「ええ、女の子も学校を続けながらいくらかお金を稼がなくちゃいけないのよ」 とそのリズという娘は答え、あたしが持ってるパンティを見た。
「すみません、お客様。それは試着できないんですよ。申し訳ありませんが、その商品の場合は買っていただかなくてはいけないのです。何か問題があった時は、いつでも返品していただいてかまいませんが…」
それを聞いてあたしはニッコリ笑った。この言葉のおかげでフランクの計画がダメになるわ。ざまあみなさい、フランク!
「リズ? 彼女、買う前にどうしても試着してみたいんだよ。何とかできないかなあ」 とフランクはまたも爽やかな笑顔を彼女に見せた。
どうしてこの店をフランクが選んだか、だんだん分かってきた。フランクは、彼女がここで働いているのを知ってたんだ! 何て邪悪な男なの! リズは下唇を噛んで、考えていた。
「そうね、たぶん…。ええ、今回だけは規則を曲げてもいいかも。そんなに頼むなら…。今回だけよ」 と彼女はフランクに微笑んだ。
この娘、フランクに媚を売ってる。フランクに気があるのは確かだわ。ああ、この娘が、フランクが本当はどんなヤツか知ってたらいいのに…。
「ほ、本当! ありがとう。君って最高だよ、リズ!」
リズはフランクの横をいそいそと過ぎ、近くのカウンターから数字のついた札を取ってきた。彼女、あたしを見て、もともと大きな目をさらに大きくさせた。ハッと息を飲んでる。多分、彼女、さっきあたしが前のめりになったところを見ていたからか、ちょっとおどおどしている感じだった。
「ついてきてください」 とだけ言い、彼女は試着室が並んでいるところに向かった。
「ああ、ケイト? それを履いたところ見たいから、履いたら、一度出てきてくれよ」
リズは目を丸くしてフランクを見たが、何も言わなかった。あたしは彼女に案内されて、ひとつのブースに入り、ドアを閉めた。
壁に背をつけ、携帯電話をチェックした。どんな状況なのか、クリスティから連絡がないかチェックするため。期待しながら小さな画面を見たけど、何のメッセージも来てない。ああ…。パンティね、いいわよ。履けばいいんでしょ。…それくらいなら、いいわ。
それまで、手に持っていたパンティに注意を払っていなかったけど、改めてよく見てみると、それが、完璧にシースルーなのに気づいた。ソング・パンティ(
参考)で、股間のところに小さな白い布がついてるけど、シースルーになってる! どうりでフランクがこれを選んだわけだわ!
でも、諦めるほかなかった。この状況を避ける方法はないもの…。
それまで履いていたパンティを脱いで、そのソングを履いてみた。スカートを腰まで捲り上げて、鏡で見てみた。
ああ、やっぱり、心配していた通り…! あそこがすっかり見えてる。お豆も、あそこの唇も…何もかも!
恥辱的すぎる! あの若い娘さんがいなくなってくれたらと祈るだけ。
あたしはスカートを元に戻し、一度、深呼吸してからドアを開け、外に出た。
そこにはリズも、フランクも、その仲間たちもいた。みんなでおしゃべりして笑ってた。あたしが出ていくと、みんながいっせいにあたしに視線を向けた。あたしは連中の前に進み、立ち止った。リズが目を大きくしてあたしを見ている。フランクと彼の仲間たちは、飢えるような目であたしを見た。
「じゃあ、ケイト。見せてくれよ」 とフランク。
ためらった。リズは、また別のパンティを持ってきてる。それは予想してなかった。あたしのことも、あたしの置かれてる状況も知らない、無邪気な瞳であたしを見ていた。彼女にとっては、あたしは単なる淫乱女にしか見えてないのかも…。淫らに身体を露出して喜ぶ中年女にしか見えてないのかも…
フランクは冷たいまなざしでじっと見てるだけ。
しかたなくスカートに手をかけ、ゆっくりと捲り上げた。リズがハッと息を飲んで、周りの男たちの顔を見た。彼女、あたしが、こんなにたくさんの男たちの前でこんなことをするなんて、信じられない様子。
でも、あたしはこうしなくちゃいけないのよ。あたしはスカートを腰の上まで捲り上げ、がっくりとうなだれた。この変態たちが満足した顔をしてるのなんか、絶対に見たくない!
「いいな。すごくセクシーだ」
「うひょー! 見ろよ、こいつ!」
「わお!」
シースルーのソング・パンティに包まれたあたしのあそこを見て、男たちが口々にイヤらしい言葉をかける。あたしは勇気を振り絞って顔を上げた。
みんながあたしを見ていた…。あたしと言うより、あたしのあそこを。あの女の子も。
ああ、イヤッ! この人たちに身体を見せている! あそこがじわじわと熱くなってくるのを感じた。興奮してしまってる。呼吸も途切れ途切れになってる。どんなに心では頑張っていても、身体が勝手にこの状況に反応してしまい、あそこが濡れてくる…。
ゲンゾーに付き添われて、アンジェラは彼女の診療所についた。鍵を開け、中に入った。ゲンゾーは待合室の椅子に座り、鞄からノートパソコンを出した。
「あら、ゲンゾー? あなたも中に入っていいわよ。最初の患者さんは9時まで来ないから」
ゲンゾーは無言のまま、彼女の後について中に入った。彼は窓際の梁に腰を降ろし、忙しそうにパソコンで作業を始めた。その間、アンジェラはその日に予約がある患者のための準備をした。
アンジェラには、ゲンゾーが彼女に注意を払っている様子がまったくないように見えた。このような人にガードされるというのも変な感じがした。8時55分になると、ゲンゾーは静かにノートパソコンを閉じ、アンジェラを見るでもなく部屋を出て、元の待合室の椅子に座った。
アンジェラは、その日の午前のセラピーで、何かが普段と違うことに気づいた。もちろん、彼女はいつも患者の感情に同調し、注意を払っているのではあるが、この日は、特に患者の精神状態がいつになく明瞭に知覚できているような気がした。
ある患者の診察時、アンジェラは休暇を取る予定だとその患者に伝えた。するとその患者は、表向きは陽気な顔をし、休暇を楽しんできてくださいと言っていたが、アンジェラは患者の感情が一気に怒りに染まるのを察知し、驚いた。この患者は1年以上も診てきているが、このような深い怒りが潜んでることを察知したのは、今回が初めてだった。
また別の患者についても、表向きは数か月の間、良好な状態であり、今も順調だし、気分も良いと口では言っていた。だが外見は以前の診察時と変わらないものの、アンジェラはその患者の心にわずかな悲しみと不安があるのを感じ取ることができた。アンジェラがその患者にちょっと悩みでもあるのと優しく訊いた途端、彼は急に頑固になり、どこも悪くないと言い張った。
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午前の最後の患者の診察を終え、アンジェラは椅子に座って、診察記録をつけ始めた。その時、待合室で誰かが口論してる声を聞いた。何事だろうとドアに近づくと、その声がケンとゲンゾーの声だと気づいた。
「おい、あんた。あんた、自分が何者だと思ってるのか知らないが、俺はアンジェラにはお昼には患者を見ないのは知ってるんだ。だから、頼むよ、中に入れさせろよ」
「いいえ、アンジェラ様に面会する予約がない以上、私はあなたを中に入れるわけにはいきません」
「なんだ、こいつ。分かったよ。俺を中に入れなかったら…」
ケンの声が言葉の途中で消え、取っ組み合うような音が聞こえた。アンジェラは急いでドアを開けた。そこにはゲンゾーに首根っこを掴まれてるケンの姿があった。
「ゲンゾー。すぐにその人を離しなさい!」 とアンジェラは叫んだ。