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65_Taking off the disguise 「偽装を解く」
「何だ、これは!」マイケルはドアの前に立ち尽くし、シャワー室にいる女性を見つめた。彼女は、マイケルの兄だった。兄だった人だったと言うべきか。「な、なんてこった。これって!」
「まあ、どうでもいいけど」 ケイシーは裸体を隠そうともしなかった。彼女にとって、自分の本当の姿について謝る時期はとうに過ぎていた。ケイシーは肩をすくめて続けた。「遅かれ早かれ、分かると思っていたしね」
「わ、分かるって何を?」
「マジで言ってるの? あたしは女なの。このおっぱいを見れば、明らかだと思うけど?」
「で、でも、ケイシーは……違うんじゃ……何と言うか……」
マイケルが言いよどんでいる間にケイシーはタオルを体に巻き付けた。ケイシーにとって、マイケルの反応は、さほど驚きではなかった。これまでも、彼女の変身に驚いた人々に山ほど会っていた。男子寮の学友の大半は、彼女が受けてきたホルモン置換治療の効果を目の当たりにするまで、まったく信じようとしなかった。マイケルが子供時代を通してずっと尊敬し続けてきた兄が女の子になっているのを見て唖然としてるなんてことは、これまで目にしてきた他の反応に比べたら、マイケルの驚き具合は少ない方だと言えた。
「聞いてくれる? あんたの気持ちは分かるわ。本当に、分かるわ。あんたにとってはいきなりだったから。でもね、あたしにとってはもう何年も前から続いてきてることなの。記憶があるときからずっと続いてきていることなの。他のこと、以前のあたしとか、それは全部ウソ。高校卒業まで生き延びるための偽装。でも今はあたしは、自由に、自分の本当の姿と思う人間になれているの」
マイケルは顔を上げた。「で、でも、どうしてボクに言ってくれなかったんだ?」
ケイシーは肩をすくめた。「分からないわ。あんたなら理解してくれただろうけど。
多分ね。でも、あんたには言いたくなかったの。そんなのあたしにもイヤだもの。あんたには、こういうことに関わって欲しくなかったの」
「ボクを信じてくれたらよかったのに」 マイケルはそう呟いて、背を向け、何も言わず立ち去った。
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65_Submissive 「服従」
「いいぞ、全部、中まで喰らえ。お前がそれが好きなのは分かってるんだ」
「し、死ね!」とエリックは答えた。とは言え、ディルドをアヌスの奥まで入れるのをやめようとはしていない。
「今は死なねえよ」とトニーはニヤニヤした。「いつか死んでやるから待ってな。今は、お前の練習の邪魔をさせないでくれるか?」
エリックはゴム製のファラスを出し入れし続けた。今やすっかり使い慣れたアヌスだった。時々、いい頃合いで色っぽい声も出す。演技に見える快感も、そのうちの何回かは本物の快感だった。本気で感じてしまうことが、ますます女性化が進んでいる容姿と同様、悔しい。このせいで、いつも恥辱を感じ続けている。
「みんな、知ってるのかな?」 トニーは女性化したエリックの隣に座った。手を伸ばし、彼の小さな乳房を触り、乳首をカリカリする。「これがお前の本当の姿だって、みんな知ってるかなあ? みんな何て言うかなあ? お前の友達や家族。お前をずいぶん買っている職場の連中とか。今のお前を見たら、みんな、何て言うかなあ?」
エリックは返事をしなかった。そんな結末を考えたくもなく、返事をしようがなかった。今までは、女体化されてることは何とか隠し通せることができていた。だが、いつかは、この変化に気づく人が出てくるかもしれないと恐れていた。だぶだぶのスーツを着て必死に隠し続けている女体化した体を見通す人が出てくるかもしれない。あるいは、もっと悪いことも想像する。つまり、いつの日か、トニーが隠すのはもうやめると言い出すことだ。それが死ぬほど怖い。いつの日か、職場公認の淫乱の中でも最悪のエロ女の服装をして出社する悪夢を何度も見る。
「それにしても、お前、ずいぶん変わったもんだな。お前が俺の前に現れたとき、いかにも、支配してくださいって顔をしていたが、お前が本物の性奴隷になるかどうか確信が持てなかった。お前がどう変わるか分からなかった。確かに、お前がこうなる素質は見えていたよ。お前がエロいシシーになるだろうというのは、目が見えない者ですら見えていた。だが、お前は怖がっていたからな。極端にためらっていた。よくもまあ、お前が俺に接触を持つ勇気を振り絞ったものだと、感心したもんだぜ」
その行動はエリック自身が決意して取った行動だったが、彼自身、同じことを思っていた。これは、彼が抱いた間違った新年の抱負の結果であった。新年を迎え、彼は、何か新しいことを試してみようと誓ったのだった。自分のフェチを恥ずかしがるのはやめよう、自分が欲するものに正直になろうと、そう誓った抱負の結果であった。
そして、エリックは自分が求めていたよりはるかに多くのことを与えられたのだった。さらに悪いことに、彼はどうしたらこの状態を止められるのか分からなかった。そもそも、止めることができるのかすら、分からなかった。