ふたりは運が良い。ふたりとも時間が非常にフレキシブルな仕事だったからである。グレッグは医薬品のセールスマンで、クウェンティンはウェブのデザイナだった。なので、気分が高ぶった時は、そしてそういう時はよくあることではあるのだが、ふたりには、そういった衝動を満たすための自由があったのである。ふたりには良い環境だった。
グレッグが可能と思ったよりもはるかに早く、ふたりは家に到着した。急いでいたあまり、グレッグはいくつか交通法規を破った。グレッグは、自分の運転の仕方にクウェンティンが気を揉むのを知っていた。だが、ありがたいことに、この日は彼の恋人は何も言わなかった。多分、グレッグ自身と同じくらいクウェンティンも早く家に帰って始めたいと思っていたからだろう。
ふたりは文字通り、走るように家の中に入った。そしてドアを締めるとすぐに、互いの服を引きちぎるように脱がせ始めた。途中、何度も情熱的なキスを繰り返し、やがてふたりは上半身、裸になっていた。次に靴とズボンが身体から離れる。最後に、ふたりもつれ合うように寝室に向かって進みながら、互いの下着を放り投げ、寝室に入るとふたり抱き合って、ベッドへと倒れ込んだ。互いの唇を密着させたまま、互いに手で相手の逞しい筋肉質の身体をまさぐりあう。
クウェンティンがキスを解いた。そして、グレッグの胴体に沿って小さなキスを繰り返しながら、すでに勃起しているペニスへと降りていく。だが、そこにたどり着いたとき、クウェンティンは、ただ、その近くにキスをするだけにして、グレッグを焦らした。指を1本出して、軽く先端に触れ、茎にはかろうじて触れるかどうかの優しい愛撫をした。
その焦らしは、グレッグが堪らず爆発しそうになるまでしばらく続いた。そして、ようやく、クウェンティンの口がグレッグのペニスを捉え、吸い始めた。最初はゆっくりと、舌でマッサージを加えながら行い、次第にペースを速めていく。2分ほどが経ち、グレッグは射精を迎え、クウェンティンの口の中に発射し、クウェンティンはそれを嬉しそうに受けとめた。
クウェンティンは口の隅からザーメンの滴を垂らしながら、グレッグを見上げ、「今度は僕の番」と言った。
ふたりの愛の行為は、切迫した気持ちに駆られたものではあったが、落ちついた行為とも言えた。交互に順番を守りながら、相手を口で喜ばす。そして最後に、クウェンティンは四つん這いになり、シーツに顔を埋め、グレッグが後ろから彼に挿入して終わる。
これまでの数多くの愛の営みと同様、この日もふたりは、共に疲れ切るまで何時間も続けた。ふたりが知っているあらゆる体位のレパートリー(しかも、その数は多い)を次々と楽しみ、最後には共にぐったりとして終わるのである。
行為が終わり、ふたりは疲れ切ってベッドに横たわっていた。ふたりとも汗まみれで、性的満足に顔を紅潮させていた。グレッグもクウェンティンも黙ったままだった。ふたりとも一緒に寝ているだけで満足していたのである。彼らには、的外れな会話をして時間を過ごす必要がないのである。
ふたりともすっかり忘れていたことがあり、それは仕事をさぼる口実を伝えること。日常生活の問題についての心配事など、頭から消えていた。今のふたりには、愛のことと、ふたり一緒にいることの喜びしかないのである。これを幸福と、人は呼ぶかもしれない。真実の混じり気のない幸福。
*
その同じ日の夜、クウェンティンはラジオで聞いたニュースのことを思い出した。その時までは、愛欲以外のことについては、ほとんど頭になかった彼であった。だが、それが満たされた今、再び、彼の好奇心が頭をもたげ、あのテロリストの攻撃について知りたいと思ったのである。事件を起こした男はベルと言う名前だったのを思い出し、彼はコンピュータに向かい検索を始めた。
最初に出てきたいくつかは、ベル自身についての話だった。最先端の遺伝子学者であり、ノーベル賞受賞者であるという著名な立場を利用して、黒人の優位性を喧伝し、過去の差別に対して報復を求める法案(この法案は、この年、上院と下院の両方で否決されたのであるが)それを支持していることについての記事である。クウェンティンにとっては、こんなに天才的であると同時に完璧に非理性的にもなりえる人間がいることに魅惑的なものすら感じられた。
このベルという人物は、どの人種も他の人種より優れているわけではないと分かっているはずだし、ある人々に、その祖先が行ったことに対する懲罰を下すという考えは明らかに間違っていると分かっているはず。あるいは、ひょっとすると、この人は本当に分かっていないのかもしれないと、たった1年前にベル博士がおこなった熱のこもった演説のビデオを見ながら、クウェンティンは思った。明らかに、ベル博士の怒りの壁は、理性の力でも貫通できないほど強固なもののようだ。
だが、そのいずれも、問題のテロリスト攻撃が何であったかの疑問には答えていなかった。そこでさらに検索を続けた。2分ほど検索を続けると、事件の詳細について述べた記事を見つけた。それを読んでクウェンティンは言葉を失った。その記事には、ベルが報道各社に送った、彼自身による声明文の手紙も載っていた。次のような文章だった。
親愛なる世界の皆さん:
あまりにも長い間、我々アフリカ系アメリカ人は忍耐をし続け、世界が我々を差別することを許し続けてきた。我々はずっと忍耐を続けてきた。だが、とうとう、もはや我慢できなくなった。そこで私は我々を差別してきた皆さんを降格させることを行うことにした。初めは、皆さんは私の言うことを信じないことだろう。それは確かだ。だが、時間が経つにつれ、これが作り話ではないことを理解するはずだ。
私は、私たち人類の間の階層関係に小さな変更を加えることにした。今週初め、私は大気にある生物的作用物質を放出した。検査の結果、この作用物質はすでに世界中の大気に広がっていることが分かっている。
パニックにならないように。私は誰も殺すつもりはない。もっとも、中には殺された方がましだと思う者もいるだろうが。
この作用物質はあるひとつのことだけを行うように設計されている。それは、黒人人種が優位であることを再認識させるということだ。この化学物質は白人男性にしか影響を与えない。
それにしても、この物質はそういう抑圧者どもにどんなことをするのかとお思いだろう。この物質はいくつかのことをもたらす。その変化が起きる時間は、人によって変わるが、恒久的な変化であり、元に戻ることはできない。また純粋に身体的な変化に留まる。
1.白人男性は身体が縮小する。白人女性の身長・体重とほぼ同じ程度になるだろう。この点に関しては個々人にどのような変化が起きるかを予測する方法はほとんどないが、私が発見したところによれば、一般的な傾向として、女性として生れていたらそうなったであろう身体のサイズの範囲に収まることになるだろう(その範囲内でも、小さい方に属することになる可能性が高いが)。
2.白人男性はもともとペニスも睾丸も小さいが、身体の縮小に応じて、それらもより小さくなるだろう。
3.白人男性のアヌスはより柔軟になり、また敏感にもなる。事実上、新しい性器に変わるだろ。
4.声質はより高くなるだろう。
5.腰が膨らみ、一般に、女性の腰と同じ形に変わっていく。
6.乳首がふくらみを持ち、敏感にもなる。
7.最後に、筋肉組織が大きく減少し、皮膚と基本的な顔の形が柔らかみを帯びるようになるだろう。
基本的に、白人男性は、いわゆる男性と女性の間に位置する存在に変わる(どちらかと言えば、かなり女性に近づいた存在ではあるが)。すでに言ったように、こういう変化は恒久的で、元に戻ることはできない。(現在も未来も含め)すべての白人男性は、以上のような性質を示すことになる。
これもすでに述べたことだが、大半の人は、私が言ったことを信じないだろう。少なくとも、実際に変化が始まるまではそうだろう。もっとも変化はかなり近い時期に始まるはずだ。ともあれ、1年後か2年後には、世界はすでに変わっていることだろうし、私に言わせれば、良い方向に変わっているはずである。
親愛を込めて、
オマール・ベル博士
この手紙文の後には、様々な専門家による説明が続いていて、そのいずれも、このような主張の内容は不可能であり、いかなる化合物にも、こんなことは達成できないと述べていた。ある専門家は、これはできそこないのSF小説のプロットのようだとさえ言っていた。
たとえそうであっても、クウェンティンは、全世界の白人男性が女性化した場合の結果について思いをめぐらさざるを得なかった。確かに世界が変わる。しかも、小さな変化とはとても言えない、大変化だろう。自分がゲイの男として、これまでの生涯ずっと克服しようともがいてきた数々の問題は、どうなるのだろう? 自分は、そのような変化を受け入れることができるだろうか? アナルが感じやすくなるという点には、確かに、気を惹かれた。これまでもアナル・セックスを楽しんできたが、これがさらに気持ちよくなる? クウェンティンは、どんなふうになるのだろうと思い、ぶるっと身体を震わせた。
が、すぐに我に返った。これは全部ほら話だ。みんながそう言っている。こんなありえないことについて心配しても意味がない。
彼は自分の仕事に戻った。自分は誰で、どんな人間かは自分で分かっている。自分は男であり、その点はどんなことがあっても変わらないのだ、と。
*
「集い」 Gathering by deirdre, 9/24/94
「そうだな、それが良いな」
僕の妻のジーンが、ペグを家に連れてきたら、いろいろ良いのではないかと提案した。もちろん僕も賛成だった。ペグは僕の妹で、僕や僕の姉のサンドラに会いに西海岸から飛行機でこっちに来ることになっている。ファミリーの再会のための集いだ。ペグには2年ほど会っておらず、やっと、こっちに来てみるように説得したところだ。両親が亡くなった今となっては、兄弟姉妹が疎遠にならぬよう、会うように努力すべきだと。
僕たちがサンドラを連れてきて、まだ、たった2時間なのだが、すでに僕たちはめちゃくちゃ状態になっていた。確かに、僕は姉も妹も両方愛している。でも、サンドラには、耐えきれなくなる時もあるのだ。サンドラの攻撃的な物言いについて、僕の場合は、大半は無視する方法は知ってるのだが、妻のジーンは極度にピリピリしてしまう。サンドラを交えて夕べを過ごすと、きまっていつも、僕たちが寝室に入る頃には、妻はいつ爆発してもおかしくない状態になってしまう。サンドラは、近いところに住んでいるので、僕たちは、年に2回か3回は会う。そして、これは言いたくないのだが、僕は、ペグがそばに住んでいてくれたらなあと願うことが少なくないのである。
ペグの顔が分からなかった。少なくとも、すぐには分からなかった。すぐに分かると思っていたのに。ヘアスタイルはショートになっていた。バズ(
参考)とまでは言えないまでも、あれなら手入れは一瞬だなと確信できるほどショートになっていた。最後に見た時は、長い、絹のような髪を肩まで垂らしていたのに。服は、ジーンズとかなりタイトな革のトップ。どうして、あんなにピチピチのを着てるんだろう? 体形がすっかり分かるほどピチピチ・タイトだった。どちらかと言うと、洗濯板の胸なのだが、それでも、あの服装をして視線を引きつけていた。
ペグを出迎え、ハグをした。ペグは確かににっこりしていたが、かなり控えめの態度をとっているように思えた。僕は、ペグのことだから、ぴょんぴょん跳ねてはしゃぎまわると思っていたのに。ペグはまだ20歳で、そういう子供じみた反応をしても許される年頃だ。だがともあれ、ペグに会い、話しができて嬉しかったし、ジーンも彼女に会えて嬉しく感じていたと思う。
家に帰り、僕らはペグにワイングラスを押しつけ、サンドラが帰ってくるまで、楽しくおしゃべりをした。サンドラは高校時代の旧友に会いに行っていたのだが、彼女が帰ってきて最初の5分間は楽しかったと言える。でも、その後、サンドラの威張りくさりが始まり、僕の神経を逆なでし始める。まずはペグのヘアスタイルと服についてひとくさり。次にペグが西海岸に行ったことについて文句。その合間に、ジーンには、とりわけ夕食の出し方でどんなのが一番良いかについての説教。僕は心の中で溜息をついた。
僕はペグにちょっと驚いた。僕は、ペグがサンドラの言葉に反旗を翻すはずと踏んでいたから。ペグとサンドラは、以前は、しょっちゅういがみ合っていたのだ。なのに、いまのペグは軽く受け流しているように見えた。僕が見た限り、サンドラは、ペグを怒らせるために必死に一人相撲をしているだけのようだった。サンドラは、ペグの私生活について質問を繰り返し、ことあるごとに、ペグの自立感覚に反するような意見を挟んでいた。なのだが、ペグはただサンドラの言葉を聞き流すだけ。もっとも、一度だけ、ペグがサンドラから顔をそむけたときに示した表情を見て、僕は身体が凍りつくのを感じた。あの表情は何かを決心したような表情に見えたのだが、ペグがあんな顔をするのを見て、僕は、驚いたのである。
ペグとサンドラ、それぞれに2階に寝室を割り当てたものの、ふたりを2階に送ることに、僕は不安を感じていたと言っていい。僕とジーンが寝室に引っ込んだ後、ふたりは2階に上がって行った。階段を上がる間ずっと、サンドラがペグをなじる声が聞こえ続けたし、その後も彼女の声が聞こえていた。ジーンとベッドに入った後も、階上から会話の声が聞こえてくる。会話がやんでは、また始まるというのが何度も繰り返されていた。大声で叫びあうとかそういった声ではないが、声のトーンからサンドラが文句を言ってるのは分かる。
階上からの声は、かなり長く続いていたので、僕もとうとう、うとうとし始めた。だが、突然、大きな悲鳴で目が覚めたのである。僕はビックリして起き上がった。ジーンも僕の隣、起き上がっていた。
「何なの?」 と心配そうにジーンが言う。僕はランプをつけ、ふたりベッドから降りて、寝室の外に出た。家の中、何も音がない。僕たちは階段を駆け上がった。サンドラの寝室のドアが開いていたが、彼女は中にはいなかった。ペグの寝室のドアは閉まっていた。
僕はノックした。
「ペグ!」
「何?」 とドアの向こうからペグの声。
「さっきの何? 何が起きたの?」
「何でもないわ!」
「ペグ! サンドラはどこ?」
ペグはドアを少しだけ開けた。
「サンドラなら、ここにいるわ」
「誰の悲鳴? サンドラの?」
「何か悪い夢を見たみたいね。大丈夫よ」
「本当?」
「ええ! だからお部屋に戻って!」
ペグの振舞いは変だった。ドアをちょっとだけ開いて、それ以上、開こうとしなかった。でも僕もジーンもふたりをそのままに階下に降り、寝室に戻った。僕もジーンも、眠るまでちょっと時間がかかった。それほどのショックだった。
翌朝、僕たちが起きると、何と、朝食が始まっていたのだった。キッチンに入ると、サンドラがベーコンエッグを作っていて、ペグが食べていた。だが、驚いたのはふたりの服装だった。サンドラは丈の短いナイト・シャツのようなものを着ていた。腰のちょっと上までスリットが入っている。これまでも寝間着姿のサンドラは見ていたが、いつも、丈が長くて、だぶだぶのナイトガウンを着ていた。ペグの方はきつめのTシャツとビキニ・パンティだけの格好だった! たとえ僕の姉妹だとしても、ふたりともちょっとはしたない格好と言える。ジーンも驚いたらしい。僕とジーンはローブを羽織っていた。
ペグが「卵でも食べる?」と僕たち声をかけた。サンドラは何も言わず、ただ調理してるだけ。サンドラのための場所はテーブルには何も用意されていなかったが、ペグは、サンドラに僕たちの食卓を準備するよう言い、サンドラはすぐにその求めに従った。「卵はどんなふうに?」 とペグが訊いた。「いいのよ、私がするから」とジーンが言っても、ペグは却下するので、結局、僕たちは好みの焼き方を答えた。サンドラは何も言わず、ただ、僕たちの要望に従って料理を始めるだけだった。
ジーンと一緒にテーブルにつき、僕はペグを見た。ペグは僕たちを見て、にっこりとほほ笑んだ。非常に自己満足した笑みで、むしろ僕は驚いてしまった。ペグは確かに変わった!
朝食の後、ペグは着替えをするために部屋に戻った。サンドラはキッチンに残り、食器洗いをしていた。
こんなふたりを僕は見たことがなかった。ジーンと僕も寝室に戻り、着替えを済ませて戻った。すでにペグがいた。ふくらはぎの真ん中あたりまでのジーンズ生地のロングスカートを履いていた。多分、その下にはレオタードを着てるだろう。そしてブーツを履いていた。その姿、僕には70年代後半のファッションのように見えた。
サンドラがキッチンから出てきたが、まだ、あのナイトシャツの格好のままだった。サンドラも着替えに寝室へと上がり、ペグも後に続いて2階に上がって行った。少しした後、ふたりが降りてきた。サンドラはドレス姿になっていた。思い出されるいつものサンドラの服装と比べると、それよりちょっとセクシーな感じがした。どういうわけか、靴だけは覚えている。革製で、スリッパのように僕には見えた。
「ちょっと外に行ってくるわね」とペグが言った。ふたりはサンドラの車に乗って出かけた。
「いったいふたりに何が起きたの?」 とジーンが言った。
「知らないよ」 本当に訳が分からなかったのは事実だった。
その日の夕方、サンドラは、夕食を自分で作ると言い張った。ペグは、サンドラにさせてあげてとジーンを説得した。その日一日でサンドラが何か言ったのは、その時だけだったと記憶している。これをどう理解してよいか、僕には分からなかった。
僕たちは、その夜は映画を観に行く計画を立てていた。だが、ペグは、サンドラと一緒にいるから、ふたりだけで観に行ったらいいんじゃ、と言う。その映画はサンドラもペグももう観てしまってると言うのだ。だが、それはおかしな話だった。僕とジーンは、ペグとサンドラを交えて4人で楽しもうということで、その映画を選んだのだから。ならば、別の映画を選ぼうと言うと、ペグもようやく同意してくれた。どの映画を見るか話しあっていた時、ペグは、地元のアート系の映画館でしている映画はどうかと言った。それは外国映画で、主として、過激なヌードが出てくることで有名な映画であり、それをペグが選んだことで僕はちょっと驚いていた。ジーンが嫌がるんじゃないかなとも思った。ジーンは前からヌードが出てくる映画を拒否していたから。でも、僕たちは観に出かけた。ジーンは何も言わなかった。
映画から戻り、僕たちは眠ることにした。今回は、ふたりが階段を上がる時は、まったく静かだった。僕は驚きっぱなしだったが、それでも気持ちが落ち着き、やがて眠りに落ちた。
真っ暗な中、誰かに優しく揺さぶられていた。
「デイブ!」 囁き声が聞こえた。
ベッド脇のライトがつき、一瞬、目が見えなくなった。その人はペグだった。ベッド脇に立っている。「デイブ! 起きて!」
「何なんだ?」
「いいから、起きて!」
時計を見た。12:15AMとあった。ジーンの方に目をやった。
ジーンがいない!
「ジーンはどこ?」
「彼女なら大丈夫。起きて、着替えて!」 ふたりともひそひそ声で話していた。
「何が起きてるんだ?」
「気にしないで。見せてあげるから」
僕は下着しか着てなかったので、服を着た。僕が着替える様子をペグがそばにいて見てるのがちょっと変な感じがした。ペグは僕の妹なのだから。
ペグと廊下に出た。「もう話してくれ。何が起きてるんだ?」 と僕はまた訊いた。
「来て!」 とペグは言い、階段を上りはじめた。音を立てないように静かに。電気は消えていた。二階の廊下に来ると、サンドラの部屋の前の照明はついているのが見えた。ドアはほとんど閉まっているが、完全に閉まっているわけではなかった。
「静かにね!」とペグは囁き、ゆっくりと少しだけドアを開けた。「ね、見てみて!」
僕に、ドアの隙間から覗くよう、手招きしてる。僕が顔を覗かせることができる程度にドアを開けて。僕はドアの隙間に顔を突き出し、中を見た。
そこにはジーンとサンドラがいた! サンドラは例のナイト・シャツの姿で、ベッドの端に座っている。一方のジーンは全裸だった。サンドラの脚の間にひざまずいて、顔をサンドラの股間に押し付けているではないか!
僕は、その光景に唖然とした。サンドラはジーンの髪の毛を鷲づかみにしている。ジーンは両手を後ろ手に縛られていた。
僕は顔を引っ込めた。「いったい!?」 囁き声だが、驚きの声を上げた。
「来て!」 とペグは言い、僕を再び階下へと連れ戻した。
「何が起きてるんだ?」 改めてペグに訊いた。
「ジーンはね、ずっと前から、女の人とするのってどうなのか興味を持っていたのよ。サンドラとなら完璧にいくわ。だって、ジーンって服従するのを好む傾向があるから」
僕はペグの顔を見つめた。ペグが言ったことは、僕にとっては、最も考える可能性がないことだった。ましてやジーンが? 僕のジーンが? 気が狂ってる!
「だって、ちゃんと見たでしょ?」 ペグは、あたかも僕の心を読んだかのように、そう答えた。
「さあ、行こう!」
ペグはそう言って僕の腕を引っぱった。僕は茫然としてて、ただ引っぱられるがままになっていた。ペグは家の外、僕の車に向かっていた。そして、僕は車に乗せられていた。ペグが運転している。
娘をどうやって止めたらよいか分からない! こんなふうになったクリスティは初めて。この店やアーケードの中のすべてが彼女にとっては真新しくて、興奮させるものの様子。あたしは、そもそも娘をここに連れてきたことが良かったのか分からなくなっていた。
クリスティが手を出し、穴から突き出ているおちんちんに触れた。
「クリスティ!」 思わず叫んだ。あたしの叫び声にテレビからの喘ぎ声が覆いかぶさる。
クリスティはあたしの声が聞こえなかったのか、あえて聞かなかったのか、あたしが何かする前に、そのおちんちんを握ってしまっていた。小さなこぶしを作って握ってる。そして、前後にしごき始めた。あたしは、もっとよく娘に言って聞かせることができるだろうと、娘の横にひざまずいた。
「クリスティ、よく聞いて。あなた、この男の人が誰か分からないでしょ? こんなことをしちゃダメ」 と彼女の手を見ながら言った。
でも、どういうわけか、娘の小さな手が太いおちんちんを握ってる光景が、すごくエロティックに感じていたのも事実。
「ママ、これ、大きくなってくる!」
その通りだった。そのおちんちんはみるみる太さを増し、どんどん長くなってきている。その大きさに、あたしも息を飲んでしまった。
クリスティは規則的に手を前後に動かしながら、目を大きく見開いて、そのペニスのことをじっくり観察している。しかも顔を近づけて。こんな光景の娘を見るなんて思ってもみなかった。クリスティを見ていると心臓がドキドキしてくる。
娘はあたしの方に顔を向け、首を伸ばして、あたしにキスをした。突然そんなことをされて驚いてしまった。クリスティは、ピクピク跳ねるおちんちんを握りながらも、あたしのことを想っているの? 唇に娘の柔らかい唇を押しつけられるのを感じ、あたしも心をこめてキスを返した。自分でも気づかなかったけれど、知らぬ間に手で娘のお尻を触っていた。柔らかいお尻の頬のお肉が、触ってて気持ちいい。
娘はキスを解き、しばらくあたしの顔を見ていた。そして、小さな声で、「ママもしてみたら?」 と囁いた。
あたしは何も答えず、娘を見ていた。それがどんなに間違ったことかと思ったけれど、娘の提案を思うと、身体がゾクゾクしてくる。あたしが知らない人のおちんちんに触れる? それはイケナイことだと思うことと、娘の前でそれをすることは全然、レベルが違う。単にイケナイことというレベルを超えている。多分、「タブー」という言葉が正しい表現。
あたしはただ娘を見ながら床に座っていた。娘はニコニコしているだけ。すると、娘はもう一方の手を伸ばしてきて、あたしの手を掴み、おちんちんの上に置いた。大きなおちんちんなので、あたしたちふたりの手で握れるほど余裕があった。
顔が火照るのを感じた。真っ赤になってると思う。こんなの、恥ずかしいわ!
この恥ずかしさ、知らない人のおちんちんに触ってることから生じた気持ちじゃない。確かに、それも関係はあるけど、知らない人のおちんちんに触っていて、それを自分の娘に見られていることから生じてる気持ち!
娘の前でこんなことをしているなんて、まるで……まるで……淫乱になったみたい!
本当に変なんだけど、この淫乱という言葉は、あたしを興奮させてしまう魔法の言葉になっている。ずっと前からそう。その魔法にかけられて、あたしは手を離さずにいてしまう。
「ねえ、ママ? この人のって大きいわよね?」
クリスティが言った。おちんちんの先端から、先走りの大きな滴ができてくるのを見ていた。そうして、また、あたしに顔を近づけ、舌を伸ばしてあたしの唇を舐めた。そして、その後、またおちんちんに顔を向けた。今度は危険なほど顔を近づけている。まさか、クリスティは………
「クリスティ!」
娘が舌を伸ばして、おちんちんの先の割れ目をぺろりと舐めた!
そして、ごくりと唾を飲み込んで、にっこり笑いながらあたしを見て、ウインクをして見せた。ふと気がつくと、あたしは握ったおちんちんをずっとしごき続けていた。
「ママもやってみたい?」 と娘はセクシーな声で言った。
「いや、できないわ……」
クリスティはただ笑顔まま、もう一度、おちんちんの頭を舐めた。今度は、舌で亀頭をぐるりとねぶる感じにした。そうやって、またあたしを見上げ、おちんちんから手を離し、お口を開けて、中に入れてしまった。
ぐいぐい顔を前に突き出して、どんどん飲み込んでいく。とうとう、クリスティは、唇が、根元を握ってるあたしの手にぴったり触れるまで飲み込んでしまった。ゆうに15センチは飲み込んでいる。喉の奥までいってるはず。
その位置でしばらくとどまった後、ゆっくりと顔を引いた。ヌルヌルと長い肉茎が娘のお口から出てくる。
「うーん……、すごく美味しい」
そうして正座したまま背筋を伸ばし、今度はその唇をあたしの唇に寄せてきて、長々と、気持ちのこもったキスをしてきた。
あたしは自分がどうなってしまったのか分からない。知らない人のおちんちんの味がすると分かっていたのに、あたしはお口を開けて、娘の舌を受け入れていた。多分、むしろ、それが分かっていたから、あそこからお汁が出て、パンティが濡れていたのだと思う。
娘の舌はあたしのお口の中にぬるっと入ってきた。おちんちんとそれが出した先走りのしょっぱい味がした。もう、頭の中が混乱状態。ランチの時に飲んだワインのせいもあって、わけが分からなくなっていた。
クリスティはあたしから顔を離し、あたしを見て言った。「今度はママもやってみて」
おちんちんをしごきながらそう言っている。