ジャネットは、グラスを手に、小さく震えながら家の方へに戻った。彼女が屋内に戻るとすぐに、医師たちが2人ほど近寄り、話しかけてきた。ジャネットは、2分ほど、立って、彼らと会話していたが、グラスを持つ手を震わせたままだった。こんなこと、どうしてできると言うの? そう思いながら、向こうに眼をやるとクリスが微笑みながら自分を見ているのに気づいた。
ジャネットはゆっくりとグラスを唇に近づけ、その液体を飲み始めた。口に入れると、元々の甘いカクテルに混じって、クリスの濃い体液の味があるのがはっきりと分かった。それを口に含み、喉を通した瞬間、全身がぶるぶる震え、足から力が抜けていくのを感じた。小さいとは言え、オルガスムが全身を襲うのを感じた。下着が自分の分泌したもので一気に濡れるのを感じる。ジャネットは今夜は下着を履いていて助かったと思った。でなかったら、床にぽたぽた垂らしていたかもしれない。
会話していた医師の一人が言った。
「レドモンド先生? 大丈夫ですか? 顔がすごく熱っぽそうですよ。腰掛けた方が良いかもしれない」
「あ・・・いえ・・・大丈夫です。ちょっと軽いめまいを起こしただけだと思うわ。このお酒のせいだと思います」
そのパーティは深夜12時過ぎに終わった。今はクリスとジャネットだけが残り、キッチンで後片付けをしていた。ジャネットはシンクのところに立ち、皿洗いを終えたところだった。その彼女の後ろにクリスが近寄り、後ろから両腕を彼女のウエストに回した。そして、ジャネットの首筋に優しくキスをする。ジャネットは顔を彼の方に向けた。
「君は、今夜は、いけない子だったわね」
ジャネットは、クリスの舌が敏感な首筋をちろちろと舐められ、小さな鳥肌が立つのを感じた。
「僕が? うふふ・・・あの真面目な人々の前で僕のジュースを飲んだ先生の方が、いけない人だったんじゃないのかな?」
「ええ、でも、そもそも、あれを入れたのは誰なの?」
「罪悪感?」
クリスは唇をジャネットの首から耳へと移動した。
「あなたがグラスを唇につけて、僕のスペルマを飲むのを見たとき、すごく興奮してしまった」
クリスは股間をジャネットの柔らかい尻肉に押し付け、甘い溜息を漏らした。両手をジャネットの左右の腕にあて、ゆっくりと上げていく。そしてガウンの肩ストラップに手を掛けた。
クリスは、タキシード用のワイシャツを着ていた。ボータイは解いており、シャツの襟からぶら下げたままだった。両手の指を肩ストラップにかけ、ゆっくりと肩から外し始める。
「クリス、私、仕事が残ってるの」
ジャネットは、ストラップが両腕を降りていくのを見ながら、不平を言った。
「明日、すればいい」
クリスはズボンの中の勃起を彼女のお尻に押し付けた。そうしながらストラップを下げていく。ジャネットのガウンは乳房のところで引っかかっていたが、やがて重力に勝てず、落ちていった。あらわになった柔肌の乳房を、すぐにクリスの両手が覆った。同時に、ジャネットの唇から溜息が漏れる。
「ああ・・・・」
バーバラは、スティーブに気が散って困ると言わんばかりの顔をしてみせた。話しをするのが難しそうに見える。彼女は、話さなければならないことに意識を集中させ、スティーブのことを差し当たり脇役とみなし、あまり注意を払わないようにした。スティーブの皮肉や嘲笑も、この日のバーバラにはあまり効果がなかったようだった。
「私が言おうとしたことは、つまり、ポーター氏はただ・・・その・・・私に自慰を手伝わせたかっただけということです」
バーバラは低い声で言った。うつむいている。誰とも顔を合わせたくなかった。
「それに、私はズボンの上からしか、それをしなかったし・・・実際には、彼に触れたことは一度もない・・・それに彼も私の・・あの・・・あそことか胸とかに触れたこともなかった。そういうことは一切」
スティーブは、一言も言わなかった。ただ座ったまま、じっと妻のところを見ていた。バーバラはみるみる顔を赤らめ、一心不乱にヒューストン氏のデスクの上を見つめたままだった。
突然、スティーブは嘲るように鼻を鳴らした。
「それが真実? だとすると、君は、不倫を犯した女たちの中でも、この惑星上で一番哀れな存在に違いないし、ラファエルも、本当にそれ以上のことを君にできなかったとした、色男とは正反対の存在に違いないね! ・・・こそこそ色々隠れてやって、裏切りや嘘を繰り返したり、その他もろもろの偽りを行ったのに、ラファエルは、ちょっと手でやってもらうことしか得られなかった? 数々の情事の中でも歴史に残る、もっとも哀れな情事ってことになるだろうな!」
スティーブは吐き捨てるように言った。バーバラは彼に眼を合わそうとしなかった。
「ああ・・・もういいよ。僕は君を信じない! また今日も僕を騙そうとしている。嘘つき!」
バーバラはキッと顔を上げた。
「本当よ!」
バーバラは高ぶった声で応えた。スティーブの棘のある言葉に顔を真っ赤にしていた。だが、またも、視線をそらす。
スティーブは、バーバラが視線を逸らしたことを、言い逃れをしていることの印しと解釈した。頭を振って立ち上がる。
「彼女が真実を話す準備ができるまで、私は、さようなら、とさせていただきます」 彼はヒューストン氏を見ながら話した。「平気で人を騙す嘘つきといて時間を無駄にするより、もっとすべきことが私にはあるので」
スティーブはそう言って部屋から出て、ドアを静かに閉めた。
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