ベッドのシーツを引き剥がし、生々しいセックスの匂いを消すために窓を開けた。そしてバスルームに行き、膣内洗浄を2回行った。危険な子種をすべて殺せるようにと願いながら。 そして熱いシャワーを浴びた。身体から汚れをすべて洗い流そうと、30分近くも浴び続けた。シャワーから出た時、ガレージのドアが開く音が聞こえた。夫が帰ってきたことを示す。 メリッサは、何か異常事態が起きたと勘繰られないよう、普通の表情を取り繕わなければならなかった。白いレースのブラジャーをつけ、それにマッチしたパンティを履き、その上にエレガントなイブニング・ドレスを着る。そして薄地の白いストッキングとヒール高8センチの白いハイヒールを履いた。首の周りに真珠のネックレスをつけ、あっという間に彼女は目を奪われる美女に変わった。だが、彼女は、心の底では、黒人に強姦された汚辱に今にも崩れ落ちそうな気分だった。 「クリフズ」の店は、市街全体を見渡せる新しいレストランだ。メインのホールの両サイドに窓があり、そのどちらにも外側にバルコニーが出ていて、外の夜景を楽しめる。客たちは食事をしながら夜景を楽しみ、新鮮な空気を吸いにバルコニーを歩くことができた。屋内には美しく装飾された大きなバーとメインのレストランがあった。 ウェバーの家からそこまでは車で30分で行ける。メリッサは、夫が仕事で新プロジェクトの担当になり、それに夢中で、その話を語り続けていることで、内心ほっとしていた。それに車で向かう時間も、彼女が平静を取り戻すのに役立った。だが、気がつくといつの間にか、物思いにふけってしまうのだった。 ……夫には、今夜、興奮に満ちた時間を過ごさせてあげると約束したのを覚えている。ベッドで激しい時間を過ごし、家族を増やそうと、約束していた。でも、今の私には夫に愛してもらうことなんかできないわ。あの黒人の体液がまだあそこの奥に残っているのに……。 前菜もディナーも最高だった。夜景は夢のようとしか言えなかった。メリッサはうるみがちの目で愛する夫を見つめた。夫に大切な妻が今は「汚された」モノにされてしまったのよと言えたら…。そんな勇気が自分にあればと思った。打ち明けたい気持はあるのだけど、やはり真実を伝えるなどできないとも知っていた。家に帰った時、夫に今夜はダメと言う口実を探そうとした。 ディナーが終わり、記念日を迎えた夫婦は食後のお酒とデザートを注文した。ちょうどその時、メリッサは、バーカウンターの方でこっちに手を振っている男に気づいた。ビルはメリッサと向かい合っているので、その男の姿はビルには見えていない。メリッサは顔をあげ、男の存在に気づいた時、ハッと小さく息を飲んだ。叫び声をあげないようにと固唾を飲み込んだ。 バーカウンターには、まさに家で、夫と一緒になるべき夫婦のベッドで彼女を襲った強姦者がいたのだ。カウンターにいる黒人が手に持つビデオテープを指差し、その指をメリッサに向ける動作をするのを見て、彼女は下唇を噛んだ。あのレイプは録画されていたのだ! 何度もまばたきをし、その場で涙をこぼしてしまうのを何とか防ぐ。 男が自分の方に来るよう合図を送るのをメリッサは見た。そして立ち上がり、バルコニーに通じるドアに向かうのを見た。 メリッサはお化粧直しをしにトイレに行きたいと言い訳をし、テーブルを立った。そして夫の目を盗みながらバルコニーに通じるドアを出た。 バルコニーでは数組のカップルが手すりにもたれながら夜景を見ていた。左を見たら、大きな鉢植えの木の陰に、まさにその日の日中に彼女をレイプした男が立っていた。メリッサはゆっくりと彼に近づいた。 「何が望みなの? どうしてここにいるの?」 と恐る恐る問いかけた。 「今晩は、ミセス・ウェーバー! 結婚記念日おめでとう! 今日の午後は、奥さんに着替えをする時間をやるために、急いで済まさなければならなかったからねえ!」 とアーチーは恐がる若妻の肘を握り、街の夜景の方を向かせた。そして彼女の左側に並び、耳元に囁きかけた。「また、おっ立ってるんだよ、奥さん! あんたの綺麗な手で絞りだしてもらいてえんだ! 左手でしごいてくれよ! ぶっ放すとき、奥さんの結婚指輪がキラキラ光るとことを見たいからな!」 「な、何てことを! ………… 本気で言ってるの? ひとの目がつく、こんな場所で!」 ズボンのチャックを降ろし、中から黒蛇を出す。それがアーチーの返事だった。手すりとの間で、ぶらぶら揺らして見せる。 「あのビデオを旦那に見てもらいてえのか?」 メリッサは溜息をつき、手すりに身体を寄せるようにして、左手で、今や馴染みになっている黒い肉棒を掴み、しごき始めた。 「ああ、その調子だ、奥さん! どんどんやってくれ! 俺が早くいけば、それだけ早く旦那のところに戻れるぜ。月明かりの中、結婚指輪が光ってるな。自分の妻が目と鼻の先で黒人のちんぽを擦ってるのを知ったら、旦那は何て言うかな?」 アーチーは、可愛い手が自分の黒棒を擦り続けるのを見ながら、荒い息使いを始めた。すでに先端から先走りが溢れている。メリッサはヌルヌルの先走りが指につき、手のひらを覆い始めるのを感じ、顔を歪めた。手のひらがぬめるのにあわせて、しごく動きが次第に速くなっていく。 「おお、いいぜ! 奥さん! ぐうっ………うぅぅぅっ!」 アーチーが唸り、と同時に、そのペニスが夜の街に向かって砲撃を開始した。白い砲弾が夜空を飛ぶ。アーチーは素早くメリッサの手を握り、膨らんだ亀頭を覆うようにさせた。彼女の手のひら全体に擦りつけ、今だ溢れ出る白濁でベトベトにする。 射精させた後、メリッサはアーチーから離れ、急いでレストランへ戻った。だがテーブルに戻る前に、手を洗わなければならなかった。トイレの前に来た、ちょうどその時、反対側からビルが現れた。 「ああ、そこにいたのか。大丈夫かなって気になって、迎えに来たよ。ねえ、ちょっとバルコニーに出て歩かないかい?」 ビルはそう言ってメリッサの左の腕に寄り添い、バルコニーへとエスコートし始めた。手を握ろうとしているのか、夫の手が腕から手へと降りてくるのを感じ、メリッサは素早く手のひらをドレスの脇で拭った。 その直後、ビルの手は彼女の左手を握っていた。彼が握る、その美しい小さな手が、ついさっきまで長い黒ペニスを握っていたとは、彼は知らない。いかにドレスで拭ったからとはいえ、今だ、その手のひらは黒人の精液で汚れているのである。ビルは彼女の手を持ち上げ、自分の頬に当てさせた。メリッサは顔をしかめた。どうか、手のひらについた白濁の強烈な匂いに気づかないようにと祈った。 ビルは愛情をこめてメリッサにキスを始めた。その時、メリッサは近くを通る足音を聞き、また大きな手でお尻を揉まれるのを感じた。ビルの両腕は自分の身体を抱き包んでいる。お尻を揉む手は彼の手でないことは確かだった。 その夜、メリッサは夫を拒むことができなかった。拒むことに罪悪感を感じたからだった。とは言え、彼に愛されることには、もっと罪悪感を感じた。子宮の奥に黒人の精液を蓄えたまま、夫に愛されることは、この上なく辛かった。ビルはお酒を飲むといつもそうであるように、かなり速く絶頂に達し、そのまま眠ってしまった。メリッサはベッドに横たわりながら、どうしてもその日の午後に感じた、理性が粉々に砕け吹っ飛ぶような絶頂の数々のことを思い出さずにはいられなかった。 それから3週間がすぎた。メリッサは次第にフラストレーションを感じるようになっていた。もはや、夫と愛し合ってもまったく満足できる状態に達せなくなっていた。いつも、あのレイプの間に到達したクライマックスの数々のことを思うようになっていた。さらに悪いことに、夫とセックスするときは、いつも目をつむり、またレイプされていると想像して楽しむようになっていた。 次のシカゴ行きのフライト勤務の時だった。今回はシカゴに一泊しなければならない。幸いなことに、メリッサの両親は、彼女がそのような勤務スケジュールの時はいつも、喜んで彼女の子供たちを実家に呼び、相手をしてくれる。 安定飛行状態になり、メリッサは乗客にコーヒーを出し始めた。そして座席列の後方に、知った顔があるのを彼女は見た。黒人で大きな筋肉質の身体、そのニヤリと笑った顔。間違いなかった。 アーチーはその美しいスチュワーデスを見て、ニヤニヤ笑うだけだった。自分の席に来て、コーヒーを注いだが、少し緊張している様子だった。 しばらくした後、そのスチュワーデスがアーチーの席に戻ってきた。 「お客様、ナプキンです!」 アーチーはありがとうと言い、そのナプキンを見た。 「私たち、空港近くのシャーウッド・インにチェックインします。ホテルの内線電話で電話をください、お願い!」 アーチーは今夜は一晩中、楽しめそうだと苦笑いした。 おわり
俺はミセス・グラフの目を見つめながら、ただ微笑んだ。そして手を伸ばし、彼女の手を握った。ふたりの指が絡まり合う。 「ジェイコブはどこまで話したの?」 とミセス・グラフは俺の手を握り返しながら訊いた。 俺は咳払いをし、何を言うか考えた。俺の兄がミセス・グラフとどんなふうにセックスしたか、俺は知っている。だが、その艶めかしい話しのすべてを、直接、ミセス・グラフの口から聞きたいと思っていた。 「まあ、どんなことが起きたかは訊いてるけど、お前から話しを聞きたいな」 と俺は微笑んで彼女の指を揉んだ。 ミセス・グラフは大きく溜息をつき、辺りを見回した。ちょうどその時、ウェイトレスがパイを持ってやってきて、テーブルにそれを置いた。 「他にご注文は?」 「いいえ、今はこれで結構よ」 そんなやりとりをし、ミセス・グラフはウェイトレスが立ち去るまで待ち、その後、話し始めた。 「去年の夏、夫とふたりでカリフォルニアに休暇に出たの。天気は素敵で、暖かだったし、空には雲一つ浮かんでなかったわ。私たちは、ビーチにすぐ前の、海岸沿いのホテルに泊まっていた」 と彼女はパンプキンパイをひとかじりした。彼女がパイを飲み込むまで、しばらく間が空いた。俺もひとくち食べ、コーヒーで飲み下し、話しの続きを待った。 「あなたのお兄さんと出会ったのは、そこに行って3日目だったわ。彼が軍に入ることは知っていた。でも、軍に入る前に休暇を取る予定だったことは知らなかったの…」 と彼女はコーヒーをひとくち啜った。 「夫とプールに行って、泳いだりプールサイドでくつろいでいたのだけど、急に夫が具合が悪くなって、部屋に戻ったの。私もついて行って看病しようと思ったのだけど、夫はプールで楽しんでいなさいと言ってきかなかった」 「そこで兄に会ったんだね?」 ミセス・グラフはゆっくりと頷き、またパイをひとくち食べた。ウェイトレスが戻ってきて、様子を伺い、また立ち去った。 「私はただ自分のことだけ考えて、プールの端で日光浴をしていたわ。その時、ジェイコブが私のことを見たの。とても恥ずかしかったわ。私はソングのビキニを着ていて、そんな格好でいるところを受け持ちの生徒に見られたことがなかったから」 とミセス・グラフは顔をすこし赤らめた。 「兄はそこでお前に言い寄ったのかな?」 と俺はコーヒーを啜った。 「いいえ。彼は完全に紳士的に振舞っていたわ」 と俺のセックス・スレイブは俺の目を覗きこみ、指を握った。 「彼は私の隣の椅子に座り、ふたりでおしゃべりをした。私たちがまったく同じ時期に、まったく同じリゾート地で休暇を取ってるなんて驚きだと、ふたりともビックリしてた。ジェイコブは、他のところに行こうかと思ったけど、やっぱりカリフォルニアを見たかったからと言っていたわ」 ミセス・グラフはうつむき、テーブルを見ながら優しく微笑んだ。
 シンディは僕の親友だった。もう何年も前から。女の友人がいる男ならたいていそうであるように、僕も友情以上のことを求めていた。ただ、僕は憶病すぎて、先に進めなかった。先に進むきっかけを失ってしまっていたと思っていた。僕は死ぬまでずっと彼女の「お友達」の状態のままなのだろうと思っていた。 そんな時、オマール・ベルがアレを放出した…あれが何であれ、僕は変わり始めた。僕はそもそも身体の大きい方ではなかった。165センチで体重も65キロくらい。だけど、たった半年で僕は157センチ、50キロになったのだった。そして僕の身体は男の身体でなくなったのは確かだった。腰は大きく膨らみ、ウエストは細く締まり、身体から体毛が消えてしまった。 でも、この身体の変化にはいいこともあった。シンディはいつも僕のそばにいて、サポートしてくれるようになったのだ。僕が変化を遂げていた時期ほど、僕と彼女が親密になったことはそれまで一度もなかった。 僕が変化し始めてから8か月後、シンディは僕に裸になってどれだけ変化したか見せてと言った。彼女は僕を言うとおりにさせるのに、あまり説得する必要はなかった。ただ一言、「裸になって見せてくれたら、私も裸になって見せてあげるから」と言うだけで充分だった。僕はすぐに裸になり、彼女もすぐに僕の後に続いた。 (少なくとも僕には完璧な身体に見えたのだが)彼女の完璧な身体を見ながら、僕はたったひとつのことしか考えられなかった…… どうして彼女を見ても僕は興奮しないのだろう? どうして僕のペニスは(確かに小さいんだけど)勃起しないのだろう? シンディは腕を回して僕の肩を抱き寄せ、僕も彼女のウエストに腕を回した。僕は彼女の豊かな乳房を見おろした。でも……何も起きない。ぴくりともしない。 言うまでもなく、このすぐ後、僕はぽろぽろ涙を流し始めた。シンディは懸命に僕を慰めてくれた。でも彼女は本当には分かっていない。僕はもはや男ではなくなっていたのだ。僕はboiになっていたのだ。boiは女性には惹かれないものなのだ(どんなに頑張っても)。 多分、これからもずっと僕たちは「ただのお友達」のままであり続けると思う。 *****  「みんな…どうしてそんな顔で僕を見てるの?」 「それってブラジャー?」 コリイは笑った。「もちろん違うよ。僕は女じゃないよ。これは乳首を刺激から守るものさ。放っておくと、薬を塗らなきゃならなくなるまで刺激を受けてしまうから」 「そうかなあ……どう見てもブラにしか見えないけど」 たいていの人は考えてもみないことだが、混血の男子にもオマール・ベルのウイルスの影響を受けた者が多数いた。彼らは、大半がアフリカ系アメリカ人であり、それゆえ他のboiよりも辛い目に会ったと言ってよい。 例えば、アイダホに住む混血のコリイ・ヘイスティングスは特に辛い目に会った。彼の通う高校では、(彼も含む)すべてのboiは女子用のロッカールームとトイレを使うよう義務付けていたが、彼はそれを拒み、男子用に設けられた施設を使い続けたのである。もちろん、これは少なからず問題を引き起こした。すなわち、彼がロッカールームでクラスメイトとセックスしているところを発見される事件が無数に起きたのである。 言うまでもなく、このことは高校の運動部のコーチたちをかなり落胆させた。特に、グレート・チェンジの前はコリイがアメフトのクォーターバックであったことゆえ、なおさらだった。 今、コリイはboiの権利を声高に主張する闘士になっており、高邁な政治的野心を持っている。 *****  お馴染みのカメラのシャッター音を聞きながら、サムは振り向いた。彼は写真を見る必要すらなかった。彼は、自分がいかにセクシーか知っているのである。そして彼はそれがとても嫌だった…。しかし、今の姿は変えられない。どんなに自己憐憫(あるいは自己溺愛)しても何も変わらない。 かつて、グレート・チェンジの前は、彼は非常に独断的だった。同性愛、ポルノ、乱交…すべて純朴な彼には不道徳的なことだった。サムは、その偏狭な道徳観は彼だけのものかもしれないことすら考えていなかった。彼は、自分自身の道徳観がみんなに当てはまらなくても、気にも止めなかった。そして、彼自身の個人的な信念に基づいてなされる基準に従って、あらゆる人を独断的に判断してきた。しかも、彼の判断は手厳しかった。自分の判断に合わない人を口汚く罵り、バカにしてきた。要するに、サムは最悪のタイプの人間だったのである…独断的で自分自身が道徳的に優れていると完璧に信じて疑わないタイプの人間。 だが、その時、彼は世界中の他の白人男性同様、変化を始めた。最初、彼は抵抗した。初めて男性と寝たのは、グレート・チェンジの後ほぼ4年近くになってからだった。そして、その経験があったすぐ後、彼は写真家と名乗る男にアプローチされたのだった。サムが、ヌードの写真を撮られるためにその男のスタジオに入るまで時間はかからなかった。男はサムは天性の才能があると言い、何百ドルか報酬を与えた。 それから2ヶ月ほどの間に、サムは週単位でその写真家のモデルを行うようになった。他の仕事の口は少なかったし、報酬も良かったから。サムは、撮られた写真は最後にはインターネットのどこかのポルノ・サイトに上げられることになるのを知っている。だがおカネが必要だった。サムは今だにこれは間違ったことと思っているが、boiはboiがしなければならないことを、しなければならないのである。 彼の道徳観はそのうち変わるだろうか? 変わらないかもしれないし、変わるかもしれない。それは時が経たねば分からない。 *****  新しい肉体。新しい服装。化粧。ハイヒール。グレート・チェンジはあらゆる白人男性の生活のあらゆる部分を変革することに他ならなかった。だが、中には、元の男性性にしがみつく者たちもいた。何か一つのことを変えるのを拒否することを通して、男性性にしがみつく者。もはや惹かれあうことがない妻と生活を共にし続けて、しがみつく者。さらには、boi用のブリーフ、すなわち男性用下着に似たデザインだがboiの身体にフィットする下着を着続けて、しがみつく者。そしてさらには、このパトリックのように、髪を伸ばすのを拒んでしがみつく者もいた。おかしなことである。否認というものは。四つん這いになり、アヌスに大きな黒いペニスを突きたてられていながらも、パトリックの少なくとも一部分は、今だに自分を男性を考えているのである。 *****  boiと女がひとりの男を共有。よくある光景だ。それで、このふたりの話しは? そんなの知りっこない。だけど、想像することはできる。もしかすると、ふたりはただの友達で、一緒にちょっとふざけてるだけかも。あるいは、ふたりは(グレート・チェンジの前は)恋人同士で、事実上、ふたりの間に愛の感情はなくなった後も関係は継続しようと決めたのかも。あるいは、そのいずれでもないかも。だが、boi(右側)がこれからみっちりしっかりセックスされる気でいることだけは否定できない。 *****  ロニーはバスルームのドアが開く音を聞き、振り向いた。 「そんなところに私のバイブがあったわけね」 と彼の妻メアリの声が聞こえた。 「メアリ……」 と彼は言いかけたが、すぐに中断させられた。 「いいのよ、最後までやってて。boiはboiなりの欲求があるのは知ってるから。でも、今夜、ふたりで出かけて、あなたが本物を経験してみるというのはどうかしら?」 とメアリはドアを閉めた。 その数秒後、ロニーはさっきしていたことを再開した。だが、今回は、勃起した大きな黒人男たちの姿が頭の中、踊っていた。
* その夜、3人はさらにセックスを繰り返した。だがビリーにとってはすべて夢の中のような感じがした。朝になり、ジョンはすでにいなくなっていた。 ビリーもメアリも、起きた後、服を着ることもせず、裸で家の中を動き回った。ビリーは自分の妻より自分の方がいい身体をしていると気づき、内心、自慢に思った。 キッチンでちょっと気まずい沈黙があった時、メアリが声をかけた。「で………楽しかったわよね?」 ビリーは頬を赤らめ、恥ずかしそうに微笑んだ。「ええ…」 ふたりともそれ以外は何も言わなかった。 * それから2ヶ月ほどが経った。その間に、ふたりは同じようなデートを何度も行った。議会は、基本的に白人のboiと女性を同等扱いにする法律を可決した。例えば、boiと女性は、学校での体育の時間は同じクラスに属すること、共に男性と結婚することができること、そして共にわいせつ物陳列罪に関しては同じ扱いを受けること(乳首の露出禁止)などが含まれている。 そして、多くのboiにとって生活が落ち着きを見せ始めていた。彼らの性的欲望はかなり亢進していたのだが、このころになると少し衰え始め、いろいろなことが鎮まり始めていた。しかしながら、離婚訴訟が多発し、法廷が麻痺寸前になったことで、それに対処するため、白人boiと女性の婚姻はすべていったん無効とする措置が宣言された。 ビリーに関しては、新しい人生を極めてエンジョイしていた。基本的に、彼とメアリはレズビアンの恋人同士となっている。とは言え、毎週、3回か4回はふたりとも大きな黒ペニスを楽しんでいる。ふたりがひとりの男性を共有することは滅多になく、たいていは、同時に男性をふたり家に連れ帰って、互いに並んで横になり、セックスされるというのが普通だ。 ビリーとメアリが、今ほど親しい状態になったことはこれまでない。服のセンスから性交時に取る体位に至るまで、ほとんどすべてをあけすけに語り合う仲になっている。 ただ、ビリーの解雇手当が底をつき、おカネが乏しくなっていた。 そんなある日、メアリがビリーに訊いた。 「スミスさんが、仕事が欲しかったら、また来なさいと言ったと、言ってなかった? 別に、あそこで働きたくないのなら、それはそれでいいんだけど、でも仕事は必要だわ」 「いつでも裸になってもいいわよ」 とビリーは答えた。 「あなたたち、ほんとにエッチなんだから。自分たちのコントロールができないみたいね」 とメアリは明るく笑った。 「コントロールしたくなったら、いつでもコントロールできるわよ!」とビリーは毅然とした口調で言ったが、もちろんちょっと笑みを浮かべてではあった。 「そうよねぇ、あなたならできるわよねぇ…。うふふ」 と皮肉っぽい口調。 「んっ、もう! いいわよ、スミスさんに会うから」 とビリーは降参した。 * そんなわけでビリーは、再びクラレンス・スミス氏の前に座っていた。今回は、タイトなミニ・スカート、ジャケット、そして胸元が開いたブラウスの姿だ。セクシーでゴージャスないでたちだし、ビリーもそれを自覚している。 「ああ、いま空きがあるか分からないんだよ、ビリー。今は仕事を探しているboiが多いんだ。いま空きがあるかもしれないのは秘書の仕事だけなんだがね」 とスミス氏は言った。 「それでパーフェクトです!」 とビリーは最高の無垢でセクシーな顔を作って、返事した。 「で、どんなことができて、君は自分が秘書の仕事に向いていると思うのかな?」 「あら、たくさんありますわ」 そう言ってビリーは立ち上がり、スミス氏の元に近づき、彼の足元にひざまずいた。ゆっくりとズボンのチャックを降ろし、中からペニスを取りだした。大きくはなかったが、ビリーは、そもそもどんなペニスでも大好きなのである。 ビリーは美味しそうに先端を舐め、焦らした。彼はすでにエキスパートになっていたし、その効果は明らかだった。彼はスミス氏に、彼が味わったうちで最高のフェラをしてあげたのだった。 ビリーは口紅を塗り直しながら言った。「じゃあ、明日9時ですね?」 * 「まさか、本当に?」 とメアリが言った。 「いいえ、本当よ。そうしたらスミスさんは、口ごもりながら、『あ、ああ。もちろん』って言ってたわ。で、私はお尻をしっかり見せつけながらオフィスを出たわけ」 「じゃあ、あなた、秘書になるの? 給料はどれくらい?」 「分からない。まあ、スミスさんと一緒に何か捻りだすつもりでいるけど」 とビリーは悪戯そうな笑みを浮かべた。 * ビリーは、あっという間に、その可愛い手でスミス氏を虜にしてしまった。今では会社で最も高額の給与を得る秘書になっているし、スミス氏は完全に彼にぞっこんになっている。 ビリーが秘書の仕事を初めて2ヶ月後、スミス氏は彼を公式的にデートに誘った。その3ヶ月後、クラレンスはビリーに結婚を申し込んだ。ビリーはイエスと答えた。 結婚式の日、ビリーは純白のランジェリを身につけ、その上に白の美しいウェディングドレスを着た。そして顔には手の込んだヴェール。メアリは花嫁の付き添いである。 「あなた、幸せ?」 とメアリが訊いた。 ビリーはためらわず答えた。「ええ、とても」 * (後にこのように呼ばれるようになったのだが)グレート・チェンジの何年か後、オマール・ベルは政府のエージェントに殺害され、そのすぐ後に、治療法が発見された。しかしながら、すでに新しい生活に慣れ、元に戻ることを拒否するboiの数は多数に登った。さらに、治療を受けた者たちのかなりの人が、治療を受けたことを後悔した。新しく男性に戻っても、それに順応できなかったからである。 しかし、人生は続いて行く。人間には回復力があり、基本的にどんなことにも順応できるものだ。ジェンダーが3つに分かれた世界にすら順応できるのである。 ベル博士の怒りが、彼が想像すらできなかった世界をもたらす結果になったことは皮肉である。確かに、今だに憎しみは残っているし、偏狭な見方も残っている。だが、急激な社会変化は、人々に豊かな感情の増大を誘発し、すべての人種が相互に折り合いをつけるような社会に変わったのだった。 もっとも、偏狭というものが完全に消え去ったとは思わないでほしい。いや、そんなことは、いかなることを持ってしても、現実には不可能である。それを多くのboiたちが知った。boiたちは、仕事をする能力が縮小したわけでもないにも関わらず、以前のような仕事をする資格があるとはみなされなかったのである。それは、グレート・チェンジの直後、boiたちが当初、異常な性欲を感じた状態になったことがもたらしたステレオタイプ的な見方によるものだった。彼らの性欲はすぐに鎮静化し、他の人と少しも変わらぬ程度になったのであるが、人の見方は、そのような変化がなかったかのように、いつまでも残り続けたのである。そして、boiたちは、それまでの少数人種たちがそうであったように、そのような見方の犠牲者となったのであった。 だが、先に述べたように、人間というものは回復力があり、順応してきたのである。 ベル博士がどのように追跡され、殺害されるに至ったか……その話しは、また別の機会にしよう。 おわり
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