昼過ぎ、ビルは地元に戻り、車を走らせた。車を自宅から2ブロックほど離れたところに駐車し、家に戻り、待った。ビデオカメラに新しいテープを入れ、娘たちが部屋に置いてる2つの動物のぬいぐるみの間に隠した。
それからウォークイン・クローゼットに入り、衣類を整理した。ベッドは見えるが、安全に身を隠せる場所を確保する。
そうこうしている内に、ガレージのドアが開く音が聞こえた。ビルは早速ビデオの録画スイッチを押し、クローゼットの中に隠れた。
その数分後。ビルの愛する妻はアル・ランゲンドンと寝室に入っていた。ふたり抱き合って、熱のこもったキスをしている。その様子をビルはクローゼットの中から見ている。期待に心臓が高鳴っていた。
長々としたキスがようやく終わった。メリッサはベッドの方を向き、ベッドカバーとシーツを開いた。それが終わると、アルの方を向き直り、彼の前、ベッドに腰を下ろした。
片脚を持ち上げ、青いヒールを脱ぎ、床に落とす。それからストッキングを履いたままの足裏を愛人の膨らんだ股間にあて、もう片方の脚についても、持ち上げ、同じことをした。
メリッサが両足の足裏でアルの股間を擦る間に、アルはベルトのバックルを外し、チャックを降ろした。そしてズボンと下着を一緒に引き降ろした。さらに上着、シャツと脱ぎ去り、裸になる。
その間、メリッサは仰向けに倒れ、両脚を曲げて胸に抱える格好になった。アル・ランゲンドンが彼女の制服のスカートの中に手を差し入れ、パンストのトップを掴めるようにするためだ。
ビルの見ている位置から、妻のパンストがゆっくりと丸められつつ脱がされ、彼女のセクシーな白脚が露わにされていくのがよく見えた。
その1分後、メリッサの美しい素足がアルの黒いペニスを包んでいた。その極太の黒棒は、彼女の柔らかな白い足裏に挟まれ、今は前後に動き始めている。
メリッサは両ひじでベッドを突く姿勢で身体を支えながら、両足を器用に動かし続けた。脈動する黒ペニスを挟みつつ、徐々に速く動きだす。
あのモーテルで「本物の男」に全身に精液を掛けられた出来事。実は、あの出来事以来、メリッサはスペルマで身体を汚されることに喜びを感じるようになっていたのだった。
ビルは、その後に続いた倒錯した光景が信じられなかった。
「出して!…………ぶっかけて!…………身体じゅうに振りかけてほしいの…………私を汚して!……………口の中にも ………娼婦のように扱って!」
メリッサは足で黒ペニスを擦りながら、口を大きく開け、舌を伸ばしたりひっこめたりを繰り返した。まるで、ここが標的よとアルに伝えてるようだった。
アルは唸り、ハアハアと息を荒くした。目の前の美しい標的めがけて発射すると決意したのか、大きな両手でメリッサの両足を掴み、ますます速くペニスを前後させ始める。
「ほんとにエロい奥さんだ……………………くっ! …………出すぞ! …………ほら、イクぞ!……………………うぉおおぉぉぉぉっ!」
アル・ラングドンは大声で唸り、身体を震わせた。そのペニスはさらに大きく膨らみ、その後、一気に火を噴いた。
巨大な白いロープが宙高く飛んだ。そしてメリッサの額の真中に着地する。着地した白濁は、幾筋もの紐となって彼女の美しい顔を伝って流れた。
次にビルはメリッサが少しあごを突き出し顔を傾けるのを見た。そこに2発目の噴射が飛んだ。その噴射は直接、大きく開けた彼女の口に入った。
その後も、量は減少しつつも、何発も噴射が飛んだ。ねっとりした白濁がメリッサの制服の前面を濡らしていく。
ようやく射精が終わると、メリッサは足裏で今だ涎れを流すアルの亀頭を撫でた。
「ううぅぅぅ…………………いいぞ、感じる……………………おお、すごい!」
その後2時間、ビルはクローゼットの中で、自分と妻だけの場所であるはずの夫婦のベッドで繰り広げられるメリッサと逞しい黒人の上司との性行為を見続けた。
ビルは、改めて、このアル・ランゲンドンという男のスタミナに驚愕した。いったいどれだけ精液を分泌できるのだ、この男は! 昨夜から数え切れぬほど、妻の子宮や口に精液を放ったはずだが、それでもまだ蓄えを持っているようだ。確実にメリッサを妊娠させたと分かるまで、注ぎ込み続けるつもりなのか。
アルはメリッサとの会話では避妊の話しなど、一切、していない。もっと言えば、メリッサは繰り返し、子供を孕ませてとねだっているのだ。
ようやく、ふたりは行為を終え、服を着た。寝室に入った時と同じように、ふたり抱き合って、熱のこもったキスをするのをビルは見た。
ビルは実際に行為を繰り返すふたりを見て、メリッサが、単にビルを昇進させるのを確実にするためといったレベルをはるかに超えた行為をしたことをしっかりと悟った。いま見たことから察するに、メリッサは今後、自分の小さなペニスでは決して満足することはないだろう。メリッサは、もはや黒肉なしでは生きていけない女になったのだ。その結論をさらに裏付ける言葉も聞いた。長々とキスをした後、メリッサが言ったのである。
「ビルは日曜日にゴルフにでかけるの! 週末、子供たちは祖父母のところに預けることができるわ! だから……!」
その週の週末の土曜日、子供たちを祖父母の元に預けた後、ビルとメリッサは、ビルの昇進を祝って、豪華なレストランに行った。帰宅した時には、ふたりともちょっと酔っていた。ふたり一緒に寝室に入りながら、ビルは長年の夢が今夜、実現できるかもしれないと思った。寝室に入るとすぐ、彼はメリッサの腕を掴んで、彼女が結婚した「男」を見せようとしたのである。さんざん目撃したことを自分でも彼女にさせようということだ。ビルはベッドに座り、メリッサを自分の前、床にひざまずくように押し、こう言ったのだった。
「じゃあ、一発、フェラをやってもらおうか!」
ビルは唖然とした。いきなり顔を強く平手打ちされたからだった。妻の顔を覗くと、怒りに満ちた顔をしていた。
「いったい、どうやってそんな言い方できるわけ?! そんな汚らわしいことを私がするなんて、どうして思えるのよ! まるで私を街の娼婦みたいに!」
さらに、驚いたことに、メリッサはぐいぐいビルの身体を押して、廊下に追い出し、思いっきり強くドアを閉めたのだった。ビルは茫然と寝室のドアを見つめる他なかった。その少し後、寝室のドアが再び開いた。だが、彼の枕と毛布を放り出されただけ。
「今夜はソファで寝たら? 私は、そんな下品なことをして自分を貶めるような淫乱女なんかじゃありませんから!」
ソファに横になり、寝心地の良い姿勢になろうと苦労しながら、ビルは勃起を擦りながら目を閉じた。頭に数日前のメリッサの姿が浮かんでいた。まさにあの寝室で彼の上司をもてなしていた時の彼女の姿である。
「しゃぶれ!」とアルに命ぜられると、嬉しそうにいそいそとベッドから這い出て、床にひざまずき、ピンク色の唇で黒いペニスを咥えていた。ふたりが出しあった体液で濡れたままの黒ペニスであるが、実に美味しそうに舐めしゃぶり、咥えた後は頭を振って奉仕していた。むしろ奉仕と言うより、そうすることで自分の性的興奮を高めているようだった。粘液を放出するぞと言われても、決して顔を離そうとせず、出されたものをすべて飲み下していた。
「まったく、女ってやつは! 一生、僕には理解できないだろうな!」
ビルはそう呟き、寝返りを打った。少しは眠っておかなければ。明日の日曜にはゴルフに行くことになっているのだから、と。
何日かが経った。無事、昇進し、給与も大きく増加した。ビルは家の庭仕事の雑務はやめたいと思っていた。そう思ったのは、ある朝、オフィスからビルの外を見おろし、ビルの外の花壇を手入れするメンテナンス関係の男たちを見た時だった。家の庭仕事をする適切な庭師を見つけようと思ったのである。
「うーむ……いい庭師が見つかれば、庭仕事もせずに済むし、ちょっとすたお楽しみも見られるかもしれない」
彼はそう思った。
この地域には山ほど庭の手入れをする会社はあった。近所でも作業をしている男たちをよく見かける。だが問題は、ビルが決めたすべての条件を満たす適切な人を探すことだった。
1週間ほど、あちこち探し回った後、ビルは家の近所に挿しかかった時、ようやく有望と思えそうな男を見つけた。横に会社名を掲げたピックアップ・トラックが停まっていて、男が道具類をトラックに積む作業をしていた。ビルは角に車を止め、その男に話しかけた。
その男は「ジャックの庭サービス」という会社の庭師であると知った。会社と言っても、このジャック・ホートンという男がひとりでやっている個人経営の会社だ。 ビルは、ジャックと握手しながら、この男こそ完璧な候補者だと思った。60代半ばの、ややガサツな男。大きな身体だし、筋肉質で逞しそうだ。そして最も重要なことに、漆黒の肌の黒人! この男の粗暴そうで下品な様子を見ながら、ビルはメリッサがこの男に抱かれるのを想像し、ペニスがヒクヒク言いだすのを感じた。
ビルはジャック・ホートンに庭を一度見てほしいと言い、日時を決めた。その日時は、メリッサも家にいる時間でもある。
アルとメリッサはもうしばらく会話を続けていたが、会場でアナウンスがあり、全員にテーブルに着くよう促された。このパーティでは席順は決まっていなかった。アルはこの機会をとらえてビルに言った。
「ビル。君と君の美しい奥さんには私と同席してほしいな! 君と奥さんのことをもっと知る良い機会になるだろうから」
パーティ会場に入ると、アルはメリッサが自分の隣の席に座るように仕向けた。そしてビルにはメリッサの向こう側の席に着くように指示した。
メリッサは、左側にビッグ・アルが座るのを受けて、ワザと右脚を左脚に乗せて交差させ、テーブルクロスをちょっとだけ押しのけた。そうすることで、くすみ色のストッキングのトップの上、ミルク色の生肌の太ももを少しだけ見えるようにさせた。
アルが視線を太腿へと降ろすのを見て、メリッサは彼が誘いに気づいたようだと知った。ひょっとしてもっと何かあるかもしれないと思ったに違いない。
「奥さんは何かお仕事をお持ちなのかな?」
そうビッグ・アルに訊かれ、メリッサはスチュワーデスをしていると話した。そして、何気なく付け加えた。
「でも、サンフランシスコ行きの便の業務はあまり好きじゃないんです。泊りがけになって子供たちから離れなくてはいけないので…」
美味しいディナーを食べた後、バンドがダンス音楽を演奏し始め、多数のカップルがダンスフロアに出て踊り始めた。メリッサはその機会をとらえて、軽い嘘をビッグ・アルに聞こえるように小さく呟いた。
「ほんと、ビルがダンス好きだったらいいのに…」
もちろん、最初にビルにダンス相手を求めるのが礼儀であるから、この嘘はアルへの誘いであるのは確かだった。彼女をダンスに誘うように仕向けた嘘である。ビルとメリッサは一緒いいつもダンスを楽しんでいる。だから、当然、ビルはメリッサの意図を察知し、ためらわず、アルとダンスしておいでとメリッサに言った。
ビルは、ビッグ・アルが大きな手をメリッサの腰のところに当てながら、ダンスフロアへと進んで行くのを見た。ダンスフロアでも、ビルがいるところから離れた、遠くの隅の方へとメリッサを連れていく。どうやらビッグ・アルはこのダンスのチャンスを最大に利用するつもりだなとビルは思った。
スローな曲に合わせて、メリッサがビッグ・アルに身体を寄せ、彼の肩に頭を預けるのを見た。……ひょっとして、これで自分は昇進のリストのトップに出たかな? いや、まだだ。ビッグ・アルの推薦を得るには1曲や2曲、ダンスを踊っただけでは足りない。そうビルは思った。
ダンスをしつつもメリッサは自覚していた。アルに対して自分からその気があることを示さなければいけないと。アルは会社での立場もあるので最初に動きを見せることはないだろうと。
テーブルから遠く離れた場所で、身体を寄せて踊りながら、メリッサは逞しい男の胸板に身体を擦りつけながら、アルにとてもダンスが上手ですねとお世辞を言った。そして、ちょっと身体を離し、アルの目を見つめて言った。
「地域のセールス・マネージャに誰を昇進させるのかをお考えになる時は、ぜひ、ビルのことも考慮してくださいね」
最初の曲が終わり、次の曲が始まるまでちょっと無音の時間があった。メリッサはビッグ・アルの肩に頭を乗せ、曲が終わってもダンスを続けていた。そのメリッサの耳元にアルが囁いた。
「まあ、その人事はかなり難しい判断を要しそうだな。ビルはたくさん素晴らしい特質があるし、これまでの数字も非常に良い。だが………他の候補者の上位陣もそれは同じだ! 決定を左右する、何か特別に売りとなる隠れたうま味を見つけなくてはならないのだよ!」
メリッサはその言葉を聞き、期待していた誘いが来たのを知った。アルに顔を向け、答えた。
「候補者自身以外のところにも目を向けてみてはいかがかしら? というか、今、あなたの手の中に、すでに、その隠れたうま味があるのかもしれませんわよ?」
そう言ってメリッサは右手を降ろし、腰に当てられていたアルの右手を掴んだ。そして、彼の肩越しに周囲を見回し、誰も見ていないのを確かめたうえで、その手をちょっと押し下げ、自分の尻頬へと導いた。
アルの手は早速、彼女の尻頬を撫で始めた。それを感じメリッサは囁いた。
「アルさん? 今度の火曜日はご出張があるんじゃない? サンフランシスコに? 確か805号便は午前11時発のはず。サンフランシスコにお着きになったら、『ル・ビストロ』に行くと美味しい食事ができますよ!」
そう言ってメリッサは、疑念の余地が残らないようにと、身体をさらに近づけ、腹部をアルの盛り上がった股間に擦りつけながら囁いた。
「ああぁぁぁ………どうしてあなたがビッグ・アルと呼ばれてるのか、分かるわ…」
ビッグ・アルは周囲の関心を引き起こさぬようにと、愛らしい人妻を元のテーブルへとエスコートし、席につかせ、ダンスの相手をしてくれてありがとうと言った。目をテーブルの下に落とすと、メリッサは脚を組み、先ほどよりももっと彼女のミルク色の太腿が見えていた。アルも席に座ると、メリッサの足が彼の脚に触れるのを感じた。ヒールで彼のふくらはぎを擦り上げている。さらに、その少し後、再び足でふくらはぎを愛撫されるのを感じた。今度はハイヒールを履いてない足でされていた。
そしてアルは言った。
「実は、今度の火曜日にサンフランシスコに出張することになっているんだ! メリッサ、どこか空港の近くでお勧めのホテルは知らないかね?」
アルは、すでにメリッサから乗務員が普段宿泊するホテルは聞いていた。だがメリッサは、そのホテルの真向かいにある豪華なホテルを推薦した。
「ありがとう、メリッサ。そこに予約してみよう」
帰りの車の中、ビルは笑い、冗談めかして訊いた。
「メリッサ? それで、ビッグ・アルとダンスをして効果があったと思う? 君と彼がすごく身体を寄せあってダンスをしていたのは見たけど、アルが狙っているのは、ああいう密着ダンスじゃないというのは言ったはずだよ」
そして、もう一度、声をあげて笑い、彼は続けた。
「言ったはずだよね! 時間の無駄だったって。アルが狙ってるのはひとつだけ。女のパンティの中に入ることだけだって!」
ビルはメリッサが取り繕った反応をするのを見て喜んだ。
「ビル! 私、絶対、他の男に身体を触らせたりなんかしないわよ! どんなに大切なことのためだからって、絶対にそんなことしないわ!」
メリッサは、怒りによるのか興奮によるのか、身体を震わせながら、そう言った。
「加えて、これも言っておくけど、黒人と密接な関係になるなんて、私、考えただけでも死んでしまいそう!」
家に着き、娘たちの世話をしてくれたベビーシッターに報酬を払った後、ビルとメリッサは寝室に入り、情熱的にキスをした。メリッサは、ダンスフロアで身体を触られたし、今度の火曜の夜に起きることを想像し、エッチな気持ちが盛り上がっていた。一方のビルも、ダンスフロアで大きな黒人と身体を密着させて踊るメリッサの姿を見ていたし、彼女が再び別の黒人男のためにセクシーな脚を広げるのだろうと想像し、やはりエッチな気持ちになっていた。その夜のふたりのセックスは激しく、エネルギッシュな行為になった。ウェーバー夫婦が行ってきたセックスの中でも、最も充実したセックスだったと言えるだろう。ふたりとも相手には悟られまいとしていたが、共通の出来事を想像しながら、行為に励んだのだった。
翌日。ビルの頭の中はいろいろなことでいっぱいだった。メリッサが再びビッグ・アルと会うところを是非とも自分の目で見てみたい。その日が今度の火曜日であることは確かだと思った。そうでなければ、どうしてアルがパーティの席上で火曜日の出張のことを話題にし、ホテルを訊いたりするのか理由がない。
そこでビルは火曜日に備えてある計画を立てた。火曜日には、自分の両親に学校に娘たちを迎えに行ってもらい、その夜は娘たちを実家に泊めるよう手配しよう。メリッサには、火曜日はヒューストンに出張しなければならなくなったので、娘たちの面倒を両親に頼むことにしたと言おう。
月曜の夕方。メリッサは翌日の泊りがけのフライトに備えてバッグに荷物を用意し始めた。その様子をビルは注意深く観察していた。雑誌を読むのに夢中になっているフリをしていたが、メリッサが衣類を取りにクローゼットに行くとき、チラリとビルの方を見たのを、彼は見逃さなかった。彼女の身体で視界が遮られていたけれど、メリッサが何か特別な衣類をスーツケースに忍び込ませたのは間違いない。
メリッサがバスルームに入ると、ビルはシャワーが流れる音がするまでじっと待った。シャワーが流れるのを聞いた後、彼は忍び足でスーツケースに近づいた。両手で押さえて音が聞こえないようにして、スーツケースのロックを解除した。
中には、いつもの新しい制服の他、センスの良い青いイブニング・ドレスと白いハイヒールが入っていた。それに彼女がそのイブニングドレスを着る時にはいつも持っている青いハンドバッグも。そしてさらに、セクシーな白いネグリジェも見つけた。これはメリッサがビルをベッドに誘う時、よく着るネグリジェである。
シャワーが止まる音を聞き、ビルはスーツケースを閉め、元あった場所に戻した。
火曜日の朝。ビルは空港に向かった。彼が予約したサンフランシスコ行きの便は、妻が乗務する便とは別の便である。それはメリッサの便の30分前にサンフランシスコに到着する。中継は1回だけのかなり長いフライトだった。時差の関係もあり、サンフランシスコ着は、午後の遅くの時間だった。
レンタカーを借り、メリッサがアル・ラングドンに勧めたホテルに向かった。そこで都合が良い駐車場を見つけた。その場所は、アルが泊ると思われるホテルばかりでなく、メリッサたち乗務員が宿泊するホテルの入り口やそこへ通じる道もよく見渡せるのである。
上空を飛行機が飛ぶ音が聞こえ、ビルはどの飛行機だろうと見上げた。それはまさにメリッサが乗っているフライト便だった。ビルはふたりがホテルに入るのをちゃんと目で確認できるまで、日が暮れないようにと祈った。
メリッサは、自分のフライトのビジネスクラスの席にラングドン氏がいるのを見て、そこを担当するスチュワーデスと仕事を交換してもらった。笑顔で挨拶をする。
「おはようございます、ラングドン様! 本日は当機にご同乗いただきありがとうございます!」
フライトの間、メリッサは彼が望む飲み物をすべて給仕した。当然、無料でである。飲み物を持ってくるたびに、他の乗客に気づかれないように、意味ありげな感じに膝を彼の身体に擦りつけたり、彼が手を置いている肘かけにもたれかかったりした。彼が辺りを見回して、誰も見ていないのを確かめた後、制服の裾から手を挿し入れ、太ももの内側を擦ることも何度かあった。
ホテル前に次々と車が来る。ビルはレンタカーの中からそれを見続けた。やがて、白いリムジンがホテル前に停まるのを見て、ビルはアル・ラングドンが正確に到着したのを知った。
お馴染みの黒肌の巨体がリムジンから降り、ホテルのフロントに向かうのが見えた。彼が降りた後、リムジンは少しだけ前に進み、そこで停まった。そして運転手が出てきて何かを待っている様子だった。
通りの向こう側に目をやると、シャトルバスが向かいのホテルに到着した。そして中からお馴染みの制服を着たスチュワーデスたちがバスから降りてくるのを見た。
それを見届けた上で、ビルは車から降り、ホテル客を装って、リムジンの運転手に近づいた。
「ねえ、運転手さん、このリムジン、今夜は空いているのかなあ?」
「いや、今のお客さんが明日まで終日予約しているんだよ」
それを聞いてビルは、このサンフランシスコ旅行にはイベントがたくさんありそうだと知った。
その1時間後。ビルは、アル・ラングドンがホテルから出て、リムジンに乗り込むのを見た。車のエンジンを掛け、一定の距離を置いて尾行を始めた。リムジンは通りを横切り、向かいのホテルの駐車場へと入った。そこで運転手が降りてきて、助手席側のドアを開けた。明らかに誰かが来るのを待っている様子だった。
その「誰か」はすぐに現れた。青いイブニングドレスと白いハイヒールを履いている。ビルの愛する妻メリッサだ。メリッサがリムジンに乗りこみ、ラングドン氏の隣に座ると、運転手は運転席に戻り、車を動かし始めた。
リムジンは埠頭の近くのエレガントなレストランの前で停まった。ビルは公共の駐車場に車を入れ、ふたりがレストランに入るのを見た。ビルは車の中に留まったまま、少し待った。今夜はどんなことが起きるか、最後まで見届けてやると心に決め、車から降り、レストランへ入った。
レストランの横には洒落たバーがあって、そこがロビーになっているようだった。だが、そこには妻も上司も姿が見えない。おそらくふたりはすでにテーブルに着いているのだろう。
まずはトイレに入ろうとしている客を装って、ビルはレストランの中を見回し、ふたりが座っているテーブルを見つけた。次にビルはバーに戻り、支柱の横に席が空いているのを見つけた。そこなら、身を隠しつつも、ふたりの様子がよく見える。
ふたりはビルの方に背中を向けている。本当の恋人同士のように、かなり身体を寄せあって並んで座っていた。メリッサのドレスは背中が大きく露出している。その白肌をアルの大きな黒い手が優しく撫でていた。一方、ビルの愛する妻はと言うと、恥知らずにも黒人男に身体を寄せ預け、頭を傾け、彼の肩に乗せていた。ふたり、飲み物を啜りながら、窓から見える夕陽を眺めている。
そしてディナーが始まった。ビルは食事を楽しむふたりをずっと見続けた。ふたりは、美味しそうに料理を食べつつも、何度もそれを中断し、唇を重ねあっていた。
食事が終わると、ふたりは立ち上がりダンスを始めた。ビルは、愛する妻が居心地よさそうに男の腕の中に包まれ、時に自分から抱きついて、ディープキスをするのを見た。身体を密着させ合って、舌を絡めるキスをしている。それを見るたび、ビルは股間が跳ねるのを感じた。同時に、そのキスがダンスフロア上のふたりにどんな反応をもたらしているのだろうと、思わずにいられなかった。
リムジンがレストランから出発する。ビルはふたりが、それぞれ、自分のホテルに戻るはずがないのは知っていた。
ビルはイヤホンを装着した。最初、まったく音が聞こえず、ひょっとして無駄金を使ってしまったかと思った。ダイアルをいじりながら、昨日、「スパイの世界」という店で店員が示してくれた通り、故障しているわけではないはずだがと思った。小型のトランスミッターがいかれているのかと思ったが、店員が言うには、この装置は周りにいろんなものがあるところに隠されていても、声を拾うことができるはずなのだ。
ビルはピン状のトランスミッターをメリッサのハンドバッグに隠しておいたのだった。バッグの縫い目に挿しこんでおいたので、丹念に調べないと隠しマイクの存在は分からないし、バッグを放り投げても、外れることもない。
ビルは運転に集中しなければならなかったので、耳からイヤホンを外した。
リムジンはアル・ランドンのホテルの前に停まった。そしてふたりが降り、アルのスイート・ルームに向かうのが見えた。
ビルは悪態をつきながらトランスミッターのダイアルをいじり続けた。そしてようやく、イヤホンから何かガサゴソとした音が聞こえた。その後、聞き覚えのある女性の声が続く。
「ああ…………ラングドン様……………あなたって、ほんとにエッチな人! うーむ……………あなたがビッグ・アルと呼ばれてるわけを分かった気になっていたけど、間違っていたかもしれないわ。百聞は一見にしかずって言うでしょ?」
その後、野太い声が聞こえた。
「さあ10階だ! 奥さんの手の感触がどれだけ正確か、すぐに見せてやろうな。今夜のディナーではわざとデザートは抜いたんだ。奥さんに極上の美味しいチョコレート・バーを味見してもらおうと思ってな!」
ビルは耳をそばだてた。キーを挿しこむ音、そしてドアが開く音が聞こえた。ドアが閉まり、ふたりが歩く音が聞こえる。
そして、チャックが降ろされる音がした。それに続いてメリッサの甘い声が聞こえた。
「うぅぅーん!……………黒チョコレートって私の大好物なの!」
何かズルズル啜る音が聞こえ、その後、低く唸る声が続いた。
「うーん……。そいつをいじってみろ! 手の中でみるみる大きくなるぞ。好きか? ああ、それでいい………………手でしごくんだ………………もっとしごけ!」
「ほうら、舐めしゃぶったら、今度は食べてみろ………丸ごと喰らえ!………………大きく口を開けて、たっぷり喰らうんだ…………………うおぉぉ、いいぞ! 実に気持ちいい!」
ビルは、続く5分ほど、ズルズルと啜る音、鼻を鳴らす音、そして快感を伝える大きな唸り声を聞き続けた。そしてビッグ・アルが大きな声で言うのを聞いた。
「うおぉ! 最高だ! プロも顔負けだぞ! もうすぐイクぞ………………で、出るぞ!………………うぉぉぉぉおおっ!……………飲めよ ……………全部、飲むんだ! おおぉぉぉ、すごい! …………ああぁぁぁ……………いいッ! …………ううぅぅ……最後まで吸うんだぞ!」
この夜、ビルはずっとレンタカーの中に座っていたが、それでもエロティックな娯楽に満ちた夜を過ごすことができた。イヤホンを通して、ヨガリ声と野太い唸り声を聞きながら、ずっとペニスを撫で続けた。
ふたりがおやすみと言い、メリッサが朝になったらまたしてねと言うのを聞いた後、ビルは少しうとうとしたかもしれない。だが、それも束の間で、非常に短い休憩を取った後、またすぐにふたりは行為を始めているのだった。
メリッサが失神寸前になりながら叫んだ声をビルははっきりと覚えている。
「アル………ああ、アル ……ううぅ…………ああぁぁぁ……………うあぁぁぁぁッ…理由なく、ビッグ・アルと呼ばれているわけじゃないのね! すごい、すごく大きいわ ……………もっとゆっくりして ……ゆっくり ………身体が引き裂かれちゃうぅぅぅ!」
……黒人と密接な関係になるなんて、私、考えただけでも死んでしまいそう! そう語った「貞淑な妻」の淫らな声をビルは夜じゅう聞き続けた。そのまったく逆なのだ。まったく逆なのだと、いくつもの妻の言葉を聞いてビルは納得した。
「ううぅぅぅぅ………大きくて黒いおちんちん、大好きでたまらないの!」
「やって、やって、やってぇぇぇぇぇ………………………出して! 中に出して! たっぷり中に出して!」
「赤ちゃん、授けて! 黒いあかちゃん、孕ませて!」
ビルは不思議でならなかった。夫婦で愛しあう時は、普通メリッサはかなり静かにしてる。なのに、他の男とするときは、こんな反応をしているなんて。
夜が明けた頃だった。何度目になるか分からないが、激しいセックスをしたすぐ後のことだった。メリッサがうっとりとした声で言うのを聞いた。
「ねえ、お願いがあるの ………聞いてくれる?………帰りのフライト、私と同じフライトにしてほしいの。直行便で、時差を考えると、向こうに着くのは午後の早い時間になるわ。あなたに、家でしてほしいの。ビルと寝ている夫婦のベッドで私をめちゃくちゃに愛して? きっとあなたも楽しめると思うわ。………それ、私、大好きなの。………今夜、ビルとベッドに入ると思うけど、その時、そのベッドのシーツがあなたの出したもので染みついていると思うとものすごく興奮するの! ………あのね………今朝は、他の乗務員と顔合わせをしなくちゃいけないから、急いで私のホテルに戻らないといけないの………でも、朝ごはんにお汁たっぷりのチョコレート・バーを食べる時間はありそう。………ねえ、いいでしょう? お願い、おしゃぶりさせて?」
「ああ、いいぜ…………………お前のフェラは最高だからな…………………いろんな女とやってきたが、お前が一番だぜ!」
そしてまたアルの唸り声が始まった。
「おお………………その調子だ、いいぞ………………………続けろ………………お前の口にかかると、みるみるイキそうになるな!」
その時、ビルはイヤホンを通して、何か電子音がするのを聞いた。携帯電話のボタンを押しているような音だった。さらにメリッサの甘い声が聞こえた。
「むむむ……。ラングドン様、これ本当に美味しいの………………………とっても大きくて、ジューシー! あのね、ビルは今ヒューストンにいるわ。向こうの時間だと、もう、仕事を始めているはず! これ、出て?………………………ビルに話して、昇進のお祝いを伝えたらいいんじゃない?」
ビルは唖然とした。純朴で無垢だと思っていた妻が、今や、飽きることを知らぬ邪悪な淫乱女に変わっている。
ビルは自分の携帯電話が鳴るのを聞いた。イヤホンを外した。心臓が高鳴っていた。メリッサは、自分の携帯に電話をしアルと話しをさせようとしているのだ。しかもアルにフェラをしながら、その会話を聞こうとしている。
固唾を飲みこみ、ビルはできるだけ普通の声を取り繕いながら電話に出た。
「もしもし、ビル・ウェーバーです!」
「ビルか? アル・ラングドンだ! ヒューストンの仕事はどんな調子だ?」 一晩中、聞き続けたお馴染みの野太い声だった。
「あ、ラングドンさん! おはようございます! 何か私にお仕事でしょうか?」
ビルは片方の耳にイヤホンを挿しこんだ。電話を通しての会話以上のことを聞くことができる。
「…いやあ、君の仕事ぶりには普段から感心しているのだが……」
電話ではアルがビルの仕事について話しをしていたが、ビルはむしろイヤホンを通して聞こえる音に耳を傾けていた。ズルズル、クチャクチャと舐めたり吸ったりする音が聞こえる。
アルはひとしきりビルの仕事について話した後、こう言った。
「おっと、ちょっと待ってくれ。いま、別の電話が入った。そっちに出るから、このまま待ってくれるか?」
「あ、分かりました!」
そう答え、ビルはイヤホンに耳を傾けた。アルの唸り声が聞こえた。
「うおぉぉぉぉっ!……………………………い、イクぞ!……出すぞ!……………うぅぅぅぅっ!………………………飲めよ!……………一滴残らず!」
粘っこいヌルヌルしたものを啜る音がイヤホンから聞こえる。
「まったく、いったいどれだけ俺から吸いとれば気がすむんだ? アハハ……」
「……だって、美味しくてたまらないんですもの………中毒になりそう………」
イヤホンからの舐めしゃぶる音とともに、電話にアルが戻ってきた。
「ああ、ビル。他でもないのだが、例のセールス・マネージャのポジション。あれに君を推薦することに決めたと伝えたくてな。あの可愛い奥さんに会ったら、私からもよろしく伝えてくれ! 君も、実に綺麗で素晴らしい奥さんを貰ったものだな。その点でもおめでとうと言わせてもらうよ!」
15分後、ビルはメリッサがホテルのロビーから速足で出て、白いリムジンに乗り込むのを見た。リムジンは道を素早くUターンし、反対側に建つホテルの前に停まった。
ビルはエンジンを掛け、空港へと直行した。できるだけ早いフライトに乗って帰りたかった。レンタカーを返した後、様々なエアラインを調べ、最も早い便を取った。メリッサの便より1時間前に到着する。