受話器を取ると、こちらからもしもしと言う間もなく、ディ・ディがしゃべりだした。
「ドニー! 彼、最高なの! 彼に殺されるかと思ったわ。デス・バイ・ファッキングよ、まさに! 終わった後に、ぐったりして、気を失いかけながら考えたんだけど、それしか考えられなかったわ」
私はショックを受けていた。同時に、興奮も感じた。ディ・ディが、この種の言葉を使うは初めてだった。この男、よっぽどすごいに違いない。どうしても詳しいことが知りたくなった。
「ドニー、私たち、2回愛し合ったわ。この4年間、一度もなかったのよ。それが、一夜に2回も! それにね、ドニー、そればかりじゃないの。彼ったら・・・その・・・アレもしたの・・・分かるでしょ・・・?」
ううっ、分からないわよ。私が性的にウブなのは、姉と同じなんだから。
「ディ・ディ、その人、何をしたの? 何のことかさっぱり見当が付かないわ」
「彼、口をつけたの・・・分かるでしょ、あそこに!」
「ええっ! すごい! 良かった? 感じた? それとも、ひどかった?」
「最高だったわ。彼がそれをしている間、私たち、ずっと互いに見つめあっていたわ。それに、彼、もう永遠と言っていいほど、ものすごく長い時間してくれたの。彼は、まるで、この世で一番好きなことをしているような感じだったわ。私がやめさせて、ようやくやめてくれたんだもの。私がとめなければ、今でも、彼の舌を中に入れたまま横になっていると思うわ」
私は、想像してゾクゾクとしてきた。
「うわ、それって気持ち悪い!」
そう返事したけれど、もちろん、気持ち悪いことなんかじゃないのは分かっていた。想像しただけで、あそこが濡れてきていた。
「試してみないうちから、拒絶するのはよくないわ。私は、中毒になるんじゃないかと思っているんだから。・・・ドニー、私、彼と恋に落ちてしまったと思うの。だから、助けて欲しいの!」
「彼と恋に落ちるのを、私に止めて欲しいということ?」 私は冗談っぽく聞いた。
でも姉は冗談として聞いてくれなかったようだ。
「ドニーもこっちに来てみて。今すぐにでも来て欲しいの・・・彼、私たちのこと知らないの。私には妹がいるとは言ったけど、それしか言っていないの。彼は私たちのこと知らないのよ。私たちがどう生きているか、どういうふうにしか生きられないか、まだ言っていないの」
「彼に真実を言うまでは、真剣になってはいけないのは知ってるはずよ、ディ・ディ。でも、そちらに行けるか分からないわ。私がついている今のプロジェクトのこと知っているでしょ? 大事なプロジェクトだから。明日の夜、もう一度、電話して。その時も切実な状態が続いていたら、私も金曜の午後オフにしてクリーブランドに飛んで行けるかチェックするから。でも、行けるかどうか分からないわ。私には、ここインディアナポリスに是非いてくれなきゃ困ると言われそうだし・・・」
「ドニー、是非、来て欲しいの。そして彼に会って欲しいの。彼、すごいんだから」
ええ、ええ。私の目で確かめたら、信じることにするわよ。私自身は、ロマンティックな将来については、ほとんど、希望を失ってる状態だった。
「あ、ドニー? もう、話したっけ? 彼、25歳なの!」
何ですって?
「25歳? ディ・ディ、気でも狂ったの? 20何歳の素敵な男が、あなたのような老婆と何をしたいって言うのよ?」
「分かってる、分かってるわ。彼が私のどこを見てるのか、私も全然分からないわ。でもね、彼、私のことを抵抗できないほど魅力的だって思っているのよ。彼は、化学反応とか何とかって言っていたわ。そのために、惹かれあう気持ちに抗うことができないんだって。彼、変なのよ。彼は、人生の物事を説明するために、いつも、こういう変なちょっとした理論を立てるの。ともかく、『私と彼』のことを説明するために、彼は、この『化学反応』の話を言ってたわ。あっ、『化学反応』じゃなかったかも。『化学的誘引』だったかも。忘れちゃったわ・・・」
「・・・でも、ドニー? もし、彼の言うことが正しかったとしたら、どうなると思う? そんなことを考えたこと、ある?」
「え? 何を考えたこと、って言ったの、ディ・ディ? ディ・ディとその人が惹かれあったと。そして、そのことについて、彼がちょっとした理論を愛玩していると。でも、その理論が正しいかどうかが、いったい、この話と何の関係があるの?」
ディ・ディは興奮して言った。
「まず、ドニーと私は化学的には同じよね? 私たち、クローンみたいなものでしょ? そうすると、もし、彼が私に化学的に惹かれたと言うのなら、彼はドニーにも化学的に惹かれるはずだし、ドニーも彼に化学的に惹かれるはず。そういうことにならない?」
背筋をゾクゾクと興奮が走るのを感じた。私はすでに、ディ・ディが口唇愛撫のことを話したときから、あそこが濡れきっていたのだ。この電話が終わったらすぐに、自分で自分のお世話をしなければいけないと思った。
私も、早くその男性に会ってみたいと、待ちきれない気持ちになっていた。でも、ディ・ディに返事をするときには、わざと、気のなさそうな口調になるよう努めた。
「分からないわ、ディ・ディ。金曜にそっちに行けるとは思うけど。ダメかも・・・」
ディ・ディは、私の反応は信じなかった。「私をだまそうとしてもダメ。私はお姉さんなんですからね! あなたが、ほとんど私と同じくらい彼のことで興奮しているのは、分かってるの。まだ、彼に会っていないうちから、そうなっている。そうでしょ? すっかりお見通しよ」
ディ・ディがお姉さんづらをするのは、大嫌いだった。ディ・ディは、自分が正しくて、私は間違っていると示そうとするときは、いつもお姉さんづらをする。確かに、ディ・ディは姉だけど、たった45分の差なのよ。45分で年配者づらをされるのは、納得できない。
ディ・ディは木曜日の夜にも電話をかけてきた。ディ・ディは泣いていた。声から。それが分かった。