アンドリューの話:子供たちエマとエラ、エディとエッダ。双子がふた組。四つ子と言っても通る。誰も4人を区別できない。この子たちの母親ですら区別できないのだ。だが、僕は違う。僕は4人を問題なく区別できる。
僕と、この4人の小さな天使たち。僕たちの間で何かが起きてる。この子たちが子宮の中にいた時から僕はそれに気づいていた。この子たちは僕を感ずることができるのだ。彼らは、まるで本を読むように僕の心を読み、僕の方も、どういうわけか彼らが僕に反応するのを感じることができる。まさしくテレ・エンパシーだ。
いまやその子供たちも2歳。ありえないほど早熟だ。思わず抱きしめたいと思うけれど、その次の瞬間、その細い首をへし折りたくなる。そんな子供たち。しかも、このちびっ子どもはこっちの心が読めるときている。実に厄介でしょうがない。
先日のことだった。僕はディ・ディと子供たちと一緒にドライブに出た。ドニーだけは仕事があって家にとどまった。
子供たち4人とも後部座席のベビーシートに縛り付け出かけたわけである。この車は怪物みたいな大型車で、大家族に対処するためやむなく買ったものだった。
道路を走りながら、僕は自分のことだけを考えていた。誓ってもいいが、一切、考えてることを言葉に出したりはしていなかった。
その時である。一台の車が追い越し車線から僕たちの車を追い抜き、その後、僕の車の前に来て、急にスピードを落としたのだった。
僕はクルーズコントロールを使って走るのが好きだ。気が楽だから。だから、他の運転手の無茶な運転のせいでブレーキを踏まざるを得なくさせられるのが何より頭にくる。でも、決して言葉に出していったわけではない。誓ってもいい。腹は立てていたけど、口には出していなかった。
それからちょっと走ったところで信号があり、そこで止まった。例の無作法な運転者は左折するらしく、僕たちの車と横並びに止まった。
ちょうどその時だった。エマが窓を開けて、向こうの車に顔を向け、叫んだのである。
「このクソ野郎!!」
例の無作法氏はギョッとした顔をしていた。ブロンドの髪のえくぼが可愛い天使のような子にとんでもない罵声を浴びせられたのだから当然だ。僕は信号が変わるとすぐに、素早く車を走らせ、その場から逃げた。
エラが言った。「ママ? クソ野郎ってどういう意味?」
ディ・ディは僕のことを睨みつけていた。
「パパの前に車を割り込ませてくる人なら誰でも」
もちろん、そうなったらエディも黙っていられない。
「ママ? どうしてスカートを捲って、パパにおまんこを見せてあげないの?」
ディ・ディは顔を真っ赤にさせた。ほんと、ディ・ディに殴られるだろうと思った。本当に、僕は一言も喋っていないのに。僕は必死になって心に念じた。お願いだよ、子供たち、全部忘れてくれ。静かになってくれ。その話題から離れてくれ、と。
エディが訊いた。「ママ? なむさん、なむさんって何?」
僕は手を宙にあげ、降参のポーズを取り、すまないと訴える顔をディ・ディに向けた。もういいだろ。僕は思ったことを思ってるだけなんだ。実際に口に出して言わないうちは、どんなことを思っても問題ないと、それが僕の立場なんだ。ただ、もちろん、そうだよ。僕には頭に浮かんだことを漏れなく繰り返すのが大好きな4人の可愛い天使がいるのは知ってるけど…。
エマは問題を厄介にすることに決めたらしい。「ママ? ママもエッチな気分になってるの?」
いつものことだが、イラがすぐに訊き返した。「エッチな気分って何?」
ディ・ディはとうとう我慢できず、どっと笑い出した。
だが、何と! 今度はあっちの方がちょっと居心地が悪くなっていきそうだ。ディ・ディがゆっくりと少しずつスカートを捲り上げ出したからだ。さらに脚を広げてくる。
とうとう、全部、丸見えになってしまった。ああ、何と! ディ・ディはパンティを履いていなかったではないか! 車が道から外れないようにと注意はしていたが、簡単なことではなかった。
僕の大好きな可愛いお喋り屋のエマが訊いた。「ママ? 良いケツしてるってどんな意味?」
エディも加わってきた。「おまんこって何? ママ?」
エディもだ。「パパがまた勃起してるって」
僕は車を道脇に寄せ、止めた。後部座席を振り返り、僕を狂わせる、この4匹の愛らしいいたずら者たちを睨みつけた。「パパの頭から出ていってくれないかな!」
僕は、どうにかして僕の頭の中から子供たちを遠ざける方法を見つけなければいけない。さもないと、ほんとに何も考えられなくなる。なんて恐ろしいことだ。
エマが言った。「ママ? ママがいないときしか、パパは遊び相手になってくれないのよ。ママが一緒にいると、パパはいつもママとヤルことしか考えないから」
僕は真顔で言った。「エマ? 君はいくつになったのかな?」
「二歳!」
「君は、三歳まで生き延びたいと思ってるかな?」
「うん」
「だったら、その減らず口は閉じるんだ!」
イラが言った。「あ! パパが汚い言葉を使ったよ! いけないんだ!」
神様、僕を助けてください。どうかお願いです。お助けを!
俺はしばらく店にとどまって、トリスタが店内を優雅に歩き回る様子を見ていたが、コーヒーも飲み終え、ようやく席を立つことにした。一度、家に戻って少し眠っておきたいと思ったからだ。今夜はメインイベントに出るので夜遅くまでになるから。
「帰るの?」 とトリスタが俺の前に飛んできて、コーヒーポットをテーブルに置きながら言った。
「残念だけど…」 と顔にしわを寄せて言った。「ちょっと疲れちゃってね。ディナーに行く前にちょっとひと眠りしてこようと思ってるんだ」 と両腕を伸ばし、トリスタを抱き寄せた。
ふたりの唇が触れ合った。互いに抱き合いながら、長く優しいキスをした。客が呼ぶ声が聞こえ、トリスタはキスを解き、テーブルのコーヒーポットを取った。
「それじゃあ、今夜ね」 と彼女は笑顔を見せ、客の方へと歩き出した。
俺はコーヒーショップを出て、自転車に戻った。自転車をこぎながら、あのレイチェルとバルのことを考えていた。俺にとってはレイチェルは完全なアバズレ女で、一方のバルは可愛く、純真な娘に思える。バルの綺麗な瞳には、どこか不思議な魅力があって、虜にされそうな感じがした。
家に向かって走っていたが、途中、回り道してブラッドの家の前を通ってみようと思った。次の角を曲がって道を進み、その次の角へと向かった。
その角の所を曲がるとブラッドの家が見える。家の前にはブラッドの母親の車が止まってた。ひょっとして窓の中、ステファニの姿が見えるかもしれない。そう思いながら、心臓をドキドキさせながら家の前を過ぎた。だが、どうやら家には誰もいない様子だった。
引き続き自転車を走らせながら、今度は今夜のディナーについて考えていた。なんとかして今夜のディナーで、あのトリスタの父親に恥をかかせてやりたい。トリスタの母親は俺のことを気に入ってくれてるのは知ってるが、あの父親の方は違う。あいつは、俺が知ってる中でも最上級の嫌なオヤジだ。自分の妻に対するあの態度も嫌いだし、トリスタを自分の言うとおりにさせようとしてるやり方も気に食わない。今夜は、絶対に俺がどういう人間か、あいつに教えてやるつもりだ。
ようやく家が近づいてきた。スピードを落としながら家に近づくと、父親のバンの隣に、もう一台、知らないバンがあるのが見えた。俺は自転車で庭に入り、そこに横たえて置いた。そして開いているガレージのドアをくぐり、そこからキッチンに入った。手を洗っていると、リビングから父親が出てくる音が聞こえた。
手をすすぎながら、「あれ? 家で何をしてるの?」と訊いた。
「何だよ、お父さんは休みを取っていけないのか?」 と父親は冷蔵庫からコーラを出しながら言った。
「だって、これまで仕事を休んだことなかったように思うから」
そう言うと、父親はニヤリと笑みを浮かべ、ポケットの中に手を入れ忙しそうに動かし、何かを取りだろうとするのが見えた。そうして取り出したのは、車のキーの束だった。二つある。俺が近づくと、父親はその手を俺に差し出した。
「卒業おめでとう!」 と俺にバンのキーを俺に差し出す。
「え! マジで? 嘘だろ!」 父親の手からキーを受け取りながらも、俺は興奮して声が震えていた。
「お父さんは、仕事で新しいバンが必要になってな。今年のお前は学校でずいぶん頑張ったようだし、お母さんと二人でお前に古いバンを譲ることにしたんだよ」
父親の話しを聞きながらも、俺は何度も何度もありがとうと言い続けていた。
「どうだ? 新しい車を見てみるか?」 と父は玄関の方に歩き出した。
父親の後ろをついて歩きながら、頭の中、ありとあらゆるワイルドでエロい妄想が渦巻き始めていた。とうとう車を手に入れた。しかも荷台スペースが充分にある車だ。ということはだぞ、動く拘束部屋を手に入れたも同じことだ。