その時、別の部屋から別のカップルが出てくる音が聞こえてきた。当然、ブルースは二部屋分、清掃しなければならなくなった。しかも、迅速に行わなければならない。ブルースの心の中では、目下の仕事をしなければならないという義務感が先立ち、もはや、羞恥心にこだわることは二の次になった。
「俺の靴にキスをしろ」 リロイは静かに言った。
ブルースは、そのような屈辱的な姿を誰かに見られるかもしれないとゾッとする想いだったが、今はそれをためらってる暇はない。ブルースは即座に顔をリロイの靴に近づけ、つま先部分にキスをした。
「本気でやれ!」 リロイの怒鳴り声が響いた。面白がっているようだった。
遠くの方で例のカップルが信じられないというふうに笑っている声が聞こえた。ブルースは真剣になってキスを始めた。ときどき舌も使った。ひとしきり片方の靴にキスをした後、もう一方の靴に移動し、同じように唇や舌を使って奉仕を繰り返した。キスをする音がはっきり聞こえるようにさせた。
この時点で、すでにブルースの中には、しがみつくべき自尊心もプライドも消えていた。目の前に立つこの若者を喜ばすこと、それだけしか望んでいない。それさえ叶えば、満足だ。
ブルースは、リンダがこの場におらず、自分がこのように品位を貶めている姿を見られずにすんでいることを心からありがたく感じた。
「よし。もう充分だ!」
「私めに、あなた様にこのように敬意を払う機会を下さり、心より感謝しております」 ブルースはひざまずいたままの姿勢で答えた。
「最後にひとつ! お前は、リンダに対して敬意を持って応対するだろうな? 俺の女なら誰しも当然そういう応対をされるべきだが」
「あっ、はい、もちろんです。絶対に恭しく応対いたします。あなた様がお付き合いになる女性には誰にであれ、私は決して不遜な態度はとりません!」 ブルースは、それは本気だと自分でも思いつつ返事した。
「そうすることだ。リンダはすべて俺に話すことになっている。分かるな?」
「はい、リロイ様」
「リンダのことを全面的に助ける旦那になるんだぞ。いいな?」
「はい、リロイ様。お約束します。ありがとうございます」
「よーし、今はそれでいい。いずれ分かることだ。お前が、これからもリンダに俺のちんぽを味わってほしいと本当に思うなら、俺をがっかりさせないことだ。いいな! さあ、とっととシーツ係の仕事に戻れ!」
「はい、リロイ様。ありがとうございます」
ブルースは、リロイが歩き去ったのを見届け、大きく安堵の息を漏らした。思っていたよりも、大変なことだったが、何とかテストには合格したのではないかと感じていた。それと同時に、リンダには、リロイにであれ、他のどの男にであれ、自分についての苦情を伝える口実を与えるようなことは、一切しない方が良さそうだとも思ったのだった。