セクシーにはジェンダーは関係ない。
ifap_63_my_world おカネのためにやってるけど、これは嫌いなのって言えたらいいんだよねえ。売春婦が善良な人間だなんてありえない。そうでしょ? 少なくとも、そういうふうに教わってきているし。善と悪の意味を定義しなおそうってこと、知ってはいるけど、あたしは、どっちと言われたら、がっつり悪の方に分類されるって感じがぬぐい切れないの。こういうの気にしない人もいるけど、あたしは気にする。本当に。恥の気持ちを忘れたくないもの。それに社会の許しの気持ちって言うか寛容さも経験したいと思っているもの。でも、そんな寛容ないのよ。少なくとも今までは。ただ、彼があたしの一番のファンになってくれてからは違うかな。 彼があたしが誰か分かっていないのは知っている。ありえないわよね? あたしは前とは本当に、本当に変わっているから。でも、変貌したあたしを知っても、彼、そんなに驚かないと思う。そもそも、あたしが10歳のころから、彼はあたしのことをちゃんと見ていなかったし。あたしのこと、実際、知らないんじゃないかしら。知りたいとも思っていなかったんじゃないかと。 でも、あたしは彼のことを知っている。この10年でも、彼はそんなに変わっていなかった。お母さんを置き去りにして家を出て行った男。今でも、あの風貌が残っている。あたしのお父さん。 あのホテルの一室で、関係を終わらせるべきだったのかもしれない。そうすることもできた。でも、すごくたくさんおカネを出すって言うし、それにあたしにも、この関係どこまで行くのかなって、ちょっと病的に好奇心が勝るところもあった。最後には、彼はあたしのこと認識するかな? フェラをすると分かるかな? もっと強く突いてって叫び声をあげているときに分かるかな? そんな好奇心もあったんだけど、彼は分かってくれなかった。まあ、彼にとっては、あたしはただのシーメールの娼婦のひとりに過ぎなかったんだろうって。 そして、あれから1週間後の今、あたしはまだ彼に写真を送っている。彼もすでにもう一度あたしに会いたいって予約を入れているし、あたしも同意する気持ちを伝えていた。なんか、後ろめたい気持ちがある。本当に。でも、そういう一種のモラルに引っかかる部分は、すでにあたしの心の中では死んでいる。そういうのを捨てたのはずいぶん前。あたしが生きてる世界では、そんな種類の道徳心は長生きできないものなの。
ifap_63_my_fault プリシラがあたしたちの横に立っていた。両手を腰に当てて、あたしたちを見下ろしている。猫なで声であたしたちを励ましている。「そうよ、そう! どれだけ気持ちいいのか、ちゃんと私に見せるのよ!」 あたしはヨガリ声をあげた。快感から出した部分はあるけど、大半は、プリシラに聞かせるため。プリシラは、あたしが自分の役割に十分に心から安住していることをちゃんと聞こえる形で知らせることを求めていた。そうしないと、彼女はあたしが本気になっていないのではないかと疑うかもしれなかった。あたしは、プリシラが不機嫌になるのは耐えられない。だから、あたしは、腰を動かし、その動きで双頭ディルドがあたしの奥深くに来るようにさせながら、たった一つの単純なメッセージを伝えるためにありとあらゆることをする。そのメッセージとは、いまのあたしが、あたしがなりたかった存在そのものになっているということであり、今あたしがしていることは、まさにあたしがしたいことだということなのである。 それは嘘だった。あたしは今の自分を憎んでいる。そして、その憎しみの度合いは、あたしが愛する女性である妻のレイチェルがこの憎むべき女にあたしと同じように罠にかけられてしまったという事実をあたしが憎んでいる、その憎しみの度合いと同じだった。あたしもレイチェルも、プリシラのおもちゃになってしまっている。呆れかえるほどの慰み物、好きなように操って楽しむ玩具。 こうなったのはあたしのせいだった。この状況すべて、あたしの数多くの過ちの結果だった。当時、どんな結果になるかを知っていたら、もっと注意を払っていたことだろう。プリシラとの関係で、こんな状況になるまで付き合うこともなかったことだろう。だけど、それは後から考えたこと。今の事実からすれば明白だけど、それを知ったからと言って、状況が改善することはほとんどない。もう、壊されたものは直らない。あたしが間違いを犯した。そして今、あたしはその結果を甘んじて受けなければならない。 始まりは、プリシラと最初に寝たときに始まったのだと思う。その時ですら、あたしは過ちを犯していると思っていた。なんだかんだ言っても、プリシラはストリッパーだったし、最後は良い結末になるなんてありえないと知っていた。だけど、彼女には抗えないというのも知っていた。プリシラはセクシーで行為に積極的な人だったし、あたしも、自制心がある人と思われたことは一度もなかった。当時、あたしは最悪の事態になったときのシナリオを頭に思い浮かべていた。それは、妻のレイチェルにバレること。ふたりは口論になる。そしてレイチェルが家を出ていき、それであたし自身は落ち込んでおしまいになると。それが恐ろしい結果であるのは確かだけど、理解できるケースだった。そして、そういうリスクを知りつつ、あたしは喜んでプリシラと付き合ったのだった。だけど、あたしは、人の心に巧みに入り込むプリシラの能力のことを計算に入れていなかった。自分自身が考えもしなかったことを人にさせる、あの能力。妙な魅力がある人なのだった。あたしならあり得ないと思うようなレベルのコントロールを実行できる人なのだった。 プリシラと付き合い始めてすぐに、彼女の強い求めで、あたしは体毛を剃るようになった。髪の毛も伸ばし始めた。次にお化粧。そしてダイエット。ホルモン。何が起きてるかちゃんと見えていた。自分がどんな姿に変わっていくのかちゃんと理解していた。だけど、やめられなかった。プリシラはあたしに指示を与えるだけなのに、あたしは、文句を言うことすらできなかった。というか、自分から、そうしたかった。そうしたい気持ちで切実だった。髪を染めたとき、仕事から解雇された。あたしが急に、しかもこんなに過激に変化し始めたことが理解できないと、友達もあたしから離れていった。あたしの家族もあたしが女性の服装を着始めたら、あたしと疎遠になっていった。 でも、それらすべて、特に問題とは思っていなかった。妻のレイチェルがいる限りは何でもなかった。彼女はあたしにとってすべてと言える存在。そのレイチェルが涙まじりに、もう我慢できないのと言ってきた時、離婚したいと言ってきた時、あたしはプリシラのもとに相談に行った。あたしたち夫婦の間に入って仲裁してほしいと頼んだ。プリシラの不思議な能力の源は分からないけど、レイチェルを元の気持ちに戻すことができる人と言えば、プリシラだろうと思ったのだった。プリシラがしぶしぶ同意してくれた時、あたしは嬉しさに死ぬかもと思ったほどだった。これでレイチェルとの夫婦生活は救われると。 そうはならなかった。むしろ、妻をあたしがいた地獄のような状況に引きずり込んだだけだった。それに、レイチェルもあたしと同じように、ほとんど、抵抗らしい抵抗を示さなかった。程なくして、あたしもレイチェルも、プリシラの事実上の奴隷になっていた。レイチェルもあたしも抵抗できなかった。プリシラに豊胸手術を受けるよう強く説得された時も、反論しようとする気も起きなかった。名前を変えるように言われた時も、同じだった。所有するすべての財産を彼女に委託するときも、あたしもレイチェルも、喜んでサインしていた。プリシラを喜ばそうと、互いに競い合っていたところもあった。 それがおおよそ1年前。その時から今まで、あたしは、そもそも男であるということはどういうことなのかを、ほぼ、忘れている。たいていは、それで問題ないし、思い出したいとも思っていない。むしろ、思い出せないといいのにと思っている。でも、なぜか、いつも、心の奥底にひとつの簡潔な思いが浮かんでる。それは、「すべてあたしのせい」という思い。「すべてあたしのせいで、それをあたしには決して変えることができない」という思い。
ifap_63_an_example マーカスは元の上司からどうしても目が離せなかった。彼の元上司はこの街で最も権力のある人物のひとりだった。「し、信じられない。どう見ても、まるで……」と彼はつぶやいた。 「自分がどう見えているかは知ってるわよ」 と元地方検察官のルーカス・グレースは言った。「自分がどんな人間になっているかも」 「で、でも……」 「そして、それはあんたのせい」とルーカスは続けた。「あんたが自分自身にどう言ってるのかは知らない。毎晩、自分自身にどう言い含めて納得し眠りについているのかも知らない。だけど、私はあんたが何をしたかは知っている。あんた自身の行いが理由で私はここに来た。そのことも知っている」 「分からない」とマーカスは声を震わせた。「どうしても、分からない。あいつらが……」 「あんたは、あいつらが私を殺したものだと思っているんでしょ。それが都合がよかったものね? 違う? それで、夜も安心して眠れると、そう思ったんでしょ? はっ! だけど、これは……」 とルーカスは自分の左右の乳房を握って見せた。「これは一線を越えてる。そう思わない?」 「あ、あいつらは、あ、あなたに手を引いてもらいたかっただけかと……」とマーカスは言った。「あなたを脅かしたかっただけだと。事情を察してもらおうとしていたと……」 ルーカスは笑い出した。かすれた笑い声だった。「ふん、事情ねえ。それって笑える。もっと言えば、あんたが犯罪者どもに寝返るのが理にかなっていると思ったこと自体、悲しいわ。罪人どもに寝返って、わいろを受け取って、脅迫に屈服する。それが事情ってやつなの? マーカス、あんたはこの世界を悪くしている存在よ。あんたはそれを自覚してるのよね? 本当は?」 「でも、ルーカス、俺は……」 「私はもはやルーカスではないわ。クラブでは、私は今はラティーシャとかダイアモンドだわ」 「あ、知らなかったから……」 「連中が私をこんな姿にして、見せしめにしたことを知らなかったかもしれないわね。あいつらが私に手術を受けさせたことも、ホルモンを取らせたことも、ありとあらゆることをさせたことも。全部、知らなかったかもしれない。そもそも、知りたくなかったことでしょ、マーカス? だけど、あんたは、私に何か起きるだろうとは知っていた。あんたは、あいつらにカイラの居場所を教えたその瞬間、私の運命を決定づけたのよ。私はカイラのことを連中に知られたくはなかった。それは許せなかった。私はカイラの本当の生活は知らなかったかもしれない。だけどカイラは私の娘なの。娘を安全に保つためなら、私は何でもする」 「ど、どうすればいい? 俺に何かできることがないか? どうすれば、この償いができる?」 「償い?」 ラティーシャが訊き返した。「それは無理。だけど、あんたがいま気にしていることのうち、一番、楽そうなのが、その償いってやつなんでしょ。いい? マーカス。あんたはあの昇進を受諾するべきじゃなかったのよ。いま、あんた、ギャングたちに強硬な姿勢をとってるわね? あんた、罪の意識から、あんな強硬な姿勢をとってるんじゃないの? 連中への追求の激しさと言ったら、殊勝なことと言いたくなるほど。だが、私と同様、あんたにも弱点がある。コネチカットに住んでるお前の母親とか。LAにいる妹とか。いとことか。連中にはそいつらの居場所を突き止められる。そして、散々いたぶって、殺すことになるでしょうね。あんたが見せしめになるのに同意したら話は別だけど。あんたが私のようになるなら、話は別だけど」
ifap_63_a_man_from_the_past 「いやぁ、君、かわいいねぇ」 男の声には、あたしが彼を無視できないのを自覚しているような自信にあふれていた。「こっちに来て、おじさんの膝の上に座ってみないかな?」 彼は、あたしが誰か認識していない。彼には認識しようがないだろう。最後に会った時から何年も経て、あたしがどれだけ変わったことか。彼には、自分が呼び出したシーメールの娼婦と昔のあたしとを結び付けることはありえないだろう。あたし自身も、これは偶然なのだと自分に言い聞かせていた。 あたしは彼に近づいた。自分が素っ裸だということを嫌というほど感じる。彼が、元のあたしのことを知って、今のあたしを見る。それだけは絶対いやだ。あたしは、あの昔の自分を忘れるため、以前の自分から離れるため、できることをすべてやってきた。すべてを捨ててきたし、すべての人とも断絶してきた。すべて、過去の自分と直面せずにすむよう願って。なのに、今、あたしの過去そのものが目の前にいる。椅子に座って、あたしのカラダをいやらしい目で舐めまわすように見ている。ここから逃げることもできない。 彼の膝の上に座った。猫なで声で言った。「おじさん? あたしに何をしてほしいの? あたし、とっても悪い娘だった?」 「そうだな、おじさんに話してくれないかな。どうしてお前は私を殺そうとしたのか? リック?」 冷たく感情のない声だった。 「な、なに?」 あたしはつぶやき、腰を上げようとした。でも、彼はツタで絡みつくようにあたしの腰を抱き押さえた。丸々とした肉付きの両手があたしの柔肌に食い込んでいた。「り、リックって誰のこと?」 「無駄な話はやめろ。お前が誰か、知ってるんだよ。5年前、お前は死にかかっていた俺を放置して逃げた。そのわけを知りたいんだよ」 「あ、あたしは……」 よい言い訳を考えようと、口ごもった。「別に…何と言うか…」 あたしを抱く彼の腕にさらに力が入った。その強さに、思わず、あたしは悲鳴を上げた。「ご、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい、マック。ああするつもりはなかったの……」 「どうしてだ?」 マックは怒鳴り声をあげた。 「あ、あなたが死んだと思って」 あの日のことを思い出していた。あたしとマックは仲間だった。親友だった。そして、あの銀行には人は誰もいないはずだった。だけど、実際は、そうではなく、急速に悪い展開になっていき、マックは複数、銃弾を撃ち込まれ、血を流して歩道に倒れてしまう結果になったのだった。「あたしは逃げたわ。全部持って、走り続けた」 単純化しすぎた話だったけれど、嘘ではなかった。あたしは逃げ続けた。しかも、単に逃げる以上のことをたくさん行った。自分の背後には裏切りの道の跡が続いてると感じていたし、何十人もの非常に危険な人間たちがあたしのことを追っていると感じていたので、あたしは、身体を変えたのだった。何か他の存在になったのだった。自分のアイデンティティも、男であるということ自体も捨て去った。すべて自分の過去を消すためだった。そして、しばらくの間は、それはうまくいっていたのである。あの、マックがコールガールとしてあたしを呼ぶまでは。 「お前は逃げるべきじゃなかったのだよ」 マックは低い声で言った。その感情は読み取れなかった。「俺を助けるべきだったんだ」 「わ、わかってるわ。本当にごめんなさい、マック。本当に、本当に……」 マックが返事しないので、訊いてみた。「それで、これから、どうすれば?」 「今夜、これから、お前が俺に償わなければならないことをしっかりやってもらう」と彼は言った。「そのあと、残ってるカネがあるところに俺を連れていけ。娼婦として働いてるところを見ると、あまり残ってねえんだろう。だが、俺は全部いただく。その後は、目にした限りのウイスキーを買い込んで、それに溺れることにするつもりだ。そして、お前を見つけたことを忘れるつもりだよ」
ifap_63_a_father's_mistake 「あ、あたし、よくわからないの……」 彼の前に立ったまま、私はつぶやいた。裸になっているあたし。体をさらけ出している。後ずさりし、後ろの鉄格子に背中が当たる。かつらの長い髪の毛が敏感な乳首をくすぐっている。「心の準備ができてるのか、分からないの……」 「お前が分かってようが、分からないだろうが、関係ないんだよ」 と彼は言った。口角を歪め、いやらしい笑みを浮かべている。「これは夢でも何でもないんだよ。俺はカネを払って、お前をここに呼んだ。そのカネ、無駄にするつもりはねえんんだ」 「だ、だから、あなたのせいで、あたしはあそこから移された……」 彼はあたしの言葉を遮った。「俺がお前を呼んだんだ。もっと正確に言えば、お前の親父が呼んだようなもんだな。お前の親父は俺の邪魔ばかりした。俺をバカにしやがった。だから、あいつのひとり息子が逮捕されたと知って、俺はお前がここに来るよう仕向けたわけさ。ほら、さっさとひざまずけ、メス豚!」 突然、すべてが分かった。あの裁判。不当に僕をとがめたあの裁判。裁判官も、あんなに厳しい判決をした。そして、最大限に安全な刑務所から、この刑務所への移送。そのすべてが、僕の目の前にいる男が仕組んだことだったのだ。そして、それはすべて、僕の父が何か知らないけど彼に良からぬことをしたことによると。 驚くことではなかった。父は良い人間ではなかったし、数多くの危険な人々の邪魔をしてきた。そういう人たちの誰かが、僕を使って父に復讐をするのは、十分に予想できていたことだった。新しく同室となったこの男が、こんなに延々と復讐について語ってることからすると、この男はその世界ではよっぽど権力を持っていた男なのだろうと思った。 「あ、あたしは、トラブルはいやなんです。ただ、……保護してほしいだけ」 「保護だと?」 男はズボンのベルトを緩めながら、かすれた笑い声を立てた。「お前は、このムショの全室を次々に渡り歩くことになるだろうな。2年もすれば、尻にちんぽを入れられてなければ、何をしていいかすら分からなくなるだろうぜ。しかも、お前にはそれを防ぐ方法が何一つないんだよ」
ifap_63_a_big_day 「ほら、勇気を出して!」 とナンシーは叫んだ。フットボール・チームのキャプテンである。彼女は、女の子にしても背が低い方だが、筋肉がついた逞しい腕で袖の生地がパンパンにはちきれそうだ。「やればいいのよ。それだけ。子供みたいにならないで」 いつものタンクトップ(この時は紫色)とぴちぴちのジーンズとブーツ姿のレズリーはためらった。彼は、いつも、いま彼に向けられているようなこの種の注目を浴びることを避けてきた。どう反応してよいか分からなかった。 「やろうよ」とカイルが囁いた。レズリーは親友であるカイルをちらりと見た。彼は今トラックにもたれかかっている。カイルも十分可愛い顔をしていた。ブロンドで、女の子たちが大騒ぎするようなタイプの体つきをしている。でも彼の顔には必死の表情が読み取れた。「僕たちには、これはチャンスなんだよ!」との表情。 何のチャンスなのだろうか? レズリーは、どうしても、ナンシーのせっかちな要求に従ったらどんな結果になるのだろうと考えてしまうのだった。もちろん、カイルは、それに従えば人気者になる切符を手に入れることになると期待している。チアリーダーたちと仲良く遊びまわったり、フットボールの選手たちとデートしたり、参加することなど夢にも思っていなかったタイプのパーティに出たりといった楽しい日々が待っていると。でも、レズリーは彼ほどは納得していなかった。色きちがいとレッテルを張られるのがオチじゃないかと。淫乱とか。お手軽な人とか。 レズリーは、必死に懇願する目で見つめるカイルから目をそむけた。でも、そんなにひどいことになるだろうか? 他のたいていの男の子たち同様、彼も、女の子とデートしたり、彼女のストラップオンをしゃぶったり、それを体の中に入れられ、その感触を味わったりするのはどんな感じなんだろうと思ったものだった。それを夢見てきたと言ってもよい。いつでも犯してもらうためにいるという評判が立つのは、そんなに恐ろしいことだろうか? ひょっとすると、それで、今の陰鬱とした状況から脱することができるかもしれない。ひょっとすると、ようやく、バージンの状態から脱出できるかもしれない。 レズリーは決心した。それをしたら何か利点があるかもしれない。そのような良いことが理想化され、彼の心の中、どんどん膨らんでいった。彼はうなづいた。「よし、やってみよう。人生は一度だけなんだろ?」 カイルはパッと顔を明るくさせた。そしてふたり一緒になって、前を向いた。レズリーはオーバーオールのボタンを外していると、隣から、カイルがジッパーを下す音が聞こえた。サスペンダーを肩から降ろし、前の生地がめくれ落ちる。心臓がどきどき鳴っていた。両手を腰バンドにひっかけ、引き下げた。ぶら下がる性器の根元の部分が露出する。 ナンシー、それに彼女と同じ心根の女友達の一群が、一斉に喝采をあげ、大笑いした。ずんぐり太ったフットボール選手が言った。「お前、とんでもねえスケベなんだな!」 レズリーは頬が火照るのを感じた。でも、自分がその選手に気があることを知らせて、彼をいい気にさせる選択は取らなかった。代わりに、作り笑いをして、「ほんと?」と返事した。その声には興奮と恥ずかしさのふたつが混じった声で、少し震えていた。「そ、そうなの?」 ナンシーは、小首をかしげ、口元を歪めてニヤリと笑った。そして、両手でレズリーの平らな腹部のつるつるした肌を撫でまわした。荒々しく、ざらざらした手で撫でまわる。レズリーはナンシーに触られ、背筋にゾクゾクと妙な感覚が走るのを感じた。ナンシーはレズリーに顔を寄せ、切羽詰まった感じで囁いた。「授業の後、観客席の裏にあたしに会いに来て。あんたがどれだけエッチなのか私に見せてよ」 レズリーは反応しようとしたけど、タイミングよくチャイムが鳴り、思いが中断されてしまった。取り囲んでいたみんなは、いまだに笑いながらも、教室へと戻っていった。後に続いて歩くレズリーは気もそぞろで、信じられないほど興奮していたのだった。
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