バルは白いタンクトップを着ていた。胸元が大きく開いていて、これは気に入った。ノーブラらしいのが分かる。乳首らしいのが中からトップの生地を押してるのが見える。バルは俺と一緒に座ってる間、ずっと俺のことを見つめ続けていた。そんな俺とバルの間に性的な緊張感が生まれてるところをトリスタに見つからなければいいんだが。俺はそう願うばかりだった。
「ビーチに行ってもいいけど、家に戻って、水着とタオルを持ってこなくちゃいけないな」 と俺はコーヒーの残りを飲みほした。
「もちろんいいわよ! 私も乗せてって。モールのところで降ろしてくれればいいわ。新しい水着を買うから。あなたが家から戻ってくる時、またモールに寄って、私を拾ってくれればいいし」
バルはそう言って、ブースから抜け出た。
「ああ、いいよ」 と俺もブースから抜け、立ち上がった。
店の中をもう一度見回したが、トリスタの姿は見えなかった。バルはドアの方に歩き始め、俺も彼女のあとについて歩いた。
バルの後ろを歩いてすぐに視線を奪われたのは、彼女の尻だ。ピンク色のショートパンツに包まれた、キュッと締まった尻。なかなかの美尻だ。それが歩くのに合わせて、左右にキュッキュッと揺れてる。脚も適度に日焼けしてて良い形だし、ビーチサンダル(
参考)を履いてて、セクシーな足先が良く見える。
バルはドアを出て、俺もすぐ後に続いて外に出た。まるで母親のあとをつける子犬のようだ。
「アレが俺の車だよ」 と俺はバンを指差した。
「素敵! あなたバンを持ってるのね」 とセクシーな外国訛りでバルは言った。
「ああ、父親が昨日俺に譲ってくれたんだ」 と助手席側のドアを開けてあげた。
バルが乗り込んだ後、ドアを閉じ、反対側に回って運転席についた。そしてエンジンをかけ、走り出す。運転してると、バルが車の後部をチェックしているのに気がついた。
「この後ろのところにカーペットを敷いたらいいと思うわ」 と笑顔で俺に言う。
「ああ、おカネが入ったらすぐにそうするつもり」
その後はラジオをつけたので、あまり会話もせずに車を走らせた。音楽をがんがん鳴らしていたが、モールはすぐそこだった。駐車場に入り、モールの入口の真ん前に止めた。バルは自分でドアを開け、飛ぶようにして降りた。そして窓に顔を出し、にっこり笑顔で言った。
「ココナツ・オイルを持ってくるのを忘れないでね。それから、このあたりで待ってるから、すぐに戻ってきて」
そう言って彼女は向きを変え、モールへと歩き出した。
モールの入り口のドアを引くバルの姿を見て、どうしても彼女のゴージャスな尻から目を離せなかった。脚も完璧に近いし、ウエストもキュッと締まって、いい形だ。
俺はすぐに車を動かし、家に向かった。土曜日なので交通量は少ない。逆にビーチの方は混んでるんじゃないかと思った。
家の前に着き、車を止めた。家は全部鍵がかかっていた。ガレージを見ると、母親・父親の車が両方ともない。どっちも出かけたのだろう。
俺は自分の部屋に駆けあがり、服を脱いで、同時にドレッサーを開けた。掘り漁るようにして水着を探した。見つけ出すのに3分ほどかかってしまった。去年の秋に履いたのが最後だったから、引き出しの底にあったのだ。少ししわくちゃになっている。
そいつを履いてみたら、ちょっと小さすぎることに気がついた。鏡の前に行くと、本当にキツキツに見える。それに股間の盛り上がりも露骨だ。もし、何かで興奮してしまったら、何もかもバルに見られてしまうだろう。
~*~
イサベラは窓から下の中庭を眺めた。
お馴染みの日常的光景が嬉しい。仕事をする男女、ギイギイ音を鳴らし進む荷馬車、吠える犬、それに遊ぶ子供たちの楽しそうな声…。
彼女は膨らんだお腹を触っていた。自分の中で新しい命が成長しているのを感じる。いまや私のものとなったもの、いや、レオンと私のものとなったものを守るために、どれほどのことであろうともするつもりであると心に決めていた。
暖かな陽の光から離れるのは嫌だった。だが、彼女はゆっくりと窓から離れ、小部屋の中を進み、部屋の中央に立った。そこには椅子があり、その椅子には女性が縛り付けられていた。今は黙って座っている。
衛兵たちは先を争ってイサベラの命令を実行しようとしていたが、イサベラが黙るようにと求めたので、ずっと沈黙したままでいた。レオンが戻ってきたら、すぐにこの件について知らされるだろうけれど、その時にはすでに時遅しとなっているだろう。
イサベラは黙ったまま、この抜け目のない囚われ人の顔を見つめた。その様子に衛兵たちの沈黙はいっそう緊張感を帯びてくる。しかし、忍耐強く視線を逸らしていたものの、忍耐はそう長くはもたない。とうとう、マリイは瞳に怒りの表情を浮かべ、イサベラと視線を合わせた。
「レオンはあなたの運命を私の手にゆだねて、去りました。彼は慈悲深さを示していると思ってる。何と言ってもあなたは彼の父親の妻だった人だから…」
イサベラはそう言って、マリイが座る椅子と同じ形の椅子に腰を降ろした。そして、紫色のスカートを撫で、乱れをただした。マリイは、イサベラの仕草をひとつひとつ目で追っていた。
「…男性の名誉心って、不思議なものね」
マリイは頑として沈黙のままでいた。イサベラが続けた。
「あなたは淫らにも自分の身体を売って私の父の元に走った。だが、その父はこれ幸いとばかりあなたをここに放置して、去ってしまった。ここにいると殺される運命になるかもしれないと知りながら。あなたは父が私を犯そうとしても、何食わぬ顔でその場に立って見ていられたことでしょうね。あなたは私に鞭を振るった。でも、何のためなの? レオンのため? 彼の富や権力のため? 言って」
イサベラはスカートの中から銀の短剣を取り出し、手のひらに当てた。それを見てマリイは顔を蒼白にさせ、身を強張らせた。イサベラは、ようやくマリイにこっちを向かせることができたと思った。
「あなたは誰を憎んでいるの、マリイ? あなたを利用した男? あなたを愛さなかったという理由で、レオンを憎んでるの? それとも私? それとも、あなた自身?」
マリイはいきなり高笑いした。「そう言うあんたは、憎しみを持ってないとでも言うの? 私を殺すつもりなのに」
イサベラは怪訝そうに眉を吊り上げた。「私があなたを殺すと、誰が言ったの?」
マリイは固唾を飲んだ。よく分からないとでも言いたげに、まばたきをした。「あんた、はったりをかけてるつもり?」
イサベラは椅子から立ち、マリイに近づいた。そして小声で囁いた。「私が死んでほしいと思ってるのは、私の父よ、マリイ。父にはレオンを傷つけることができないところに言ってほしいと思ってるの」
沈黙がつづいた。
「あんた、本気?」
「父は自分が手に入れてしかるべきだと思いこんでるものを手に入れるために、レオンを殺すつもりでいる。レオンは危険が迫るのを防ごうとしてる。彼は父の行方を求めて、部下たちと領地内を探索している。一方の父は、この子が無事生まれるまで行方をくらまして、時間稼ぎをしてるだけ。その後、反撃を開始して、レオンを殺し、レオンの子を使って、富を奪おうとしている」
「あんた、私に自分の父親を殺して欲しいと言ってるの?」 マリイは眉を吊り上げ、訊いた。「それほどまでにレオンを愛してるの?」
「ええ、愛してるわ。でもね、あなたに父を殺してと頼んでるわけじゃないわ。あなたには父のところに私を連れていってほしいだけ。私が殺すから」
また沈黙が続いた。
「彼がどこにいるか私が知ってると?」
「マリイ、あなたは計算にたけた女性だわ。あなたのことを二度も過小評価するなんて、そんな恥ずかしい真似はできないわ」
マリイは浮かれたような笑い声を上げ、頭を左右に振った。「あんたのこと、最初は、うぶな修道女だと思ってたけど、どうやら、そうでもなさそうね」
「私は急速に成長しなければならなかったのよ、マリイ。そうなったのは、あなたのせいでもあるのよ」