「まあ、細かなことは、気にしないことにしましょう。でもね、ジミーが、スティーブは間抜けすぎてジョークが分からないんだといったことを仄めかした時に、お前も笑ったんだろう? その瞬間、お前はまたもスティーブをバカにしたのだよ。この時は、本当に手酷くバカにしてしまった」
「でも、あれはただのジョークだったのに・・・」 バーバラは泣きそうになっていた。「吹き出しそうになってしまって・・・」
リディアは断固とした口調で言った。
「あれはジョークなんかじゃないよ、バーバラ。ジミー坊やは、お前の周りにちょっとしたフェンスを築こうとしていたのさ。他のみんなからお前だけを隔離しようとね。何より、お前の夫から隔離するのが重要だった。そうやってお前を自分のものにするチャンスがかなりありそうだと、そうジミーに思わせてしまったのは、お前自身なんだよ」
バーバラは、リディアの言葉に驚いた顔で、見つめた。
「でも、ノニー、そんなんじゃないの・・・全然、そんな深刻なことじゃなかったのに。スティーブは悪い方に解釈しただけ、それに・・・それにあんな風にカッと腹を立てる必要などなかったのに・・・」
リディアはふんと鼻を鳴らし、落ち着いた声で応えた。
「バーバラ? ジミー坊やが、スティーブは、あのジョークを理解できるほど賢くないと思ったと言った時、お前はどうして、自分の夫は、近々、建築工学の学位を取得すると言ってやらなかったんだい? そのことが、お前の心に最初に浮かぶことじゃなかったのは、どうしてなんだい?」
リディアの声は優しかったが、同時に、責める調子も含んでいた。
「・・・どうして、自分の夫が攻撃されている時、彼を守ってあげなかったんだい? ・・・その代わり、そのジミー坊やの方の肩を持ったのはどうしてなんだい?」
バーバラは、やるせなさそうにリディアから顔を背けた。何か考えようとしているのか、額にしわを寄せている。祖母に、そういう風に言うのは間違っていると示すにはどうしたらよいか、見つけようとしていた。だが、バーバラの口からは、何も言葉が出てこなかった。
「いいかい? バーバラ。よこしまなことは考えないこと。まっすぐに考えて、その結果をすぐに形にする。いいね?」
リディアは、多少そっけなく、そう言い、立ち上がって、オットマンを元の場所に押し戻した。
「そんな深刻なことじゃなかった、って思ってるのかい? いいかい? 私が若かった頃だったら、もし私がそういうことをしたら、夫は銃を持ち出して、会うなりジミー坊やを撃ち殺していただろうよ」
リディアは、自分の言葉に、夫のことを思い出してしまったようで、急に悲しそうな顔になった。彼女の夫のハンクは、7年前、釣り旅行に出かけ、2度と戻らぬ人になってしまったのだった。ハンクを発見したのは1週間後だった。彼は、川べりにリディアの古い写真を握って死んでいた。心臓発作のため、上着の内ポケットから写真を取り出すだけしか、時間がなかったのだろう。リディアはハンクの死をひどく悲しんだ。
リディアは、立ったまま、孫娘を見下ろした。
「そして、撃ち殺したとしても、そのパーティの席にいた誰もが、夫に、自分の妻にクンクン鼻を鳴らして言い寄る男について問題を解決したと、彼に握手を求め、祝福したはずだろうよ」
「いいかい、バーバラ。ちゃんと私の言葉をお聞き。私はお前のことを愛しているんだよ。でも、お前はもっと自分のことを考え直さなきゃだめ。さもないと、彼を失うことになるよ。私には、スティーブがどんなタイプの男だか、分かる。彼は、お前がしていることに我慢できるタイプじゃない。それは確かだから」
バーバラは祖母を見上げた。彼女は、ノニーから、このような言葉を、いや、非難と言える言葉を聞いたことがなかった。心にぐさりと刺さった。バーバラには何も言い返せなかった。
つづく