リンダはオーガズムが襲ってくるのを感じた。その時、彼女が思い浮かべていたのは、夫の姿ではなかった。もっと遥かに強靭で精力的な誰かの姿だった。そして、その男に襲われている自分。
目を開け、下を見ると、毛布の中、ひざまずいて舌で自分を喜ばせているブルースの姿が見えた。リンダは自分がパワーを得て、優位に立ったような感覚を覚えた。そして、その感覚があるといっそう興奮し、燃え立つことになると知ったのである。
リンダは、強く股間を突きあげ、夫の顔面に押し付けた。ブルースがくぐもった声で抗議するのが聞こえた。だが、それを無視し、彼の頭をつかみ、さらに強く自分に引きつけた。そして強烈なオーガズムに達する。
どれだけ時間が過ぎただろう。リンダは、ようやくリラックスし、呼吸も元通りになり始めた。その時になって初めて、まだブルースの顔を太ももで強く挟んだままでいたことに気づいた。
足の力を緩め、夫を解放する。
「ありがとう、あなた」
ブルースは毛布の中から這い出て、ふらふらになりながら立ち上がり、椅子に戻った。昨夜とまったく同じく、彼はなぜかリンダと視線をあわせるのを避けている様子だった。ナプキンに手を伸ばし、濡れて、テカテカになっている顔を拭こうとした。
「あなた、それ、しないで。そのままのあなたの顔が、私、大好きなの。そのままでいてくれる?」
リンダは、ブルースが、自分の要望に従うのを見て驚いた。愛液が顔から首へと垂れ流れているほどになっているというのに。
「それで・・・」
ようやくブルースが言葉を発した。
「それで、お前は、まだ金曜のパーティに行きたいと思っているんだね?」
「分かる?・・・前よりも、もっと行きたくなっているわ!」
* * * * * * * * *
金曜日の夜、ブルースとリンダは車で輪のパーティに向かっていた。二人にとって初めての参加である。リンダは興奮していたが、ブルースは疑念を深めていた。
「これ、いいことなのかなあ・・・何だかよく分からない・・・」
「もう、みんなを白けさせないでよ! あなたたち男の人は、これまで何年も、この都市で最高クラスのセクシーな女たちと遊んでこれたじゃない? 今度は私たちの番だと思わない?」
「まあ、そうだけど、でも・・・分からない・・・」
「心配しないで、あなた。きっと、楽しいことになるはずだから」
「とにかく、僕たちは何もする必要がないということは覚えておいてくれよ。前にも言ったが、直接は参加せず、どんな様子かをチェックするだけなんだから」
・・・まるで、何かが起きるのを予感してるみたいな言い方ね、とリンダは思った。
その30分後、二人は会場に到着した。大邸宅と言ってもよいような家だった。庭には多額のお金がかけられている印象で、前庭を照らすトーチも巨大だった。
「私、きれい?」 リンダが訊いた。
「ああ、最高だよ」 ブルースは誠実にそう思って答えた。
実際、リンダは、この晩の集まりのためにずいぶん手間ひまをかけてきたとブルースは思っていた。持っているドレスの中でも一番セクシーな、胸元が開いたドレス。最高のハイヒール。ヘア・サロンにも行ったし、新しい香水もつけている。彼は妻の姿を見て、昨夜のパティオでのことを思い出すだけで、下半身がそわそわしてくるのを感じた。
ブルースの楽しい夢想は、突然、玄関が開いたことで遮られた。二人の前には、美しい女性が立っていた。40代半ばの黒髪で長身の女性。服装は、まさに悩殺的。
「ハイ! お二人は、リンダとブルースよね? どうぞ、中へ入って。私はレイチェルです」