「いやらしいことだから?」 リディアが訊くと、バーバラは首を振った。
「スティーブは、私にそういうことをして欲しいと頼まなくなったの」 バーバラは憤然とした。
リディアは低い声になった。「なあ、お前? それは、多分、お前があまり乗り気でないのを彼が察したからじゃないのかい? それに、そもそも、どうしてスティーブはお前にセックスについて、頼まなくちゃいけないんだい? どうして、お前の方から彼をカウチに押し倒して、上に乗って、アレを突っ込んでって言わないんだい?」
バーバラの顔は、今や真っ赤に染まっていた。
「お前が、スティーブに、お馴染みの下品だけど、膝がぶるぶる震えるようなおしゃぶりを最後にしてあげたのは、いつだったんだい? シャワールームでやったのは? そもそも、庭のポーチで立ったままでやってもらったことはあるのかい?」
バーバラは叩きのめされていた。祖母に投げつけられる質問に対し、すべて頭を振って答えることしかできなかった。ようやくリディアが静かになった時、バーバラは、一連の質問の背後の意味を理解し、うなだれた。
「私って、そんなお高く留まっていたのかしら? スティーブを拒んでいたわけじゃないのに・・・」
気弱に尋ねる孫娘に、リディアは優しく微笑みかけた。
「いいかい? お前、もし自由に与えられなかったとしたら、そのために、彼は、お前も望んでいると期待しなくなって、誘うのを止めたのかも知れないよ」
「でも、ノニー、私は望んでいたのよ!・・・スティーブの方から誘うべきじゃないの?」
リディアは激しく左右に頭を振った。
「この件に関しては、お前の母親を咎めなければね・・・あの娘が、40になる前に、もっとざっくばらんになってさえいたら・・・」 リディアは独り言をつぶやいた。
「・・・今のは忘れておくれ・・・まあ、ともかく、これについてはお前と二人で取り組むことにしないかね? ・・・お前がそれを望むなら、ということだが。ちゃんと向き合って話し合うことができるはずだよ、愛し合うことと、愛のこもったセックスをすることと、それに、お馴染みの、純粋に喜びのためだけの下品で淫らなセックスをすることの違いをね」
バーバラは、うんうんと頷いた。
「ぜひ、お願い、ノニー・・・つまり、それに取り組むってことだけど。それを。スティーブにあの現場を見つかって、間抜けだったことを責められて以来ずっと、彼のことが欲しくてたまらなくなってて、時々、苦しくなるほどだったの。家に戻ってからも、2回ほどしかしてないのよ。彼さえその気になってくれたら・・・この前も、職場だったのに、私、スティーブのことを考えだしたら、いても立ってもいられなくなって、電話したくなっちゃって、どこかで一緒に会って・・・」
バーバラは自分が何を言っているのかに気づき、ハッと話しを止め、顔を真っ赤にさせた。
リディアは声を出して笑った。
「でも、それならまだ遅くない。お前は、ほんのちょっとだけ学習が必要なだけさ・・・ちょっとしたきっかけかな・・・ううむ、どこから始めようかね?・・・」
「・・・やれやれ、こりゃ、とことんやるしかなさそうだね。私についておいで、バービー。・・・お前に見せたいものがあるから。でも、お前の母親には、わたしがそれを持っていることを言っちゃいけないよ。そんなことしたら・・・そんなことしたら、あの人のことだ・・・いや、そうならないかも・・・よく考えてみたら、案外、それを貸してくれって言ってくるかもしれないね」
バーバラは祖母の後について二階の主寝室に入った。リディアは衣装入れの下の引き出しを開けた。中から、ビデオカセットやDVDや、何か分からない器具などを引っ張り出し、最後に、プラスチック製の、何の形をしているか明瞭に分かるモノを何本か取り出した。
「ノニー!!!」 バーバラはびっくりして叫んだ。リディアはただくすくす笑うだけだった。
レストランの奥に近いテーブルに座った。すぐにウェイトレスが来てメニューを俺に渡し、すぐに別のテーブルへと去っていった。
あたりを見回し、立ち上がり、トイレへと向かった。トイレのあたりはメインの客席からは見えないところにあるので、誰かに目撃される心配はない。
トイレに近づくと、年配の女が女子トイレから出てきた。そこのドアが開いている間に、中の様子を覗いた。誰もいないようだった。素早く左右を見回し、誰もいないのを確かめた後、素早く女子トイレに滑り込んだ。
ゴミ箱のふたを開ける。何枚かウェットタオルがあり、その下に茶色の紙袋があった。それを取り、ゴミ箱のふたを閉め、素早くトイレのドアに向かった。何気なさを装って女子トイレから出て、急いで隣の男子トイレに駆け込んだ。
袋はかなり重量感があった。個室トイレに入り、ドアを閉め、袋の中を確かめた。金が入っている。他にも何か入っていた。手紙だった。
「あなたが誰か知らないけど、トラブルだけはごめんするわ。要求の6000ドルはあるはず。これで義務は果たしたわ。あなたの方も責任を持って約束を実行してください。そうすれば、誰も困らないから。Eメールのアドレスを書いておきます。あなたが持っている写真を返してくれる手はずが整ったらメールをください。連絡を待っています」
手紙を畳んでポケットにしまった。素早く金を数え始めた。クラブに入会するのに5000必要だから、残りの1000を取り、そいつもポケットにねじ込んだ。紙袋を閉じ、それを持ってトイレから出て、テーブルに戻った。
俺がテーブルに戻ると、ウェイトレスが待ち構えていたように戻ってきた。
「ご注文を」
「ボストン・クリーム・パイを」
そのときのウェイトレスの顔に浮かんだ表情は、100万ドルの価値がある。25セント玉みたいに目をまん丸にしていたからだ。彼女はくるりと向きを変え、支配人の事務所に向かい、中に入った。そして、すぐに出てきて俺のテーブルに戻ってきた。
「ついてきて」
そう言って事務所に歩いていく。俺は金の入った袋を持って、後に続いた。事務所に入ると、ウェイトレスは出て行った。中にはケイトがいて、デスクに座っていた。
「こんにちは、ジャスティン」 彼女はそう言って、タバコを一服吸った。
「こんにちは」 俺は彼女のデスクの前にあった椅子に腰を降ろした。膝の上に金の入った袋を置いた。
「あら、何かしら? 当ててみましょうか?」 そう言って、また一服吸って。「・・・スーパーに買い物に行ってきたのね?」とニヤリとした。
この女には俺の股間を刺激する何かがある。俺は彼女の顔をまじまじと見つめ、あらゆる詳細を記憶にとどめた。ケイトは今日もラテックスのドレスを着ていた。化粧も完璧だった。
俺は茶色の紙袋を彼女のデスクに放り投げた。
「入会する!」
ケイトは紙袋に目もくれず、また一服、時間を掛けて吸い、口の脇から煙を吐き出した。その間、ずっと俺の目を見ていた。俺はというと、彼女の口元に浮かぶわずかな皺に視線を吸い寄せられていた。俺好みの実にいい女だ。目の前の豊かな胸の谷間も最高だ。
「それで、テストがあるというが、どんなテストなんだ?」
ケイトはまた長々と一服吸った。
「そうあわてないの」と言ってタバコを灰皿に置いた。
それから彼女は立ち上がり、事務所の中を歩き始めた。時々、立ち止まって、壁にかかっている写真を眺める。
「ジャスティン、ここでは非常に厳格に運営を行っているの。あらゆることについて、完璧に私がコントロールできるようになっていなければならないのよ。さもないと閉鎖に追い込まれるかもしれないから。分かると思うけど、合法的なクラブというわけじゃないから」
口を挟もうとしたが、先にケイトが話しを続けた。
「あなたが信用できる人物であると、100%確信できなければならないの。あなたがこのクラブにいる間、あなたとあなたの行動を私がすべてコントロールできると、100%確信できる状態になる必要があるの」
「分かった」
俺は、ケイトが俺の後ろに来るのを見ながら返事した。彼女が両手を俺の肩に乗せ、揉み始めるのを感じた。
「あなたのこと、信用できるかしら、ジャスティン?」 そう言いながら、体を傾け、俺の耳にキスをしてくる。
ケイトの舌が耳穴に滑り込み、中をほじり、それから耳たぶを甘く噛まれた。俺は思わずため息を漏らした。
「明日の5時にあなたをテストするわ。遅れないように」
ケイトは俺の肩から手を離した。俺は立ち上がり、ケイトの方を向いた。ケイトが手を差し出してくる。
「クラブ・カフスへようこそ」
俺たちは握手をした。俺は少しだけ長く握手する手を離さなかった。ラテックスのドレスの中、ケイトの乳房が揺れるところを見ていたからだ。握手を終え、彼女が後ろを向き、ドアを開けに行くときも、俺は彼女の足先のセクシーな靴に見蕩れていた。
この女を欲しいと思いながら、俺はレストランへと戻った。
レストランから出るとき、あたりの様子を十分に確かめた。ステファニが見ているかもしれないからだ。大丈夫なことを確かめた後、自転車に戻り、家に向かった。ポケットには大金があったので、かなり急いで戻った。
家に戻った後、すぐに自分の部屋に直行し、金を出し、ドレッサーの中に隠した。