「デス・バイ・ファッキング」 第10章
Death By Fucking Ch. 10 by thebullet
これまでのあらすじ
コンサルタント会社から派遣されたディアドラ(ディ・ディ)と会ったアンドリューは、彼女と出逢ったとたん激しい性欲を覚える。それはディ・ディも同じだった。間もなく二人は身体を重ねた。ディ・ディは双子の妹のドニーに会ってほしいという。アンドリューは、話しを聞いてインディアナポリスから来たドニーともセックスをする。彼女たちには秘密があった。彼女たちの家系は双子の娘しか生まれないことと、彼女たちは種分化した新人類かもしれないということ。そしてアンドリューも同類かもしれないという。普通の人間相手ではなかなか妊娠しないがアンドリューも同類だとしたら? 妊娠の可能性を知り慌てるものの、それが新たな刺激となり、ディ・ディとドニーはアンドリューと激しいセックスをする。そのセックスの合間に、二人は人類向上機構と呼ばれる組織について話しをした。それはアメリカの富豪が作った組織で年月をかけてIQの高い人間を選択することを目的としていた。だが問題はその組織に管理されたカップルからは双子の娘しか生まれないこと。相手となる男性が生まれない。その話しを聞いたアンドリューはあるアイデアを提案した。ネットの出会い系サイトを隠れ蓑にして希望の男性を探すアイデアである。
水曜日:ドニーの話し
私は、この4年間、ずっと出張を繰り返してきた。出張の繰り返しで、時間の半分ほどしか家にいなかったと思う。ちょっと誇張してるかもしれないけど、でも、感覚的にはいつも出張していたような印象だ。それでも、今までは、私は本当に孤独だと感じたことはなかった。それが今は違う。ディアドラとアンドリューと別れてから三日しかたっていないのに。
もう、何にも集中できない感じ。形式的に仕事をこなしてるだけのように感じる。これでは、私の顧客は、支払ってるお金に見合った成果を受けてないことになってしまう。とは言え、仕事の点では、顧客も私も、この週末以前と同じ進捗を見せていると思う。それに顧客も満足してるみたい。ということは、私の仕事は、形式的にこなすだけで十分な仕事ということなのかもしれない。
毎晩、私とディ・ディは電話で話しをする。二人ともお互いを必要としているのだ。私はディ・ディに仕事の進み具合を話し、ディ・ディも私に仕事の様子を話してくれる。話し合った方がいい秘密があれば、私もディ・ディも話し合う。でも、そのような秘密はほとんどない。私たちは同じコインの裏表のような存在だから。不安と思ってること、夢と思ってることを何でも話し合う。そして、虚しく感じていることも。
でも、今のディ・ディは虚しさは感じていない。彼女は、毎晩、アンドリューの腕の中に抱かれているから。嫉妬は感じていないけど、うらやましいとは思う。私も彼の腕に包まれたい。死ぬほどそう感じている。
土曜日の夜、私たち三人で一緒に夕食をとった。ただし、「次の世代」の話しはしないことに決めた。妊娠のことについてはっきりするまで、その話しは棚上げにすることにした。
私たちには仮説があった。それにアンドリューは根っからの仮説好きだし。でも、私たちが妊娠したかどうかは、その私たちの仮説から導き出される定理のひとつ。それが正しいかどうかを示す証拠は、もうすぐ結果が分かることだった。三人ともピリピリした状態になっている。
土曜日の夜、私はアンドリューと一緒にホテルに戻り、ゆっくりとロマンティックに愛し合った。少なくとも、アンドリューが私を死の淵まで高めている時を除いて、その合間、合間はゆっくりとロマンティックな愛し合いを続けた。彼が私を激しく揺さぶる時、私は否が応でも、彼に自分の情熱の深淵に直面させられてしまう。
私はこんなありきたりのビジネス・ウーマンなのに。これまでは、セックスを、自由に選択できる、単なるちょっと楽しい軽い遊びとしか見ていなかったのに。それが今はセックスのことしか考えられなくなっている。アンドリューは何て言っていたっけ? そうだ、セックスは、より多くのセックスを産みだす、だった。そして、より多くのセックスは、さらに多くのセックスを産みだす。
彼は変わったモノの言い方をする人だ。この「産みだす」(beget)という言葉。牧師さんが聖書の一節を読んでいるときは別として、普通の表現の文脈で、人がこの単語を使うことを私は聞いたことがない。そして、彼がこの言葉を使った文脈は聖書とは関係ないのは確か。でも、アンドリューは本当に正しい使い方をしたと思う。
アンドリューが間違っていたところは、私たちのセックスを求める気持ちが、彼以外の男性へと向けられていくのではないかと言ったこと。それは間違い。私が求めるのは彼だけ。
アンドリューと一緒のベッドから抜けるのが、本当に耐えられなかった。自分が、まるで恋に没頭した女子高生になった気持ちだった。彼氏のことしか目に入らない、恋に溺れたうぶ過ぎる女子高生になった気持ち。
アンドリューとディ・ディに空港まで送られた時、私は大泣きしてしまった。今の空港は、セキュリティがとても厳しくなっていて、事実上、誰かを見送ることが不可能になっている。私たちホモサピエンスは、いったいどんな世界を作ってしまったのだろう? 良いモノ、素晴らしいモノがたくさん溢れた世界? でも、その背景には、罪と恐怖、強欲と怒り、抑圧と嫉妬が渦巻いている。
アンドリューと出逢ったこの前の金曜日。それ以前に私が泣いたことがあったか、覚えていない。なのに今は、あの日以来、毎晩泣いている。私は感情をコントロールできなくなってしまった。いったい私はどうなってしまったのだろう?
ずっと電話を待っていた。日曜日に私とディ・ディは薬屋に走り、簡易妊娠検査キットを買った。指示によると、性行為があってから早くても6日間は待ってから使わないと、妊娠したかどうかは分からないという。ディ・ディは、今日、仕事が終わってから検査すると約束した。すぐに私に電話して、勝ったか負けたか、アタリかハズレかを教えてくれる。私は、明後日、自分の検査をするつもり。
もちろん、私は神経がボロボロになった気持ちだった。ディアドラは少なくともアンドリューがそばにいて、一緒に結果を分かち合える。私の時にも同じことができる。アンドリューは今度の金曜の午後にインディアナポリスに来ることになっていた。彼と二人で検査をする。いや、正確には、私が検査をして、それをアンドリューは見ていることになるのだけど。