オマール・ベルの世界:元スポーツマンたち 出所:http://www.imagefap.com/pictures/3139402/Omar-Bell-Universe-Former-Athletes  サム・フォークナー 元の身長:183センチ 現在の身長:155センチ 元の体重:106キロ 現在の体重:50キロ 元の競技:バスケットボール 現在の競技:体操 「何でもないわ。単純なこと。私は運動選手ということ。からだの大きさは関係ない。単に別のスポーツを見つけたということ…そして、私はこの競技でも勝つということ。それが私の生き方なの」 サム・フォークナーは、グレートチェンジの前は、国内最強の大学バスケット・チームのポイント・ガードだった。もっと言えば、そのチームは大学バスケにとどまらず、全国チャンピオンにもなるほど強かったし、今シーズンでも強豪チームのひとつである。そしてサムはその中でもベストプレーヤーだった。たいていの評論家たちは、サムが大学1年のシーズンを終えた後は、大学をやめてプロになるだろうと言われても、異論はなかった。だが、サムは、母親に大学は終えると約束していたし、母親をがっかりさせる気はなかった。グレートチェンジのすぐ後、サムは奨学金を打ち切られた。しかしながら、彼は新しい天職を見つけたのである。体操競技だ。小柄な体と天性の運動神経のおかげで、彼にはそれがピッタリだったのである。 *****  「それで、先生、診断結果は? 僕は死んじゃうんですか?」 「いいえ、死にはしませんよ、ジェームズさん……あまりテレビでニュースは見ないようね?」 「え? ええ、見ません。新シーズンが近づいているから。この1ヵ月、ほとんどぶっ通しで試合のビデオを見て研究してきてるんです」 「ああ、そう……。じゃあ、ちょっと腰を降ろして話しを聞いた方がよいかしら?」 「いや、ストレートに言ってください。新シーズンの開始までには僕は直ってるんでしょうか?」 「いいえ。それは絶対に無理。オマール・ベルのことは聞いたことがない?」 「2週間くらい前にニュースで取り上げられていた人? 何か聞いたかもしれないけど。どうして? いつになったら直るか言ってください」 「ああ、あなたは元にはずっと戻れないの。もっと言えば、あなたは多分、身長がさらに15センチ低くなるはず。それに、それはこれから起きる変化のほんの序の口なの」 *****  タイラー・チャスタング 元の身長:187センチ 現在の身長:160センチ 元の体重:109キロ 現在の体重:48キロ 元の競技:フットボール 現在の職業:女優 「本当はフットボールをしたいとは一度も思っていなかったの。単に上手だっただけ。それに、フットボールは目的のための手段だったから。分かるでしょう? グレートチェンジは、私に起きたことで最高の出来事だったわ」 グレートチェンジに関する話しは、適応不全に関する話しばかりというわけではない。このタイラー・チャスタングのように、グレートチェンジを良きことに捉えた者たちもいたのである。ご存知の通り、彼は国内で最も注目を浴びた新人だった。どの大学も彼を獲得しようと追いかけた。彼は自分の好きな大学を選ぶことができた。彼は、適正な年齢に達したらすぐに、NFLのドラフトで一番に選ばれるだろうと、誰もが思っていた。それほど彼は上手だったのである。 だが、その夢があえなく砕け散った。オマール・ベルが大気に生物エージェントを撒き散らし、世界の白人男性を白人 ボイに変えた時にである。(少なくとも近い将来には)これに対する治療法はないと世界に知られ、女性的なボイたちをありのままの姿で世界が受け入れ始めると共に、タイラーのフットボール選手としての選手生命は断たれた。 だが、タイラーにはハリウッドでキャリアを積みたいという長年こころに抱き続けていた夢があった。もっと言えば、彼はフットボールでの活躍を利用して、俳優になるきっかけを得たいと思っていたのである。そこで彼は荷物をバッグにつめ、夢を抱いた他の多くの新人と同じく、ハリウッドに旅立ったのだった。 だが、時代はそう甘くはない。ボイが演じるような役柄自体、わずかだった。可哀想なタイラーは、夢をあきらめかけていた…… 故郷に戻ろう。だけど、戻る前に、もう一度だけオーディションを受けよう。そう思って受けたオーディションだった。何と彼はそのオーディションで引っかかったのである。プロデューサがフットボールのファンで、タイラーのことを知っており、即決で彼をキャストに決めたのだった。それから後のことは、誰もが知る通りの、歴史となった。タイラーは、ハリウッドで最も人気のボイになり、次から次へと映画の主演を演じている。 この写真は、彼の最新作のスチール写真である。チアリーダたちが、邪悪な殺人鬼にストーキングされるホラー映画である。 *****  バリー・クリッチトン 元の身長:188センチ 元の体重:118キロ 元の競技:ボディビル 現在の身長:153センチ 現在の体重:47キロ 現在の競技:不明 「『不明』って何よ? 今、カムバックしようとしてるところなのよ! 本当だから……47キロまで増えたわ。この3ヶ月で1.8キロも筋肉がついたのよ。わずかだけど、最初の2キロくらいが一番難しいところだというのは、私たちの常識だわ。筋肉がメキメキつき始めるのも時間の問題よ」 ボイたちにもいろいろいる。明らかに思えることでも、なかなか受け入れらないボイたちもいるのだ。例えば、このバリー・クリッチトンがその一人である。彼はグレートチェンジの前、ミスター・ユニバースに2度選ばれた。もちろん、彼はその地位に立つために、ステロイドや筋肉増強剤HGHを使った。だが、だからと言って、彼の達成の価値が失われることはない。他の誰もが同じことをしていたので、勝負の場は平等であったから。 グレートチェンジの後、彼が落ち込んだのは理解できる。だが、彼は諦めて落ち着く人間ではなかった。そこで彼は再び筋肉増強の薬を摂取し始めたのだった。しかし、彼はボイにはステロイドやHGHが効かないことを知らなかった。その理由はまだ分かっていないが、ボイがステロイドを飲んでも、何ら良いことは得られないことを私たちは知っている。その点と、ボイが柄な体格をしていることを合わせて考えれば、ボディビルの舞台でボイたちが競い合う姿を見るのはまだまだずっと先のことであると言えるだろう。 *****  ゲイリー「鉄拳」マッカビー 元の身長:175センチ 現在の身長:160センチ 元の体重:75キロ 現在の体重:50キロ 元の競技:ボクシング 現在の競技:ボイ・ボクシング 「私は偉大なボクサーとは言えなかった。それは当時から知っていた。だが、それだけ知っていれば充分だった…今もそうだ。ボイ・ボクシングは冗談のようなものだとは分かっている……男たちが私たちボイが半裸で戦いあうのを見て楽しむための口実に過ぎない。だが…まあ、私には他に何ができるというのか?」 グレートチェンジの3年後、ボイ・ボクシングが開設された。これは、他あろうベル博士自身の発案で生れたものだった(この事実は、ボイ・ボクシング・リーグ、つまりBBLが距離を置いておこうとしている事実である)。 ボイ・ボクシングは、トップレスの(たいていは非常に小さな下着だけを着た)ボイふたりが拳闘する競技である。これはお笑い競技と考えられている。というのも、大半のボクサーには、相手にまともなダメージを与えられるだけのパワーを持っていないからだ。試合は、普通、半裸のボイとボイがからだを絡めあってレスリングする展開になる。
家に着き、中に入った。家の中、部屋中、電気がついていた。 「クリスティ!」 娘が家にいるかもと期待して、あたしは大きな声で呼んだ。 すぐに階段を駆け下りてくる足音が聞こえた。クリスティはキッチンに来るとすぐに、あたしに抱きついた。嬉しそうに笑いながら。 「ママ、帰って来たのね! やっと帰って来たのね! 全部、お話しして! 何が起きたか教えて!」 信じられないほど興奮しながら、抱きついて叫んでいる。 あたしもクリスティを抱きしめた。ありったけの愛情をこめて抱きしめ、娘の愛情を噛みしめた。こういう愛が欲しかったの! しばらくキツク抱きあっているうちに、ようやく娘も落ち着いてきて、両手であたしの背中を優しく撫でながらからだを寄せるくらいになってきた。あたしはクリスティの顔にかかっていた髪の毛を優しく払いのけ、改めて娘の顔を見た。ほんと、綺麗になったわねと我が娘ながら感心する。 「さあ、もう大丈夫よ」 とあたしは囁きかけた。「でも、まずは、あなたから話して? あなたとあなたの謎のお友達が何をしていたか。どうやって、あの写真を取りかえしたのかをね?」 ふたりでリビングに入り、カウチに腰を下ろした。クリスティは早速、彼女の冒険の出来事を話し始めた。友だちの名前はバーブラで、その子がフランクのアパートに行って、まだ保持していた鍵を使って、中に入ったらしい。フランクは、この元彼女にパソコンやネット上でのデータ保存装置へのアクセスをするためのパスワードを全部教えたままにしていたみたい。ほんと、愚かなヤツねと、それを聞いてあたしは意地悪な満足感を覚えた。いったんアクセスしたら、後は簡単で、あたしの写真を全部削除できたみたい。 「すごくドキドキしたわ。私たち、まるで、何かの使命を与えられた、シークレット・エージェントになった気分だったから!」 とクリスティは笑った。 「ママ? でも、フランクがどんな画像を持っていたか信じられる? すごかったんだから! でも、いちばんすごかったのは、ネット上のデータ保存場所にあったものだわ」 と娘はサスペンス染みた顔をして見せた。 「教えて、クリスティ! ママに教えて!」 思わず叫んでしまった。どんな画像だったのか、早く聞きたい! 「信じられないかもしれないけど、フランクは……男も好きだったのよ!」 と目に笑いの表情を浮かべてあたしを見た。 「ええ? どういうこと?」 「フランクは他の男と一緒になってるところの画像をいくつも持っていたの! もろに映ってる画像! 私の言ってる意味、ママも分かるでしょ?」 とクリスティはウインクした。 フランクはゲイだった? いや、バイか? ああ、なんと! 想像すらしてなかったわ! フランクは、その部分をみんなにバレないようにしてきたに違いないわね。 「で、あなたたち……その画像も消してきたの?」 いくつかは残してきたと期待して訊いた。 「まさか!」 とクリスティは叫んだ。「消すにはもったいないもの! バーブラはその画像をディスクにコピーして持ち帰ったわ。あっ、あとそれから、私たちフランクのパソコンのハードディスクを初期化してきたわ。バーバラはその方面に詳しくて、一見したところ、パソコンがクラッシュしたように見えるようにしてきたわ」 やったあ! ほんと、賢い娘たち! こうなったら、もしフランクが何かしようとしたら、こっちにも、すごい手段、すごい奥の手があるからね! あたしはすっかり安心して、両腕を頭の後ろで組んで、ソファに寄りかかった。これで不安なことがなくなったんですもの! ゆったりした気分で、からだを思いっきり伸ばし、背伸びした。他人に操られることから解放された気分ほどすがすがしいことはないわ。期待したよりもずっと良い結果になったのも最高! ふと見ると、隣に座るクリスティが、あたしの下半身を見ているのに気づいた。背伸びした時に、ミニスカートがめくれ上がって、パンティが見えてしまっていた。 「ママ? それって、ママが出かけた時に履いてたのと違うわよね」 と、不思議そうな顔をしていた。だけど、すぐ娘は目を丸くした。あたしの話しをまだ聞いていなかったことに気づいたみたい。 「そうだ! ママの話しよ! 話して、話して、話して! 全部、聞きたいの!」 とあたしの手を握ってせかした。 あーあ、やっぱり、そっちに来るのよね! あたしはちょっと考えた。あたしが他の女性のあそこやお尻を舐めたことを、どんなふうに娘に話したらいいの? 純真な我が娘に、あたしが女性にも時々惹かれてしまうことを、どう話したらいいの? 話せないわ! そんな考えを娘の心に植え付けるわけにはいかないもの! 結局、あたしはレイブンやリズとのことは省いて、この夜の出来事を話した。クリスティは、時々、短いコメントを挟みながら、熱心に聞いていた。すべてを知りたいのか、詳しく話してと何度か言っていた。
腰を降ろしてもいい? めまいがしてきて…… 私たちのメイク用のテーブルの下に大きなトランクが3つ置いてあった。それぞれに、ポールの3人のモデルの名前が書いてあった。ダイアナのはすでに開けられていて、彼女の足元に置いていた。アンジーと私は、それぞれ自分のトランクを運び、最初の衣装替えの準備を始めた。 ショーは5時に始まり、90分ほど続くことになっていた。私たち3人に加え、他のベンダーからのモデルも加わってショーを行う。楽屋にはベンダーもモデルもたくさんいて人でごった返していた。そんな中、私たちは衣装替えのために楽屋を駆けまわる。しかも衣装替えは4回も。 ダイアナは、ショーのフィナーレを飾る特別のソロのショーをすることになっていた。次のミスター・ゲイの王座を決めるコンペは7時から開始する。 私はステージの端のカーテン越しに客席を覗いた。ジェフとスーザンが客席に突き出た細長いステージのそばに座っていた。ふたりは、モデルやモデルの着ている衣装や、それを作ったベンダーを紹介する特別ゲストの司会となっていた。 ジェフたちが出席することで、必ずマスメディアでの報道がなされる。加えて、ジェフのチームの試合を放送している地元の独立系テレビ局からもカメラマンが来ていた。本当に、彼らがこのショーを選んで、私を破滅に追いやるつもりでいるなら、新聞と10時のニュース番組での報道を狙うだろう。シカゴ中の人が目にするようにと。 デューバル通りのファット・チューズデイ( 参考)で、肌を露出したビキニとハイヒールのサンダルだけの格好でピニャ・コラーダ( 参考)を啜ってるというのも、ボートをチャーターして遊ぶのと同じくらい楽しいと思うけど、どう? なのに、今の状況。バックステージに立って、最初のモデルが喝采を浴びてるのを聞いて、気が重くなった。お腹のあたりに蝶が飛んでるようなゾワゾワした感じだったけど、その蝶が今やハゲタカに変身して、翼を広げ、私のお腹の中から飛び出そうとしてる。同時に私の身体が引き裂かれそう…。 とうとう出番の合図が飛んできた。 合図を受けて、ステージに飛び出した。白い子牛革のコルセット。首輪。黒エナメルの飾りがついた肘までの長さの手袋。マッチした白い子牛革のレースアップ式のブーツ。このブーツは太腿までの長さで、黒エナメルの渦巻き模様が施されている。そしてヒールは、15センチのヒール高のスティレット。 ファッションショーでの歩き方や仕草についてはダイアナにコーチを受けていて、みっちり覚えこんだつもり。これでもダメだと言ってみなさい。ちんぽを根元から食いちぎってやるから! アンジーは私のすぐ後ろ。紫の子牛革のコルセットのミニ・ドレスと、それにマッチしたプラットフォーム( 参考)のサンダル。 そのアンジーの後ろにはダイアナ。私と同じような赤いエナメルのコルセットの組み合わせで、太腿までのブーツでコーディネイトした衣装。 私がステージに出た時には、前のモデルたちへの拍手が残っていたけど、私たち3人が出て1秒か、2秒したころには、音は大きなスピーカーからズンズンと響き流れる音楽だけになっていた。 たった数秒も何時間のように感じられる。スーザンは、この前の週末に会ったことで、私の顔を思い出したようだった。また私の顔を見て、嬉しそうな顔とはとても言えない顔をしていた。その他は何も表情の変化は読みとれなかったけれど、だけど、スーザンについては、何を考えているか知れたものではない……。それより、観客が皆、シーンと静まり返っていることの方が、正直、辛かった。 緊急事態! 緊急事態! 救助運搬車出動! レベルを300まで上げて! 気つけ薬1CC必要! 注入して! その時、観客の顔を見た。 目をまん丸にして、口をあんぐり開けた人を、一か所でこんなに集まっているのを見たことがない。拍手が沸き起こった。みるみる拍手が大きくなって、轟音に近くなっていく。爆音で鳴らしている音楽も掻き消されそうになるくらい。巨大な中央のシャンデリアが振動でカチャカチャなっていた。私はすでにステージ方向へターンをしていて、バックステージに向かう途上、中央へと向かうダイアナとすれ違った。彼女は私にウインクをした。 そうよ、いくわよ! その心意気! 次々に着替えて、ステージに出るたび、拍手が速く、そして大きくなっていった。それによって、私もどんどん自信がついてきた。 うわあ、もし先物商品の仕事がうまくいかなくなったら、こっちで…… 3回目から4回目の衣装替えの時、何か熱を帯びた言い争いの声を聞いた。ステージの奥の袖あたりから聞こえてくる。私は裏側から忍び出て、そのふたつの怒り声の持ち主に近づいた。ひとつは男性の声、もうひとつは女性の声。 「何だよ! お前、あいつをここに連れてくると言ったじゃねえか!」 と男が怒って言う。「いいか、お前。もし俺をだましたら、お前に生れてこなければよかったと思わせるからな! 男だろうが女だろうが!」 「彼ならここにいるわよ」 と女が吐き捨てるように言った。「フィナーレまで、彼を怖がらせておくつもりなの。彼は全然、疑っていないわ。私を信じて。誰も忘れないでしょうよ。あなたのもくろんだ通りにになるから」 「本当か? じゃあ、あいつはどこにいるんだ? 教えろよ! さもないと……」 私は急いで角を曲がり、ダイアナの腕を掴んだ。ジェフは空になったグラスを掲げて、ダイアナの頭に振り落とそうとしている。それは重いので、振り落とされたら、ダイアナの頭蓋骨を打ち砕くことになってしまう。もしそんなことになったら…… 「ダイアナ、次のセットの着替えをしなきゃいけないわ! 急いで、今すぐ! あら、ジェフ! また会えてうれしいわ」 「リサ! 待てよ! 話しがあるんだ…」 とジェフは大声で言った。 「ショーの後で会いましょう? いいでしょ?」 と私は猫なで声で言った。「今は、ダメなの。ここにいる私のお友達の衣装替えのお手伝いをしなくちゃいけないから! じゃあ、またね!」
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