? どうでもいいけど。そしてキミは今度はボクのお化粧のことに文句をつけてる。次は、服装についてもボクをコントロールするんだろうな。それとも、人付き合いについてかな? 誰だれとは付き合ってもいいけど、誰だれとはダメとかって。なんだか、キミは、ボクの人生のありとあらゆる細かい点についてまで支配しない限り、幸せになれないと思ってるように感じるよ」

「そんな……そ、それって、全然、実際の事実と違う。あなた分かってない……」

「事実はどうでも、それが実感なんだよ」

「あたしはただ……ただ、心配してるだけなの。いい? あたし、あなたのことが全然分からなくなってる感じなのよ」

「単に、ボクがキミの抱く夫の姿に合わないからといって、ボクが男らしさを失ったことにはならないんだよ。その点はしっかり覚えておいて欲しいな」

「ど、どこに行こうとしてるの?」

「まずは、着替えをするつもり。それから、出かけるつもり。お友達とダンスをしに行くの。今夜は帰らないから。できれば、明日までには、キミはどうしたいのか考えをまとめておいてくれるといいけど」


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An errant spell 「逸れた呪文」 

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An errant spell 「逸れた呪文」

「ギャビー、どうしてキミが不安になってないのか、ボクには理解できない」 ディランは長い髪に手を走らせながらつぶやいた。彼はわざわざ近くの鏡に目をやることすらしなかった。自分がどんな体になっているか知ってるからである。「ボクは不安でしょうがない。ほら、ここ」

「ただの副作用だわ」とギャビーは答えた。どうでもよいことに応じてるような声だった。「2日もすれば直るから。約束する」

ディランは頭を左右に振って、背中を向けた。体の向きを変えただけで、体のいろんな部分が揺れるのを感じた。特に胸についてるふたつの大きな肉の塊が。ほんの少し動いただけで、ぶるんぶるんと揺れる。これまでギャビーがどうやってこんな不便なモノを胸に抱えて耐えてきたのだろうと、ディランは不思議に思った。そう感じるのは、この時が初めてではなかった。

もちろん、彼はずっと前から乳房のことをこういうふうに思っていたわけではない。彼のガールフレンドであるギャビーがあることをするまでは、彼は乳房を他の男たちが思うのと同じように思って見ていた。大きければ大きいほど良い。そうずっと思っていた。じゃあ、今は? もし、一生、このバカげたふたつの肉の塊を抱えて生きていくことになるとしたら? ずっと前の時点で、より小さくするための整形手術の予約を入れていたことだろう。

一生? それを思っただけで、背筋に冷たいものが走った。もし、ギャビーが間違っていたらどうなるだろう? あの最初の時点で彼女が呪文を唱えたとき、彼女はこの「副作用」があることを予想していなかったのは明らかだ。それに、この変身がいつまで続くか、彼女は知っていたのだろうか? それに、どうしてまだ変身が完了していないのか? それと言うのも、ずっと小さく、役立たずにはなっているものの、いまだ男性の道具が脚の間にぶら下がっているのだ。その一方で、体の他の部分はすべて落ち着く形に落ち着いているようだった。

ディランは横眼でちらりと鏡の中の自分の姿を見た。当然、予想通りの姿が見えたわけだけれど、そこに映る姿が、どこを取っても彼のガールフレンドと瓜二つの双子にしか見えないのを見て驚いてしまう。脚の間に元気なくぶら下がるモノだけが、唯一の違い。ディランはこめかみを擦って溜息をついた。

でも、そもそも、どうして自分はギャビーにあの呪文の実験をさせてしまったのだろう? ふたりの性生活は順調だったではないか? もっと良いものにする必要が本当にあったのだろうか? とはいえ、彼は自分の人生にギャビーのような女性を迎え入れることができて本当に運が良かったと感謝していたし、彼女が求めるならどんなことでも同意したのは間違いなかった。それに加えて、誰かとセックスしながら精神的な絆を共有するのは、とても魅力的なことに思えた。彼は彼女が感じていることを感じることができ、彼女も彼が感じることを感じることができるのだ。というか、あの呪文はそういうふうに効くはずだった。本当にそういうふうに効いてくれれば申し分なかったのに。

あの時、魔女である彼女が例の呪文を唱えるとすぐに、彼は目の前が真っ暗になるような強烈な頭痛に襲われ、1時間ほど気を失った。そして目が覚めると、すでに彼の体は変化を始めていたのだった。続く3週間のうちに、その変化は、かつて男性そのものだった彼の肉体を侵食していき、彼のガールフレンドとほぼ同一の姿へと変えていったのである。タトゥーまでも同じに。

「元に戻す方法を見つけた?」とディランは訊いた。

「ちょっと、まだ。でも見つけるから大丈夫。約束するわ」

「そうしてくれ。もう仕事が溜まってるんだ。それに兄が先週からひっきりなしに電話を寄越してくるんだよ。でも、どうしてキミはキミのお母さんに訊けないのかなあ。キミの魔法は全部、お母さんから教わったんだろう?」

「ママの助けいらないわ。それに、ママに訊いても、単に、度を越したことをやったのよとしか言わないと思うし。ママはずっと前から用心しすぎなの。まるで、あたしが独りで呪文を唱えるたらどうなるか信用できないって感じで。この状態にしたのはあたしなんだから、これの解決もあたしがするわ。だからあたしを信頼して。どうなってるかちゃんと分かってるんだから」

そうあって欲しいとディランは思った。本当に。しかし、今の苦境の元では、少なくともギャビーの母親の見解に同調しない方が難しかった。なんだかんだ言っても、完全に訓練を積んだ魔法使いは、こんな呪文の間違いはしないはずだから。でも、彼はそれを口に出すことはしなかった。ただ、頷いて、言うだけだった。「キミならできるさ。ちゃんと解決する方法を見つけてくれる。分かるよ、ボクには」、と。

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Cheaters never change 「浮気者は決して変わらない」 

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Cheaters never change 「浮気者は決して変わらない」

「うーん……。ちゃんとコックケージをつけているし、ふさわしい服装にもなっていると。ちゃんとジュエリーをつけてる? 言いなさい」

「つけています、奥様」

「見せてごらん。あら、ほんと。可愛いじゃない。あなたはブルーが良く似合うわ。良い子にしてたら、その色にマッチしたコックケージを買ってあげるわね。その方が良いでしょ?」

「ぼ、ボクは……普通に戻してくれたらそれだけで。仕事に戻りたいんだよ。そして……」

「普通? ダメよ。今の状態があなたにとっての新しい普通なの。だから、これに慣れた方がいいわね」

「で、でも……ボクは……ボクは男になりたいんだよ。し、シシーなんかは嫌なんだよ……」

「まあ、そういうふうに、つかえながら言葉を言うところも可愛いわ。男になりたいっておねだりしてる時ですら、自分の本性を隠しきれないのね、あなた?」

「お願いだよ、カレン……何でもするから」

「何でもするし、浮気もするんでしょ? これまでもチャンスはあったのよ、忘れてないでしょ? 思い出すのを手伝ってあげなくちゃダメなの? あなたは、新婚旅行から帰った1週間後に浮気をした。1週間よ? 結婚したばかりだったのに、あなたはさっそく秘書を相手にエッチしてた。それを知ったとき、すぐに離婚すべきだったかもね。でも、その当時は、あたしもあなたを愛していたの。それに、信じてもらえるか分からないけど、今もあなたを愛してるわ。だから、あたしはあなたにもう一回だけチャンスをあげた。確かに、しばらくの間は、あなたもおとなしかったわよね? 本当に。それとも、あたしがそう思い込んでいただけだったのかしら? ともかく、その後、あなたはまたも浮気をした」

「そ、それについては言ったよね、カレン。……ボクは浮気なんかしてなかったよ。仕事の件でシルビアにメールを書いただけだよ。メールを全部、見せてあげたじゃないか! 何もなかったじゃないか!」

「どう見ても、あなたは痕跡を隠したとしか思えなかったわ。あたしはこの家を出て行こうとした。忘れてないわよね? そう。もちろん、覚えてると。そんなに昔のことじゃないもの。で、あなたは、ひざまずいて懇願したわよね? それまでになかったほど必死になって、別れないでくれって懇願してた。だから、あたしも、最後にもう一回だけチャンスをあげたの。でも、今回は、あたしの条件に従うという形でのチャンス。あたしが何て言ったか覚えてる? ほら、覚えてるなら、ちゃんと口に出して言いなさいよ!」

「き、キミがここにいてくれるためなら、ぼ、ボクは何でもします」

「何でも。そう言ったのよね。で、実際あなたは何でもした。あなたは仕事を辞めた。豪胆だったわ、その点は。カッとして衝動的に辞めちゃったのかしら? でも、あの時感情を爆発させて辞めた後、あなたの分野で新しい職を見つけるのは難しかったと。で、結局、あたしに養ってもらう、専業主夫のシシーになったと。全部、一気に変わったわけじゃなかったわね。少しずつ変わっていって、気がついたら、鏡の中には今のあなたの姿が映るようになっていたのよね? その変化に、あなたはちょっと軽いパニックになってたようだけど」

「それを見て、キミは笑っていた」

「だって、笑わずにいられなかったもの。最近、あたし、ずいぶん笑うようになってるの。ていうか、あなたを笑ってるんだけど。で、一番、笑えるところがどこか、あなた、分かる?」

「ボクはいつでもこの家を出て行くことができること」

「そう、そうなのよ! あなたはいつでもあたしと別れることができるの。今の状態は、あなた自身が選んだことなの。あなたはこの家にいたいと思ってるの。誰にも強制されていないのに。あなたは別に奴隷じゃないんだもの。そう考えると、ひょっとして、あなたって、ずっと前からシシーだったんじゃないかって思うわ。今のその姿、それこそ、本来のあなただったのよ。こうなる運命にあったの」

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Pledge 「誓約者」 

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Pledge 「誓約者」

「ぼ、ボク……みんなに笑われる気がする」

「そこがポイントじゃないか。マジで言えば、これは恥ずかしい目にあわすのが目的なんだぜ?」

「分かってるよ。でも……でも、これってやりすぎだと思うんだよ」

「会員になりたくないのか?」

「もちろん、なりたいさ。知ってるくせに。実家に帰ってパパに会員になれなかったって言ったら、ボク、勘当されちゃうよ」

「そんなドラマのヒロインみたいな」

「あ、それってヒドイ言い方。ほんとにヒドイよ」

「どうしてもそう言いたくなってしまったんだよ。つか、俺が言いたいのは、お前が入会するには、この方法しかないということ。他の誓約者はみんな同じことやってるぜ? 男子学生クラブの会員の文字通り全員がやらなくちゃいけなかったことを、お前だけ例外でやらなくてもいいって言ったら、みんなにどう映る? 俺たちは、誓約者に女の子のような格好をさせ、1週間、俺たちに奉仕させることになってるんだ。これで世の中が終わってしまうわけじゃないし、みんなで大笑いするだけだよ」

「でも、その点が気になってるんだよ。キャル? いっぱい写真を見たけど、みんな、こんな感じじゃなかった。誰も、体毛を剃ったり、ウイッグを被ったり、お化粧したりしてなかったよ」

「みんな化粧はしてたぜ? 俺もやんなくちゃいけなかったとき、顔中に口紅を塗りたくったぜ?」

「でも、ボクの場合、本物の女の子のように見えてしまうんだよ! ぼ、ボクは女の子じゃない!」

「じゃあ、お前は、自分が可愛すぎるから怒ってるのか? マジで? 頼むよ、相棒! お前、どんだけ意気地がないんだよ」

「な、何? ボクは意気地なしなんかじゃないよ! ただ、みんなに誤解されたくなくって……」

「俺の目からすると、お前はとんでもない意気地なしのように見えるけどなあ。いいか、ただ流れに合わせればいいんだよ。これを変なふうにしようとするヤツは誰もいねえから。誓ってもいい。1年か2年したら、この時のことを思い出して、笑える時が来るんだ。お前も一緒にな。約束する」

「でも……まだ、何て言うか……ボクは……いいよ、分かったよ。どうとでも。もう、ブツブツ文句を言うのはやめる。さっさと片づけてしまおう」

「その意気だ。あと、忘れるなよ。夜までお前の使える単語の中には「ノー」の文字はないということ。誰に何を命令されても、それに従うこと。いいな?」

「う、うん……」

「よし。じゃあ、勇気づけに2、3杯ひっかけようぜ。その後で仲間にお前を紹介しよう。学生クラブに新しいシシーが入って来たぞって」


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Secret relationship 「秘密の関係」 

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Secret relationship 「秘密の関係」

「どうしたの、ケニー?」

「別に。なんで、どうしたのって訊くの?」

「だって、ひとつには、あなた、あたしにエッチしようとしてないじゃない? 普通だったら、あたしがパンティを脱いだら、待ってましたと言わんばかりに、すぐに突っ込んでくるでしょ? でも、もう一つは、あなた、最近、どこかよそよそしくなってるわ。何か話したいことがあるんじゃない? あたしはあなたの彼女なのよ?」

「秘密の彼女だよ」

「それって、あなたがそうしたがってるからでしょ? あたしの問題じゃないわ。実生活でもあなたと一緒でいられたら、あたし、そんなに嬉しいことはないんだけど」

「僕とキミは実際に一緒だよ。ただ、キミのお父さんにこれがバレたらと思って……」

「あたし、父とは2年も口をきいていないの、ケニー。父はあたしの生活からは消えているの」

「でも、キミのお父さんは僕の生活には関わっているんだ。キミのお父さんは、その気になれば、いつでも僕のキャリアをめちゃくちゃにできるんだよ。もっと悪いこともできるんだ。キミのお父さんがキミのことをどう思ってるのかを考えると、僕のキャリアを台無しにするよりも、もっと悪いことをすると思うよ」

「パパはただのフットボール・コーチじゃないの。全能の神じゃないのよ。それに、体だって、あなたの半分くらいしかないし」

「体の大きさが問題じゃないよ。僕は、キミのお父さんに殴られるのを心配してるんじゃない。僕をチームから外して、他のチームにも入れないように、リーグから追放するんじゃないかって心配してるんだ。それを恐れているんだよ」

「それに、メディアに、あなたがトランスジェンダーの男と付き合ってるって報道されることも、でしょ? 新聞の見出しがそんな甘いレベルで済むと思ってる? 新聞はともかく、ツイッターはそんなレベルで済むわけないわよね。それは確か。少なくとも、あたしがカミングアウトしたら、簡単にはすまないわ」

「分かってるよ、シルビア。本当に。ただ、心配してるだけだよ。それは分かってくれるだろ? キミの存在が恥ずかしいとか、キミと付き合うのを止めたいとかじゃないからね。ボクはキミを愛してる。一生、キミと一緒に暮らしていきたいと思ってるんだ。でも、どうしても……どうしても、公表した場合の結果が気になってしまって……」

「じゃあ、それまでの間、あたしは何をしてればいいの? あなたに時間の余裕をあげるのは構わないのよ。ただ、トンネルを抜けた後には明るい世界があることを確信したいだけなの。今のところ、あなたは、あたしのパパがあなたに何百万ドルの損害を与えないように進めばいいと思ってる。でも、そうなったとして、その後はどうなるの? あたしは、一生、こういう状態で過ごしたいとは思っていないわ」

「そうはさせないよ。約束する」

「その言葉、信じていいのね?」

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Vigilante 「仕置人」 

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Vigilante 「仕置人」

両手を拘束する手錠に抗い、睨み付けた。「こんなことで私を押さえつけることができるとでも思ってるのか? こんなのよりも悪い状態からも脱出してきたんだ。お前も知ってるだろう?」

「まあな」と、気持ち悪いほどきっちりと剃りそろえた髭を無意識にいじりながらモルデカイは言った。そしてにんまりと笑う。グロテスクだった。特に、左目から頬を通り、両唇へと長く伸びるヒダヒダの傷がある顔で笑われるとなおさらだ。その傷は、我々が以前に行った作戦のひとつでできた傷だ。その傷のせいで、左目は白目がむき出しになり、顔面の左側は常に硬直した笑顔になったまま。驚くほど白い歯をいつも晒している、左右の釣り合わない顔になっている。

「私は、可愛いお前を破壊してやろうと思っているのだよ」

「そんな呼び方、やめろ、この野郎!」と私は唸った。だが、その声は、今の自分の容姿に完全にマッチした哀れな甲高い悲鳴にしかならない。自分はいつから囚われてきたのか? 数週間前か? 数か月前か? 1年前か? すでに時間の感覚はなくなっていたが、かつての逞しい筋肉は溶け去り、短い髪が肩まで伸びるほどの時間が経っているのは分かっている。だが、それは最悪とは言えない。長い目で見れば。

「だが、今のお前はその通りとしか言えないじゃないのかな?」 と彼は立ち上がった。かつては、肉体面で言えば、彼は私とは比較にならなかった。だが、知能の点では卓越したところがあり、そのために、私は一度ならず彼に捕らえられたものだった。だが、そのたびに、私は、秘密道具や仲間たちの力を借りて彼の元から逃げてきたのだった。しかし、今回ばかりは助けは来なかった。

モルデカイは私に近寄り、鎖を掴み、ぐいっと私を引き寄せた。体を離そうとする間もなく、彼は手を下に伸ばし、拘束された私の男性器をいじった。長期にわたって拘束されていたため、副作用として、私のペニスはかつての姿の面影もないほど縮小していた。

「ああ、あの有名なアベンジャーが、街の悪党どもが恐れおののいたアベンジャーが、慰み物に落ちるとは、な? 力もなければ、武器もない。弱くて哀れで女っぽい姿になってしまって。どんな気分だ?」

「お前を絞め殺したい気分だ」とかすれ声で答えた。その気持ちに間違いはない。仕置人としての長いキャリアで悪党どもを懲らしめてきたが、この男への殺意にほど強い殺意を抱いたことはない。だが、どうしても腕を動かすことができなかった。一度ならず試みてきたが、復讐の女神は私に何かを行ったのだろう。私の心を操作し、彼に害を与えることが不可能にしていたのだった。

「おお、それもよかろう。お前はまだ充分壊れていないようだな。もっと言えば、お前が簡単に壊れてしまったら、お楽しみが終わってがっかりしていたところだよ。だが、いずれお前は崩壊する。それは間違いない。そうなったら、お前の敵たちの前にお前を連れ出して、見せびらかすつもりだ。トロフィーとしてな。俺に敵対するとどうなるか警告の意味も含めてお前を見せびらかすつもりだよ。ああ、絶対そうする。その時は、お前は嬉しそうに微笑みながら、昔の敵たちに今の自分の姿を見せるのだよ。ああ、そうなる。楽しみだな」

「ファックユー」 私はそう言って彼から離れた。鎖の金属音がなり、彼の笑い声が響いた。私は彼を睨み付けた。いつの日か、絶対に逃げ出してみせる。いつの日か、私にしたことすべてに対して、この男に償いをさせてやる。

「ファックはお預けだよ」と彼は手を伸ばし、私の頬を撫でた。頬に触れられ、私は身震いした。紫色のスラックスのチャックが降ろされ、すでにイヤと言うほど馴染みにさせられてきた、勃起した男性器が姿を現す。「今は、このご馳走で満足しなきゃな。ほら、毎日、美味しそうに頬張ってるだろ? ご馳走だ、しゃぶっていいぞ」

そして、ためらうこともせず、私は前に顔を出し、咥えこむ。すっかり馴染みになっている行為だった。どう足掻いても、これを拒否することができないことは、ずいぶん前に思い知らされていた。吸い始めると、彼は私の頭を掴んで言った。「それでこそ、いい娘だ。ああ、実に良い娘に育ってる」

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Her world 「彼女の世界」 

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Her world 「彼女の世界」

「何か問題?」

「別に。ただ、キミにボクが女子高生って萌えると言った時なんだけど……ボクは、自分がスカートを履きたいと言ったつもりはなかったんだけど……」

「本当に? いろんなことあたしとあなたでしてきたけど、あなた、マジで、あたしがそういう格好で歩き回るものと思っていたの? 頼むわよ。あなたがちょっとしたフェチについて話してくれた時、自分がどんなことにハマっているかちゃんと知っていたんじゃないの?」

「それって、非合理的な思い込みってわけじゃないけど。って、ボクのことを笑わないでくれよ」

「ごめんなさい。ちょっと可笑しくなってしまって。あなたは、あたしが女だから、そんなバカっぽい服を着たがっていると思っているわけでしょ? それに、ついでだけど、あなた、その格好、あたしが思ったよりずっといいわよ。本当に可愛いわ」

「サンディ、話しがずれているよ。キミは知ってるはずだよ、ボクが別にこんな服は……」

「ふたりだけでいるとき、どっちがいつもセクシーなコスチュームを着てるのかしら? ランジェリーとか。どっちが女の子の役割になっているのかしら?」

「ぼ、ボクは……ボクは女の子じゃない」

「なってもいいんじゃない? 分かってる、分かってるわよ、言いたいことは。あなたは、スーツを着て仕事に行くから、みんながあなたのことを大きくて強い男性とみてくれると。でも、実際は違うでしょ? ベッドルームでは、あなたはあたしの可愛いスケベ女になっているんじゃない? どうなの?」

「ぼ、ボクは……」

「違うんだったら、あたし、喜んであなたと別れるわ。あたしの趣味にもっと会う誰か他の人をみつけることにするわ。ハンター、あたしたち結婚した時、あなたはどういうことにハマってたか自覚していたでしょ? あたしは別に、公けの場にいる時に、あなたが自分自身でないものであるフリをしてることについて、とやかく言おうとしてるわけじゃないの。でも、ふたりだけで家にいる時は、あなたはあたしの世界にいるのよ。そして、あたしの世界の中では、あなたはあたしの可愛い淫乱ガールなの。分かった?」

「き、キミとは別れたくないよ。キミをすごく愛してるんだよ、ボクは」

「ありがとう。じゃあ、ルールは分かってるということよね。文句はこれ以上、ナシ。さもなければ、土下座させるわよ。ひょっとすると、あなたは、そいうふうにあたしにいたぶってもらうことを望んでるのかも。あなたは、イケナイ悪い娘? 学校でイケナイことしてきたの? どうやら、そのようね。じゃあ、こっちに来なさい。前かがみになって、お尻を突き出しなさい。どうやら、あなたにはキツクお仕置きしなくちゃいけないようね」

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