女の子がひとり僕の肌に薄いファンデーションをつけた。きめ細かなスポンジを使って注意深く色合いを混ぜて延ばし、パウダーとブラシで整えてくれた。頬骨のくぼんだ所をブラシで丹念に色を重ね、それからこめかみとあごの下のラインにも同じことをした。
別の子はペン先の柔らかい鉛筆で眉の上、額に注意深く色を重ねてくれた。最初は、その子は眉毛にアクセントをつけてるのだろうと思ったのだけど、どうやら眉のラインの上のところに作業をしているようだった。
二人とも、目の周りには、実に丹念に長い時間をかけてくれた。まずはショーガールがするような、派手目の付けまつげを目の上下に装着し、その後、シャドー塗りに入った。シャドーを塗っていた時間から判断すると、かなり濃く塗ったのではないかと思う。目の上下には液体のアイラインを塗り、輪郭を整えたようだった。
それに唇にも、別の鉛筆で輪郭を塗られたような気がする。輪郭を整えた後、紅をつけたブラシで輪郭の中を埋めるようにして塗っていく。深紅の口紅だと思う。1層目を塗り終わり、滑らかにされた後、さらにもう一層塗られた。そしてその後に透明のグロスが塗られた。彼女たちが僕に何をしてるか、それを感じるものの、実際に見ることができないのは不思議な感じだった。
チャンタルが僕の唇に塗りつけながらダイアナに訊いた。
「あなた、彼女のこの、おちんちんを包むミトンみたいな唇、酷使させるつもりでいるのね?」
「うふふ。それに頬の内側もね…、というか彼女の身体の他のところも。調子がよかったら全部使うかも」
彼女たちがそんな会話をしている間、別の女たちが僕の手首を握って、パッドのついた椅子のアームレストに押さえつけた。指先に何かを丁寧に塗りつけられるのを感じた。多分、ネイル用のつや出し剤だろう(誰でも一度あの匂いを嗅いだら、忘れないと思う)。何分も経たないうちに、僕の爪には幾層もつや出しが塗りこめられていた。それと同時に、ストッキングも脱がされていて、足の指にも同じような施しがされていた。
ダイアナが大きな声を上げた。
「彼女の耳に何か欲しいわね。シェリー? あなた、今夜、道具を持ってきてる?」
背が高く魅力的な黒人の女の子がショルダーバッグの中を漁り、ピストルのような形をした道具を持ってきた。
「もちろん、いつでも。移動ときは銃は欠かせないわ! マイルド? それともワイルド?」
「ワイルドで!」 と一斉に声が上がった。
ダイアナは面白そうに微笑み、僕の顔を覗き込んだ。
「みんなの声聞いたわよね。思いっきりするわよ。あなたは私の奥様。私、自分の妻には最高のものを施したいの。この場合、一番悪そうなのがベスト。母親に見つかっても自分の娘だと分からない。そうなふうに変身してほしいの」