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暗示の力 (14-15) 

14
どうしてこれをやったんだろう。鏡で自分の姿を見るたび後悔する。すごく下品。何て言うか、僕自身はこんなのしたいと思っていなかったんだけど、ジェニーがあんまり勧めるものだから。ふたりで外出してた時だった。夏に湖畔の別荘に行って、そこからマイアミに戻ってきた最初の晩のこと。僕はちょっと酔っていたんだけど、ジェニーがタトゥを彫ってみたらって言ったんだ。僕は、最初は拒んだよ。そんなことするほど酔ってはいないって。ひとつで充分だよって……

いや、正確にいえば、この腕のタトゥはふたつ。ふたつが重なったもの。ちょっと前に…僕が体重を大きく減らした頃だったかに…すでに彫っていた棘のついたツタのデザインのタトゥを見て、ちょっと思っていたのと違うなと感じたんだ。そこでタトゥの店に行って、そこに花をいくつか彫ってもらった。今は、このタトゥがよくあるバカっぽいタトゥだったなんて誰にも分からない。すごくユニークになっている。

多分、決心するのに、あと数杯飲むだけで良かったんだろうと思う。それから程なくして、気がついたら別のタトゥの店に来て、うつ伏せになっていた。そして、このトランプ・スタンプ(参考)を彫られていたわけ。どうして他のにしなかったのかって? 僕も分からない。まるでこれに引き寄せられたような感じ。あのタトゥの店に行く前から、どんなのを彫ってもらうか知っていたような…。

でも、そんなの全然意味が分からない。というか、これを彫って僕が楽しいなら、意味が分かるけど、僕はこんなのを彫らなきゃ良かったって思っているんだから。そうだったら、僕はこれを望んでいたはずがないということになるよね?

ジェニーはこれが好きだと言っている。確かにそうだろう……ジェニーは僕のことを「私の可愛い淫乱ちゃん」って呼んでいるから。ああ、確かに。それこそ、男が妻に呼んでほしい名前なんだろう。

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15
僕は頭がおかしくなっているんだと思う。もちろん、人はよくそう言うのは知ってるし、そういう時はほとんどいつも誇張して言ってるのは知っている。でも僕は本当に頭がおかしくなっていると本気で思っているんだ。昨日もまた出来事があった。でも、この時だけはジェニーが僕のそばにいなくて、僕には助けがなかった。僕だけ。ずっとひとりで。

僕が衣類を入れた箱を屋根裏に片づけている時だった。何か、頭の中でパチンと弾ける感じがした。そして僕がしてきたことのすべてに鮮明に気がついたんだ。自分がどんな人間になってきたか、そのすべてに。着る服とか、髪型とか、化粧とか…そうお化粧。それに身体も…そのすべてを認識したんだ。僕は叫びたかった。パニックになりたかった。でも…なぜか、僕は叫びもしなかったし、パニックにもならなかった。

まるで頭の中を覆っていた霧が晴れたような感覚だった。ようやくすべてが明瞭になったような。そして、思った…どうしてそう思ったかは分からないけど…つまり、もしパニックになったら、本当にすべてが大波のように戻ってきてしまうだろうと。だから、僕はじっと我慢して強いて平静さを保った。自分はどのような人生を選択したのかを検討するために。

いったん平静さを保とうと決めたら、後は簡単だった。このパニック状態は長く続くものじゃないと分かった。でも、ちょうどその時、あれに気づいたんだ……。

大きくはない。あえて言えば、手の中にかろうじて収まるくらい。でも、確かに存在している。トップを降ろして、躊躇いがちに乳房に触った。僕の乳房に…。男なら自分の胸をこういう言葉で表現はしないんだけど…。大きくはないけど、確かに乳房と呼べるものだった。女性の乳房。そして乳首を見て確信した。すごく…突出している。「突出」、まさにこれがそのとき頭に浮かんだ言葉だった。まさに突出と言うにふさわしい。だって、30センチも突き出ている感じだったから(もちろん、これは誇張だけど)。

すぐに、どうして最近の僕の気分にムラが生じてるのか理解した。どうして肌がどんどん柔らかくなってきているのか分かった。どうして、最後に勃起した時のことを思い出せなくなっているのか分かった。ジェニーが、ほぼ8か月前から僕にビタミン剤だと言って飲ませている薬は女性ホルモンなのだ。

そう悟った、その瞬間、パニックが襲ってきた。そして僕は何も気にしなくなった。まるで夢を見た後、その夢を急速に忘れてしまうような感じで、さっきの考えが消えていく。明日になったら、僕はこのことを何も覚えていないだろう。だから今ここに書き留めている。

頭がおかしくなっているのではないといいんだけど。ジェニーは僕にこんなことをしているなんて、そんなの間違いだといいんだけど。

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[2013/12/09] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

ライジング・サン&モーニング・カーム 第9章 (8) 

「ノボル殿、スミマセン[sumimaseng]」

ノボルは書から顔を上げた。「イサム? どうした?」

丸岡イサムはノボルの前にひざまずいていた。

「政府に潜入させている我々の内通者が、アメリカと日本で条約が締結されたことを発見しました。桂太郎総理は、フィリピンに対する日本の権益と朝鮮に対するアメリカの権益を交換することに成功した様子です」

ノボルは筆を置きながら、3世紀前にユ・ソン・リョンが語ったことを思い出した。まさに彼が予想した通りだった。朝鮮政府における政治的腐敗と内部抗争のせいで、あの国は外国政府に侵略されやすい状態になってしまった。そしてノボルの国である日本が、再びあの半島に手を伸ばそうとしている。

「総督、すみません」とノボルは溜息をついた。

イサムは、主人であるノボルがどうして朝鮮の人々の事柄に興味を持つのか決して理解していなかったが、そのことを尋ねるようなまねはしない分別は持ち合わせていた。

「何か必要な情報はありますでしょうか、ノボル殿?」

「イヤ[Iyah]。立ち去ってよい」

「ある種のことは決して変わらないものだ」と彼は独りごとを言った。日本政府が最近、日増しに軍国主義的態度を取るように変わり、ノボルはこの国の運命について心配し始めていた。ガイジン[gaijin]のペリーが来航して以来、日本は西洋の拡張主義的的傾向に駆られている。ノボルは、明治維新により武士階級が駆逐された数年間に従者たちを集め、彼らとともに世間から身を隠す生活をしていた。もはや神聖視されるものは何もない。これからどんな世の中になっていくのだろう。ノボルには分からなかった。

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ノボルは、東京帝国大学の著名な科学者数名と会食を終え、信頼のおける部下たちと共に東京の街を歩いていた時、くぐもった悲鳴を聞き、立ち止った。

部下たちはノボルが急に立ち止ったのを見て、彼の気分が急に変わったのを感じた。

「どうした[Doshta]?」 とゲンゾーは小さな声で尋ねた。

「通りの向こうで何かが起きている」

ノボルはその悲鳴に意識を集中し、女性の声であることを知った。そして、その声が韓国語であることを知り驚いた。

「ゲンゾー、ついてきてくれ」

ノボルとゲンゾーは暗い横道に入り、その声の源に近づいた。家の窓から覗くと、中には兵士がふたりいて、ハンボク[hanbok](韓国の伝統衣装)を着た女たちを手荒に扱っているのが見えた。女たちは離してくれと懇願していた。

女のひとりが啜り泣きしながら叫んでいた。「お願いです! 家に帰らせて! オムニ[Uhmuhni](お母さん)!」

兵士たちは、女たちの悲鳴はまったく気にせず、笑いながら続けた。「こいつら何て言ってるか分からん。お前は?」 と兵士のひとりが別の兵士に訊いた。

「いや。だが、どうでもいいだろう?」 兵士たちは全員、下品に笑った。

「慰安婦をつけてくれるようになってから、陸軍での軍隊生活はずっと楽になったのは確かだからな」 とまた別の兵士が嬉しそうに叫んだ。「しかも、この女は新品ときてる!」

ノボルは、ひとりの男が娘の脚を強引に開かせるのを見た。その娘が抵抗しようとすると、男は彼女に平手打ちをした。男は強引に娘に挿入した。娘がおびただしい出血をするのを見て、ノボルは恐怖を感じた。この娘は処女だったのだ。男はことを終えると、ペニスについた血を拭い、ズボンを上げた。

「よし、仕事だ」

犯された娘はベッドの隅へと這い、スカートを降ろした。だが彼女には泣く暇すらなく、さらなる恐怖に両目を剥いたのだった。別の兵士が彼女の隣にいるさらに年若の娘に手をかけるのを見たからである。

「ウニエ[Unnie](お姉さん)!」 とその小さな娘が泣き声をあげた。

「その子を離して!」 と娘は金切り声を上げ、両手をこぶしにして男の背中を叩いた。「まだ14歳なのよ、このけだもの!」

男は手の甲で娘の顔を鋭く殴った。娘は身体を転がすようにして倒れた。「馬鹿な朝鮮女め」 と怒鳴りながら男はズボンを降ろした。そして前を向き、泣きじゃくる少女に「ウルサイ[Urusai!]」と怒鳴った。


[2013/12/09] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)