2ntブログ



Enough 「充分」 

enough.jpg

Enough 「充分」

かつて,、彼はまっとうな男性だった。強靭でハンサムで男らしい彼は、どこを取っても、期待通りの男性そのものだった。だが、彼はひどく不幸だったのである。彼は自分を憎んだ。そして、それゆえに他の誰をもを憎んだ。それがすっかり変わったのは、彼が演技をやめ、ずっと前からそうなるべきだった人間へと真に変わろうと決めた時からだった。だが、それは簡単な道のりではなかった。そもそも簡単だった時があっただろうか? 試練、艱難辛苦、葛藤、友人の喪失。それらが最初からずっと彼を悩ませ続けてきた。しかし、彼は到達した。ようやく、達成しようと踏み出した境地へとたどり着いたのだ。それは、私が夫を失ったということを意味しているけれども、それでも、私は彼のことをうれしく思っている。

彼が経験してきたありとあらゆることを思い、驚嘆してしまうことが多い。成長期、彼は決して自分自身が何者であるかを見つけ出す機会を与えられなかった。いつも、「これがお前なのだ。そして、お前はこういう人間になるのだ」と、そう言われるだけだったのである。それについて疑問を抱く機会すらなかった。いや、むしろ、彼は、あえてその疑念を自分自身の心の中という安全な領域の外に持ち出すことはしなかったと言うべきか。

彼には言っていないが、私は密かに、彼が昔から何か他の存在になりたいと憧れていたのだと思っている。夜遅くベッドに横たわったまま目を開けていることがよくあったのだろう。暗闇を見つめながら、もし自分が姉のようにチアリーダーになることができたら、どんな人生を送っていただろうと想像していたのだろう。あるいは、愛らしいドレスを着たり、化粧品を買ったりとか、彼のような男性には禁じられている様々な女性的な物事をすることを夢見ていたのだろう。

さらに成長するにつれて、彼はそういう思いや夢を、心の暗闇の奥深くへと押しやっていった。自分自身の本当の性質を見て見ぬふりをしようと必死に頑張った。それでも、時々、その緊張の糸が途切れてしまうことがある。10代のころは、家にひとりだけになるのを待って、姉のパンティを履いてみることが何度もあった。そして、私と結婚した後は、今度は私の下着をよく盗んだ。オンラインではトランス・ガールが出てくる動画を見ていた。男性が「強制」されて女性に変えられる物語を読んでは、嫉妬心と興奮の入り混じった気持ちを感じていた。彼は、自分もそうなることを想像し、夢見ていたのだった。

だけど彼は決して行動には移さなかった。本当に全然。彼は恐れすぎていた。そして、うっ憤と恐怖でいっぱいいっぱいになった結果、彼は最悪のタイプの男性になってしまったのだった。みみっちくて、細かいことにうるさく、いつも腹を立てて、鬱屈してて、他者への憎悪の塊。彼は周りにいる人間にとって悪夢としか言えない人間だった。彼がカムアウトする前ですら、私たちは離婚寸前の状態にあった。

何が彼が変わるきっかけになったのか、それを知ることができたらと願う。自分が幸せならば、他の人の意見など、本質的には、どうでもよいのだと、誰が彼に説得したのだろうか? 誰が彼に壁を飛び越えるように後押ししたのだろうか? それとも、単に、長年にわたって蓄積し続けてきたものが限界を超えてしまい、とうとう彼自身が無視できないまでになったということなのだろうか? 私には分からない。それに、率直に言って、それはどうでもいいことかもしれない。私が知っていることは、彼がいま幸せでいるということだけ。それだけで充分なのだ。そして、これからもずっと、幸せでいるということだけで充分なのだ。



If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/


[2019/05/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Self-discovery 「自己発見」 

self-discovery.jpg

Self-discovery 「自己発見」

「オーケー」とチェイスはビキニのボトムズを脱ぎながら言った。「君が正しかったよ。それでいいね?」

「え、何て?」と彼のガールフレンドのマンディは、片手を耳に添えて聞き耳を立てるような仕草をした。「もう一度言って。でも、ゆっくりとね。じっくり味わって聞きたいから」

「ハッハァー」とチェイスは了解したことを示す声を上げ、ビキニのトップの紐をほどいた。トップを外し、すでにある汚れた衣類の山に放り投げた。「面白い。実に面白いよ。でも、ああ、いいさ……認めるよ。ボクは楽しい時間を過ごした。こうなるとは思っていなかったけれど、でも……」

「あなた、2週間近くは、ふてくされたり、ぶつぶつ唸ったりしてたのよ」と彼女も同じように衣類を脱ぎながら言った。「それに加えて、おへそにピアスするときも、ずいぶん怒ったわよね」

チェイスはおへそのピアスをいじりながら言った。「分かってるよね、これは終わらせなくちゃ。そうだよね?」

「あなたがそうしたいなら」 と言い、マンディは彼に近づき両腕を彼の腰にまわした。そして彼のぷっくり膨らんだ左右の尻頬をぎゅっと握った。「でも、別に終わらせなくちゃいけないわけじゃないわよ」

チェイスは不満そうな声を出して、体を離した。「もちろん、終わりにしなくちゃいけないよ。って言うか、楽しかったよ。それは認める。でも、もうボクたちは現実の世界に戻らなくちゃいけないんだよ。ボクには友達がいるし、両親もいるし、仕事もある。家に戻ったら、普通の状態に戻らなくちゃいけないんだ」

「でも、この状態を、あたしたちにとっての新しい『普通の状態』にすることも考えられるわ。あたしもあなたも可愛いでしょ? 男たちにちやほやされたり、あの素敵なオモチャで一緒にプレーしたり……これからも、こんなふうに楽しく暮らしていけるのよ? 別に妄想を語ってるんじゃないの。あなたは、ここに来て初めて本当のあなた自身を見つけたみたいだし、それに……」

「ダメだよ」とチェイスは後ろを向いた。しかし、彼女の言っていることが正しいという意識が、彼の心の玄関をバンバンと叩いているような気がした。この1週間、彼は一度も自分が劣ってるとは感じなかった。確かに、落ち着かない気持ちだったけれど、誰も自分が女のフリをしてると気づいていないと知るや、すぐに、その落ち着かない気持ちも消えていき、代わりに、純粋に楽しい気持ちにあふれていたのだった。

しかし、彼は、女装にまつわる現実的なあれこれよりも、まさにこの点に最も不安を感じた。そして、不安と同時に興奮も感じたのだった。

「こういうのは、どうかしら? 家に帰ってからもこれをするっていうのは? あなたは外に出たりしなくてもいいわ。ふたりだけの小さな秘密にしてもいいんじゃない?」

秘密。その提案は良さそうに聞こえた。それにリスクもない。誰にも知られないんだよね? そう思い、彼はにっこりと微笑み、そして言った。「そ、それって、良さそうだね」

If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/


[2019/05/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)