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新たな始まり (2) 


デニスは鏡を見て、ちゃんと格好よく見えてるか確かめた。彼は大柄な男ではない。身長は170センチちょっとだし、体重も70キロほど。だが、自分のルックスには自信があった。確かに彼はハンサムだし清潔感があり、充分に身なりに注意していた。髪をきちんと刈りそろえ、バギーパンツもアイロンを掛け、片方の耳にダイヤのイヤリングをつけている。それを買うため、夏じゅう倉庫でアルバイトをしたのだ。このダイヤのイヤリングは自慢のアクセサリーだった。

その夜、彼は世界のてっぺんに登ったような高揚した気分で家を出た。ルックスは悪くないし、秋には大学に進学する。そして今からベッキーとデートに行くのだ。ベッキーは近所でもいちばん可愛い女の子だった。人生は上向きになっている。

家を出て道を歩き、一群の若者たちの横を通り過ぎた。デニスは、あの連中がドラッグを売っているのを知っている。デニスは、彼らの中の知人に頷いて挨拶した。ベッキーの家までは歩いてもそんなにかからない。2ブロックほど先に住んでいる。デニスは彼女の玄関ドアをノックした。

ベッキーが出迎えた。

「ハーイ」

彼女は後ろを振り返りもせず家を出た。デートに出るのが待ち遠しくてたまらなかった様子だった。

ふたりはバス停まで歩きながらおしゃべりをした。この集合住宅に入ってくるほど勇気のあるタクシーはほとんどないのだが、たとえそんなタクシーがあったとしても、ふたりには乗る経済的余裕はなかった。幸い、バスはすぐに着た。バスはふたりを映画館の近くへと連れて行った。

デニスはベッキーに映画を選ばせた。ベッキーはラブコメの映画を選んだ。デニスにはどんな映画でも良かったのである。ベッキーの姿を見てるだけで嬉しかったから。今夜のベッキーはタイトのブルージーンズとTシャツの姿で、とても可愛かった。それにアイクが言っていたように、彼女のお尻はとても丸く、完璧な形と言え、デニスはどうしてもそこを触りたくなってしまうのだった。

映画は、少なくともデニスにとっては、上々だった。実際、彼は映画の筋にはほとんど注意を払っていなかったものの、何と、ベッキーの肩に腕を回すことができたのである。これができただけでも、成功と言えた。

映画の後、ふたりは再びバスに乗った(デニスにはレストランに食事に行くお金がなかったのである)。バスから降りた後は、ふたりで歩いてベッキーの家に向かった。ふたりはおしゃべりをしながらゆっくり歩き、デニスはベッキーのことをもう少しだけよく知ることができた。

ベッキーは元々、この街の出身ではなかった。彼女の母親が仕事の関係で2年ほど前に引っ越してきたのである。だが、その仕事は長続きしなった。急に不景気になり、その仕事は打ち切られてしまったのである。そこでベッキーの母親は政府に援助を求めたのだが、与えられたのは仕事ではなく、この集合住宅なのだった。ここは、犯罪と薬物と貧困の巣窟であって、たいていの人々が求める救済の地ではなかった。とはいえ、ベッキーの母親は仕事を見つけることができ、近々、ここを抜けだし、郊外に引っ越すことを計画していた。

そしてベッキーは、デニスが通うことになる大学と同じ大学に、すでに入学していた。それは、まさに神がめぐり合わせてくれたことのように思えた。ふたりは、互いのジョークを笑い合う、とても仲の良い間柄だし、デニスはベッキーを魅力的だと思っていた。できれば、彼女の方も自分のことを同じく魅力的だと思ってくれたらと期待するデニスだった。

ベッキーの家に着き、ふたりはそこで立ち止った。「あーあ、着いちゃったわね」とベッキーが言った。

「ああ」 とデニスは体を傾け、彼女にキスをした。「電話してもいいよね?」

ベッキーはにっこり微笑み、背を見せ、玄関ドアを開けた。「そうして」と一言残し、家の中に姿を消した。

玄関ドアが閉まり、それを待っていたかのように、デニスは満面の笑顔になった。ただのおやすみのキスが、どうしてこれほどまでにデニスを喜ばせたのか? それを理解するには、彼の歴史を知る必要がある。彼は、外から見た印象とは異なり、周囲にすんなり溶け込んできた若者ではなかった。もっと言えば、ほぼ、その正反対と言ってよい。

この集合住宅で育った月日は、デニスにとって辛い日々だった。彼の肌は普通の黒人より明るい色をしている。それは、手頃なパンチバッグを求める者たちにとって、標的となるものでもある。それは、フェアでもなければ、正しいことでもないし、理解できることでもなかった。だが、他の子供たちは、デニスの血に白人が混じっていることに反感を抱いた。デニスは子供時代を通して、しょっちゅうイジメられ、からかわれてきた。

彼が10歳の時、一度、イジメっ子たちに歯向かい、それまで受けた仕打ちの仕返しをしたことがあった。確かに、それ以来、イジメは止まった。だが、他の子供たちで、デニスを受け入れた者はほとんどいなかったのだった。デニスは皆とは違う存在だった。そして幼い子供たちの心の中では、皆とは違う存在は、避けるべき存在に等しいのである。そして、実際に、他の子供たちは彼を避けた。デニスは、成長期を通じて、友人と言えるのはたった一人しかいなかったし、知り合いもひと握りしかいなかった。他は誰も彼を拒絶したのである。

そして、女の子たちも、彼を拒絶した者の中に含まれていた。彼はこれまでの人生で、2回しかデートをしたことがない。そのデートの相手も、たぶん、同情心から付き合ってくれたんだろうと彼は思ってる。デニスは、誰も自分と関わり合いたいなど、本心では思っていないし、ましてデートするなどもっての他なんだと思っていた。結果はと言うと、18歳になるまでキスをしたのはベッキーを除いて2人だけだった。実際、2回目のデートにこぎつけた女の子はひとりもいなかった。

デート経験がないことは、彼が童貞であることも意味していた。デニスが考えることすら避けたいと思っている事実である。でも、それもこれも、これからは変わりそうだと彼は期待した。どうやら、ベッキーは自分を好んでくれているらしい。それも僕も彼女が好きだ。前に広がる可能性を思い、ワクワクしながら彼は家へと歩いた。

*

[2015/07/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

最後のテスト (3:終) 

11
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その最初の性的な出会いの後、私は完全に女性化することに決めた。ええ、それまでもその努力はしてきたけど、それはあまり真剣ではなかった。でも、アナルにしてもらって(狂うほど感じまくった)後は、それまであった男性性の小さなかけらも消えたと分かった。それに、再び男性に戻りたいとも思わなくなった。

でも、それって何を意味するんだろう?

私の場合、それが意味することは、生活のすべてを女性の観点から見始めるようになったということ。私の外見のあらゆる細かな部分部分が男性を見つける可能性にどう影響するかを考えるようになった。女性を性的な関係を結ぶ可能性のある存在として見るのをやめた(しばらく前から、そんな目で女性を見ることは真剣にはしていなかったけれど、古くからの習慣はしぶといものだから)。そうする代わりに、他の女性を見て、そのスタイルが私のよりどの点で良いかを考えるようになった。

要するに、脚の間に小さなペニスはあるものの、私は女性になったのだった。

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12
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ザーメンの塩辛い味には、とても興奮させるものが含まれている。それを飲まされると、変化を経てきた私のすべてが肯定されたように感じられる。誰も、口いっぱいにザーメンを注ぎ込まれて、自分は男だと感じる人はいないだろう。

ともかく、変化が完結して2年ほど経ったとき、ある科学者から一通の手紙を受け取った。

その科学者のことは聞いたことがあった。実際、ノーベル賞を取った人だった。名前はオマール・ベル博士。博士は私に説明した。変化が始まる2週間ほど前に実験的な遺伝子治療薬が研究室から盗まれたと。そして、それを盗んだ者たちを追跡するのにほぼ2年間かかってしまったと。後から分かったことだけど、その泥棒たちは私を襲った二人組だった。

彼らが私に使った吸入器には遺伝子治療薬が含まれており、私はそれを飲まされたらしい。彼はこの件について、心から申し訳なさそうに述べていたが、同時に、からだの変化などについて報告することに同意してくれないかと述べていた。また私のからだを調べるのも許可してくれと。彼はそうしてくれたら金銭的に充分、報酬を提供すると言っていた。もちろん、私は同意した(なんだかんだ言ってもお金が必要だったし、その点に関してはベル博士は非常に気前が良かったから)。以上がその研究の結果である。

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13
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テストは完了し、圧倒的な成功を収めた。すべての被験者が似た反応をしていた。これは不思議と言える。大半が医師から逃れた(ひとりだけ例外があり、その人物に関しては我々は干渉した)。そして大半が女性としての生活を始めた。医師との接触を続けたひとり(被験者25番)は、医師から、これはホルモンのバランスの不調であり、身体的変化を別にすれば、生活に影響はないだろうと告げられた。もちろん彼はこれを事実として受け入れ、その後は医師と会うことはなかった。

ひとつ、予想しなかった副作用があり、それは、全員が性的に活発になったということである。ほんの些細なことでも興奮してしまい、その興奮状態に導かれて、自然の結末の行為に至ってしまうのが普通であった。しかしながら、その状態は徐々に落ち着きをみせて行くようである。おそらく一時的なものであろう。時間と共に、普通の性的興奮のレベルを獲得していくようである。

そのような問題点はあるものの、これらのテストにより、例の化合物を現実に放出する準備は整ったことが確証された。放出は2段階を踏む。第1段階では、大気に放出する(世界各地に113の放出地点を設ける)。第2段階では、世界の水資源に放出する(722地点)。化合物は最初は不活性状態であるが、64日後に活性化することになる。

その後、変化は急速に開始するだろう。私は警告文を書こうと思っている(ただし、化合物を止めるのには遅すぎる時間になってからだが)。そうすることによって、おそらく、心的な変化が促進されるに違いない(彼らが変化を不可避なものとして認識するだろうから)。どちらにせよ、私のライフワークが間もなく完成を見るに至るのだ。

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[2015/07/16] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

最後のテスト (2) 

06
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変化が始まってから9か月後、僕は学校を辞めた。その頃には、僕はいまみんなが見ているような姿になっていた。胸がないけどおちんちんがついてる女の子のようなからだ。

ああ、それにお尻のこともある。あそこが敏感になったと言うだけでは、全然、言いたりない。分かってるよ。どうしてそれが分かったんだと思っているだろう? シャワーを浴びていて、お尻を洗った時だった。まあ、ちょっと指を中に入れたんだ。そして、気づいた時には、指でせっせと自慰をしていたよ。

自慢して言うわけじゃないけど、ものすごく気持ち良かった。それにしばらく前からおちんちんの方はあまり自慰に向かなくなっていたから。何か別の方法で欲求を発散する必要があったんだ。

それから2週間後、僕はオンラインでディルドを買った。指でアレだけ気持ちいいなら、ディルドだったら圧倒的にすごいんじゃないかと。

思った通りだった。そしてすぐに、ペニスに指一本触れなくても、簡単にオーガズムに達せることが分かったんだ。しかも、何回でも。

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07
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大学からドロップアウトして、さらに家族とも連絡を遮断した(どう説明していいか分からないだろう?) その結果、何か仕事につく必要がでてきた。

唯一の問題は、僕が女の子のように見えるということ。しかも、少しだけ女の子っぽいと言うんじゃなくて、まるっきり女の子っぽいということ。僕みたいに女の子としか見えないのに、男だと言う人を誰が雇ってくれるだろう?

唯一の現実的な選択肢は、女の子になることだった。僕は女の子のような服装をし、女の子のような振舞いをした。実際は、それが最初だったというわけではない。すでに以前からどんどん女性的になっていたのは事実。部分的に女装するのは大変なことではないから。

そして、間もなく、僕は普通の女性とほとんど見わけがつかないようになっていた。そこで秘書の仕事に就いた(ああ、ありきたりなのは知ってるけど)。しばらくの間は、かなり上品な生活をしていた。というか、少なくとも、普通のありきたりな生活と言ったほうがいいかな。朝起きて、職場に行って、帰宅して、少しテレビを見て、ディルドでオナニーして、眠りにつく。そんな生活。

でもしばらく経つと、男たちの視線を感じるようになっていた。多分、男たちにはちゃんとした道具がからだについていると知っていたという事実のせいかもしれないし、それとも、僕が女性のように振舞っていたという事実のせいかもしれないけど、僕は男たちに惹かれると気づいたんだ。

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08
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自分のそんな気持ちを素直に認める勇気を振り絞って、自分は男性が好きと認めるまでには、かなり時間がかかった。

でも、それを認めた時は、一気に全部吐き出した。

以前の僕は女性のどんなところが好きだったんだろうと思いだし、それをまねることにした。

前は、トランプ・スタンプ(参考)をした女の子が好きだった(ああ、知ってるよ、でも……)。そこで、僕も腰の後ろに彫ってもらった(それに他の女性向きのタトゥ―をいくつか)。お化粧も完璧にマスターすることにした。あと、女性用のアクセサリーもつけ始めた。

でも、いちばん力を入れたところは、男たちに媚を売る方法を学び始めたこと。

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09
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初めての男性との性的な出会いは、一言で言って、特別だったと言える。いや、ロマンティックなことではない。全然違う。

そうしようと決め、実行した。明確にオトコを引っかける目的でクラブに行った。そして、実際、あの男を引っかけたのだった。

彼の名前は覚えていない。もっと言えば、名前を教えてもらっていないと思う。ただ、セクシーな男だったのは知っている。彼はからだが大きく(ええ、大きい男が大好き)、スポーツマンのような体形で、そして何よりおちんちんが大きかった。ああ、そう。彼は黒人。どうしてなのか分からないけど、なぜか、黒人男性にしか惹かれない。

彼とふたりで部屋に帰った時、どうしてふたりきりで部屋にいるのか、疑いようがなかった。玄関を入ってすぐ、彼に抱きついていた。そして数秒後、彼の前にひざまずき、ズボンのチャックを降ろしてた。

フェラチオには、女性性に訴えかける何か特別なことがある。からだの変化や心の変化がいろいろあったけど、フェラチオをすることが僕をいちばん変えたと思う。

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10
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やっぱり僕じゃなく私と言った方がしっくりくる。

ここまで読んで皆さんが何を考えているか分かる。私の小さなおちんちんはどうなったと思ってるはず。 たいていの男は、それを見たら怒りだすんじゃないかと?

答えはノーだった。私が服を脱ぐ段階まで来ると、たいていの男たちは私の脚の間についてるモノなんか気にしなくなっているものだと分かった。多分、その理由は、私が明白に女性的だということかもしれない。そのため、私のことを男だと考えられないからだと。よく分からないけど。ともあれ、いままで、私はたくさんの男たちと付き合ってきたけど、誰一人として私がかつて男だったことを気にしているようではない。

最初の男のことに話しを戻すと、彼は裸になった私をすぐに四つん這いにさせて、後ろから突っ込んできた。そしてバンバン突かれた。その時の感じは……完璧だったとしか言えない。ディルドを知るまでは、自分の指が気持ち良いいと思っていた。そして、最初の男に深々と突きまわされるまでは、ディルドが最高と思っていた。今は、これ以外のセックスなんか考えられなくなっている。

アナルセックスには潤滑液が必要だと聞いたことがあった。だけど、私のからだにどんな変化が起きたか分からないけど、私は興奮すると自然に潤滑液を分泌するからだになっていた。振り返ると、そういったからだの変化が何を意図したものか、理解するのはそれほど難しくないと思う。


[2015/07/16] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

最後のテスト(1) 

01
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02
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これは被験者番号23についての説明である。このテストの目的は、例の化合物が被験者を変えるかどうかを決定することではない。被験者が変化することは、これまでの複数の被験者から、すでに確定している。その変化が望んだスケジュールで発生するよう、化合物の調整も行ってある。しかし、このテストの目的は、脳に若干の変化を加えることが必要かどうかを決定することにある。

その必要はないというのが仮説だ。性的指向の変化を促進させるには、身体的変化、ホルモンの変化、そしてフェロモンの変化だけで充分であるはずであるということだ。

現実の生活状況を再現しようとする代わりに、普通の白人男性に化合物を与えるという単純な方法を取った。

2年間を置いて、この人物を再訪する。その際には、どうして問題の化合物を彼に用いたかについて捏造した言い訳を伝えるつもりだ。

個々人による変動を排除するため、同じ実験を他のもう4人(24番,25番,26番,27番)に対しても行うだろう。

私の仮説が正しければ、2年半以内に例の化合物を世界に放つ準備ができるだろう。

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03
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僕はおちんちんが大好き。この通り。言った通り。こんなことをするなんて考えたことがなかったけれど、でも、やっている。


でも、これはどんな意味があるだろう? これをして僕はどうなるのか? つまり、何と言うか……僕はこんなことをするべきじゃないはずなのに。そもそも僕は女の子ではないし、ゲイでもない……少なくとも自分ではそう思っている。つい何ヶ月か前までは、違っていた。

多分、説明が必要。ああ、これは僕。知っているよ…男には見えないことは。前はこんなじゃなかったし、こんなふうになりたいと思ったことももちろんなかった。

最初から話すべきなんだろうと思う。僕の名前はシェーン。数か月前までは、ごく普通の男子学生だった。男子寮に入って、スポーツをしたり、筋肉トレーニングをしたり。そして、もちろん女の子が好きだった。

以前は身長185センチで体重も90キロ以上あったなんて信じがたいでしょ? 時々、自分でも信じられなくなる。でも今は鏡を見ると……

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04
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こんなこと好きになってはいけないとは分かってるけど、おちんちんを口に入れると、何というか……すごく当然のことをしてるように感じる。

ともあれ、僕は普通の男だったんだけど、ある日、男子寮に歩いて帰る時、知らないふたりの黒人男に襲われたのだった。もちろん抵抗して払いのけようとしたけど、相手はふたりだから。そして、妙な展開になったのだ。

彼らのひとりが吸入器(喘息の人が使うようなやつ)を僕の口に当て、もうひとりが僕を抑えこんでボタンを押したのである。そして……僕はその場で気を失ってしまった。でも、連中は僕をその場に放置して去って行った。お金すら取らずに。まったく妙な出来事だった。

2日ほど経って、僕はそんな事件のことは忘れていた……声が変わるまで。ついさっきまで、普通のバリトンの声だったのが、次の瞬間、女の子の声みたいに高い声に変わったんだ。言うまでもなく、病院に行った。医者は多分、風邪でもひいたんだろうと言った。僕もこの通りウブな人間だから、その医者の言うことを信じた。

それから2週間ほど経ち、今度はからだじゅうの体毛が抜け落ちてるのに気づいた。多分、何日か、あるいは何週間かに渡って進行していたんだろうけど、それに気づいたのは一瞬の出来事だった。

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05
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僕はまた病院に行った。医者は僕が彼の邪魔をして、何か良からぬことを企んでいると思ったんじゃないかと思う。なので、僕は、その件は放っておくことにした。

その後は病院には行っていない。でも、からだの変化についてリストアップし始めた。……そうして見ると、実際、変化が生じていることに気づいたんだ。

それから半年に渡って、僕の全身が変化しているように思えた。身長は158センチまで縮んだし、体重も46キロまで減ってしまった。からだの形も変わっていた。お尻がちょっと丸くなっていて、腰幅が大きくなっていた。

それに、ペニスも……以前のサイズの半分以下にまで小さくなっていたんだ。

僕は怖くなった。だけど、医者に診てもらいに行く気にはならなかった。体調が悪くなったわけではないし、こんなからだになって恥ずかしかったから。

今から思うと、医者が僕のからだを診ても何もできなかっただろうなと思う。

[2015/07/16] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

淫乱ママ 第11章 (4) 


「で、クリスティは、このワインを持ってきたウェイターに、また覗き見させたってこと?」 ちょっとワインの酔いが回ってくるのを感じながら訊いた。

「ママったら……」

「まあ、悪いってことじゃないけど。クリスティは、家の中、半裸の格好で歩き回ってる人なわけだし」

娘は大笑いしてワインを少し啜り、あたしのからだをちょっと見た。

「ええ、さっきと同じようにじろじろ見て行ったわ。ママ? いちばん上のボタン!」

あたしは目を降ろし、ボタンを全部、元通り留めていたことに気づいた。そうねえ、今は、この格好じゃダメよねえ。分かったわ。

あたしは上のボタンをふたつ外した。

「まだまだ、足りない!」 とクリスティはあたしの谷間を見ながら言った。

もう、この子、頭がおかしいんだから! もうひとつ外しちゃったら、谷間の下まで露出しちゃうことになっちゃうじゃないの! あたしはグラスをとって、最後まで飲み干した。

「ママ、なんでこんなことしてるのか、分からなくなってきてる」と呟きながら、3つ目のボタンも外した。

「いいわ。じゃ、今度はドレスの肩のところをちょっと両脇にずらしてみたら?……こんなふうに」

クリスティは両手を伸ばしてきて、あたしのドレスを両脇にずらした。胸の真ん中のところが大きく露出するけど、かろうじて乳首が隠れる程度に。…ほんとにかろうじて隠れる程度。

娘はそうするついでに両手であたしの胸のあたりを覆いながら、手のひらでちくびをさわさわした。もうさっきからすっかり固くなっているのに。そうされたら、途端にビリビリと電流が走って、背骨を通って下半身に。思わずからだが震えてしまう。

そんなことされて興奮したことを一生懸命に隠そうとしたけど、息が乱れて、ハアハアッってなってしまう。

「うーむ、ママ、変ね? 乳首がすごく固くなってるわよ?」

クリスティは不思議そうな眼であたしを見ながら、片方の乳首に触れた。

ああ、もっといじって。両方とも。強く引っぱって! そう思ったけど、もちろん、ダメダメ。何とか意識を正常に戻した。そんなこと母親がすべきことじゃないもの。

「はい、はい。もう充分でしょ」 落ちついた声でそう言った。落ち着いた声に聞こえていたらいいんだけど。

そうこうしているうちに、例のウェイターが戻ってきた。すぐにあたしのドレスの状態に気づいたみたい。目を大きく丸くして見てた。興奮と欲望の色が浮かんでた。

「あ、あの……ご注文はよろしいでしょうか?」 とあたしの胸に目を落としながら言う。

笑いださないようにクリスティと目配せをしあって、あたしは何とか食事を注文。彼がクリスティの注文をとってる時、横に置いておいたハンドバックの中、何か探し物をするフリをした。からだを捻るように曲げて。そうするとドレスがさらにずれる。視線を落としたら、乳首の片方がはみ出していた。自慢の大きな乳輪と乳首がドレスの端のところから顔を出している。

彼がちゃんと見れるように、しばらくそのままの格好でいた後、また前を向いた。だけど、元の姿勢に戻っても乳首ははみ出たまま。周りには誰もいないので、そのまま直さずにいることにした。

ウェイターばかりでなく娘までもあたしの胸を、興奮して飢えたようなセクシーな顔で見ていた。いつもの通り、あたしの中には、胸をすぐに隠したいという自分と、これを楽しんでいる自分がいた……こんなふうに性的な目で見られるのを楽しんでる自分。

お尻の下のシートが濡れてるのを感じた。理由は明らか。これじゃあ、立ち上がったらドレスのお尻のところに大きな濡れたスポットができちゃうわと思ったけど、気にしなかった。だって、しかたないもの……。

興奮して頭がのぼせているせいか、あたしはさらにもう一つ試してみた。どうしたかと言うと、目を閉じて、両手を持ち上げ、ちょっと肩を動かし、けだるそうにストレッチをして腕を下げる。胸が両方ともドレスの中から出るのを感じる。それからすぐに目を開け、恥ずかしそうに両手で胸を隠す。

「あらイヤだ、ごめんなさい。このドレス時々、変なふうにずれちゃうの」 そう言って、困った顔をして若いウェイターの顔を見た。

彼、今にも気絶しそうになっていた。元々、目をまん丸にして見てたのに、もっと大きくして見ている。それに彼のズボン。前のところに何か固いモノの輪郭が浮き出ていた。

「あッ、ああ、いいえ、気にせずに。いいんですよ。分かります」 そう言うのがやっとみたい。

あたしは安心した顔になって、両手を離した。胸が再び露わになる。

「ありがとう。分かってくれて嬉しいわ。今度は大丈夫かしら?」

とゆっくり時間を掛けてドレスの両サイドを引っぱって胸を隠した。乳首が隠れる程度に。

「あ、ワインをグラスでもう2杯くれる?」

彼は注文を取った後、あたしをチラチラ見ながら厨房へと戻って行った。

「すごーい、ママ! ママがあんなことするなんて信じられないわ!」 クリスティは興奮していた。

「ええ、ママも自分で信じられない」 とあたしは笑った。

「彼の目を見た? もう、目が飛び出そうになっていたわよ!」

クリスティは笑いながらそう言い、あたしの手を握って近づいてきた。

「とても楽しかった。他に何かできないかなあ?」

「そうねえ、ママはすることはしたわよ。今度はあなたの番じゃない?」

あたしは娘のタンクトップを見た。ふーむ、ここではできることはあまりないけど……でも……

「ちょっといいことを思いついたわ」 とあたしは娘のタンクトップの裾に手を伸ばした。


[2015/07/15] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

新たな始まり (1) 

「新たな始まり」 A Fresh Start by Nikki J

デニスは、家の前のステップに座り、通行人たちを見ていた。通行人は多かった。大半がデニスと同じ黒人で、彼に注意を向ける者はほとんどいなかった。みんな自分のことしか頭にないのである。ステップに座る若い黒人男などこの公共団地ではありふれていて、特に注意を惹くような存在ではない。彼らの視野に入らなくて当然だった。

確かにデニスの今の状態は注意を惹くものではないかもしれない。だが、デニス自身は注意に値する存在だった。

デニスの母親はシングル・マザーである。デニスはそのひとり息子だった。父親は、彼が生まれる前に母親を置いて逃げていた。とは言え、別に彼がグレているわけではない。デニスはずっと小さいころから、最後に警察につかまったり殺されたりするのが嫌なら、きちんとした生活を送った方がよいと知っていたのである。

この公共団地に住む他の人々と比べると、デニスの肌は明るい色をしている。母からは、父親が白人だったと聞かされていた。デニスは、皮肉なことだと思ったのを覚えている。黒人男というのは親としての責任から逃げるものだというありがちの思いこみがあるが、自分の白人の父親がまさに親の責任から逃げたなんて。親としての責任から逃げるっていうのは、人種的なことというより、男の性質なんだろうなと思った。人は誰でも怖くなるものだ。だから、責任から逃避してしまうんだろう。

あまり良くない環境で育ったものの、デニスは高校を卒業し、秋から(奨学金を得て)大学に進学することになっていた。彼は、この公共団地から抜け出し、大学を無事卒業し、経済的に母親を支援できる日が来るのが待ち遠しくてたまらなかった。思い出せる限りでも、彼の母親はずっと仕事を2つ抱えて働き続けてきていた。そんな母親の姿を見てきたので、彼は一度でもいいから、自分が母親を養う立場になりたいと願っていた。

デニスは、ステップに座ったまま背筋を伸ばし、胸を張った。俺はもうすぐこの公共団地から抜け出せるんだと。

デニスがそんな思いにふけっていたとき、彼の友人のひとり、アイクが近づいてきて、声を掛けた。

「おい、どうした?」


「いや、何でも」

ふたりは雑談を交わした。アイクはデニスの小学校の頃からの親友である。最近、地元の大学の電気関係の教育課程に入ることを認められたらしい。とは言え、デニスは、アイクが進学に応募したのは、単に、デニスが進学することで周りからああだ、こうだ言われるのが嫌だったからにすぎないのではないかと思っている。アイクは教育に価値を置くタイプではないことをデニスは知っていた。実際、アイクはすでにけちな犯罪に手を染めていたし、ほんの小さなきっかけさえあれば、本物の犯罪者になる道を進むことになる人間だった。

「さっきの、糞みてえなニュース知ってるか? テロリストだか何だか知らねえが」 とアイクが訊いた。

デニスもそのニュースを聞いていた。「ああ、白人たちに何かあるとかいうヤツだろ? 全部は聞かなかったが」

「お前、ちゃんと聞くべきだったぜ。その野郎、白人男を全部、エロ女に変えるとか言ってたんだ。言い方は違うが、言ってたことはそういうことだ」

デニスはその男がベルという名前であることを覚えていた。ふたりは、そのテロリストの警告したことが実際に実現したら、どれだけ面白いことになるかと話しあった。とは言え、ふたりの会話はすぐに、その気が狂った博士とありえない計画の話しから、10代の男子のほとんどすべてが心に浮かべていることに話題が変わった。つまり、女の子についての話である。

「で、お前、ベッキーとデートに行くんだろ?」 とアイクが訊いた。「ベッキーのあの尻!……たまんねえよ」

デニスは微笑んだ。「ああ、明日の夜な」

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[2015/07/15] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

裏切り 第10章 (14:終) 

アンジーと私は船を見つけた。ふたりとも大いに気に入ったあの船。ふたりでその船の持ち主もおもてなしした。その持ち主は私のオフィスの隣のオフィスにいる。ロブである。ロブは最初、船を買うつもりなどなかった。私とアンジーが彼のオフィスに忍び込み、ドアを閉めるまでは。アンジーは彼のデスクに腰かけ、私は彼の膝の上に乗っかって両腕で彼の首に抱きついた。そうしてアンジーが私にしたのと同じリズムで彼にしてあげた。まあ、まったく同じことをしてあげたわけではないけど。

そんなわけで会社は「社用のヨット」を持つにいたった。(まあ、ビル・ワーツ(参考)が所有するホッケーチームのブラックホークといったものには程遠いけれど、ミシガン湖をクルーズするにはお手ごろだし、ほどよく小さいのでオグデン・スリップ(参考)に停泊させることができる)。

ロブとジムは、他のボート所有者たちと知り合いになり、一緒に酒を飲み、大騒ぎの週末をすごした。私とアンジーも、このお買い物をしていただいたお礼に、デッキでお尻を高々と掲げながら、全身に素敵な日焼けを得ると共に、ボスたちをとてもいい気持ちにさせてあげた。

ダイアナがどこに行ったかをアンジーに言わせる必要はなかった。ダイアナの社会保障番号を知っていたし、インターネットという武器もある。加えて、彼女がロスアンジェルスに旅行したことが偶然ではないかもしれないとも思っていたので、ダイアナの居場所は簡単に突き止めることができた。ウエスト・ハリウッド(参考)であった。

私はアンジーにハリウッドに行ってみることを伝えた。アンジーは喜んではいなかったけれど、黙認してくれた。彼女は、私にはこの件を決着させることが必要であるを分かっていたのだろう。アンジーは、何か最終的な決心をするとしても、その前に一度戻ってくることを約束するよう私に求めた。

彼女は、サンタモニカ大通りにあるクラブ7969の中、スツールに座ってバー・カウンターについていた。その店がリンガーズほどの雰囲気の良い店とはとても思えなかったけれど、それなりの機能は果たしている店だった。

ああ、彼女は前と変わらずとても美しかった。私と彼女の間、時間が停止したように感じられた。その週末、以前と同じように、私と彼女はずっとベッドの中で過ごした。今この瞬間、この場所だけを思って、外のことや過去のことなど考えずに愛しあい続けた。

別れる前に、私は彼女がちゃんと生活できるように整えた。信託資金とベッドルームが2つあるコンドミニアムと彼女用の車を1台与えて。彼女にはどんなものでも自分がなりたい人間になれるのだと理解してほしかったし、それを達成するために誰か他の人やモノに頼ることはないのだと分かってほしかったから。今回は、彼女の携帯電話の番号もしっかり教えてもらった。

車でロサンジェルス空港まで送ってもらった時、私たちはずっと互いに触れ合い続けていた。この魔法のような瞬間を断ちきりたくなかったから。その気持ちは依然として強く、いまだに彼女に電話するたびに感じる感情だ。

私の生活も仕事も今だにシカゴで続けている。アンジーのおかげでいつも幸せな気持ちでいられることを否定しない。彼女の愛すべきところを挙げよと言われたら、大きいものも小さいものも含めて何百万ということができる。アンジーの方も私をどれだけ愛しているか恐れずに口にしてくれている。STG社も私も目を見張るほどの大成功を収めていた。ラサール通りでも世界的にも、STG社の名前はブランドになっていた。

実際、私も巨額のお金を得ていた。アンジーと私はロブとジムのふたりと公的にも(そして、非常に私的な)お付き合いを続けている。だけど、あの特別の非常に親密な関係はアンジーとの間のためだけ。

私とアンジーはまだ結婚していない。それに、ふたりとも会社に勤めている間は、多分、結婚することはないと思う。私たちは、オフィスに顔を出さなければいけないことが何度もあるので、結婚してしまうと、同僚たちから非常に答えづらい恥ずかしい質問をされてしまうことが考えられ、それはできるだけ避けたかったから。ある意味、私たちは他の会社の同僚たちをだましていることにはなっているかもしれないけれど、少なくとも、アンジーと私の間では正直な関係でいたいと思っている。

でも、時々、アンジーに誠実でいられなくなる時が出てくるのが事実。アレが機能しなくなるということ。

アンジーが私にそうなってほしいと思った時には、確かに、あの「小さな青い錠剤」(参考)が助けてくれる。ええ、アレは、ロザリオ(参考)になりたがってる60過ぎの男性に対してと同じように、「困惑した」Tガールにもうまく作用する。

アンジーは冗談まじりに、手術で逞しくしてもらったらと提案までしたけど、同時に、真顔で、完全に逆の方向になったらどうかとも言ってくれた。私としては、正直言って、後者の方がずっとアピール力がある。だけど、それって、私と彼女に対してどんな意味をもつことになるんだろう?

ロブは現状に満足している。でも、ジムはそう思っていないのじゃないかと思っている。私の直感からすると、ジムはアンジーと今以上に深い関係を望んでいるのではないかと思う。アンジーは、現状を変えたいという気持ちは一言も発していないけれど、ロブとジムと一緒にするちょっとした4人プレーを彼女がとても楽しんでいるのは事実だ。時々、ジムとアンジーが互いに見つめあう様子を見ると…… ロブも私のことを同じように見つめてくれるし、アンジーはそれに文句を言ったりはしない。でも、だとすると、どうしてアンジーは? 最近、私とアンジーは「バイアグラの滝にハネムーンに行く」(訳注:バイアグラの滝=ナイアガラの滝、バイアグラを使って新婚カップルの男女として愛しあうこと)の頻度がどんどん減ってきていた。私は、再び、「男」となって頑張るの? バカよね、私たち、そんなことする必要ないのに。そうでしょ?

この件についてアンジーと話しあうべきかしら? その必要があるのかしら? 言葉にあんなに高い価値をもたせた人間として、私は、どうしてその件についてアンジーとジムに訊くのを恐れているのだろう? 答えが怖いから? どうして私の人生はこんなにも複雑にならなくちゃいけないのかしら。多分、そんな複雑になる必要がないのかもしれないのに。

何度か、夜遅く、ベッドで安らかに眠るアンジーを尻目に、ひとりバルコニーに立って、眼下のオグデン・スリップ(参考)やミシガン湖を見下ろすことがあった。そして、デュバル通りのファット・チューズデイ(参考)のサンデッキに横たわってる自分の姿を想像する。着ているのは、紐みたいなビキニとハイヒールだけ。ピニャ・コラーダを啜りながら、アイランド・ミュージック(参考)を聞いている。日は照り、空気は熱く、誰もが、いつも決まって午後5時に降りだす雨を待ち望んでいる。

そして、私の心はと言うと、通りのはずれにある古い映画館を思い浮かべている。そこでは、ドラッグ・クイーンのショーをしている。私は、あの魅惑的な茶色の瞳を思い浮かべ、あの種の人生が彼女には魅力的に感じられるのだろうかと考える。彼女は自ら進んであれをする気になるだろうか? 彼女は、私を抱きしめ、私を安全で居心地良く、そして幸せな気持ちにするためにすべてを捨てる気になるだろうか? 私はどうだろうか? 私の心の中では、弁護士たちが言うように、少なくとも、「訊いて、答えは得ている」。でも、すぐに、彼女に会いたくて心が疼いた。今でも、そう。

ただ、成り行きにまかせるの。…そして、流れがあなたをどこに連れていくか、見ていればいいの。

おわり


[2015/07/14] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(2)