そんなことを考えていたとき、ゲイルがドアから顔を出し、僕のオフィスを覗き込んだ。また別の女性のクライアントが来たと言って、その人をオフィスに案内して来たのである。
僕は、先の顧客に行った時と同じように振る舞い、仕事を片付け、その客に、アルア氏は不在だが、仕事に関しては万事ご安心くださいと請合った。客が帰るときには、握手をしながら、感謝を述べ、いつでもお寄りくださいと伝えた。
その日も終わりに近づいた頃、ドナから電話が来た。
「ビッキー? ちょっとわくわくする知らせがあるの。でも、あなたが帰ってくるまでは、どんなことかは話さないわ。だから仕事が終わったら遅れずにすぐ帰ってきてね」
「こんな服を着ているのに、寄り道して帰れると思うのかい? 心配は要らないよ。まっすぐ帰るから」
僕とゲイルは、いつも通りの手順でオフィスを閉める作業を始めた。ただ、今日はハイヒールを履いて、ドレスを着ているという点が異なった。
オフィスを閉めた後、ちょっと外をチェックしてからオフィスを出て、車に乗り込んだ。こんな格好でアルア氏の車に乗り込むところを、隣でビジネスをしてる人たちに見られたらたまらないからだ。
車を走らせたが、やはりハイヒールだとペダルを踏む感覚が変だ。ともあれ何とか家にたどり着いた。車のドアを開け、両脚をそろえて振るようにして外に出し、車から降りた。何とか、何事もなく家にたどり着けたようだ。
ドナはこの日も部屋で僕が帰るのを待っていた。そして、この日も女王様の身なりをしていた。しかも、あの美しい両脚の間にはストラップオン(
参考)が隆々とそびえ立っている。途端にペニスが勃起し始めるのを感じた。
ドナは木製の椅子を部屋の真ん中に移動していた。よく見ると、AV機器を置いてあるところのビデオカメラが、その椅子にレンズを向けているのに気がついた。椅子の4本の足全部にロープが結び付けられていて、背もたれには大きなタオルが掛けられている。
ドナは僕に歩み寄り、熱のこもったキスをした。二人とも口紅をつけているので、互いの唇が滑らかに滑りあい、実になまめかしい。
ドナはキスを終えると、僕の手を取り、椅子の後ろへ連れて行き、背もたれを腹にあてて前かがみになるよう命令した。
命令に従うと、ドナは僕の両手首にロープを縛りつけた。さらに後ろに回って、両足首にもロープを縛り付けた。事実上、手足の自由を奪われた格好になった。
「緩むかどうか、ちょっと試してみて」
両腕を強く動かしてみたが、ドナはしっかりと結んだらしく、全然ほどけなかった。さらに身体をうねらせてみたが、足首を拘束されているので、椅子から離れることもできない。
ヒールを履いたままなので、あまり踏ん張ると足が痛くなる。結局、腹部を椅子の背もたれに乗せて力を緩めざるを得なかった。そうなると、お尻を高々と突き上げて椅子に覆いかぶさる格好になっていた。
ドナが僕のドレスの中に手をいれ、乳首挟みを外した。
その途端、左右の乳首が燃えるように痛み出した。それまでは挟みに捕らえれ、いわば麻痺していたのだが、突然、血流が戻ったのだろう。そこの神経に火をつけられたように感じる。
ドナは乳首はさみを椅子の上に置き、僕の後ろに回った。ドレスのスカートを捲り上げ、僕の背中に掛け、それからパンティを膝まで降ろした。そしてテーブルに行き、潤滑クリームを取り、ストラップオンに塗り始めた。
手についたクリームをタオルで拭きながら、僕の後ろに戻ってくる。優しく尻栓を引き抜き、タオルに放り投げると、空洞になった僕の裏門にゆっくりとディルドを入れ始めた。
挿入される間、僕はあえぎ声をあげることしかできなかった。ドナは優しくディルドの根元まで挿入した。彼女の恥丘が僕の尻頬に触れるのを感じた。その部分がいっぱいに埋められた感じがし、今にもはちきれてしまいそうに思った。
ドナは、そのまま僕に覆いかぶさり、両手を前に伸ばして、敏感になっている僕の乳首をつねった。甘美な痛みが全身に走り、僕はうめき声を上げながら身体を捩らせた。
すると今度は乳首を離し、胸全体を優しく撫でながら、ディルドを引き抜き始める。先端だけが中に入っているだけになった。
そしてまたゆっくりと挿入を始め、同時に乳首をつねる。僕は全身を震わせて、それを受け止めた。それが繰り返される。
頭を振って悶えると、長い髪の毛が顔にかぶさった。甘美な苦痛と快感が交互に僕を襲い、僕は口を大きく開けて耐え続けた。何か心を落ち着かせるものを必死に求めて、無意識的に舌を出し、唇を舐め回っていた。ストラップオンのディルドが前立腺を擦り、ペニスがよだれのようにプレカムを出し、それがタオルにポタポタと落ちるのを感じた。
「報復」 第10章
2月下旬
「本当に驚いているところですよ。お二人とも、先月のたった一ヶ月の間に、ずいぶん進展を見せたようで。しかも、その多くは私を介在させずにお二人だけで達成なされた。ということは、意思伝達の道がお二人の間に再び開かれて、それが、かなりうまく機能しているということですな。これは本当に喜ばしいことですぞ」
カウンセラーは二人の姿を長い間見つめた。
「・・・そこでですが、これからしばらくは2週間に一回・・・あ、いや、3週間に一回私と面談し、その後どうなったか話し合うようにしてはどうかと思うのですが、いかがでしょうか?」
スティーブとバーバラは互いに顔を見合わせた。スティーブは片眉をちょっとだけ上げ、妻の瞳に浮かぶ表情を読んだ。バーバラには異論がなかった。ヒューストン氏はくすくすと笑った。二人の間に言葉を解さない微妙なコミュニケーションができつつある。同居を再開したことで二人の関係が良好になってきているのが分かる。
「それで構わないと思います」 スティーブはバーバラとヒューストン氏の両方に向かって返事した。「必要になったら、いつでも元通りのようにもっと頻繁な回数に戻っても良いのですよね?」
ヒューストン氏は頷いた。
「分かりました。それじゃあ、これからは3週間に1回ということにしましょう。これまでどおり木曜の夕方ということで、お二人とも良いですよね? よろしい、では、ちょっと・・・」
ヒューストン氏は電話のボタンを押して、待った。だが返事がなく、彼は顔を曇らせた。もう一度ボタンを押した。だが、また、返事がない。
「ちょっとすみません」 と言ってヒューストン氏は立ち上がった。「・・・このインターフォン、ちゃんと動いたことがないんですよ・・・ちょっと待っててくれますか?」 そう言ってオフィスから急いで出て行った。
二人だけになるとスティーブはバーバラに問いかけた。
「もう彼の前で重要なことを話し合う必要はないよね。そうだろ?」
バーバラは、きっぱりとした様子で頭を縦に振った。
「私たち二人とも大人ですもの。もし、相手に腹を立てたりするときがあっても、冷静に考えたり、冷却時間をおいたりと、賢く振舞えるはず」
スティーブは頷いた。「そう僕も思っていたところだ」
二人はしばらく黙った。
沈黙時間の続いた後、バーバラが意を決して切り出した。
「キムがあなたによろしくと言ってたわ」
スティーブは驚いた。
「え、本当? いつ、言ったの?」
「今朝、ダラスから電話をよこしたの・・・私が仕事に出る前に・・・」
スティーブは頷いた。彼は、しばらくの間、何を言ってよいか考えていた。そして、心に浮かんだことをそのまま言おうと決めた。
「キムはまだ僕を怒っているだろうか?」
バーバラは笑い出した。
「うふふ、大丈夫・・・キムは、もうずいぶん前に、その段階は超えてるわ。・・・確かに、しばらくは、キムはダラスであなたの心臓をえぐりたいほど憎んでいたみたいだったけど、今は大丈夫になってるわ・・・」
「・・・彼女、かなり集中的にたくさんカウンセリングを受けてきているの。そして、今は、自分が恐ろしい暗黒の道を駆け下りているところだったとの自覚ができているわ。もうそろそろ、キムはあなたに感謝する心づもりができる段階に差し掛かるはず。あなたが彼女のことを気にかけて、あの道を進むのをきっぱり遮ってくれたことを感謝するようになるはずよ・・・」
「実際、キムがたった6歳の頃からどれだけの重荷を背負って生きてきたか信じられないでしょうね」 バーバラは当惑して頭を振った。「パパとママの可愛い娘たちは、二人とも、ダメダメの子犬だったから・・・分かる?」
「まあ・・・でも、僕が君の両親にあのことをバラした理由は、その『暗黒の道』だけじゃなかったんだよ・・・今でも僕は彼女に対して行ったことを後悔しているんだ」
「その件はもう話し合う必要はないって確認しあったはずよ」
「ああ、でもね・・・」 スティーブは溜息をついた。「今でも時々、キムに対してあんな下劣な振る舞いをしたことや、あんなやり方で君の両親にバラしたことでひどい罪悪感に囚われるんだよ」
バーバラは、慰めるように彼の手を軽く叩いた。
「父も母も、そしてキムもあなたのことを許しているのよ・・・分かっているはずじゃない?」
「ああ、分かっている・・・」 スティーブの声は穏やかだった。「時々、君の両親が僕のことを怒って、つばを吐き掛けてくれたほうが気が楽になると思うことがあるよ。クリスマスに君と二人で君の実家に行ったとき、君の両親はあんなふうに僕を歓待してくれた・・・そんなことを思い出すと、君のお父さんに顔を殴られても、文句は言えないと思っている。なのに、お父さんは握手してくれた」
「ノニーが時間をかけて両親に話してくれたのよ。キムは薬物の過剰服用で死んでしまうか、致命的な病気にかかってしまうかの一歩手前まで来ていたって。ノニーが話してくれた後は、お父さんもお母さんも、話してくれなかった場合よりは、少しはあなたの心情を理解する気に変わったわ・・・」
「・・・知ってると思うけど、ノニーはお父さんを説得して、調査員を雇い、キムが出ていたアマチュアのポルノ・ビデオの全部について、その消息を確かめさせたわ。あなたが最初に見たビデオに出ていた男がいたでしょう? あいつが観念して持ってたコピーを提出した後は、1本も出てきていないそうよ。・・・インターネットにも出ていないらしいわ・・・だから、ビデオはすべてなくなった模様だって・・・」
スティーブはちょっと間をおいてから、口を開いた。実のところ、彼はキムのビデオの話を続けるのは気が進まなかった。
「ああ、そう・・・この件では、何から何までノニーはずいぶん頑張ってくれたようだね・・・ところで、先週あたりから、君はずいぶんノニーに会いに行っているみたいだね?」
「え、ええ・・・」 バーバラの声にはちょっとぎこちないところがあった。
「私、ノニーに優しくしてもらっているわ。そう思うでしょ?」
スティーブは頷いた。
「ノニーはあなたのことをものすごく気に入っているのよ」
スティーブは微笑んだ。彼もバーバラの祖母が好きだ。
「オーケー!」 ドアを勢い良く開けながらヒューストン氏が戻ってきた。
「シーラが設定してくれました。これから2ヶ月ほど、第3木曜日にお二人に来てもらいます・・・その後は、後で考え直すと。それでよろしいですね?」
「はい、お願いします」 スティーブはそう返事し、バーバラを見た。バーバラは頷いた。