「じゃあ、あたしたち、友だち?」 と訊いた。
「うん、友だち」 ウェンディはあたしの手を握って振った。ふたりとも、いろんなことが変化したのを実感していた。部屋の雰囲気が前より和やかな感じになったと思う。
「ねえ、友だちと言えば、あなたもリビングに来ない? ラリッサは週末いつも部屋に閉じこもりっきりじゃない? ジーナや私と一緒に映画でも観ましょうよ」
ウェンディはいつものような明るい雰囲気に戻っていた。どこか、はしゃいでるような感じ。彼女のそんな雰囲気は憧れてる点。あたしにはないから。ウェンディがいつもの調子に戻ったということは、「何も起こらなかったことにする」という、あたしと彼女の計画にピッタリだった。ウェンディに誘われ、ちょっとだけ、いつもの言い訳を言って部屋に戻ろうかと思った。だけど、あたしは気持ちを変えた。
「ええ、楽しそう! ちょっとポテトチップスを持ってくるわね。すぐに行くから」
そう言うとウェンディはにっこり笑って、部屋から出て行った。彼女の後ろ姿を見つめるのは避けなくちゃと意識的に視線をそらした。そうしなくても、ウェンディのお尻が目に浮かんでくる。つるつるの肌の丸いお尻によだれや精液がべっとりついたあの光景がどうしても頭に浮かんでくる。ダメダメ、あたしは、ウェンディをお友達としてのみ見るよう、意識を集中させた。
「全部、普通にしようね!」
そう言ってウェンディを見送った。でも、そう言いつつも、目を落とすと、手に持ったカップが見える。その中には精液と母乳がドロドロと混じりあってる。ああ、これって、どう見ても、普通じゃない!
シンクに流してしまおうかと思った。でも、その液体を見てると、そこからの香りが、ふと、鼻に入ってきた。頭がくらくらするような匂い! その途端、抑えきれない好奇心が襲い掛かってきた。
知らないうちに、それを口元に持ってきていた。そして、ゆっくりと、ひと口、啜った。液体が舌に触れた瞬間、思わず、ううっと唸ってしまった。匂いから思ったより、ずっとおいしかった。すごく甘いけど、不思議に惹きつけるようなムッとする味わいがあった。甘さは母乳からかな。ムッとするところはスペルマから? 別に冗談を言うつもりはないけど、文字通り、頭がくらくらした。ヤミツキになりそうな素敵な味。
飲んだとたん、乳首がツンと固くなって、ズボンの中のおちんちんがピクッと反応して、アソコがジュンと濡れるのを感じた。
こんなのダメと、頭を左右に振った。どこが、「普通」なのよ、これって! ダメよ、人間、ダメになってしまう! こんなこと変えなくちゃ。そう自分に言い聞かせた。それとも、本当は、あたしは、今の状態を変えたくないのでは?
あと一つだけ、願いが残ってる。何とかなるかも。
そう自分に言いながら、あたしは母乳とスペルマが入ったカップを手に、ウェンディとジーナが待つリビングへ行った。新しくできたお友だちと映画を観ながら、ゆっくり、啜ろうと。
* * * * *
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67 Part of me 「心の一部」
「ええ、その通り」とエリンは言った。「あるわよ。あたしにはおちんちんがある。で、あえて言うけど、あなたは、それを予想していなかったということよね。でしょ?」
「ぼ、僕は……」
「それって、予想してなかったって返事よね」 エリンはそう言って、体の重心を移動した。「でも、ボブ。ひとつ質問させてくれる? それって、重要なコト?」
「もちろんだよ、重要なことじゃないか!」 ボブはようやくまともに声が出せた。濃い色の髪を掻きむしり、エリンに背を向けた。「ちくしょう、もちろんじゃないか。重要だよ、エリン」
エリンは溜まっていたものを吐き出すようにトゲのある笑いをした。「どうしてよ? ソレがあるかないかで何か変わる? 知った後も、まだ、あなたがあたしに気を寄せているのは知ってるわ。これは消えてなくなることはないの。それに、誓ってもいいけど、あなたも気に入るはずよ。で、何が問題なのよ?」
「き、キミには……キミは男だったんだよ!」 とボブは叫び、再び裸のエリンの方を向いた。
「お願い」とエリンは両脚を閉じ、体を起こした。「あたし、男に見える? 真面目に訊いてるの、ボブ。あたしに男性的なところと言える点なんて、まったくないわ。あなたより、あたし自身がずっとそういう点について厳しい目で見てるから、自信をもってそう言える。何年も、男っぽいところの残りカスを最後の最後まで消し去ろうとしてきたのよ。何年もなの、ボブ。あたしは、少なくとも他の女と同じくらいは女となってるわ」
「でもキミには……」
「ちんぽがある」 エリンは手を振り、ボブをさえぎって続けた。「そのことはもう話しあったでしょ。こういえば安心するなら言うけど、コレはもう機能しないの。でも、あなたが、その方がいいなら、その手の薬もあるし、あたしも飲んでもいいわよ」
「何だって? いや、ダメだよ。僕はそんなことを望んでない……違う……僕はもう帰る」 ボブはそうは言ったが、出て行こうとはしなかった。
「だったら、帰れば? あたしにはあなたを止められそうもないから。でも、あなたは帰らないと思う。まだ、あたしのことを求めていると思ってる。そして、あたしのこの小さなモノを無視するための言い訳を探しているだけだと思う。でもね、あたしは、あなたにコレを無視させることはしないわ。コレはなくならないもの。もし、あたしと、たった一晩でも一緒になりたいと思っているなら、あたしのコレをちゃんと可愛がらなくちゃいけないでしょうね」
「でも……そんなこと言っても……僕にはできない……」
「できるんじゃない? むしろ、あなたには、そうしたいと思ってる部分があるんじゃないかと思ってるけど? 観念したら? 心が命ずるままに、すればいいんじゃない?」
「ぼ、僕は……それが、キミが僕にしてほしいこと?」
エリンは微笑んだ。「こっちに来て、コレにキスして。その後どうなるか見て、あたしたちの今後が分かるんじゃないかしら?」