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69 Little sister 「可愛い妹」
「ケリー、お願いだ。助けて。お前のママは気が変になってしまったんだ」
「私にはそう思えないけど。私としては……」
「あたしはお前のパパなんだよ! そのパパが助けてほしいと言ってるんだよ!」
「パパ? マジで? どう見ても父親には見えないけど。あんたが、パンティの中にあのちっちゃいモノをぶら下げてるのは知ってるよ。でも、どう見ても男には見えない」
「それはママがパパに食べさせ続けてきた、アレのせいなんだよ。そのせいで体が変わってきてると気づいたときには、すでに遅かったんだ。そして……そして……ああ、ケリー、お願い。助けて。何でもするから」
「どうしようかなあ。私としては、可愛い妹ができるという方も、ちょっと、いいなあと思ってるもの」
「お、お前……パパを助けてくれないつもりなの?」
「ばらしちゃうと、これ、全部、私が考えたことなの、パパ。それとも、パパと呼ばずに新しい名前で呼ぶのに慣れるべきかな。そうだよね、マカイラ? その名前、好きでしょ? 名前はママのアイデア。知ってるよね? その名前、ママの知らないところで、あんたがヤリまくっていた女の子の名前だよね?」
「知ってたの?」
「もちろん。でも、いいこと教えてあげるよ。私がバラすことにしたの。ママには言うつもりはなかったんだよ。あんたたち夫婦の問題だからね。私には関係ないことだった。だけど、あんたは私の彼氏を脅かしたでしょ? あの時、あんた、彼を何て言ってたっけ? ろくでなし? 負け犬? まあ、あんたも彼にもっと優しくすべきだったのよ」
「あ、あたしは、もう出て行く。ここにはいられない」
「いいえ、ずっといてもらうわ。もし出て行こうとしたら、あんたをもうちょっと若くすることができると思うし。あんたは、今は少なくとも大人と言えるかもしれないけど、もう2、3滴飲ませたら、それも変えられる。中・学・生になりたい? それとも小・学・生に戻りたい? おむつをして何年か過ごすというのはどう?」
「そんなこと!」
「やってみたら? それがイヤなら、あたしの可愛い妹になる道もあるわよ。学校に通って、男子とデートして。まあ、そんな類のこと」
「男とデート?」
「もちろんじゃないの、バカね! 私の彼には弟がいるの。私のキュートな妹に会ってみたいって必死になってるみたいよ! でも、気を付けなきゃダメよ。彼のズボンの前が、もっこり膨らんでいたから。それってどういうことか……分かるでしょ? 彼に会えば分かるわよ」
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69 I care 「気にしてしまう」
誰もあたしを理解していない。誰も、あたしが、なぜこんなことしているのか、なぜ自分の裸の写真をインターネット中に投稿しまくっているのか分かっていない。そんなことして、恥ずかしいと思わないのか、とみんな言う。お前は狂ってる、劣化人間だ、変態だと。
彼らがどう思おうが気にしないと言えたらどんなに良いだろう。罵倒や中傷、殺すという脅かしまで、全部、無視できたらどんなに良いだろう。お前は文化を破壊してる。お前は社会にとって危険な存在だ。お前は生きてる価値がない。ありとあらゆる罵倒を耳にする。無視できればいいのだけど、実際は、体調を崩してしまうまで、そういう罵倒をすべて何度も何度も心の中で繰り返してしまう。そして回復すれば、あたしは再び同じことを繰り返す。何度も。どうしても、そうしてしまう。本当に、やめることができたら良いのに。
表向きは、気にしていないフリをしている。その点で、ほとんど反逆をしていると見えるだろう。彼らが大声で叫べば叫ぶほど、あたしは、彼らが憎悪することをさらに行う可能性が大きい。でも、あたしは車の運転でスリップを繰り返しているだけなのだ。実際には、他の行動をする選択肢をあまり持っていないだけなのだ。
あたしは注目を浴びたい。切望している。良い評価でも悪い評価でも。良し悪しは関係ない。彼らがあたしを見てるのを知っている。そして、彼らは、表向きにはあたしの存在自体を侮蔑してても、そんな彼らの中の少なくない人たちが、あたしを見て興奮しているのも知っている。あたしがしてるだろうと彼らが思うイヤラシくて、淫らなコトを想像して興奮してるのだ。それをあたしは知っている。
あたしは壊れている。あたしは自分のことを知っていて、自分の精神が健康的でないことくらい分かっている。でも、やめられない。自分でも本当にそうしたいと思っているのか分からない。やめようとした。でも、いつも、元に戻ってしまうのだ。やめられたら本当に良いのに。本当に。
不思議な人生だ。あまりに多くの人々が、理由もなしにあたしを憎悪しているという、奇妙な状況。あたしのことを愛してくれる人たちもいるが、みんな、間違った理由でそうしているという奇妙な状況。それがこの人生。むき出しの憎悪か、あからさまなモノ扱い。決めつけの判断か、勘違いした受容。薄っぺらな賞賛か、根深い敵意。どっちがより悪いか自分でも分からない。
あたしには分からない。そんなこと気にしないでいられたら良いのにと思う。でも、あたしは気にしてしまう。これからもずっと気にし続けるだろうと思ってる。