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バースデイ・プレゼント 第10章 (6) 

ドナは続けた。

「私たち、2、3軒先のお店に行ってドレスを買ってこようと思うの。今、支払いを済ませて、後で撮影の時に戻ってくることにしても構わないかしら?」

「ええ、もちろん」

店員は僕たちをレジに連れて行き、ドナは支払いを済ませた。

「それではお待ちしておりますね。素敵なドレスが見つかると良いですね。あの素晴らしい顔に良くマッチしたドレスが」

デビーは、店を出て行く僕たちの背に声をかけた。

写真スタジオを出て、衣服店へ行くまでの短い距離だったが、僕は数回、すれ違う人々に振り返られた。何かセクシーでフリルのついたドレスを求めて入ったが、ドナは、ピンク色のかわいいドレスを選んだ。実質上、シースルーと言ってよいドレスだった。それを見て僕は息を飲んだ。とてもセクシーで、驚くほど薄い。それを身にまとった自分の姿を想像し、待ちきれなくなった僕は、ドナを引きずるようにして店の奥の試着室へと向かった。

ドナの手からドレスを取り、試着室に入り、ドアの鍵をかけた。注意深くTシャツを脱ぐ。せっかくセットした髪の毛を乱さないように、気を使って頭から脱ぎ去る。脱いだTシャツを脇に放り投げ、椅子に腰を降ろして、ハイヒールの止め具を外し、一度、ヒールを脱いだ。それから立ち上がり、ストッキングを履いた脚からジーンズを滑らせて降ろし、足を蹴るようにして脱ぎ捨てた。

ほとんど息を止めるようにして、ドレスのボタンを外し、頭からかぶって着てみた。ドレスのさらさらとした生地が、ブラジャーを撫で、次に、ガーターそしてパンティを滑り降り、最後に両太ももを優しく擦り撫でる時の、きわめて女性的で甘美な感触を味わった。スカートが舞うように動くことにより、かすかに空気が動き、パンティに覆われたペニスに繊細な刺激を与えるのを感じ、ゾクゾクと身震いした。

だが、その時、僕は、背中のボタンを留めることができないことに気がついたのだった。ドレスは胸元は大きく割れているが、背中は首の付け根まであって、そこを留めるボタンは小さく、いくつもあったのである。何度か試みたが、どうしても手が届かなかった。僕は、完成した姿になってから試着室を出て、外で待っているドナを僕の美しい姿で驚かしたかったのだが、どうやら、それはできないのだった。

仕方なく僕は再び椅子に座り、ハイヒールを履きなおし、留め具を付け直して立ち上がった。それからドアをちょっとだけ開けて、ドナに声をかけた。

「ちょっと背中を手伝って!」

ドナは、驚いた風に口を開けた。どうしても笑いを押さえ切れない様子で、試着室の中に入ってきた。

「今の可愛い言葉、どれだけ女の子っぽかったか、あなたには分からないかもね」

僕は、何のことか分からず、聞きなおした。

「どれだけの女たちが、どれだけの回数、今あなたが言ったことと同じことを、パートナーに頼んできているか知っている?」

ドナはにんまり笑顔のまま、僕を後ろ向きにさせ、小さなボタンを留め始めた。

僕はドナが言ったことの意味を考え、僕自身に起きつつあることを思い、驚いていた。普通なら気づかない、ごく些細な、日常的なことについてすら、僕は女性的な行動や習慣をするように強いられているのだ。

ボタンを留め終えたドナは、僕を再び前向きにさせた。彼女は、その途端に口を大きく開け、眼をまん丸にさせた顔になった。

「ああ、ビクトリア! 本当に言葉にできないわ!」

[2008/07/08] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)