レオンは、両手を腰にあてがい、黙ったまま立っていた。金色の眼がギラギラ輝きながらイサベラの体を調べまわる。 イサベラは、このような表情をするレオンを見るのは初めてだった。2度と彼のこのような表情は見たくないと願った。冷徹でいかめしい顔をしているので、その鋭い両眼が、なおいっそう激しく怒りに燃えているように見える。あごの辺り、筋肉がひくひくと痙攣するのが見えた。イサベラはレオンから視線を外し、両手で頭を抱え、そして彼の動きを待った。 「イサベラ・・・」 レオンはそれしか言わなかった。静かにイサベラの方へ近づく。ベッドの前まで来て、止まった。彼の両脚がイサベラの両膝に触れていた。 「見せるのだ」 イサベラは、レオンの言葉の意味が分からず、伏せ目がちに彼を見上げた。 「マリイがお前を濡らしたかどうか、知りたいのだ」 レオンは、ゆっくりと、そして明瞭に伝えた。 イサベラは驚いて眼を見開いた。自分の愚かさに対する悔やみが一瞬、心によぎった。レオンに見せることなど耐えられない。イサベラはただ頭を左右に振るだけだった。 「見せなさい!」 大きな声が轟き、イサベラはびくっとし、首の後ろの髪の毛が逆立つのを感じた。 しかたなく両脚を開いていく。赤毛の陰毛がわずかに姿を見せた。 「もっと広げるのだ!」 レオンの命令が飛ぶ。その言葉は、マリイが使った言葉と同じだったのを思い出す。イサベラは命令に応じた。わざわざ自分の股間に目を落とすまでもなく、膨れ上がった陰唇が、欲望を辛く耐え続けていたため、湿り気で光沢を持ち輝いていることをイサベラは知っていた。 「その柔らかな太腿の間に潜む貴重な宝石を、お前のご主人様に隠すことはない」 レオンの言い方は氷のように冷たかった。 イサベラはまぶたを固く閉じながら、両手をゆっくりと自分の太腿の内側にあてがった。一度、大きく深呼吸した後、両手の指を膨らんだ唇に沿え、ゆっくりと左右に広げていった。自分の恥ずかしい部分を赤裸々に露出していく。 レオンは長い間、黙ったまま、イサベラの膨らんだ女肉を見下ろしていた。自分自身で分泌した体液で濡れきっている。
僕は電話を置き、その後は、できるだけ普通に見えるよう振舞った。それでも、早く仕事時間が終わらないかと待ち遠しかった。仕事が終われば、再び、黒髪のミス・ビッキーに戻ることができる。 もう一度、洗面所に行き、そこの引き出しを覗きこんだ。化粧道具が完璧に揃っている。引き出しを閉じ、クローゼットに向かった。クローゼットの中、ラックには、美しい黒いドレスが吊るされていた。袖と首回りはレースの生地で、さらにドレス全体を覆うようにレース飾りがついている。裾は僕の膝上20センチくらいまでしかなかった。一体、僕に、こんなドレスを着ることができるだろうか? ドレスを取り、自分の体の前に掲げ、鏡の方へ行った。本当に綺麗な服だ。どうしても、試しに着てみたくなってしまった。僕はドアのところに行き、そこから顔を出してみた。オフィスには、まだ誰も客はいない。 「ゲイル? もうちょっとだけ、お客さんが来ても、待たせておいてくれないか?」 「分かったわ、ミス・ビッキー! さあ、試着してみると良いわよ」 またも、ゲイルがウェブ・カムで僕のことを見ていたのに気づいた。 僕は、完全に化粧をしてから、ドレスを着たいと思っていた。まず、洗面所に行き、化粧セットを取り出し、自分のデスクへ戻った。椅子に座って、セットのふたを開ける。鏡の位置を整え、目の回りから化粧を始めた。 濃い目のアイ・ラインやアイ・シャドウを使って、ページ・ボーイスタイルのかつらと黒ドレスにマッチさせるようにした。目を整えた後、顔にとても軽めのパウダーを当て、頬骨には明るい赤の色をつけて肌の色を強調させた。何となく、これで、黒皮の首輪と乗馬ムチがあったら、ぴったりになるのではないかと感じた。 鏡の中の自分に、艶かしい顔を見せ、それから、ゲイルが見ているのを知りつつ、わざとウェブ・カムの前に立ち、シャツとスラックスを脱いで、脇に置いた。ハイヒールと女性用の下着だけを着けた格好で立ちながら、繊細な生地の黒ドレスを手にし、背中のジッパーを降ろし、足を踏み入れる。ドレスを手繰り上げ、腰を包み、両腕を優美な袖に通し、身体全体にフィットさせた。 しかし、背中に手を回したが、ジッパーに手が届かないことに気が着いた。 すると即座にゲイルがドアから入ってきて、僕に歩み寄った。 「お手伝いが必要のようね?」 僕はゲイルに背中を向け、ジッパーをあげてもらった。その後、彼女は僕を前向きにさせ、上から下へと全身に視線を走らせた。 「すごく綺麗よ、ミス・ビッキー!! さあ、見てみて!」 僕は鏡の前に戻った。無意識的に溜息をついていた。ひとりでに僕の両手は、身体全体を撫で始め、セクシーなドレスの、滑らかであると同時にしなやかな生地を撫でまわっていた。 僕の脚は、脚フェチの男が見たら喜ぶような形をしているし、ハイヒールのおかげで、ふくらはぎとヒップは挑発的とすら言えるような姿を見せていた。 僕の後ろにいたゲイルは、背後から僕に擦り寄ってきて、両腕で僕に抱きついた。片手で僕の胸を触り、もう片手をドレスの裾から中に入れ、股間へと這わせてくる。うっとりとした顔をして、僕の首もとにうなだれかかってくる。 その時、突然、オフィスのドアの方で、ハッと息を飲む声が聞こえた。鏡の中、ゲイルの向こう側に映る人影に目をやる。そこには、僕の顧客の一人である、女性が驚いた表情で立っていた。片手で口を覆っている。 「ほんとうにごめんなさい。外のデスクに誰もいなかったものだから、ひょっとして、アルアさんがここにいると思ったの。本当に、邪魔をする気はなかったのよ」 ゲイルは、素早く、平然とした表情に戻りながら、この女性が言ったことを理解し、答えた。 「こちらこそ、申し訳ございません。誰もいないと思っていたので。アルア氏は、ちょっと席を外しているところなのです。こちらは、私のルームメイトのビクトリアです。ご用件は何でしょうか。私にできることでしたら、お教えください。それとも、特に、アルア氏にご用事がおありだったのでしょうか?」 女性は、驚いた状態から少し回復したようだった。 「いいえ、この次の時まで待つことにしますわ。それに、あんなふうに割り込んでしまって、本当にごめんなさいね。ビクトリアさん? あなた、本当に素敵な人ね。私でも、ゲイルがあなたを愛しても、ゲイルのことを咎めることはできないわ。もっとも、私には、そういうタイプの関係は信じられないのですけどね。まあ、でも、こういうことは、その人それぞれのことですものね。ゲイル? アルアさんに私が立ち寄ったことを伝えてくださいね。電話してくれると助かるわ。ビクトリアさん、あなたに会えて良かったわ。本当に素敵よ、あなた。それに、そのドレスも素敵。じゃあ、また、ゲイル」 彼女はそう言って出て行き、僕たちは外のドアが閉まる音を聞いた。僕ははあっと息を吐いた。その時になって、ずっと息を止めていたし、わずかに震えていたことに気がついた。一気に疲れて、デスクに座り込んだ。あの女性が僕のことに気がつかなかったことが信じられなかった。 ほっとする間もなく、デスクの電話が鳴った。取ると、相手はドナだった。
それを見て、あっという間に、私の気持ちは、怒りから嬉しさに変わっていた。なぜ怒りかと言うと、ビリーがコピーを持っていたから。そしてなぜ嬉しかったかと言うと、彼がそれを見ていたから。間抜けなことを言ってるように聞こえるのは分かっている。だけど、このオフィスは文字通りあらゆるビデオでいっぱいで、ビリーならどんなビデオでも自由に選べるのに、その中から私のビデオを選んだということは、彼が私のビデオを好きなのかもしれないと思ったのだった。私は、それを見てドキドキしたのだった。 ビリーのところに近づいたら、ようやく彼は私たちが部屋にいたことに気づいたようだった。彼は、あっと声を上げ、飛び上がるようにして立ち上がった。だけど椅子に足を取られて、尻餅をついて転んでしまったのだった。 彼は慌てて立ち上がり、片手を胸に当てて、息を急かせながら言った。 「ああ、驚かさないでくれ。入ってきたのが聞こえなかったよ」 私はビリーのところに歩み寄り、彼の手を握った。手が震えているようだった。 「驚かせて、ごめんなさい。入ってくるとき、ちゃんと音を立てたと思ったんだけど。多分、あなたは、ご自分がしていたことに夢中になっていたんだろうと思うの」 ビリーは、見ていたビデオがまだ再生中だったことに気づき、手を伸ばして慌ててスイッチを切った。 「いや、ただ、新しい作品の編集をしていただけで、何も聞こえなかったんだ。確か、マークがこの作品を求めていたはず」 ビリーからビデオを受け取った後、私は彼に訊いてみた。 「それじゃあ、もう仕事は終わりで、家に帰れるわね。ガールフレンドがあなたの帰りを待っているんじゃない?」 「いや、まだやり残した仕事が山ほどあるんだ。それに、僕にはガールフレンドはいないよ」 ビリーは私たちから目を背けながら言った。 私は、言われる前からそうだろうと思っていた。 「ねえ、ヘレン? ビリーも私たちと一緒にクラブに連れて行くのはどうかしら? 彼、服は気が得なければならないと思うけど、そんなに時間が掛からないと思うの」 「それは素敵ね。ビリー、どう? 私たちと一緒に行かない? とっても楽しくなるって約束するわよ」 ビリーにそう言うヘレンの瞳がきらきら輝くのが見えた。彼女も私と同じことを考えていると分かった。ビリーは、今夜、とっても運が良いことになりそう。 でも、これは、ビリーが望んでいたこと以上のことだったらしく、彼はおどおどしながら答えた。 「誘ってくれてありがとう。でも、僕には片付けなければいけない仕事がまだまだあるんだ。マークも、僕には、仕事が残っているのにパーティ遊びに浮かれて欲しくないと思うんじゃないかな」 私は、素早く携帯電話を出して、家に電話した。呼び出し音が3回目でマークが出た。 「マーク? ヘレンと私で、ビリーをクラブに2、3軒ほど連れまわしても良いかしら? ビリーは、そんなことあなたが気に入らないだろうって言うの」 マークは笑っていた。「アハハ。ビリーを外に連れ出せるなら、ほんとにそうしてやってくれ。彼は働きすぎなんだよ。俺もいつも遊びに出かけた方が良いって言ってるんだ」 「マークから彼に行ってくれると助かるわ。彼、私が言っても信じないと思うの」 そう言って、携帯をビリーに渡した。 ビリーはしばらく話しを聞いた後、「でも、編集を求めていた、あの作品はどうなるんですか?」と言い、それからまた話しを聞いて、「締め切りに間に合わなくても、本当に良いんですね?」と言った。そして、「ええ、本当に大丈夫なら、分かりました。行くと思います」と返事し、携帯を私に返した。 電話を受け取った後、マークは私宛に言った。 「君たち、ビリーにはお手柔らかにお願いするよ。彼がTガールに興味があるかどうかは知らないんだ。だから、彼が何か頼んでも、全部、してあげる必要はないからね」 「マーク? 私は一度も自分を無理強いして他の人に合わせることはしないというのを分かって欲しいわ」 ビリーに聞こえないように、小さな声で言った。 マークはくすくす笑っていた。「オーケー、分かってるよ。じゃあ、3人で楽しんできてくれ。それから、何かトラブルになった場合を除いて、家には電話してこなくても良いからね」 私はじゃあと挨拶をして電話を切った。それからビリーに向かって言った。 「さあ、ビリー、早速、今夜のために着替えをしましょう」
「奥さん?」 ヒューストン氏はバーバラに顔を向けなおして訊いた。「奥さんは、ご主人に、許しを求めましたか?」 「バーバラは私に許しを請う必要はないですよ」 スティーブが素早く口を挟んだ。 「請うとは言ってませんぞ」 ヒューストン氏も同じく素早く返事した。 ヒューストン氏は、そのような口出しがあることを予感していた。もっとも、多くのクライアントの場合、そのような口出しをするのは、夫婦の内、道を外した方の配偶者であるのが普通だったが。彼は、スティーブの即時の反応が、自分の妻をかばうことであったことに勇気付けられた気持ちだった。これは良い兆候だ。 「私は、求めたかと言ったのです」 ヒューストン氏は、そう繰り返し、再びバーバラへ顔を向けた。 「いかがです?」 優しい口調で訊く。 バーバラは、躊躇いがちに頭を横に振った。神経質そうに唇を舐めて濡らす。バーバラは、ヒューストン氏が続けて何か言うのを待っていた。だが、彼は何も言わなかった。スティーブの方へ顔を向け、スティーブが自分の顔をじっと見つめているのに気づいた。 「スティーブ・・・」 バーバラは小声で囁いた。「私は、本当に馬鹿だったわ。馬鹿を10倍にしたほど馬鹿だった・・・いろんなことをしてしまった・・・人の妻なら決してできないことばかり・・・そんなことをした自分が嫌いなの。こんな大変なことをしてしまったことについて、どれだけ済まないと感じているか、それをどう伝えたらよいか分からないの」 「そうだね」 スティーブは優しく答えた。 「え、何が?」 バーバラは、驚いた様子だった。 スティーブは大きく息を吸って、吐き出した。彼は、自分でも今から大きな間違いをしようとしてるのをほとんど自覚していた。 「君を許すことにするよ・・・嘘の数々・・・裏切り・・・えーっと・・・君がしたすべてこのことについて」 彼はゆっくりと話した。正しくないと彼が感じている、バーバラが行ったすべてのことを、ひとつひとつ項目として述べるつもりじゃなかったと思ったが、後の祭りだった。 「それらをすぐに忘れることはできないだろうし、ひょっとすると、永遠に忘れられないかもしれないが、少なくとも君がどれだけ済まなく思っているか・・・どれだけ後悔しているかは理解している。そしてそのことを認めることにするよ」 スティーブは何か他のことを付け加えようとしたが、すぐに、言わない方が良いと考え直した。その代わり、自分の座る椅子とバーバラの座る椅子との間の隙間に手を伸ばし、彼女の手を握った。そして、優しく手を握り締めた。 ベルン・ヒューストンは、そのひと時をしばらくそのまま続けさせ、それから、時を置いて、次の段階へ進んだ。 「ご主人?」 静かな声で呼びかけた。「ご主人は、奥さんに、あなたがもたらした痛みについて許しを求めましたか?」 スティーブは、無意識的に、バーバラの指を握る手に力を込めていた。目を細め、ほとんど、横線のようにさせながら、大きなデスクの後ろに座るカウンセラーの顔を観察した。 「痛みについてです、ご主人?」 ヒューストン氏は、繊細に気を使って、改めて訊いた。
「誰とやったか知ってるぜ」 第4章 I Know Who You Did Last Summer Ch. 04 by qqnforyou6 ごろりと寝返りを打ち、片目を開けて、何時だろうと時計を見た。「ヤバイ!」と声を上げて、ベッドから飛び上がった。もうすぐ、両親が家に帰ってくる時刻になっていたからだ。 昨夜、ベッドに入ったとき、朝の5時近くになっていたのは知っていたが、こんなに遅くまで寝ていたとは思わなかった。パソコンにスイッチを入れ、立ち上がるまでに、素早くシャワーを浴びることにした。 シャワーから戻り、そこいらに散らかってた服を着て、パソコンの前に座った。メールアカウントがあるウェブ・サイトにアクセスする。案の状、グラフ先生からのメールが来ていた。 「このならず者! 私の家に忍び込み、あんなイヤラシイことをやっておきながら、よくも、いけしゃあしゃあとしてられるわね! 小さな秘密を振りかざして、それをネタに、あんたの病的な歪んだゲームをするなんて、道徳心がひとかけらもないの? 私の結婚指輪はどこにあるのよ? 昨日の夜、それを返す約束だったじゃない? お願いだから、指輪を返して。さもないと、否でも夫に話さなければならなくなるし、警察にも電話しなければならなくなるのよ。簡単な方法があるわ。どこかで会って、そこで指輪を返してくれればいいの。それに同意してくれたら、このことは何も言わないと約束するわ。どこでなら会えるか、場所を指定してくれれば良いから」 俺は、画面を見ながらあきれかえっていた。先生は、いまだに、俺が関係を支配していること、決定を下すのは俺であることを理解していないとは。少し時間をかけてメッセージを考え、おもむろに打ち込み始めた。 「ならず者だって? おいおい、グラフ先生、先生にはすっかりがっかりしてしまったよ。ご主人様に呼びかけるときは、どう言ったらよいか教えただろう? どうやら、もっと調教が必要のようだな。『あんたの病的な歪んだゲーム』と言うけど、俺の見たところだと、このゲーム、先生も楽しんでいたようだぜ。昨夜は、お前のご主人様のおかげで、先生のあらゆる妄想や夢が叶えられたはずだ。お前のご主人様は、先生自身でも想像できなかったほど激しく先生をイカせたのだよ。しかも数え切れないほど何度も。それを経験させてくれたのは、お前のご主人様であって、旦那じゃないのだよ。お前のご主人様は、お前は、まだまだ、結婚指輪を返せるような段階にはなっていないと感じている。指輪を嵌めても良いとみなせるだけ充分に調教を受けたと判断できたら返してやろう。あと、もう一つ、警察を呼ぶと言うが、お前は、そのつもりなら、もうとっくに呼べていたはずだぜ。なぜ、今まで警察に言っていない? 旦那にもなぜ言っていない? それは、失うものの方が多すぎると分かってるからなのだよ。また、すぐに会うことになるだろう。いつ、どこでかは、後で教える。ご主人様より」 メールを発信し、パソコンを閉じた。階下に降り、キッチンに行く。気が着かなかったが、すでに両親が帰っていた。二人の手伝いをし、夕食のテーブルを整えた。 いつもどおりの夕食だ。親たちは、その日にあったことを話し合い、俺はおとなしく聞いている振りをした。だが、頭の中では、例のクラブのことを考えていた。母親が、1度ならず、俺がぼんやりしていると注意し、何を考えているのと訊いてきた。エロいセックス・クラブのことを考えているんだよとも言うわけにいかず、俺は心の中でくすくす笑い、夕食をそそくさと済ませた。 夕方近くまで寝ていたことに罪悪感を感じていたので、食器洗いは俺がすると申し出た。俺がテーブルを片付け、洗い物をしている間、両親はリビングに行ってテレビを見ていた。 シンクに水がたまるのを見ながら、再び、例のクラブのことを考えていた。あのクラブの光景が頭に浮かぶ。食器を洗い始める頃には、ブラッドの母親のことを考え始めていた。ステファニは俺の罠に嵌まってくるだろうか? 金は用意してくれるだろうか? 俺を捕まえようとするだろうか? 確かにしなければならないことが一つだけあった。今夜、ブラッドの家に行って、ステファニがどんな様子か確かめなければならないということだった。 食器をすべて洗い終え、キッチンのすべてときちんとした後、リビングに顔を出した。 「ちょっとブラッドの家に行ってくるけど、いいかな?」 「良いわよ、気をつけて」 母親の返事を背に受けながら、俺は玄関から出て、ガレージに向かった。 ガレージから自転車を出し、飛び乗る。6000ドルの現金を思い浮かべながら、自転車を漕いだ。ブラッドの家の前に着き、自転車を前庭に横倒しにし、玄関ポーチへ駆け上がり、ドアをノックした。 出てきたのはブラッドだった。 二人で中に入り、小部屋に座りテレビを見た。ブラッドは音楽ビデオの局にチャンネルを変えた。ちょっと驚いたのは、ブラッドの母親がまだ仕事から帰っていないことだった。音楽のプロモーションビデオやコマーシャルを見ながら、ブラッドと雑談をしていたが、どんな話しをしていたかほとんど覚えていない。頭の中は、あいつの母親と例のクラブのことだけだったから。ブラッドの父親も帰ってきて、しばらく俺たちと一緒にテレビを見ていた。俺たちは雑談を続けた。 「そういえば、お母さんはどこに行ったのかなあ」 ブラッドの父親がブラッドに訊いた。 「今夜は、どこかに行くって話しは聞いていないけど?」 ブラッドはテレビの方を向いたまま返事をした。 「持ち帰りの料理を買ってきてくれると良いんだが。こんなに遅くなるのは、お母さんらしくないからね」 ブラッドの父親は、そう言って、時計を見上げた。 ブラッドの母親は、金を集めようとしているのか。そう思いながら、俺は思わず邪悪な笑みを浮かべていた。とたんにズボンの中、勃起が始まるのを感じ、素早くテレビに集中して紛らわせた。ようやく玄関前に車がくる音がした。車のドアがバタンと閉まり、玄関のドアが開く音が聞こえた。 「遅くなって、ごめんなさい」 ビジネス服を着たステファニが俺たちの前を歩きながら、そう言った。寝室へ通じる廊下を進むブラッドの母親を見ながら、俺は素早く、そのゴージャスで熟れた体の隅々に目を走らせた。
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