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報復 第2章 (7) 

スティーブは、部屋の中の他の4人のことを無視しながら、ファイルを読むふりを続けた。もっとも、義理の父の顔に浮かぶ狼狽の表情と義理の母の顔に浮かぶ混乱の表情は目に留めていた。バーバラの顔からは、彼女が恐怖を募らせていることが分かった。バーバラの祖母であるりディアは、聞かされていることに不快を感じているのを明らかにしていた。りディアは、叱る口調でつぶやいた。

「バーバラ、あなたは・・・」

スティーブは、ファイルを最後のページまで捲り続け、裏表紙の内側のスリットから写真を3枚取り出した。前のめりになり、バーバラと彼女の両親の前にあるコーヒーテーブルの上に最初の1枚を置いた。バーバラはその写真を見て、たじろぎ、目を閉じた。

スティーブはビジネスライクな口調で語り始めた。

「ロイド・・・それにダイアン・・・、見て分かる通り、この写真には、高級宅地にある実に豪勢な大邸宅での、何か野外パーティのような場所における、私の妻が映っています。バーバラは、どういうわけか、このパーティのことについて僕に話をするのを忘れていたらしい。ですが、僕は、このパーティがいつ頃のことか探り出しました」

スティーブは顔を上げてバーバラを見た。バーバラは彼と目を合わせなかった。

「バーバラは、女の友達2人と一緒に、泊りがけでオースティンに買い物に出かけると言っていたんです。・・・僕は彼女の言葉を信じましたよ」

その短い言葉から、スティーブが嫌悪感を募らせていることが、よりあからさまになってきた。

「ああ・・・それが・・・皆さんにちゃんと見えているかどうか分かりませんがね・・・」 皮肉な口調になる。 「・・・このラファエル・ポーター氏の手は僕の妻のお尻に来ていて、楽しそうに揉んでいるんですよ。皆さんも、そう思いませんか?」

ロイドは生唾を飲み込み、信じられないという風に頭を振った。横目で自分の娘を見る。何か言いかけようとしたが、何も言葉が出てこなかった。

スティーブは明るい口調に変わった。

「まあ・・・『体を触られたことは無かった』という返答については、これくらいにしておきましょう。思うに、バーバラは、あのパーティのことについても、どういうわけか説明するのを忘れていたようですね?」

そう言ってスティーブは、テーブルの上、1枚目の写真の隣に、2枚目の写真をおいた。

「さあ、今度も同じパーティの写真です。先ほどバーバラに訊いたとき、彼女は『キスも無かった』と答えていましたよね。でも、どうしてそういう返答ができたのか、理解しようとしても、僕には本当に困ってしまうんです」

スティーブは前のめりになり、バーバラとポーターの2人の顔の辺りを、指先でトントンと叩いた。

「ええっと・・・見えませんか? 僕の妻がこの男とぴったり唇を重ねていますよね? 一目瞭然、とでも言えるんじゃないかと。これは、見間違いの可能性はありませんね。僕の愛する妻は、どうして、このお友だちと、こういう風にして唾液を交換し合ったことを言い忘れたのか、不思議に思われることでしょう。違いますか?」

カウチに座る3人からは、まったく返事がなかった。2人がけのソファに座るリディアから、鼻を啜る音が聞こえた。ダイアンとバーバラは顔を上げて、不満そうにリディアを睨んだ。だがリディアは、少しもたじろぐ素振りを見せなかった。

スティーブは、最後のタブロイド版の写真をテーブルに置いた。そして、体を起こし、リクライニングのソファの背もたれに背中を預けた。赤裸々な3枚の写真を、カウチに座る皆が見るにまかせた。

[2006/10/24] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)