ヘザーが着替えを終えてキッチンへと出てきた。だが、その服は、普段着ではあるものの、先ほどまでの寝室での衣類とほぼ同じように肌を露出したものだった。平らに引き締まったセクシーな腹部は露出しており、おへそにはダイヤがピアスされていた。健康そうな肌の長く伸びた脚。その上へと視線を向ければ、パンティが見えそうになるほど短い丈のスカート。本当に下着を履いてるのだろうかとライアンは思った。
ヘザーは簡単な仕事で儲けになると約束していたが、それは本当だった。彼女はライアンにしてもらいたいことを説明したが、それは基本的に、男性の視点から意見を述べるというだけのこと。もちろんライアンは喜んで引き受けた。
ヘザーはより詳しい説明を始めた。彼女は何本かポルノ映画に出演していたが、その業界から手を引きたいと思ったと。でも、抜けようと思った時、それまで彼女が出演して得た利益をすべて合わせても、そのほぼ倍は出してくれるというお客さんが現れ、その人のために映画を撮るという滅多にないチャンスがきた、と。
「あたし、今の彼氏のネイトばかりか、ネイトのお友達ともたくさんヤッて、動画に出てるんだけど、おカネをもらってないのよ。ネイトは、あたしが新しい女の子をひっかけてくるのを助けるならってことで、あたしを養ってくれるんだけど、でも、実際、あたしはそれ以前に、もう黒人のおちんちんに中毒になってるようなものなのね。アレなしじゃ生きていけない。旦那はいるわよ。元々、寝取られ好きの旦那だったけど、ネイトと仕組んであたしが黒人男性にヤラてるのを見せたの。今はそういうシーンを見ては興奮する日常なのよ。いやよねえ」
ライアンは、ヘザーの説明を聞きながら、そんな世界もあるのかと信じられない思いだった。だが、事情は理解できる。
「で、それでだけど、あたしが出る動画で寝取られる夫の役で出てほしいの」
これがヘザーが求めていたことだったのかとライアンは思った。
「でも、あなたのご主人は?」
「彼、出張で。でも、彼のことは心配しないで」とヘザーは陽気な笑い声を立てた。
ライアンは思った。すごい幸運じゃないか。信じられない。まずは、100ドル、エクストラに入るし、もっといいのは、ここにいるヘザーが素っ裸になってるところを実際に見られるばかりじゃなくて、他の男にヤラれるところも見られるなんて! ライアンはごくりと生唾を飲み、うんうんと頭を振った。
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Rehabilitation 「更生」
「キミ!」と僕の前に立つ女の子が言った。というか、少なくとも女の子だと思った。でも、脚の間にぶら下がるペニスと、歴然と胸がないことが、それは違うと物語っていた。「キミは新しく来た人ね。じゃあ、ちゃんと聞きなさい!」
「ここはどこ?」と見知らぬ場所で目が覚めたばかりで、混乱した頭で僕は訊いた。ふと、自分がこの女の子と同じく全裸でいることに気づいた。「ぼ、僕の服はどこ?」
「服がないと気になるだろうけど、それは忘れることね。もうずいぶん前から……」
「な、何がどうなってるのか話してくれ」 僕はパニックになっていた。最後に覚えていることは、くらすめーとにセクハラで訴えられて裁判所にいたこと。でも待てよ……その後、もっと他のことがあったよなあ。記憶がぼんやりしてるけど、少しずつ戻ってくる感じだ。
「記憶は2週間くらいで戻るでしょ。でも、その頃までには、多分、自分が何でここに来ることになったのか思い出したくもないって気持ちになってるわよ」
「ぼ、僕は何もやってない」とつぶやいた。「あの女が嘘をついて……」
実際、僕は、判事が僕の見方で判断するだろうと充分確信していた。何だかんだ言っても、僕の元カノのあの女には証拠がなかったのだから。それに比べて、彼女が話し合いをしたいから家に来てと僕に言ってきた時、何かが起きるなって思った僕は、すべてを録音していたのだから。彼女が僕を攻撃しようとするところまですべてを録音してたんだから。
「それが真実なら、本当に気の毒に思うわ。でも、どうしようもないわよ。ここにいる人はみんな、自分から選んでここに来た。刑務所に入れられるのを避けたいと来た人もいれば、恒久的に残る履歴に自分がしたことが残るのを避けたいと思って来た人もいる。でも、理由が何であれ、みんな自分で選択してきたの。あなたと同じくね」
ぼんやりとだけど、裁判に負けたこと、そして、刑務所に行くか、それとは別の、より実験的なプログラムを受けるかと問われ、自分は後者を選んだらしいことを思い出した。でも、その他の詳細は全然思い出せない。
「ここは……この場所は何なんだ?」
「あなたのお家。これから1年半はここがあなたのお家。ついてきなさい。案内するから」
向こうを向いて歩きだす彼女の上腕をつかんだ。彼女は振り向いた。
「待ってくれ。お願いだ。この場所が何なのか教えてくれ。僕に何が起きたんだ?」
彼女はため息をついた。「いいわよ。でもね、知ったからと言って、楽になるわけじゃないからね」
「お願いだから……」
「ここは、性犯罪で訴えられた男性のための、刑務所に代わる更生施設。セクハラとかでの民事訴訟に関しても、選択肢として使われてるわ。ここでは、あなたは女性へと強制的に変身させられる。最初の6ヶ月で肉体が改造される。次の6ヶ月は、女になることの学習に費やされる。そして最後の6ヶ月は、あなたが悪事を働いた相手が誰であれ、その人への性的奉仕に費やされる。今のあたしは、その段階。あたしの女王様は、あたしを裸で歩き回らせて喜んでいるの」
「そんなことって……そんなこと、ありえない」
「あり得るのよ。それに、ここを卒業できたとして、その時にはあなたはおっぱいができてるわ。その後は女性として実社会に戻って、この社会のより生産的な一因となるわけ。じゃあ、ついてきて。まずはあなたの登録から始めましょ」
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A feminine-boy 「女っぽい彼氏」
「どうしたの?」とボーイフレンドの彼がこっちを振り向いた。「ここに来るのを望んだのはキミだと思っていたけど?」
この夏の間に彼はすごく変わってしまった。中学の頃から知っていた臆病で内気な少年は消え去り、それに代わって、あたしには完全には理解できていない自信にあふれた美しいほどに両性的な人になっている。実際、正直認めてしまうと、彼はあたしより可愛くなっている。それは、彼の関心を引こうと大騒ぎする男子たちの圧倒的な多さを見ても明白だ。
振り返った彼は、依然として明らかに男性であり、それは脚の間にぶら下がる性器を見るだけで充分確かなのではあるけれど、それでも、全体の体つきは、ほっそりとしなやかで、最も女性を思わせる部分はすべてふくよかに丸みを帯びているのだった。それに加えて、肩まで伸ばした髪と優美な顔の表情。正直、ほとんど努力せずにこれだけの容姿を彼が手に入れたことに、あたしは少し嫉妬を感じていた。彼に比べると、あたしの場合、彼の半分ほどでも美しく見えるようになるためには何時間も費やさなければならない。
「ええ、確かに」と答えた。急に自分自身のことが意識に登るのを感じた。ほとんど、片方の腕で胸を隠し、もう一方の手で最も大切な部分を隠そうとしかかったけれど、何とかしてその衝動を抑えた。ここは、ヌードビーチなんだから。アレックスが表情を変えずにいられるなら、あたしにだってできるはず。「ちょっと考え事をしていただけ」
「最近、キミ、考え事ばっかりしてるよ」とアレックスは言った。「それに、キミが考え事をするときは、たいてい、まるでエイリアンか何かを見てるみたいにボクのことをじっと見つめてるんだよ。いったいどうしたの?」
あたしはため息をついた。「分からないの……このことすべて、あたしとしては良いと思ってるのよ。この変化のことね。あなたは素敵になったわ。それにそれ以外のことについても、全然文句はないということだけは本当なの」
その言葉で、あたしはベッドでのふたりの関係のことを意味していた。アレックスとのセックスは最初からずっと良かった。でも、ふたりで夏を外国で過ごすと決めて以来、彼は確実にレベルを上げてきた。冒険的に新しいことを試すし、情熱的だし、まったく不安を感じずに新しい体位やテクニックや性行為を試してくる。しかも、そういう時、彼は全力を傾けてくる。その結果も否定できない結果だった。彼は、あたしの脚の間に喜んで何時間も顔を埋め続けてくれるような、本当に驚異的な愛し方をする人。
彼はにっこり笑って「僕も同じだよ」と言った。「昨日の夜、キミがしてくれたこと。舌を使ってボクの……」
「その先は言わないで」 あたりに聞き耳を立ててる人なんかいないのに、あたしはすでに顔を赤らめていた。「今はあなたのことについて話してるの。こういうふうに変わってきた点。それについては、まだちゃんと話し合ったことがないわ」
「そうだね」と彼は周囲を見回した。誰でも利用できる公共のビーチ。今は人がいないけど、じきに人が集まってくるのを知っている。すぐに、ビーチを楽しむ裸の人々でいっぱいになるだろう。「で、キミは、ここはその話をするのに適した場所だと思ってるんだね?」
「ダメなの?」
「いやいいよ。キミは話し合いたいんだね? じゃあ、話し合おう。知りたいことはどんなこと?」
「あなたは……その……トランスジェンダーなの?」 この疑問は彼の新しいスタイルを目にした瞬間から頭に浮かんでいた疑問だった。少なからず、彼は女性物の服を着ていた。あたしと服を貸し借りすることもあった。それと、彼の変身のことも合わさって、当然と言える結論があたしの頭に浮かんでいた。「あなたがそうであっても構わないのよ。あたしは気にしない。つか、気にしてあげる。当然。あなたを支援するわ。あなたには幸せになってほしいと思ってる」
言ったことの大半は本当だった。でも、心の奥底では、あたしはこれからの人生を女性と一緒に生きていきたいのかと思い悩むところもあった。その悩みの答えは見つかっていなかった。
「違うよ」と彼は言った。「多分ね。分からないけど。キミも分かってるように、ちょっと変だよね。ボクは服が好き。その他のことは、全部、ボクの服好きからきてる。女の子のような気分が好きなのかどうか、自分でも分からない。多分、男女の中間のどこかのレベルにいるんだろうって思う。両性的っていうか、二項対立的じゃないというか。分からないけど。多分、ただの女性的な男ってことなのかも」
「ああ、じゃあ、胸を大きくしはじめたりはしないってこと?」
「まだね。ボクは今の自分の身体が好きだから」
「あたしもよ」
「良かった。そこは嬉しいよ」
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