「でも、今日はあなたの日。だから、今日これから、わたしたちすることを、あなたが決めて…。それで? 次に何をしたい?」
答えを考える時間はほとんどいらなかった。「僕の口であなたを愛したい。それよりも良いことなんて、何も浮かんでこない」
アンジーはくすくす笑った。「うふふ。それだと、私が楽しむことになってしまうじゃない? 今日はジャッキーの日なの。私がジャッキーを喜ばせたいのよ」
私はアンジーの唇に優しくキスをして言った。
「アンジー? まだ分かっていないようだね。僕はあなたに快感を与えることで快感を得ているんだよ。僕がどれだけあなたのあそこを舐めることが好きか、知ってるはず。もし許されるなら一日中でも舐めていられる。今日は僕の日なわけだから、僕がしたいことを自分で決められるはず。だったら、僕は口と舌を使ってあなたを喜ばせたい」
「ウフフ…。分かったわ。でも、本当に自分の快楽を追い求めてね、お願いだから。今日は、これから後、あなたを止めたりしないから」
アンジーはそう言って私にねっとりとキスをした。
それから私は1時間以上、口を使ってアンジーの肉体を崇め続けた。「崇める」という言葉以外に、私がしていたことを表す言葉が見つからない。最後にようやく私のペニスを彼女に差し込み、抜き差しをしつつ、彼女の中に激しく果てた。その後、アンジーは私にあそこを舐め清めできるよう、私の顔の上にまたがり、腰を降ろした。
その日、私たちは夕方の6時頃までベッドにいた。その時間になって、アンジーが夕食を作る時間がなくなってしまった。結局、宅配ピザを頼み、二人で出来たてのピザを食べながら、テレビを見て過ごした。
ピザを食べてる時、アンジーは私にバレンタインのプレゼントをくれた。最初のプレゼントはゴールドのブレスレットと、それにマッチした足首につけるブレスレットだった。次のプレゼントは、ゴールドのネックレスとイヤリング3つだった。イヤリングのひとつは、細いゴールドの鎖に半カラットのダイヤがぶら下がってついているペンダント型のイヤリングだった。食事の後、再び寝室に戻り、また愛し合った。
その夜10時。私はジャックに戻らなければならない時が来た。女性化した身体を戻すため、まずは、乳房の取り外しから始めた。これには割と時間がかかった。少しずつ溶剤を塗って、偽乳房の接着面が緩くなるのを待たなければならない。それが終わった後、今度は偽爪を剥がし始めた。それに手からマニキュアを全部落としていく。足の爪の方は、見られる可能性がほとんどなかったので、マニキュアを塗ったままにしておいた。顔のお化粧は簡単に落とせるので、朝に落とすことができる。夜のうちにしておかなければならないことをようやく終えた私は、ベッドに入り、アンジーの腕に抱かれて、安らかな眠りに落ちた。
つづく
「裏切り」 第6章 地獄の7段階(
参考) by AngelCherysse
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これまでのあらすじ
ランスは、妻のスーザンと元カレのジェフの浮気を知りショックを受ける。ジェフがシーメール・クラブの常連だったのを突き止め、クラブへ行く。そして彼はそこでダイアナというシーメールと知り合い、彼女に犯されてしまうのだった。だが、それは彼の隠れた本性に開眼させる経験でもあった。1週間後、ランスは再びダイアナと会い女装の手ほどきを受ける。翌日、ふたりはデートをしたが、そこで偶然、スーザンとジェフに鉢合わせし険悪な雰囲気になる。ダイアナはランスをクラブへ連れて行き、本格的な女装を施した。ランスはリサと名前を変え、ダイアナの友人の助言も得て、行きずりの男に身体を任せる。それを知りダイアナは嫉妬を感じたが、それにより一層二人のセックスは燃えあがるのだった。
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月曜日は、一週間の中で一番忌まわしくて嫌悪を感じる日だ。その理由は、何と言うこともない、自分自身にならなければならないという理由だ。まず最初に、その朝、「自分」はどの「自分」であるかを、まずは把握しなければならない。会社では「ランス」としての自分が顔を出さなければならない。以前の決まり切った日常に戻り、会社に行き、金儲けをする。「隊長! 腰抜け中隊(
参考)配備に戻りました!」と。簡単だね? でも、「リサ」の名前で理性が吹っ飛ぶような人生で最も激しい週末を過ごした後に仕事に戻るとなると、これは、とてもではないが、簡単なことなどとは言えない。アイデンティティの危機? それどころじゃない! よくある憂鬱な月曜日(
参考)とはわけが違う。まさに地獄のようなもの。しかも7段階すべて揃った地獄のようなものなのだ。
地獄の第1段階は、起きたとき独りであること。昨夜、私はダイアナとエロティックなディナーを食べた後、彼女を家に送っていった。
その時ダイアナは優しくたしなめるように言った。
「私にはクラブの仕事があるし、あなたも明日、朝から仕事をしなきゃいけないでしょ?」
私は土曜日の夜と同じようにダイアナについてクラブに行くと言ったが、彼女は頭を振って断った。
「今回はダメ。こんなふうに言うととても意地悪そうに聞こえるかもしれないけど、私、あなたがクラブに来て、男たちに誘われるのを見たくないの。この前の夜も、私、どう扱ってよいか分からなくなってしまったし、また同じようなことになったとき、うまく扱えるとも思えないから。こんなことを言って、自分がすごく偽善的になってるのは分かってるわ。でも、こういうこと…つまり私たちの関係ね…これ、あなたにとっても初めてのことだろうけど、私にとっても同じように初めてのことなのよ。だから、あなたと付き合うというのがどういうことなのか、それに慣れる時間をちょうだい。その後で、何とかして自分の中で折り合いをつけるようにするから…つまり、あなたが他の男と…。言っている意味が分かると思うけど…。ともかく、次の週末にはまた一緒に過ごしましょう。約束するわ。いいわね?」
ちょうど私が自分のノーマルな生活に戻らなければならないのと同じように、ダイアナも彼女の普段の生活に戻らなければならないのだろう。
ダイアナは私のマンションを自分の「ホーム」とみなしてることを強調しようと、購入したランジェリーやストッキング、それにコルセットを、丁寧に畳み、彼女用の引き出しにしまった。それから私も同じようにするのを手伝ってくれた。ダイアナは、ガウンやサンダル、そして毛皮のコートは私のクローゼットに入れたままにし、ジュエリーも戸棚に置いたままにした。
ダイアナは、自分の大切な衣類を私の衣類と一緒に置いておくこと、しかも、こんな親密な感じでそうすることが特別な意味を持っているようで、どこか心暖かな曖昧とした感情が湧いてしまうわと打ち明けてくれた。
ダイアナは、私が身につけたスエードのスーツ、ブラウス、それにミュールを私に譲ってくれた。
「これ、本当にあなたに似合っていたわよ。…あなたが私に買ってくれたものに比べると、見劣りするし、とても小さくて不釣り合いだけど、私の愛情のしるしとして、受け取って」
ダイアナが帰っていった後、私は朝のロードワークに出た。夜明け前のひと気のないストリータビルの街路を走る。何ブロックか先、レイク・ショア・ドライブは、早くも朝の交通渋滞が始まっていた。彼らは、6時、7時にパンチカードを押すブルーカラーの人たちや、企業内の出世の階段を登ることの価値が、ちょっとうたた寝して遊ぶことの価値より上回っているワーカホリックのホワイトカラーの人たちだ。日本人たちは、早速、「サラリーマン」的ライフスタイルに切り替え、忙殺的な日常に戻っている。私はシャワーを浴びた。やはり、たった独りで。浴びながら、独りであることをいっそう実感した。そして歯を磨き、髪にドライヤーをかけ、ベッドに腰掛けた。そして、うんざりするような一日の始まりに正面から対峙した。