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窮地に落ちたブリイ (7) 

ビリーは、ブリイが擦り寄ってきたのを感じた。振り向いて彼女を見ると、ブリイは背伸びをして彼の耳元に囁きかけた。

「あなたならできるわ、ビリー! 2000ドルあったら、どんなことができるか、それだけを考えるのよ」

ブリイには、愛する素敵な夫が負ける可能性など、まったく頭に浮かばないのだった。だが、ビリーは、その可能性を考えてしまう。同じく囁き声で、ブリイに答えた。

「でも、負けたら? この男は本気で取引しようとしてるんだ。君は、あいつの言うことをどんなことでもしなきゃいけないんだよ。つまりは、セックスだ。その他、どんなことを言いだすか、分からない」

ブリイはビリーの言葉を少し考えた。そして、また囁いたのだった。

「あなたのこと私、分かってるから。絶対に負けっこないわ」

ビリーは、彼女の訴えるようにキラキラ輝く瞳を覗き込み、頭を左右に振った。すると、ブリイの瞳は、険しい表情に変わった。ビリーは、この花嫁が彼に与えているプレッシャーの強さが信じられなかった。

彼はブリイを喜ばせてあげたかった。もう一度、この男とのゲームについて知ったことを振り返ってみた。確かに、この男に勝つ自信は充分にあったが、賭けの対象にされたものが気に食わなかった。

結局、ビリーは申し出を断った。ブリイが本気で怒った顔を見せているのに気づいた。ビリーは、彼女の顔を見て、意気消沈した。

男が言った。

「なかなか強情なヤツだな。分かったよ。別の提案をしよう。お前の奥さんに対して、5000ドル、ってことならどうだ。加えて、お前の現金は出さなくても良いことにしてやろう」

ビリーはブリイを見た。再び瞳が訴えるように輝きだすのが見えた。実際、もう、彼女ががっかりする顔は見たくないと感じていたビリーだった。しぶしぶ、彼は、申し出を受けた。ブリイは興奮してぴょんぴょん跳ね始めた。まったく、ブリイは頑固なんだから、とビリーは思った。

跳ねる動きに合わせて、ブリイの重たそうな乳房がゆさゆさ揺れた。それを見て、周りの男たちはヒューヒューと口笛を吹いた。このうぶな花嫁は、自分が男たちにどんな影響を与えているか、まったく気づいていない。

賭けを申し出た男は、仲間たちにジョーンズと呼ばれていた。改めて、賭けの内容を明言する。

「はっきりさせておくぞ。もし俺がこのビリヤードで負けたら、ここにいる若い達人に5000ドル支払おう。もし俺が勝ったら、こいつの奥さんは俺のものだ。好きなことをさせてもらう。これでいいな?」

ブリイは、嬉しそうに、うんうんと頭を縦に振った。彼女の頭の中は、依然として夫の能力に微塵も疑いを持っていない。ビリーは、嫌いやそうに頷いた。

ジョーンズは、賭けているものがものだけに、ゲームの場所は裏部屋に移動しようと提案した。男たちは、メインホールを後にし、狭い裏部屋にわらわらと集まった。ジョーンズは、スツールを出して、ブリイに座らせた。それに5000ドルの現金も彼女に手渡した。試合の勝者が、現金もブリイも手にすることになる。ブリイは楽しそうに現金を数えていた。そのセクシーな身体を、部屋いっぱいの男たちがじろじろと舐めるように見つめていた。

ゲームは、ビリーに優勢に開始した。賭けに出されているものに神経質になっていたが、そのことで、一層、集中力が出ていた。彼は、ゲームを手中に収めたと感じたときだった。集中力が少しだけ緩んだ。ミスショットをしてしまったのである。

相手もビリーに負けず集中していた。次から次にショットを沈めていく。ビリーは、ジョーンズが最初の2ショットをしたのを見て、ざわざわとした不安感を感じた。次の2ショットを見たとき、その不安感が、腹にこぶしを当てられたような気持ちになった。そして、その次のショットで球がポケットに沈むのを見て、ビリーは自分が嵌められたと悟ったのだった。最初から仕組まれていたのである。ビリーはブリイの顔を見た。心配そうな顔をしている。だが、彼女は、まだ何が起きているのか分かっていないのだった。

最後のエイト・ボールだけが残った時、ブリイはビリーの顔を見上げ、暗い表情を浮かべているのを見たのだった。ブリイは、このときになって、自分がとてつもなく愚かだったことを悟ったのだった。

ジョーンズは容易くエイト・ボールを沈めた。

ブリイはショックを感じたままスツールに座っていた。今日と言う新婚初夜までビリーにセックスをお預けにしてきたのに。とうとうその夜が来たのに、自分の処女を愛する人に捧げることにはならなくなってしまった。捧げる相手は、見ず知らずの、薄汚い中年男になってしまった。

[2008/09/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)