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報復 第2章 (9) 


スティーブはソファ脇の側卓からリモコンを取り、テレビに向けた。テレビのスイッチを入れた後、別のリモコンを取り上げる。このリモコンは彼のデジタル・ビデオのコントローラだった。デジタル・ビデオはすでに再生モードにセットされており、スティーブが望む再生箇所に合わせてあった。デジタル・ビデオはケーブル類の箱の脇に置いてあったので、部屋にいる誰もその存在に気づいていなかった。

スティーブには、ビデオをDVDに変換してもらう人を探す時間がなかった。彼自身、それを行うソフトウェアを持ってはいたが、DVD変換の経験が非常に少なかったし、万が一、テープの中身を失ってしまうことだけは避けたかった。この日、録画したものをスティーブがみんなに見せるつもりなら、カメラをビデオ・プレーヤーとして使うという方法しかなかったのである。

スティーブは、バーバラを鋭い目つきで睨みながら、「再生」のボタンを押した。

大型テレビスクリーンに映ったサンダーバードはすでに川の水に入ったところだった。スティーブの乗ったピックアップ・トラックがバックで坂を登っているところだったので、画面は酷く揺れていた。だが、画質も音声も、完璧にクリアである。静かな居間で見ている者には、エンジンの轟音は耳をつんざくばかりで、スティーブは、思わず音量を下げた。トラックが後退を止めると、画面は安定した。ドアをバタンと閉める音が聞こえた。画面の左からスティーブの姿が現れる。カメラから離れ、前方に歩いていくところだった。ほとんど水際の近くまで歩いていく。

次の瞬間、暗い水の中に沈みかかった車の助手席の窓からバーバラが這い上がってくるのが映った。その後に運転席側から男が同じく這い上がってくる。2人とも顔や体は泥だらけで、乱れきった姿でよたよたと岸に歩いてくる。バーバラはバランスを保とうと、両腕を激しく振っていた。しかし、それも虚しく、つまずき転び、肩まで川の泥につかってしまい、必死に這い上がろうとする。川底の穴とから這い出て、浅瀬に来たものの、何か取り戻そうと、再び川の方に向き直った。屈みこんで、泥水の中からハンドバッグを引っ張り出し、高く掲げた。

スティーブは再生を止め、巻き戻しボタンを押した。

「とても面白いビデオだね。そう思わないかな、バーバラ?」

優しい口調で語りかける。そして、画面に映る数字が望む数値に達したのを受けて、巻き戻しを止めた。

「最低!」 忌々しそうにバーバラが言った。

[2006/11/13] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

シルクの囁き、ラベンダーの香り 第1章 (6) 

「それじゃ、月曜日の朝9時ごろ私のオフィスに来てくれる? そこで詳しく話しましょう」 ジャネットは、クリスに名刺をさし出した。

「はい、分かりました。ありがとうございます、レドモンド先生」 クリスは再びジャネットの愛らしい瞳を覗き込み、心が溶けそうになるのを感じた。

「ジャネットと呼んで」 

ジャネットは、再び愛らしい笑顔を見せ、クリスの元から去った。キュートな子だと彼女は思った。そして、背中に彼の視線を感じ、ちょっとゾクッと感じた。ヒップを振り過ぎていたかしら? きちんとした振る舞いをしなければ、と自分に言い聞かせたジャネットだったが、彼女の固く勃起した乳首は、心の中の興奮を隠していなかった。

香水の甘い香りを漂わせたまま、流れるように歩き去ったジャネットを見ながら、クリスは麻痺したように立ち尽くしていた。彼の視線は、炎に引き寄せられる蛾のように、ジャネットの下半身に引き寄せられていた。「いいなあ・・・」 かすかに左右に揺れる成熟した腰を見ながら、そう思った。「・・・しかもお医者さんだ・・・」 股間がひくひくと反応しているのを感じた。「お前、お願いだから落ち着いてくれ」 勃起したままパーティの場を歩き回るのは、みっともない。

その後も、クリスはジャネットからつかず離れず、いつも視線に入れていた。跡をつけていたというわけではないが、他のパーティ客と会話をする彼女の姿を、たえず視界に入れていたと言ってよい。洗練された軽やかさで、部屋から部屋へと渡り移り、人々とおしゃべりをし、エレガントに笑う。ジャネットは、何気なく振り返ったとき、クリスが自分を見ているの気づくことが何度かあった。クリスは顔を赤らめたものの、ジャネットは平静に対処しているようで、甘く微笑みかけて応じていた。ある時、ジャネットがクリスの元に歩み寄り、「パーティを楽しんでいる?」 と訊いた。クリスは返事はしたものの、すっかり取り乱し、まずいところを見つかった子供のように、しどろもどろになってしまった。ジャネットは、そのクリスの様子に、楽しそうに笑った。あらわになっている胸元から、たわわに膨らんだ胸がドレスから飛び出そうになって揺れた。

少し時間が経ち、クリスは自分の車の写真を取りに、2階の自分の部屋に戻った時だった。両親の寝室の前を通りすぎた時、誰かが中にいるような気がした。両親とも、ついさっき1階で見かけたばかりである。クリスは立ち止まり、わずかに開いているドアの隙間から中を覗き込んだ。トイレがあるバスルームからレドモンド先生が出てくるのを見て驚く。1階のバスルームは他の人が使っていたのだろうと、クリスは思った。

[2006/11/13] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)