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Nymphs 「ニンフたち」 

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68_Nymphs 「ニンフたち」

その島には何か変なところがあった。

だが、私たちはもう何ヶ月もこの島に取り残されていて、流れる月日について意識的に考えることでもしなければ、月日はただの日々として流れていくだけのように思えた。時が経つにつれて、この島は自分たちが住むべき故郷のように感じられ、たとえ救助隊が来たとしても、ここを離れたいと思わなくなるのではないかと恐れた。ハリーも同じ感じでいると思う。いや、彼女の方はすでに、その一線を越えてしまっているかもしれない。彼女はこの島が大好きになっているように見える。

でも、それを言うなら、ボクも同じだろう。風が魔法の不吉な唸り声をあげてる時ですら、ボクはそれまで経験したことのないような快適さを感じた。ボクたちは、ボクも彼女も変わってしまったし、もし、何かのおかげで鏡が出てきて、それを見たら、ふたりともほとんどそっくりになっているのを発見するだろう。それは分かっていた。でも、ボクはその事実を困ったことだとは感じていない。ハリーもそうだ。それは、この島での生活の一部にすぎないから。

ボクたちふたりの服は、ここに来た最初の日になくなってしまった。でも、それで困ったという感覚は数分しか続かず、すぐに、ふたりとも素っ裸でいても何の問題もないことに気づいた。ふたりの顔が変わったときも同じだったし、体が変わったときも同じ。島に来る前は、ハリーは明るいブロンド髪をして、背が高く、彫像のような見事な体つきをしていた。一方、ボクの方は男の中でもガッチリとして荒くれタイプで、ひげを生やし、体毛が多く、喧嘩慣れしてる男の顔をしていた。そして、この島にいてしばらく経つと、ふたりとも変身していったのだった。でも、ボクも彼女も新しい肉体を嬉しく思っていた。この島がボクたちに望む姿かたちに、ボクも彼女も満足していた。

でも、何かが変わっていった。ふたりともそれを感じていた。この島のどこにいても聞こえる、あの魔法の唸り音は、次第に大きくなり、やがて、耳をつんざくほどの轟音になっていった。ふたりとも音を気にしないように努めたけれど、あまりに大きな音なので、頭の中でガンガン鳴り響いてるほどに思われた。

そして、ある日、急に音がやんだのだった。ボクはうれし涙を流した。

突然、背の高い、普通の人間とは思えない人物がビーチに現れた。彼はスポーツマンのような体つきをしていた。全身、引き締まった筋肉で、手足は非常に長く、生まれながらのハンターを思わせる動物的な、余裕に満ちた優雅さを持ち合わせていた。顎はきれいにひげを剃られていたが、角ばっていて、黒髪が両耳を覆うように伸びていた。彼も裸で、ボクには彼の男性器と比べたら、明らかに、自分のそれは小人のそれにしか見えないだろう。

「おお、私の美しいペットたちよ。とうとうお前たちに会えて、私は嬉しい」

「あ、あなたは誰?」とハリーがやっとのことで声に出した。でも、ボクには彼女がどうして声を出せたのか分からない。恐ろしくて声が出せなかったから。この男性が……彼が人間であるならの話だが……彼がオーラのごとく発しているパワーに、ボクは恐れおののき、声が出なかった。

「そのうち分かる。だが、さしあたり、お前たちが何者かの方が、はるかに重要だろう。お前たちはニンフになったのだ。変身させられたばかりのニンフ。そして今日からは、お前たちは私の快楽のために奉仕するのだ」

それは事実だった。彼がその言葉を発した瞬間、ボクには理解できた。彼はボクたちのご主人様になるべき人で、ボクは彼のあらゆる命令に喜んで従うことになるだろうと思った。不服従など考えることすらできなかった。

「さあ、来なさい。島の中央に連れて行こう。そこでお前たちは、新しい姉妹たちと会うのだ」


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Not enough 「まだ足りない」 

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68_Not enough 「まだ足りない」

タミーが言った。「認めざるを得ないわね。ずいぶん進んだわね。正直、これが可能だなんて思っていなかったの。でも、あなたは、日に日に女の子らしくなっていくわ」

リッキーは褒められてにっこりとした。「それって……」

タミーは頭を左右に振った。「でも、まだ、そこまでは行っていないわ。あなたには早くそこまで行ってほしいけど、まだ達していないの。ごめんね」

それを聞いてリッキーはがっくり来るのを感じた。「でも、キミ自身で言ったじゃない?」としどろもどろになりながら言った。「言ったよ……ボクは女の子らしく見えるって。ぼ、ボクは……キミのためにこれを頑張って来たんだよ」

「別に、あたしは頼んだことは一度もなかったけど? あなたが自分で決めたことじゃない?」

リッキーはどう反応してよいか分からなかった。彼は、タミーと結ばれるチャンスを求めて、自分の全人生を、もっと言えば自分のアイデンティティのすべてを捧げてきたのだった。リッキーはタミーを愛していた。そして、彼女の方も、男性には惹かれない事実にも関わらず、彼を彼女なりに愛していた。リッキーは、自分が女の子の姿になれば、どういう姿か分からないけれど、なんとか女の子っぽくなれたならば、彼女と一緒になれると、そう思ってきたのである。

「分かってる」とリッキーは腰を降ろした。もうこんなに姿が変わってしまったが、それでも、まだ足りないのだ。そもそも、完璧になれることがあるのだろうか?

ようやく、リッキーは顔を上げた。「手術を受けてもいいよ。豊胸手術。ヒップへのインプラント。キミが望むなら何でも。ボクは……ボクは、キミが望む人になりたいんだ」

「そう言うと思った」とタミーはカウチの上、彼の隣に座った。「でも、それが可能かどうか分からないわ。同じことを1年前にも言ったはず。手術とかって、あなたにできるかどうか、あたしには分からないの」

「きっとするよ。ボクはキミが望むような女の子になる。どんなことをしてでも」

「ならば、あたしは何も決めつけずにいることにするわ。でも、何も保証はできないの。それは分かってるでしょ? あなたを愛している。本当よ。でも、あたしは自分のセクシュアリティを変えることはできないの。自分を変えることはできないの」

「ボクはできるよ」とリッキーは力説した。「きっとそうする。キミのために」


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