私は、手を彼女に触れられたままになっていた。そして、チャンスが来たと感じ、思い切って言ってみた。
「じゃあ、一度、私たちのゲームにも加わってみると良いかもしれないわね」
手はまだテーブルの上、ゲイルの手に触れられたまま、私は体を起こし、少し不安を感じながらも、彼女の反応を待った。
ゲイルは、指で私の手を包むようにして握り、私の手を優しく揉んだ。
「誘ってくれないんじゃないかと心配していたのよ。昨日は一晩中、あなたたち2人のことを考えていたの。あなたたちがしていることに私も加われたら良いのにって願ったわ。昨日、ビックが興奮していたのには気づいたんだけど、最初、なぜだか分からなかったわ。でも、彼がファイル・キャビネットの前で前屈みになって、パンティ・ラインが見えたとき、やっと分かったの。何かが起きているというのは推測できたけど、まさかあなたもかかわっているとは、夢にも思っていなかったわ。女性の下着を履いて興奮する男性はたくさんいるけど、それを知っている妻たちというのは、そうたくさんいるとは思わないもの。ネールをきれいに塗って、リップ・グロスをつけてシャツの下、ブラが透けて見える格好をした彼と一緒に外に出ていたあなたを見たとき、私がどれだけ驚いたか、想像してみて。あなたたち、一体、何をしているの?」
ゲイルに打ち明けようとした、ちょうどその時、婦人が一人レストランへ入ってきて、私たちの近くのテーブルに着いた。私は、その婦人に微笑みかけた。
「私たち、同じ場所で食事をするのが好きに違いなさそうですね。まだ24時間たっていないのに、私たちが会ったのは、これで2回目ですね」
彼女は、昨夜、夫と夕食を取ったレストランにいた夫婦の奥さんだった。彼女は、私のことに気がつき、少し当惑したような笑みを浮かべた。それからゲイルに視線を向けた。驚いたように眉を上げ、ゲイルにも微笑みかけた。
「それに、こちらの方は、あなたたち素敵なカップルが店を出て行こうとしたちょうどその時に、店に入ってきたお方でしょう? まあ、それにしても、ほんとに、世間は狭いわ」
婦人は私に向き直り、話を続けた。
「あのね、私、昨日の、あの会話について考えたの。そして、何か少し立ち入ったことなんだけど、あなたにいつか訊いてみようと思ったことがあるのよ」
私は、すぐに昨夜の会話のことを思い出し、彼女の質問の話題がどんなことか、察しがついた。
「ねえ、でしたら、こっちに座って私たちと一緒に食事しません? あなたが話したがっていること、大体、分かります。それに、実のところ、私とゲイルも、その話題について話していたところなの」
婦人は心配そうな顔になった。
「あら、でも、お2人、立ち入った会話をなさっていたのでしょう? 私、邪魔をしたくないわ」
「全然、そんなことありませんよ。お願い、一緒して。この話、私たち3人全員にとってとても興味深いことのはずだから」
こう返事したものの、自分でもその大胆さが信じられないほどだった。いま私は、自分の性生活について、2人の女性に話そうとしている。しかも、そのうちの一人は、わずかしか知らない人だし、もう一人はまったく知らない人なのに。