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What you wanted 「キミが望んだから」
「え? いったい何? あなた誰? それに……まさか? チャドなの? 本当にあなたなの?」
「今はキャンディ。でも、そう。ボクだよ」
「いっ、いったい、どうしたの? それに、ちょっと待って、どうして服を脱いでるの? こんなところで、そんなことしちゃダメ。ちょっと、ヤメテ……えぇ?……ま、まさか、その胸、本物? ただのニセモノかと思ってたのに」
「気に入った? これ、キミのためにしたの」
「何ですって? あたしのため? なんのことを言ってるの?」
「覚えてる? キミは、ボクと別れる間際、ボクと本気でデートしたかったと言ったわよね? だけど、男には惹かれないので、できないと。だから、ボクの方から変えることにしたの」
「あ、あたし……なんて言っていいか、分からない」
「何も言う必要はないよ、ジーナ。キミはボクの一番の友だち。ボクはキミを愛している。キミと一緒になりたいと思ってる。そして、今は、そうなれるようになったわけ。これって素敵だと思わない?」
「ああ、何てこと。気分が悪くなりそう」
「それって、このおちんちんのこと? それなら、来週、切除する予定だから。それが終われば、ボクは完全に女。そして、ボクたち、一緒になれない理由がなくなるわ」
「チャド、というかキャンディ? あたし、本当に、本当にあなたがこんなことをしなかったらよかったのにって思ってるの。あたし……あなたと一緒にはなれないわ」
「何で? どうして? だってキミは……」
「いい? あれはウソだったの。あたしはレズビアンじゃないわ。女性には惹かれない。あんなことを言った理由は、あなたがあたしと別れようとしなかったから。あたし、あなたに気がなかった。あなたも気づいていたでしょ? それに、あなたがこんなことまでしてくれたからと言って、あたしの気は変わらないわ。本当にごめんなさい。でも、これって……気持ち悪すぎる。こんなこと、受け入れられる自信がないわ」
「でも、ジーナ、ボクはキミのことを……」
「イヤ、ヤメて! ……多分、あたしたち、お友達でいることはできると思う……いずれは、ね。でも、これってめちゃくちゃすぎるわ。あたし……あたし、もう行かなくちゃ。電話はかけてこないでね、お願いだから。あたしのこと、放っといてほしいの。これについて、考える時間が必要だから。
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Friendship's end 「友情の終わり」
「この時間までどこにいたのよ? もう朝の5時よ? 何時間も前に帰ってくるはずじゃなかったの? 死ぬほど心配してたのよ、シーン! もう少しで病院と警察に電話しようかってところだった」
「まず最初に、帰る時間とかスケジュールは決まってなかったよね? 何時まで帰れなんて言わなかったよね? 第二に、これは全部、君が考えたことだよね? ボクは君のことを思って、やってあげたことだよね? それ、覚えているよね、メリッサ?」
「分かってるわよ。それについては感謝してる。本当に。こういうことを頼める友達がいなかったの。てか、女の子の格好をしてくれる人なんて……」
「ああそうだよね。で、それについてだけど、ちょっと告白しなきゃいけないことがあるんだ」
「あなたの女装のことでしょ? あなたが前にもしたことがあるのは知ってるわ。だから、秘密とかそういうことじゃないの。少なくともあたしは知ってたことだから」
「それじゃないんだ。他のこと。ピートのことなんだ」
「彼があたしに隠れて浮気したってこと? それも知ってるの。そもそも、それがあったから、あなたに今度のことを頼んだのよ。ピートがあのクラブでどこかのイケイケ女を見つけたらしいって知ったもんだから……」
「ちょっと聞いてくれる? 君がいちいち口をはさんでくると厄介なんだけど、それがなくても、話しずらいことになりそうなことだから。ボクは、あのクラブに行った。そして、君に言われた通りのことをし始めた……」
「それで? ピートが近寄ってきた?」
「ああ。確かに。ボク自身は、そうなったときの心の準備はできていたと思っていたんだよ、メリッサ。それは本当。でも、それまでに2杯くらいお酒を飲んでいたし、ああいうことには慣れてなかったということもあったんだ。つか、ボクのそれまでって、ほとんど透明人間だったから。誰もボクのことを気にしなかったから。でも、それは当然だと思っていた。ほんとに。ボクは体が小さいし、退屈な人間だし、誰も、ボクみたいなオタクっぽい男に注目しないと分かってた。でも、今夜、あのクラブの店内に入った途端、そこにいたすべての人がボクに目を向けたんだ。しかも、温かい視線をね。ちょっと引きそうになったよ。でも、君の役に立ちたいと思っていたんだ。だから、勇気を振り絞ったんだよ」
「それは分かったけど、それとあたしのフィアンセとどんな関係があるの?」
「本当に、その話を聞きたい?」
「いいから、何があったか話してよ!」
「ピートはボクを彼の家に連れて行った。そして、そこで……分かると思うけど……やってしまったんだ。それ、本当にすまない、申し訳ないと思ってるんだけど……」
「え? あんた、あたしの彼氏とエッチしたって言ってるの?」
「だから……ピートはすでに浮気してたと思っていたんだろ? それが、はっきりしたってことなのかなって……」
「あんた、彼とやったのね! 本当にやったのね! いろんな知り合いがいるけど、あんただけはあたしの友達だと思っていたのに!」
「間違いだったんだよ! 自分でも何をしてるのか分からなかったんだ。彼も相当酔っていて、ボクが男だってことすら分からなかったみたいで……」
「いいから、出て行って」
「え、なんて?」
「あたしのアパートから出ていってって言ったのよ! あんたの顔なんか二度と見たくない!」
「でもボクは……」
「あんた、したいことは何でもできると思っていたんでしょ? それでも、あたしは気にしないと思っていたんでしょ? あんたはキモイ負け犬。だから、あたしがあんたのことを可哀想に思うと思ってたんでしょ? まあ、あたしも昨日まではそう思ってたかもしれないわ。でも、今は違う。今は、とっとと、あたしのアパートから出て行ってもらいたいわね。今すぐ。ほら、早く出て行きなさいよ。出て行って!」
「あんなことをするつもりじゃなかったんだよ」
「いいえ、あんたはそのつもりだったのよ。する気満々だったのよ。あたしも気づくべきだったわ。その点はあたしにも責任がある。だからこそ言ってるの。もう、あたしの前から消えて。出て行って。さもないと警察を呼ぶわよ」
「ボクたち友達だと思っていたのに」
「ええ、あたしもそう思っていたわよ」
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