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報復 第3章 (5) 

「おはよう、バーブ! 今日はずっとおひとり?」 

今度はケイティがバーバラに声を掛けた。ケイティはトムとは違って、立ち止まって会話をすることはせず、横を通り過ぎながら声をかけ、そのまま歩いていった。バーバラは、いやな感じがしていた。何かが起きている。でも、何が起きているのか分からない。

突然、後ろからジュンがバーバラの肘を取り、そのまま自分のデスクへ引っ張った。驚いたバーバラが声を出そうと口を開いた。それを制するようにジュンが言う。

「来るの・・・何も言わずに・・・いいから、来て」

バーバラは、こんな風にせかされて引っ張りまわされるのは嫌だった。品がない感じだ。引っ張られているため、スカートがずり上がってきている。顔が赤らんだ。もっと裾が長いスカートを履いてきたかったけど、裾の長いスカートは全部、スティーブが段ボール箱に詰め込んだのに混ざっていて、しわくちゃになっていた。まだ、ドライ・クリーニングに出していない。

今日、履いてきたスカートはレイフが買ってくれたスカートだった。普段なら、このミニスカートを履くと、少しセクシーになった感じがする。でも、今日はそういう感情は、求めていなかった。時々、レイフのことや彼が言ってくれたことが、少し、古びた印象になることがあった。

ジュンは自分の小さなキュービクルの中にバーバラを連れ込み、コンピュータの前に座らせた。そして、一度、深呼吸してから、Eメールのところをクリックした。

「バーブ、あなたに何が起きているか、・・・というか、あなたたちでも何でもいいんだけど、何が起きているか、私、知らないわ。でも、このメール、このビルにいる人、全員に送られていることは間違いないわよ」

ジュンは、「この男女をご存知ですか?」という不気味な件名のメールをクリックした。開封の後、下へとスクロールする。バーバラの眼に、文面が入った。

「この男女をご存知ですか? この2人は、どちらも既婚者で、かなり前から浮気を続けているのです。もし、バーバラ・カーティスとラファエル・ポーターが一緒にいるところを見かけたら、下にある番号に電話をし、いつ、どこで2人を見たかお教えいただけると幸いです。通報の秘密は最大限に厳守いたします」

バーバラは、最初、まったく理解できず、メッセージを読み直した。ジュンがさらに下へスクロールすると、バーバラとラファエルが並んだ写真が出てきた。その写真の下には、過去4年間、バーバラとスティーブが共有してきた家の電話番号が載っていた。

「ああ、なんて・・・ひどい・・・ああ・・・」 

バーバラはうめき声をあげた。

[2007/05/23] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)