
053
僕はシシーじゃない。ただ、僕の妻が、僕が可愛い格好をしているのが好きだから。
僕は、自分は良い夫だと思えると気分がいい。よく気をきかすし、話しも聞いてあげる。妻が幸せな気分になれるよう最善を尽くそうとしている。でも、時々、どこかで一線を惹かなくちゃいけないかもしれないと思っている。何と言うか、妻が、僕は体毛を剃るべきと言い張っても、特段、僕は気にしなかったし、ベジタリアンになるべきと言われた時も、そんなの簡単だと思った。一緒にジム(ちなみに、そのジムは女性向けのジム)に行って、一緒にストリッパー風のエアロビを練習しようと言われた時も、言われるがままになった。妻が僕に女性用の下着を買い始めた時も、文句は言わなかった(どう見ても、女性のパンティにしか見えなかったのだが)。でも、今度は、他の男と3人プレーをしましょうと言っているんだけど、これは……。

054
僕はシシーじゃない。ただ、僕はものすごく負けず嫌いなだけ。
他の人が僕について知っていることをひとつだけ挙げるとしたら、僕が間違いなく、とても負けず嫌いだということを挙げるだろう。どうしても人に負けるのが嫌なのだ。そんなのバカバカしいというのは知っている。誰でもいつかは負けなければならないものだから。でも、僕はできる限り、どんなことに関しても勝利を収めるつもりだ。その競争が何であろうと関係ない。
そして、まさにその点から、僕の今の苦境が生じたのだ。彼女が選らんだ仕事はダンス。だけど、何度もその仕事から解雇された後、彼女は僕に言ったのだった。あたしがすることは、あなたには絶対にできっこないわと。僕は、さっき言った通りの人間なので、その発言に反論した。それからいろいろあったけれど、短くまとめると、僕たちは賭けをしたのである。条件は次の通り。僕は(彼女の指導の元)2年以内に、業界で通用するダンサーになるということ。いたって簡単でしょ? ああ簡単だと、僕も思った。でも、簡単だと思ったのは、僕が女性のダンサーになることだと彼女が明示した時まで。もちろん、僕は反論したけど、彼女は、僕を操る方法をよく知っていた。「できないなら、そう言えばいいのに」と、一言。僕は彼女に簡単に操られてしまう。
最初の半年は、ほぼすべて、僕の身体の改造に費やされた。資金はすべて彼女が出してくれた。電気脱毛とか、手術とか……。何かに僕が反対するたび、彼女は同じことを言った。……できなくても、あたしは理解できるから、構わないのよ、と。
まあ、この姿が、賭けをして2年後の僕の姿。初めてのリサイタルに向けてタイツを履いているところ。僕はちゃんと彼女の賭けに勝ったよね?

055
あたしはシシーじゃない。ただ、仲間外れになりたくないだけ。
そうしたかったわけじゃない。本当は。みんなに人気がある女の子たちが、あたしを仲間に入れてくれた時、あたしは、自分も彼女たちが行うことが好きなフリをした。お化粧とか、服とか、男の子に興味があるような振舞いをした。でも、ここまでになるとは、思ってもみなかった。あたしは、男性性の外見をすべて、こんなに捨て去ってしまうことになるとは、100万年かかっても考えなかったはず。大学に通ってる今ですら、あたしは完全に女の子として生活してる。女の子として充分通るのは自覚している。もちろん、デート相手は男子。そういうことを期待されているから。結局、今は、女の子のひとりなのだから。たとえ、今から、元の男子に戻ろうと勇気を奮い起せたとしても、あたしは、もう今の状態をやめられないと思う……

056
僕はシシーなんかじゃない。ただ、ちょっとギャンブルの問題を抱えていただけ。
ええ、この通り僕は女性化されてしまった。豊胸手術を受けたし、女性ホルモンを取っているし、体毛もすべて剃られている。今や小さくなったペニスは何の役にも立っていないし、定期的に男にアナルを犯されている。フェラをする時の喉の拒否反応も克服できていて、かなり大きなおちんちんでもディープ・スロートできるようになっている。でも、僕はゲイではない。シシーでもない。僕はこんなことすべて、自分から欲してはいなかった。
始まりは、ある賭けをしたことだった。何についての賭けだったか、今は思い出すことすらできない。ただ、もし賭けに負けたら(実際そうなったのだけど)、僕はハロウィーンで女装しなければならないということだった。その後、また僕は賭けに負けた。その結果、僕は体毛を剃らなければならなかった。さらに、もうひとつ賭けに負け、僕は1年間、お化粧をしなければならなくなった。さらに、さらに、もう一回、賭けに負け、僕は同じ1年、パンティを履かなければならなくなった。そんなこんなが、その後もいくつも続いた。
賭けに負けたら、1年間、友だちのガールフレンドになるという賭けの時も、僕は大したことじゃないと思っていた。
でも、まだ希望はある。今度のスーパーボールの賭けで勝ったら、僕は彼と(毎晩ではなく)週に1回セックスをすればよいという賭けなのだ。でも、もし負けたら……まあ、それについては考えないことにしよう。だって、今度の賭けについては本当に勝てる気がしてるんだ!

057
彼女は僕のことをとても愛してくれている。僕のルックスを改善するためにとても多くの時間を使ってくれてた。始まりは2年くらい前。彼女が外国に留学して戻ってきた後から。彼女は、外国の生活がどれだけ素晴らしかったか、向こうの男たちがファッションの点でこちらよりどれだけ進んでいるか、たくさん話しを持って戻ってきた。そして、彼女は、時間をかけて、僕もその先進ファッションを試してみるよう、僕を説得した。
体毛を剃るのは大したことじゃなかった。僕はそもそも毛深い方じゃなかったし、体毛についても、特にこだわりがあるわけじゃなかったから。その次に来たのは髪の毛……最初は抗議したけど、最終的に僕は彼女に説得されて、髪の毛を伸ばした。その方がよく似合うと彼女が言うから。それが済むと、今度は新しいタイプのエクササイズに僕を引きずりこんだ。大半はエアロビとヨガ。そして、それから、彼女が「ヨーロッパの食事」と呼んでるモノを食べるようになった……たいてい、普通のサラダだったけど。
そして最後に、彼女は「あなたの服装を変える準備ができたようね」と言った。彼女が用意した服装の大半は、僕の目にはとても女性的なものに見えた。でも、それを言っても、彼女は、ただ鼻で笑うだけだった。「まさにそこが重要な点なのよ」と彼女は言った。「ヨーロッパの男性は、自分の男性性に充分自信をもっているの。だから、たかが女っぽい服を着たって、全然、構わない。それだけ自信があるのよ」と。
そして、いま。僕の変身を始めてから2年が経った。いま僕は素っ裸で日光浴をしても平気だ。ヨーロッパのヌード・ビーチのようにね。すごいと思う? この写真が今の僕。トレ・シック(とてもシックでしょ?)
今は彼女は、僕にもっと健康的になるべきと言っている。この前も僕にビタミン剤を買って来てくれた。僕はそれを飲み始めている。
あっ、あと、それから僕たちの性生活。これはちょっと変化を帯びてきてる。彼女は、今度、彼女の友だちを混ぜて3人プレーをしてみようと言っている。彼女がヨーロッパで知り合った人らしいけど。

058
僕はシシーなんかじゃない。ただ、お酒を飲みすぎただけ。
ちょっと、これって誰にでも起きる可能性があることだよね? つまり、誰でも、ちょっと度が過ぎたために、後悔することをしてしまうことだということ。まあ、僕も……初めから話すことにするよ。
元々、僕はちょっと女性的な体形をしていた。腰が広くて、丸いお尻……わかるだろ? それに顔も、男らしいというわけじゃなかった。もちろん友だちもそれに気づいていて、学校時代は、ちょっとからかわれていた。深刻なモノじゃなくって。ただの男同士でのからかい。
で、大学時代のある夜、僕はすごく酔っぱらってしまったのだった。そして……まあ、ちょっとあることをしてしまったようなのだ。女子たちが自分たちの服を僕に着せて、そして……まあ、長い話しを手短に話すと、朝になって目が覚めたら、お尻が痛くて、それに顔に乾いた精液がついていた。だからと言って、僕がシシーだと言うことにはならないよね? そんなの関係ないよね?

059
彼はスゴイ天才。彼の勃起をしゃぶりながら、彼を見上げるたび、あたしは正しい選択をしたんだって思う。
以前のあたしは、すごく変な男だった。太ってて、人気がなくて、恥ずかしがり屋。でも、彼にはずっと夢中でいたの。彼の最初の詩集を読んだ瞬間、彼に会わなくちゃと思った。大学も、彼が教えている大学に進んで、彼の授業を受けたわ。
でも、彼と会話をしようとした時、彼、あたしのことを無視した。それには落ち込んだわ。あたしのアイドルと思っていた人があたしのことを完全に無視した、って。ちょうどその頃、彼が、クラスの女の子たちについては、あたしと全然違った扱いをしているのに気がついたの。あたしのような、背が低くて、肥満で、ほとんど目立たない男子とは全然違う扱いをしていた。
2ヶ月くらいして、あることがひらめいたの。もしあたしが女の子だったらどうなるだろう、って。彼、あたしに話しかけてくれるかしら?
それからほぼ2年(数え切れないほど長時間のエクササイズ、手術、練習)の後、その疑問の答えを得たわ。しっかりとしたイエスって答え。彼、あたしの話しを聞いてくれたけど、それどころじゃなかった。本当にあたしのことを愛してくれてるかもしれない。もちろん、あたしは彼を愛している。今までずっとそうであったように。

060
僕はシシーなんかじゃない。ただホルモンのバランスが悪いだけとお医者さんが言っている。
みんな僕のことを女の子と思うのをヤメテほしい。もちろん、僕は違う。みんな、ちゃんと目が見えていないんじゃないのか?
みんなに僕は女の子じゃないと言うと(時々、そのことを証明しなくちゃいけない時もあるんだけど)、今度は、僕は何かシシーみたいなもんだと思うんだ。その状況、想像してみてよ!
確かに、おっぱいがあるよ。大きな点だよ。でも、僕はホルモンのバランスが悪いだけなんだ。前から飲んでる薬は全然、効いていないけど、最後には、効いてくると思ってる。ああ、確かに髪の毛を長くしているよ。でも、最近は、髪を長く伸ばしてる男はたくさんいるだろう? 同じことがお化粧にも当てはまる。あ、パンティは? まあ、これは、とっても可愛いから履いてるんだ。それだけだよ。

061
僕がシシーみたいに見えるって、どういう意味よ?
僕は他の男と同じく普通じゃないか!
これが彼。この3年間にわたって変化してきたことに完全に気づいていない彼がここにいる。かつてノーマルだった男が、どうやってこうなってしまったのか? さらに、どうして彼は自分に起きてることを知らないのだろうか?
答えは単純だ……催眠術である。はい、はい! そんなの全部インチキだって皆さんは思っているだろう。これを、このクレイグに言ってみればいい。私は、彼に自分は女性だと思わせようとは思わなかった。……いや、それは簡単すぎるのだ。彼には、依然として自分は男なのだと思っていてほしいのだ。
私は、彼に、男性が乳房を持ったり、パンティやドレス、その他の婦人服を着ることは、完全にノーマルなことだと思わせた。ヘテロセクシュアルな男性が他の男性と寝るのはノーマルなことなのだと思わせた。さらには、彼に女性のように振舞うようにもさせた。その間ずっと、彼は自分がノーマルな男性だと思っている。
どうして? 私にはそれができるからだよ。さて、次は誰かな?

044
ジェームズは、監禁されていた。覚えている限りでは、ほぼ2年近くも。もっと長かったかもしれない。彼は時間の経過を知る手段がなかったので、はっきりとは分からないのっだった。彼は、捕まって、こんなに長期間、監禁されることになろうとは、思ってもいなかった。だが、実際にそうなってしまったのである。さらに、彼は変えられもした。身体ばかりか、精神も。
かつては、威勢がよく逞しい超エリート・スパイだった彼は、今は女性的なシシーになっている。彼がかつては男だったことを示す証拠は、彼のペニスだけだ。それとて、以前の堂々とした姿は、今はみじんも感じられない。
彼らは彼に非常に多くのことを試みた。催眠術は彼には効かなかった。拷問も無駄だった。だが、女性化を試みた後は……
彼らは、彼を病院のベッドに半年近く拘束することから始めた。その結果、彼の筋肉が大幅に衰えることになった。体重が87キロから50キロに減った。その間ずっと、多量の女性ホルモンを注入され続けたし、手術も複数回受けさせられた。1年後、彼の身体は以前とはまるで変わっていた。
そして、その後、条件付けが始まった。毎日、彼は男とのセックスを強要された。抵抗しない時に限り、食事を与えられた。拒否すると、飢えに苦しむことになるのである。一方、行為を楽しむような行動を取ると、より良い待遇を提供された。元スパイが口を割るまで半年しかかからなかった。身体の女性化と、絶え間ない心的操作があいまって、拷問では決して成し遂げられないことが実現したのである。
いま彼は大敵のハーレムの一員となっている。彼は幸せなのだろうか? 一応、イエスと言える。だが、彼はいまだに元の人生を思い出すことがある。

045
「ねえ、本当にこれ、紳士用なの?」
「もちろんよ。どうして?」
「分かんないけど、これ、ちょっと僕には女の子っぽい感じで。小さなショーツとか、肩紐もこんな細いし、それにピンク色だし……」
「古臭いこと言わないで、バカね。ピンクを着てる男はいっぱいいるのよ」
「ああ、だけど……」
「それに、それ、とても良く似合ってると思うわ」
「そうかなあ……でも、君が気に入ってるなら……」
チャックの生活は変化していた。急速に変化していた。彼自身でも、それは否定できない。始まりは実に単純なことだった。彼の妻が、彼にちょっと体重を減らしたらとしつこく忠告していたのである。そして、とうとう彼も根負けしたのだった。妻は彼にダイエットをするよう仕向けた(大半は野菜だけの食事)。さらにエアロビ教室にも加わるよう言い張った。最初はちょっと変な感じだった(エアロビ教室には男性は彼だけだったから)。でも、しばらく経つと、彼もエアロビを楽しむようになった。その次に来たのは、衛生面の変化だった。妻のシーラは、毛深い男が嫌いだった。チャックもそれを知っていたが、それでも、シーラが彼の体毛を全部剃ってと言った時には、彼もちょっと驚いた。もちろん、彼は妻の指示に従った。シーラはファッションや最新の流行のことに関しては、最も良いことを知ってるのが普通だったから。その次には、髪の毛を長くしたらと言われた。大したことじゃない、とチャックは思った。そんなに長いわけじゃないし。肩先までの長さだから。シーラにビタミン剤を渡され、飲むように言われた時も、彼は何も考えなかった。そして、その後、今度は衣類が変わり始めたのである。彼のためにと渡された衣類について、シーラは全部、最新流行の服なのよと言ったが、さすがのチャックもちょっと疑い始めた。彼には、全部、婦人物としか見えなかったからである。それに、胸がちょっと膨らんできてもいた。誓ってもいいが、乳房みたいになってきてると思った。いや、たぶん、シーラが言ってるように、もうちょっと運動した方が良いと言うことかもしれない。まあいいや……シーラが気に入ってるなら。重要なのは、その点だけなのだから。

046
ここに写っているのは左から、アンドリュー、スティーブン、そしてポールの3人。もちろん、いま彼らは別の名前で通っている。どうして彼らはこんな姿になってしまったのか……春休みにトップレスでボート遊びをする、パーティ盛り上げガールのような姿に?
その話は、男子学生の社交クラブにおける最初の入会の週にさかのぼる。そのような組織の多くでそうであるように、彼らの入会の週も恥辱的なことを山ほどさせられた。最もありふれた儀式のひとつは、女の子のような服装をすると誓約させることである。まあ、たいていの男子学生の場合、それは大したことではない。……どんなに着飾っても、決して女の子には見えっこないからである。だが、この3人の場合は、違った。本当に可愛らしく見えたのであった(女の子として通るには、まだまだではあったが)。
女装をしろと言われた1週間を通して、彼らはみるみる女装の術を上達させていった(女子学生の社交クラブからも手助けを得ていた)。そして、その週が終わるころには、ある程度、女性として通るほどまでなっていた。だが、そこが問題だったのである。そう、その通り。パーティの席で彼らは酔っぱらってしまい、それぞれ、クラブに属する仲間の男子学生とのっぴきならない状況に陥ってしまったのだった。
その2年後へと時間を飛ばそう。3人はそれぞれ自分の女性性を受け入れている。社交クラブのシシー・トリオになるなんて、彼らが成約した時の予定には入っていなかっただろう。だが、そうだとしても、3人は、その後の展開のすべてに満足し、幸せを感じているのである。

047
「はあ? これが彼ってこと? ちょっと信じられないわね。こんな可愛い人が。元は男だったなんて、全然見えない」
「アレックス? ドレスの裾を捲って、こちらの素敵なレディにあなたの元の姿を見せてあげなさい」
「はい、ご主人様。私はアレックス・ロビンソンです。2年前まで男でした」
「あらまあ。それ、前からそんな小さかったの?」
「いや、そうとも言えないけど、でも、近いわね。アレックスはそもそも大きなおちんちんに恵まれていたわけではなかったわ。でも、ホルモンを飲ませてからは、ちょっと小さくなったのは事実」
「でも、どうやって? なんで?」
「訊いてくれて嬉しいわ。高校時代にさかのぼると、アレックスは野球部のスター選手だったの。学校でも一番人気の男子だったわ。高校3年の時、彼、あたしを卒業パーティに誘ってくれたのね。分かると思うけど、あたし、もう有頂天になったの。でも、その興奮が台無しになったのよ。彼ったら、あたしを置き去りにして、友だちと遊びに行っちゃったの。あたし、しばらく落ち込んじゃったわ。自殺しようかとも思ったほど。まあ、結局、立ち直って大学に進んだけどね。大学を出た後、医学系の学校に進んだ。それから間もなく、あたしは整形関係を専門とすることに決めたわ。
そしてすぐに復讐の計画を練り始めたわけ。彼はあたしからたくさん奪い取ったわけだから、あたしも彼から奪い取ろうと思った。男性性を奪って、シシーに変えてやろうと決めたの。
まずは、とてもとても中毒性が強いドラッグにハマるように仕掛けたわ。それは、そんなに難しくはなかった。そうなった後は、彼にドラッグを与える限りは、彼は、あたしが言うことを何でもするようになったわ」
「あなたを怒らせたりしない方が身のためのようね」

048
「何なの?」 とグレッグは聞き返した。少し怒っている。「そこに座ってあたしを見つめているだけ? それともあたしに何か言いたいことがあるんじゃないの? 姉さんのパンティを履いてるから怒ってるんだとしたら……」
彼の姉のアマンダが遮った。「いえ……違うのよ……ただ、こんなふうになるなんて予想していなかったので……」
「何が起こると思っていたの? お姉さんは、あたしがずっと彼に隠れて浮気してたことを告げ口したんでしょ? 彼がどう反応すると思っていたのよ?」
「私……分からないわ」
「あたしがあの奨学金を取れなかったらやっていけないのは、姉さんも知ってるでしょう? それがあたしにどういう意味をもつか知っていたはず。パパもママもいないんだから。あたしは、何もかも自分でしなければならないの。姉さんも、それを分かってよ」
「でも、これって……これはやり過ぎだわ、グレッグ」
「ギャビーよ。あたしの名前は、いまはギャビーなの。あたしのことは心配しないで、姉さん。あたしはもう大きいの。自分のことくらい、自分で世話できるわ」

049
「やだ! パパったら。ノックくらいしてよ!」 とジェイソンは叫んだ。
「お、お前……いったいどうしたんだ……」 ジェイソンの父のロイは唖然として呟いた。
「あら、そんなにメロドラマっぽくならないでよ。パパは気づいていたはずよ。あたし、隠そうとすらしてなかったもの。この何ヶ月か、女の子の服を着ていたことに気づかなかったなんてあり得ないわよね? 確かに、大学に行ってて、実家に戻るのはあんまり頻繁じゃなかったけれど、それでも……」
「パパは、お前が何かの一時的な段階を経ているだけだと思っていたのだが……」
ジェイソンは身体にタオルを巻き、父親の前に立った。「これが一時的なものに見える? あたしの彼女が、こういう姿のあたしの方が好きだと言ってるの。そしてあたしも彼女を愛してる。だから、これが新しいあたしなの。パパも、このあたしに慣れてよね」
そう言い、ジェイソンは浴室から出て、立ち去った。衝撃を受け言葉も出ない父親を後に置いて。

050
トムはクリームのように滑らかな白い脚を広げ、彼の疼くアナルに男性ストリッパーが勃起を押しこむのに合わせて、淫らなヨガリ声をあげた。ストリッパーが彼の首筋にキスをした。トムはパンティがブーツに引っかかっているのを感じている。彼は、横目で、別の男性ストリッパーが彼の妻に似たようなおもてなしをしているのを見た。
こうなった始まりはいつか? トムがそれを知ったのは、すでにもはや覆せない事実となってからだった。それは、いつもの何でもない日だった。その日、彼は、男は女とは違うと、ある種の仕事では、男の方が適してると意見を言ったのである。それが致命的となった。もちろん、彼は別に他意もなく言ったことだったのだが、彼の妻はしっかり記憶したのだった。
今なら彼は分かる。まさにあの日の翌日から彼の妻は彼を女性化し始めたのだと。その翌日から、トムの妻は彼にビタミン剤(実はホルモン剤)を飲ませるようになったし、新しいスタイリッシュな服(極度に女性的な衣類)を彼に買ってくるようになったし、ダイエットとエクササイズを義務付けるようにもなったのである。
トムは、初めて、彼のことを女だと勘違いした男に言い寄られた時、少し当惑した。だが、結局は、そういうことに慣れていった。彼が、男からの注目を期待したり、ある場合には喜んだりするようになるまで、ほぼ1年だった。そして、そうなってからは、あっという間に、彼は女性性を受け入れ、女性になり始めたのだった。
この写真は、彼の(結婚前夜の)女性だけの会で撮られたものである。(そう、その通り。トムは妻と離婚した。その後、彼はハンサムな男性と知り合い、結婚することになったのである)。皮肉なことに、トムの考え方は以前とほとんど変わっていない。彼(いや、たぶん彼女と呼ぶべき)は、伝統を重んじる人間であり、そうであるがゆえに、男女の役割に関する信念は頑強に守り抜いているのである。単に、彼は、以前とは逆の角度から男女の役割を経験しているところなのである。

051
結婚式は完璧だった。ウェディングドレスを着たトミーは素敵だったし、タキシードを着たシンシアは、ハリウッドの男優に負けぬほどハンサムだった。
そして、新婚初夜もこれ以上ないほど素晴らしかった。シンシアはストラップオンを装着し、彼女の新しい花嫁の身体をほしいままにした。
そして新婚旅行にでたふたりだったが、これもまた最高だった。ふたりはヌード・ビーチに行くことに決めた。最初の何分かは、躊躇いがちなふたりだったが、その後、ふたりとも解放的になり、素裸でいることを楽しみ始めた。回りの誰もが裸であることによる当り前さと、興奮と、エッチな気持ち。それがすべて同時に感じることができた。トミーはビキニを着た場合の水着の跡を気にしなくてもよいことが特に気に入った。
夕闇が近づいてきて、ふたりは、この後に待っている夜のことを思った。また今夜も素晴らしいセックスがふたりを待っているのである。

052
僕はシシーじゃない。ただ、今の仕事を失うわけにはいかないだけ……
クレイグは就職するのに必死だった。どんな仕事でも文句はなかった。仕事が必要だったのである。だが、彼は元々、小さな体格だったので、肉体労働には向いていなかった。それに、彼はアピールできるようなスキルもまったくなかった。それゆえ、何らかの仕事を得るのは簡単ではなかった。
とうとう、失業状態で何ヶ月も過ぎた頃、彼の姉が、彼女の職場で求職があることを彼に教えた。後から分かったことだが、その仕事は事務管理のアシスタントだった……
クレイグは応募することに決めた。面接の順番を待っている時、他の応募者がすべて女性だったのを見て、ちょっと恥ずかしかった。ともあれ、彼は、何とかなるさと、気にしないことにした。
面接は良い具合に進み、彼の姉が彼について良い評価を吹き込んでくれた。二日後、彼は職を得た。会社の秘書に対する服装規定を知っていた彼の姉は、就職が決まったその翌日に、彼をショッピングに連れ出した。クレイグは、姉が選んだ服を見て、ちょっといぶかしげに思った。……とても女性的な服に見えたから。でも、彼の姉は何が一番良いか知っているし、彼は心からその仕事に就きたかった。
勤務初日はへとへとに疲れた。だが、多くのことを学んだ。何人か友だちもできた。時を経るにつれて、彼は、自分が男だろうがそうでなかろうが、自分が他の秘書たちと同じように振舞い、同じような服装をするよう期待されていると悟った。それが意味することはというと、スカートを履き、ドレスを着て、ハイヒールを履き、お化粧をすることなのである。彼は女性ホルモンも摂取し始めた。
そして、いつしか彼は、時々、上司のストレスの解消をお手伝いしてるのだった……だが、ともあれ、彼は仕事を得ているのである。