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A Misunderstanding 「誤解」
「よう、ちょっと借りてもいいかなあ? あっ……ああっ……やばっ!」
「おい! こっち向けよ! お前、何やってるんだ?」
「くそっ。ドアが開いてたから。俺はただ……くそっ。ただちょっと……。お、俺は何も見てねえぞ。誰にも言わないって約束する」
「何か、勘違いしてないか?」
「ああ。そうだな。勘違いだ。すまなかったな。俺は……、ああ、もう行くよ……それに……」
「まだ、勘違いしたままだろ。ほら、もうタオルを巻いたから。こっちを向いてもいいぜ」
「そうだな。ああ。ていうか、どうであれ、変なことじゃないはずだよな? 男がふたりでいただけだ。俺は何度もロッカールームに入ったことがあったし」
「だけど、お前が何がどうなってるのか理解してないと、変なことになってしまうんだよ」
「ああ。そうだな。言うとおりだ。俺は理解してねえ。で、お前が……その……まだカムアウトする気になっていないとしたら、それもカッコいいと思うよ。ていうか、俺たち友だちだと思っていたけど……多分、理解できたと思う」
「カムアウト? お前、何を……ああ?……マジかよ……なんてこったよ! お前、俺のことを、ゲイか何かと思ってるんだろう? 違うか?」
「何も思ってねえよ。まっさらだよ。完全に。つか、お前のことを言うのに別の代名詞を使ってほしいなら……」
「ああ、頼むぜ、やめてくれ、ジョン! 俺はゲイじゃない! ジェンダーフルイッド(
参考)でもねえ。トランスジェンダーでもねえよ」
「だよな。分かってる。ラベルなんか馬鹿げてるものな? お前がなりたい存在であれば何でもいいよな」
「違うって! そんなことを言いたいんじゃねえよ! ったく! これは飛んでもねえ間違いだってことだよ。いいか? 今日の午後、撮影の仕事があるんだ。撮影するやつが言うには、中性っぽさがテーマだと。だから、俺と一緒に出る女は、短髪のかつらを被ったりするわけで、俺もこういう格好になってるというわけなんだよ」
「え? なるほど……」
「まだ、信じてないだろ? 目を見ればわかるぜ」
「いや、信じてるよ。本当だって。ただ何て言うか……まあ、その……お前、全然、中性っぽく見えねえぜ。どう見ても、その……何つうか髪は長いし、化粧をしてるし……それに、その……そのカラダ……」
「分かってるよ。今の時代、男性モデルはこういう体つきなんだ」
「まあな。確かに。分かったよ。俺はただ……ああ、この状況、居心地悪いなあ。ていうか、お前、すごく綺麗だし、それに……いや、何でもねえよ。何でもねえ。突然入ってきて悪かったな。撮影が本当にうまくいくといいな」
「ジョン……おい、ジョン、ちょっと待てよ! それじゃあ、この状況が変なことになってしまうだろ!」
「いや、いいんだ。俺はただ……ただ、他の場所に行かなくちゃと思ってるだけだ。し、仕事、頑張れよ。ああ。幸運を祈るぜ」
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An Affair 「情事」
「こんなこと、もう続けられないわ」と、後ろにいる愛人を振り返りながら言った。ああ、彼のことを愛人だなんて思うこと自体、良くないことと感じる。でも、本当のことだったし、ほぼ1年間、そういう関係が続いていた。「もう止めなくちゃいけないわ、ジェームズ」
「そうかな?」とベルトを外しながら彼は言った。「君は、このささやかな密会のために生きているんだよ。僕には分かる」
「そうじゃないと知ってるくせに」とあたしは顔を背け、前を向いた。「他のいろんなことよ」
何秒も経たぬうちに彼があたしの後ろに来た。わざわざ見なくても、彼が素裸になっているのが分かる。それに、すっかり固くなっていることも。彼はあたしの腰に手を添え、つぶやいた。「他のいろんなこと……」 長くため息をついた後、彼はあたしから離れ、言った。「僕にしてみれば、他のいろんなことなんて、どうとでもなれと思うけど」
あたしは手を頭に掲げ、リアルっぽいウィッグの黒髪を掻いた。「あなたには、そう言うのは簡単でしょうね。妻もいなければ、家族もない。あなたを頼りにしている何千人もの人々もいない……」
「君は市議会議員だろう?」と彼は遮った。「大統領じゃないんだ。それに君の妻も子供たちも君のことを嫌っている。ブリタニーはもう何年も前から浮気を続けている。彼女は君を愛していないし、これまでも一度も君を愛したことなどなかったのだよ。少しでも君に関心があったら、とっくの昔に君の変化に気づいていたはず。だけど、彼女は自己中心的な女なので、全然、気づかなかった」
「それが彼女なの」 怒った声で言ったつもりだった。そういう声を出そうとした。けれど、実際には、泣き声に近い声になっていた。ジェームズが言ったことは正しい。そこまで言われることを認めたくはなくても、自分でも事実だと思っていた。「それに、愛情とかそういうことよりも、複雑なの。あたしにはもう……」
「君がオフィスですっかりドレス姿になっているのを見た瞬間、僕は何が欲しいか分かったんだ。君も覚えているだろ? 僕も君も、ふたりとも、それぞれのオフィスで夜遅くまで働いていた。君はオフィスには誰もいないと思ったのか、ちょっと羽目を外してみようと思った。でも、僕も残っていたんだよね。そして、僕は君の本当の姿を見たんだ」
「あなたったら、その場であたしをデスクに押し倒して、あたしを犯したのよ?」と、あたしは懐かしむように思い出した。
最初は、ちょっとは抵抗した。男性だけの美人コンテストに参加するため、試しに女装したのだと嘘をついた。でも、彼にはすべてお見通しだった。彼は、ひと目あたしの姿を見ただけで、すべてを理解したのだった。そして、その後はと言うと、1年以上にわたる愛人関係。毎週、週末になると、他人目につかないところにふたりでしけこみ、一緒にすごす。ホルモン摂取も始めた。上半身はあまり成長しなかったけれど、どんな男性よりも体が柔らかな丸みを帯びているのは間違いない。その体を大きめのスーツを着て隠してきたが、今や、もはやこれ以上、変化を隠し続けることができないほどにまでなってきていた。
でも、身体的変化は氷山の一角にすぎない。長年、女装を続けてきた人間として明確に言えることだが、このジェームズほどあたしを肯定的に励ましてくれた人は、誰一人いなかったのだった。ましてや、男性でこれほどまでに言ってくれた人はいなかった。そんな彼の励ましを受けた結果、あたしは自信を持った女性へと変わっていた。現実の生活から離れた場合だけに限るけれども。
「そ、そうね、あなたが正しいわ、ジェームズ。みんなに言うべき。すぐにそうしなければいけない。でも今は……一緒にここにいましょう。この瞬間だけは一緒に。あれ、あたしにしてくれる?」
彼は微笑んだ。「君のためならどんなことでもできるよ。愛しているから」
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