2ntブログ



誰とやったか知ってるぜ 第7章 (20) 


それから俺たちはテレビでショー番組ばかり見続けた。ようやくニュース番組になり、もう帰る時間だと思い、トリスタにニュースが終わったら帰らなければいけないと伝えた。彼女は頷いて、ちょっと待って、トイレに行ってくるわと部屋を出ていった。

彼女がトイレから戻ってきたのを受けて、俺もトイレを使わせてほしいと言い、腰を上げた。さっき飲んだワインを出しておかなければいけない。そろそろ今夜のメインイベントのことを考え始めていた。

トイレからリビングに戻り、テレビを見ていたトリスタに目をやった。彼女も意図を察して立ちあがり、俺と二人、彼女の父親の方に目を向けた。父親は、椅子に座ってぐっすり眠っていた。

「ケネディ夫人、今夜は素晴らしかったです。ありがとう」 と言うと、トリスタの母親は立ちあがり、俺をハグした。

「いいえ、どういたしまして。いつでも遊びに来てね」 と言っていた。俺に胸をぎゅっと押しつけるようにハグしていた。

「私、彼を車まで送ってくるわ」 とトリスタは玄関へ向かった。

「おやすみなさい、ジャスティン」 とトリスタの母親は、眠っている夫が起きないように、ひそひそ声で言った。

トリスタは静かに玄関を開け、二人、ポーチに出た。彼女は音をたてないように注意して玄関ドアを閉め、閉めるとすぐに俺の手を握った。

ふたり、何も話さずに成長しすぎた藪の小道を進み、家の前の道路に出た。ようやく俺のバンのところまで来て、ドアを開け、乗り込んだ。そして窓を開け、トリスタの美しい瞳を覗きこんだ。

「今夜は来てくれて本当にありがとう」 と彼女は身体を傾け、俺の唇にキスをした。

俺もキスを返し、ふたりとも口を開き、舌を絡ませあった。トリスタの髪の毛や呼気の香りは麻薬的で、なかなか唇を離せない。

ようやくキスを解き、トリスタは俺の額に自分の額を当てたまま、言った。「お父さんが、嫌になるほど支配的だって言った意味、分かったでしょう?」

「ああ、本当にダメだよね」

俺の返事を聞いて、トリスタはくすくす笑った。「いつか、私はこの家を出て、まったく違った生活をするつもり」

俺たちはしばらくこのぎこちない姿勢のままでいたが、俺はこのバンを父親からもらったことをトリスタに言うのを思い出した。

「あのね…」 と俺はトリスタの額から額を離し、言った。

「何?」 と好奇心にあふれた目をして彼女は訊いた。

「うちの父親が、今日、僕にこのバンをくれたんだ」 とにんまりして言った。

「本当?」 と彼女も笑顔になった。「あの自転車で町を走るより、ずっといいわね」 と彼女は再び俺に軽くキスをした。 「おめでとう!」 と言い、今度は熱のこもったキスをしてくれた。

それから、もう2回ほどキスをしたが、ようやくトリスタは姿勢を戻し、バンから離れた。

「もう帰らなくちゃいけないのよね」 と彼女は小さな声で言った。その時の彼女は、以前にも増して可愛く見えた。

「朝にあなたに会えるのが待ち遠しいわ」

「何があっても、絶対、行くから」 と俺は車のエンジンをかけた。

「おやすみなさい、ジャスティン」 と彼女は最後のキスをしかけてきた。

ふたりの最後のキスは、かなり長く続いた。互いに舌で相手の口の中の隅々を探り合った。ふたりとも舌で相手の歯や唇をなぞりあった。ようやく、俺たちは顔を離し、トリスタは姿勢を起こした。

「おやすみ、トリスタ」 と言い、ゆっくりと車を動かし始めた。

走り去る俺に向かって、トリスタは「おやすみ!」と叫んだ。

ミラーの中、彼女が手を振りながら立っているのが見えた。俺は小さくクラクションを鳴らし、窓から腕を出して、振って見せた。だが車が角を曲がると、彼女の姿は見えなくなった。

俺は突然気持ちを切り替えた。クラブ・カフスでのメインイベントに意識を集中する。知らぬ間に心臓が高鳴っていた。ちょっと車を飛ばし過ぎてるかもしれない。

「落ち着け」 と独り言を言い、アクセルを緩めた。


[2012/03/23] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)