すかさずビルが口を挟んだ。
「僕たちのどちらかとするのを思っていたんなら、二人以上でしてもかまわないんじゃないかな。それにちょっと冒険してみようと思ってるなら、いっそのこと、一生の思い出になるような冒険を考えてもいいんじゃない?」
デビーはアンジェラの方を見て言った。
「アンジェラ、この人たちとセックスするのを考えていたの?」
「もちろんよ。どうして? 私、ずっと前からチームのクオーターバックと一度してみたいなあって思っていたもの。もっと言えば、学生のころから、一度に二人以上のオトコとするのを夢見ていたの」
アンジェラは、自分で言っておいて、自分の言葉の意味を考えているようだった。だが、しばらく間を置いてようやく彼女は言った。
「いいわ。なんてことないわ。今夜は誰かをベッドに連れ込もうと考えていたわけだし。だったら、アメフトチーム全員でも同じこと。何だか、ものすごい経験になりそう!」
デビーは唖然とした顔でアンジェラを見つめた。
後で知ったことだが、二人は高校の頃から知り合いで、二人ともお互いの結婚式に出席し、それ以来、親しくつき合っているらしい。互いに子守りをしあったり、家族旅行に一緒に出かけたり。
デビーは、アンジェラが見ず知らずの男とセックスすることばかりでなく、不特定多数の男たちとすることに同意したのを見て、明らかに驚いているようだった。
デビーは落ち着きを取り戻した後、改めてアンジェラに訊いた。 「アンジェラ? 自分で何をしようとしているのか分かってるの?」
アンジェラはデビーに振り向いた。 「デビー、覚えてる? 大学生のとき、二人で夜遅くまでお喋りしていたでしょ? よく二人で、互いのエッチな夢を話し合ったわ…」
デビーは頷いた。
アンジェラは続けた。「…あなた、しょっちゅうアメフト・チームの選手全員に犯されるのを夢に見るのって…そう言ってたと思うけど? デビーはあの頃と同じく健康的な性欲はあるはずよ。どうして尻ごみすることあるの? さあ、一緒に楽しみましょう!」
デビーは顔を赤らめうつむいて、アンジェラの言葉を考えながら、またも腰をくねらせ椅子に座りなおした。そして、ようやく顔を上げ、アンジェラを見た。
「アンジェラ、私たち今は結婚していて子供もいるのよ」
「デビー、今は家から遠く離れているの。こういうチャンスは二度とないかもしれないわ。ただ、自分は独身だって、また21歳に戻ったんだって、そう思い込むだけでいいのよ。あとは、あの筋肉逞しい選手たちのことだけを思い浮かべること…」
デビーは不安そうに視線を泳がせ、またうつむいて、自分の膝もとへ目を落とした。彼女の可愛い頭の中では、いろんなことが渦巻いているのは確かだった。俺は心臓がドキドキ鳴るのを感じていた。あの瞬間、俺の考えられることと言ったら、このセクシーで可愛いデビーの身体を触りたいと、それだけだった。アンジェラの言葉でデビーが説得されるようにと、それだけを祈ってた。
そのデビーの顔に浮かんでいた不安そうな表情が、やがて、ゆっくりと消えていき、代わりにかすかな笑みが浮かんできた。それから俺の方を見た。その顔には淫らな表情が浮かんでいた。それを見ただけで俺の股間が盛り上がってくるのを感じる。
俺は、こんなふうに変貌する女をそれまで見たことがなかった。ちょっと前までは、デビーは、自分の家族のことを気にする清純な人妻だったのに、次の瞬間には、男に襲いかかろうとする淫乱女の顔になっている。
デビーは青い瞳で俺を見つめ、かすれた声で言った。
「あなたのチームには黒人の選手がいる?」
「あ、ああ…、もちろん…」
デビーは一度、深々と息を吸った。息を吸い込むのに合わせて大きな乳房が押し出されて、ピチピチの服が弾けてしまうのではと思った。そして、その息を吐きだすと共に、彼女は言った。
「うぅぅぅ… それなら私の答えはイエスよ」
「ジャッキー」 第5章 Jackie Chapter 5 by Scribler
これまでのあらすじ
ジャックは妻のアンジーの浮気現場を見てショックを受ける。彼はアンジーと知り合った頃を回想する。彼はある法律事務所でバイトをしていた。上司はすご腕のアンジーだった。仕事を通じ親密になった二人は一緒にケルト祭りに行く。その祭りでは、男はキルトのスカートを履く。ジャックはアンジーに促されるままスカートを履き、想像と反し居心地が悪いわけではないと思う。ケルト祭りの帰り二人はアンジーのアパートでセックスをした。下着を用意してなかったジャックはアンジーのランジェリーを着て眠るのだった。
翌朝、耳のところをアンジーにキスされながら目覚めた。経験がなかったが、こういうふうにされて目覚めるのはとても気持ちがいい。僕も目覚めた後、アンジーと二人で浴室に行き、二人でシャワーを浴びた。残念ながらその日はアンジーは出張に行かなければならないので、朝も忙しく、性的なことは何もしなかった。
僕はひげを剃ろうと思ったけれど、もちろん、自分のひげ剃り用具は持ってきていなかった。しかたなく、アンジーの持っている、ピンク色の使い捨ての剃刀と女性用のシェービング・ジェルを使った。そのジェルは桃の香りがして、ちょっとためらったが、他にどうしようもない。それにシャンプーや汗止めも彼女の使っているものを使った。これも花のような香りがしていた。シャンプーを終えた時点で、僕は、香水の強い香りはないものの女の子のような匂いを発していたのは確かだった。
そいう不慣れな浴室にいたからか、僕はアンジーより長く浴室にいたようだ。ようやく浴室から出て寝室に戻ると、ベッドの上に黒いパンティと、それにマッチした色のキャミソール、加えて、黒皮のズボンと黒いウールのタートルネックのセーターが置いてあった。僕は最初、これはアンジーが着るつもりで並べてるのだろうと思ったが、そうではなかった。僕のためだったのである。
アンジーはコーヒーを入れた大きなマグカップを二つ持って寝室に入ってきた。彼女はすでに黒皮の袖なしのジャンプスーツに着替えていた。そのジャンプスーツ、ズボンの部分はとてもタイトで、それを履くにはずいぶん苦労しただろうなと思わせるようなものだった。一方、トップの方はかなりゆったりとしているので、中にベッドに置いてあるのと似たウールのセーターを着ていた。
アンジーは僕にコーヒーを手渡しながら、「さあ、急いで着替えて。もうすっかり明るくなってるわ」と言った。僕のお尻を軽く叩いて、僕をせかす。
このときの僕を見たら、人は僕はこの時すでにすっかり飼い慣らされてしまっていたと言うかもしれない。というのも、僕はアンジーに問いただすことすらせず、パンティとキャミソールを着たからである。セーターには、はっきりと女性的な香りがしていた。後で知ったが、その香りはアンジーが衣装入れにいれていた匂い袋の香りだった。
そのセーターは僕にはきつく、裾もおへそのちょっと下のところまでにしかならない。これも後で知ったが、このようなセーターは、最近、女の子たちの間で流行っている最新のスタイルのセーターだった。お腹のところが露出したセーターを着た女の子を見たことがあると思う。
セーターを着た後、皮のズボンを履いた。その時になって気づいたが、そのズボンではチャックやホックが前でなく、腰の横のところについていた。これは女性用のズボンだったのだ。僕は反射的にたじろいだ。
「アンジー、これは君のズボンだよ。これを履いて外に出るなんて、僕にはできないよ」 ほとんど泣き声になって言った。
「あら、誰も気づかないわよ。今日は車に乗って地方に行くだけだから、誰も、そのズボンが男物か女物かを見分けられるほど近寄ってくる人はいないと思うわ。それに、あなたの衣類はもう洗濯機に入れちゃってるから、家に帰るときには着るものがあるから大丈夫よ」
僕は、僕の服を返してと言いかけていたところだった。だが、彼女の言葉で僕は言わずじまいになってしまった。